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2011年5月7日土曜日

教員の離職率①

 最近,不登校の増加に示されるように,子どもの脱学校兆候が広がっているといいますが,それは,教員の側にも当てはまるようです。今回は,教員の脱学校傾向,職場不適応の兆候の多寡を測定することを試みようと思います。

 さて,いかなる指標(measure)を使うべきでしょうか。まず思いつくのは,病気(精神疾患)で休職する教員の割合です。新聞などでは,この指標についてよく取り上げられています。
http://www.asahi.com/national/update/1224/TKY201012240567.html

 しかし,この指標だと,性別や年齢層別,さらには地域別というように,細かい属性別に率を出せない,という難点があります。また,文科省が公表している資料からは,学校段階別(小,中,高…)の率を計算することもできません。全学校が一括りにされてしまっています。また,あと一点,難癖をつけるなら,当局がこの統計を取り始めたのは,1990年代後半からであり,長期的な時代推移をみることも不可能です。

 私は,これらの欠点をクリアする指標として,離職率というものがあることを知りました。離職率とは,ある年度内に離職した教員が,全体のどれほどを占めるか,というものです。文科省の『学校教員統計調査』には,調査の前年度の間に離職した教員の数が計上されています。

 最新の2007年版の『学校教員統計』によると,前年の2006年度間の小学校教員の離職者数は14,812人と報告されています。理由の内訳は,定年が67.0%,病気が2.6%,死亡が1.5%,転職が8.2%,大学等入学が0.3%,その他が20.5%,です。

 私が注目したのは,一番最後の「その他」の理由による離職者数です。定年でもない,転職でもない,要するに,理由が定かでない離職ということになります。教員の脱学校傾向や職場不適応の量を測るには,この意味での離職者がどれほどいるかをみるのがよいのではないでしょうか。もっとも,結婚退職というような理由がこの中には含まれるでしょうが,教員の場合,それはかなり少ないであろうという仮定を置きます。

 私は,「その他」という理由による離職者数が,全教員数に占める比率を計算しました。分子,分母とも,文科省『学校教員統計調査』から得ています。ただ,分子と分母の年次が1年ズレていることを申し添えます。分子の離職者数は,調査年の前年度間のものだからです。1年のラグなら,まあ,問題はないものとお許しください。


 前置きが長くなりましたが,最新の2007年の『学校教員統計』から,2006年度間の離職率を計算してみましょう。上表は,小学校教員のものです。まず,最下段の全体の離職率をみると,7.8‰となっています。‰とは,千人あたりという意味です。%にすると0.78%,およそ128人に1人の教員が,理由不詳の離職者ということになります。

 次に,性別でみると,女性は男性のちょうど2倍です。これは,結婚退職というような理由からかも知れませんが,後でみるように,両性の離職率の時系列曲線は近似していますので,そうではないと思います。

 続いて,年齢層別の離職率ですが,若年教員の離職率が飛びぬけて高くなっています。25歳未満の教員では19.8‰(≒2%),およそ50人に1人です。近年の新規採用抑制により,若年教員の比重が小さくなっているといいますけれども,その分,彼らが被る圧力のようなものが大きくなっているのでしょうか。2006年5月,採用されたばかりの23歳の女性教員が過労で自殺するという事件があったことは,記憶に残っているところです。

 だいぶ長くなりましたので,今回は,この辺りで止めにします。次回は,小学校教員の離職率が時系列的にどう変化してきたのかをご覧に入れようと思います,