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2011年12月22日木曜日

都内49市区のジニ係数②

前回の続きです。東京都内の49市区のジニ係数を明らかにしようとしています。六本木ヒルズのある港区のジニ係数は0.406でした。社会が不安定化する恐れのある0.4を超えています。

 では,他の市区はどうなのでしょう。下の地図は,ジニ係数の値に基づいて,それぞれの地域を塗り分けたものです。0.02の区分で,色を違えています。各市区のジニ係数の算出に必要な,年収別世帯数のデータは,総務省『住宅土地統計調査』の2008年版から得ています。ジニ係数の計算の仕方は,前回の記事を参照ください。


 0.4を超える地域は,港区のほかに13あります。上位5位は,新宿区(0.435),千代田区(0.420),北区(0.419),杉並区(0.415),小金井市(0.409),です。港区は9位です。すごいですね。東京都内でみると,住民の富の格差が大きい地域が結構あります。

 なお,49市区のジニ係数は,各々の平均年収の水準と関連しています。上記の総務省の資料から,各地域の住民の平均年収額を出し,ジニ係数との相関係数をとってみると,0.306となります。5%水準で有意な相関です。

 富が多い地域ほど,内部の格差も大きい,という傾向です。これはいかがなものでしょう。住民の所得水準が高い地域は,それだけ税収も多いのですから,富の再分配政策により,内部の格差の是正を図る余地もあるかと思います。

 あと一点,検討したいのは,各地域のジニ係数と治安との関連です。先にも記しましたが,ジニ係数が0.4を超えると,社会が不安定化する恐れがあり,特段の事情がない限り,格差の是正を必要とする,という危険信号と読めるそうです。

 総務省『統計でみる市区町村のすがた2011』には,2009年の都内23区の犯罪認知件数が掲載されています。これを同年の各区の人口で除せば,犯罪発生率を計算することができます。この指標と,ここで明らかにしたジニ係数の相関係数を出すと0.416となります。5%水準で有意です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001032195&cycode=0

 格差が大きい地域ほど,犯罪発生率が高い(治安が悪い),という傾向があります。もっとも,ここでいう犯罪率は発生地主義のものであること,千代田区の犯罪率が群を抜いて高いことを割り引いて考えなくてはいけませんが,看過できることではありますまい。

 格差の拡大は,地域の社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)を壊す,という指摘もあります。その経路については,稲葉陽二教授の『ソーシャル・キャピタル入門』(中公新書,2011年)をお読みになると,よく分かると思います。
http://www.chuko.co.jp/shinsho/2011/11/102138.html

 ついでですが,西の大都市の大阪のジニ係数マップも作ってみました。塗り分けの区分は,東京と同じにしています。


 東京と比べると,全体的に色は薄くなっています。大阪の場合,ジニ係数が0.4を超えるのは4地域だけです。しかし,最高の値がズバ抜けています。最も高い河南町のジニ係数は0.501です。東京の新宿区以上です。私は,大阪については土地勘がありませんので,コメントは控えさせていただきます。