前回の続きです。今回は,小学校教員の離職率の時代推移をみてみようと思います。ここでいう離職率とは,定年でも転職でも病気でもない,「その他」というカテゴリーに括られた理由による離職者が,全体のどれほどを占めるか,というものです。詳しい計算方法については,前回の記事をご覧ください。
この指標は,教員の脱学校兆候や職場不適応の量的規模を測るために設定したものです。文部科学省『学校教員統計調査報告』に掲載されている統計から,独自に算出しました。
上図は,1979年度から2006年度までの離職率の推移をとったものです。2006年度の7.8‰という値は,史上最高というわけではなさそうです。1980年代前半あたりの離職率が高かったことが分かります。1982年の離職率は13.2‰です。この時期は,全国的に校内暴力の嵐が吹き荒れた頃かと思いますが,そうした危機状況を受けてのことでしょうか。
その後,離職率は減少しますが,90年代後半から上昇に転じ,今日の水準に至っています。なお,男女差が大きいことも注目に値します。2006年度では,男性は4.8‰,女性は9.6‰で,ちょうど倍の開きが出ています。女性は,結婚退職が多いのではないかといわれるかもしれませんが,両性の曲線が近似していることからして,離職の原因は類似のものであると思われます。
次に,年齢層別の離職率の推移をみましょう。上図によると,どの年でも,20代の離職率が際立って高くなっています。その推移は,全体のそれと似ていますが,最近,減少の傾向です。一方,30代の離職率は,97年以降,一貫して上昇の傾向にあります。
ここで明らかなのは,90年代後半以降の離職率の上昇は,主に若年教員による,ということです。最近,よくいわれる「教職の困難」というのは,若年教員に集中していることがうかがわれます。はて,それはどういったものなのでしょうか。次回は,それを考える一助として,若年教員の離職率が高い県はどういう県かを明らかにしようと思います。