警察庁の統計によると,2010年の間に自殺した中学生は71人,高校生は208人であったそうです。中学生は男女ほぼ半々ですが,高校生では,男子が130人で62.5%を占めています。
過去に比して増えているわけではないですが,前途ある若い命を自ら殺めるという行為は,何とも悲しく,もったいないことです。いったい,何が彼らを自殺へと突き動かすのでしょうか。
警察庁『平成22年中における自殺の概要資料』には,自殺者の属性別に,自殺の原因が明らかにされています。各原因カテゴリーに該当する自殺者の数をカウントしたものです。1人の自殺原因が複数にわたることもあるので,総計は,自殺者の頭数よりも多くなることがあります。
http://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/H22jisatsunogaiyou.pdf
下図は,原因の大分類の構成を示したものです。中高生の特徴を検出するため,自殺者全体の原因構成と対比しています。
自殺者全体では,健康に関わる原因が最も多くなっています。高齢者が多いためでしょう。また,経済・生活問題の原因のシェアが大きいことも目を引きます。生活苦によるものでしょう。最近,失業率が上がってきていますし。
一方,中高生では,学校問題に関わる原因が多くを占めています。中学生は50.7%,高校生は38.9%です。中学生と高校生で細かく比べると,前者では家庭問題。後者では男女問題の比重が相対的に高いようです。親の叱責,失恋といったものでしょうか。
上記の統計は,大雑把な原因大分類ですが,「学校問題」というカテゴリーに括られる原因が,具体的にどういうものかが気になります。そこで,もっと下った,原因小分類の表もみてみましょう。下の表は,各原因カテゴリーに相当する中高生の自殺者の数を示したものです。男子と女子に分けています。上位3位には,色をつけています。
当然ですが,学校問題の部分に色が多くついています。その具体的な内容は,進路の悩み,学業不振といったものです。高校生では男女差もあり,男子では親子関係の不和,女子では病気といった原因も比較的多くなっています。
しかし,メインの原因は,やはり進路や勉強に関する悩みなのですねえ。まあ私も,高校生の頃は,模擬試験の成績に一喜一憂し,とにかく国立大学に現役で入ることばかり考えていました。大学入試に失敗したら死ぬしかないかしらん,と考えていたりもしました,
しかし,今から振り返ると,小さなことで悩んでいたものだ,と思います。倍の期間を生きた現在では,「失敗したら,また再トライすればよい。長い人生,1年や2年のロスくらい何だ」と思えるようになっています。
若き頃の悩みというのは,後から振り返れば,小さなことに感じられることがほとんどです。しかし,人生経験の浅い中高生に,そのような大局的な視点を持て,というのは無理な注文でしょう。こういう時に,世代間の交流が効を発揮すると思います。
また,学歴主義を相対視する本を読ませるとよいかもしれません。無目的に大学(院)に進学し,勉強しすぎるとこうなる…水月昭道さんの『高学歴ワーキングプア-フリーター生産工場としての大学院-』を,青少年読書感想文コンクールの課題図書にしてみてはどうかしらん。