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2017年3月16日木曜日

真正待機児童数の推定

 今年も,全国各地で認可保育所落選の悲鳴が上がりました。今はSNSがありますので,こういう声がたちどころに伝わってきます。

 認可保育所への入所を希望しつつも入れないでいる乳幼児が,いわゆる「待機児童」ですが,当局の定義が実態を拾えてないことはよく指摘されます。悪条件の認可外保育所に入れている児童は,その中には含まれないなど。

 0~5歳の乳幼児人口から認可保育所在所児数を引くと,認可保育所在所児数が出てきます。幼稚園児,認可外保育所在所児,あるいは在宅保育児ですが,この中の何%くらいが真正の待機児童でしょうか。

 公的統計によると,2014年10月時点の0~5歳人口は627万4400人(総務省『人口推計年報』)。同時点の認可保育所在所児は223万552人です(厚労省『社会福祉施設等調査』)。よって,認可保育所に在所していない乳幼児は404万3848人となります。

 そうですねえ。このうちの1割(10%)が真正の待機児童と仮定すると,404万3848人×0.1=40万4385人という数になります。厚労省発表の2014年4月1日時点の待機児童数は2万1371人。むうう,ケタが違っています。

 10%というのは多すぎでしょうか。しからば5%,1%とすると,真正の待機児童数は以下のように見積もられます。

 5%の場合 ・・・ 404万3848人×0.05= 20万2192人
 1%の場合 ・・・ 404万3848人×0.01= 4万438人

 これでも,当局発表の待機児童数(2万1371人)を大きく上回っています。認可保育所在所児の5%が真正待機児童と見積もってもいいように思いますが,いかがでしょうか?

 これは全国の推定値ですが,47都道府県別に同じ計算をすることができます。認可保育所在所児(0~5歳人口から認可保育所在所児数を引いた数)の10%,5%,1%が真正待機児童と仮定した場合の推定値を,都道府県別に出してみました。


 どの県も,真正待機児童数の推定値は,当局の公表数よりもかなり多くなっています。「待機児童ゼロだぜ!」と威張っている県も,実態はそうでなかったりする。

 上表のデータは資料として見ていただければと思いますが,待機児童の把握漏れの度合いを測る指標を県ごとに計算してみましょう。計算式は以下です。

 把握漏れ率=(真正待機児童数-当局発表の待機児童数)/0~5歳人口

 真正待機児童数は3パターン出しましたが,中間の5%仮定の数値を使いましょうか。この場合,東京の待機児童の把握漏れ率は,(22076-8672)/630400=2.126%となります。

 この指標を都道府県別に計算し,ランキングにすると以下のごとし。


 埼玉や神奈川では,待機児童の把握漏れが相対的に多いようですね。保育所不足が深刻化している県ですが,保育ニーズも十分に拾えていない。

 逆に相対的に優良なのは沖縄で,真正待機児童の推定数と当局公表の待機児童数の差が小さくなっています。

 いろいろ抜けが多い現行の待機児童数に安堵し,何もしない自治体に喝を入れる意味でも,こういう指標の試算は無駄ではありますまい。今回のデータは2014年のものでちょっと古いですが,興味を持たれた方は,最新のデータで同じ作業をなさってみてください。

 各自治体の関係者の参考にもなるでしょう。