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2020年1月23日木曜日

アラフィフの危機は普遍則?

 アメリカの研究者が,世界132か国の調査をもとに,年齢と幸福度の関連を分析したところ,幸福度の年齢カーブはV字型になるのだそうです。ボトムは47~48歳であるとのこと。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200121-00010014-fnnprimev-life

 家庭でも職場でも,いろいろ役割がのしかかるステージですからね。この年代では「幸福度を下げる要素がたくさん揃っている」と書かれています。

 私はこういう報道に接すると,元資料に当たって追試をしてみたくなるのですが,公開されているデータではないので,それは叶いません。しからば,国内統計で類似のデータが出ているものはないかと探したところ,いいのがありました。スポーツ庁の『スポーツの実施状況等に関する世論調査』(2018年度)です。なんとなんと,調査対象の2万人のローデータファイルまでアップされているではないですか。

 調査票をみると,健康意識と生活充実度を尋ねた設問があります。前者はQ1,後者はQ33です。この2つの設問の回答を年齢別に集計し,自分を健康だと思っている人,生活が充実していると感じている人のパーセンテージを出しました。サンプルが多いんで,細かい1歳刻みの集計にも耐えます。

 年齢別の数値をそのままグラフにすると凹凸が激しいので,3歳間隔の移動平均法で年齢カーブを滑らかにしました。40歳の場合,39歳,40歳,41歳という3つの年齢の平均をとるわけです。こうすることで,傾向を見いだしやすくなります。


 青色は健康曲線,赤色は生活充実曲線です。アメリカの研究者が描いた幸福度曲線と同じく,こちらもV字型となっています。なんとなんと,ボトムも全く同じく47~48歳あたりではないですか。

 子どもの教育費がかかる時期で,職場では管理職としての重責がのしかかります。学校だと主幹教諭や教頭(副校長)とかになる頃ですが,ものすごい激務で,希望降任をする人もいます。子どもを相手にする実践者から,組織を統括する管理職への移行に,アイデンティティの喪失を感じる人も少なくありません。教員にとっては,危機のステージです。

 しかし,それが緩和される50代からは上昇に転じ,生活充実度はうなぎ上りに高まります。60代以降の伸びが大きいですが,退職して,好きなことをできる時間的余裕ができるためでしょうか。

 アラフィフの危機はよく言われるのですが,多くの調査データで観察される普遍則といえそうです。上記のようなグラフを知っておくと,「そのうち上向きに転じる」と,気が楽になるかもしれません。

 でも,どうなんでしょうね。「今は懸命に働いて貯金し,定年後は存分に楽しもう」という考えの人もいますが,楽しみを,体力の弱った高齢期に先延ばしする人生って一体…。

 「お金の価値は年齢と共に低下する」といいます。同じ1000万円が手元にあっても,若い人なら世界中の色んな所に行けますが,老人の場合,行動可能範囲は限られるでしょう。現役時に働きづめで遊ぶ術も知らず,ガッツリ貯め込んだ貯金は減らぬまま。あげく,振り込め詐欺でゴッソリ巻き上げられるなんてことになったら,実に哀れです。

 若い頃から生活を充実させておくことが,老後を豊かに生きる条件になります。60歳を境に生き様をガラッと変えるなんて,そう簡単にできることではありますまい。

 目下,アラフィフの年代に「人生の谷」が見受けられます。このステージの人たちを,どう救うか。アラフィフ・クライシスに対処する専門家への需要も増すかもしれません。