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2017年6月27日火曜日

人生のお悩み一望図(2016年)

 2016年の厚労省『国民生活基礎調査』のデータが公表されました。毎年実施されている調査ですが,2016年調査は3年に1度の大調査で,国民の健康状態についても調べられています。

 年齢層別の健康意識や喫煙・飲酒率など,面白いデータをひねり出せるのですが,私がまず興味を持つのは,悩み・ストレスの原因です。悩みやストレスがあると答えた人に対し,その原因を複数回答で問うています。

 収入・家計,病気や介護,育児,家事,自分の仕事…。選択肢はいろいろありますが,寄せられた回答の内訳を年齢層別にグラフにしてみると,人生の各時期の「お悩み一望図」が出来上がります。

 『国民生活基礎調査』の大調査のデータが公表されたら,最初にこの統計図を作ることにしています。本ブログを長くご覧いただいている方はお分かりでしょうが,2010年,2013年のものは既に作りました。では,最新の2016年のグラフを作ってみましょう。

 グラフの元データは,下記サイトの表13から採取しています。紙の報告書には載っていない,閲覧公表用の内部統計です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001184847


 私としては,すっかり見慣れた図柄ですが,初めての方は「おお」と思われたでしょう。人生の各時期の悩みが,実によく表れています。

 10代は受験,20~40代は仕事や子育て,高齢期は病気や介護の比重が高くなると。収入や家計の悩みは,どの時期もついて回るようです。

 言わずもがな,男女で分けて同じ図を作ると模様はかなり違っています。20~40代の女性にあっては,赤枠で囲った3つの悩みの比重(育児,家事,子どもの教育)の比重がうんと大きくなります。男性は,収入や仕事のウェイトがさらに大きくなると。

 こうしたジェンダーの差もみておきましょう。悩み・ストレスの原因として,「家事」ないしは「育児」を選んだ男女の人数を比べてみます。下図は,20~50代の年齢層別の折れ線グラフです。


 男性の曲線は寝そべっていますが,女性はアラフォーの層に鋭利な山がある型です。家事・育児の負担が女性に偏していることの表れに他なりません。北欧の諸国でみたら,おそらくこういうグラフにはならないでしょう。

 毎度言いますけど,統計というのは本当に正直です。まあ,今回お見せしたデータは,誰もが感じている当たり前のことですが,それをデータで可視化する(地味な)仕事も意義あることと思っています。それが,私のライフワークです。

 8月上旬刊行予定の新刊は,その一部を選りすぐって編集したものです。400ページほどの厚みのある本で,タイトル(仮)は『データでみる・教育の論点』。夏休み中に,教育関係者の方々に読んでいただければと思います。どうぞ,お楽しみに。