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2012年3月17日土曜日

新卒時の教員採用試験競争率の世代比較(東京,青森)

3月14日の記事では,東京都の教員の年齢ピラミッドを,新卒時の採用試験競争率の水準によって塗り分けてみました。今回は,地方の青森県についても同じ統計図をつくり,東京と比べてみようと思います。広くいうと,教員構成の地域比較というテーマです。

 私は,両都県について,2010年時点の公立小学校教員の状況を明らかにすることを試みました。2010年の23歳の教員は,2010年度試験(同年春採用)の合格者と考えます。同年の34歳の教員(私の世代)は,1999年度試験を突破した者とみなします。乱暴ですが,浪人による年齢のズレは考慮の外に置きます。

 文科省の『教育委員会月報』のバックナンバーから,東京と青森の小学校試験の競争率を,1980年度試験までさかのぼって知ることができます。よって,上記の仮定でいくと,2010年時点の23~53歳の教員について,新卒時の採用試験の競争率がどれほどであったかを明らかにすることが可能です。

 下表は,その結果を整理したものです。競争率が最も高かった世代の数字は黄色,最も低かった世代の数字は青色で塗っています。


 東京と青森では,様相がかなり違っています。とくに差が顕著なのは,20代の若年教員です。青森では,どの年齢も10倍,20倍という激戦の通過者ですが,東京の20代が通ってきた試験の競争率は2~3倍という程度です。

 両都県の20代教員を一定数抽出し,一つの会場に集めて比較してみたら,どういう感じでしょうか。引き締まった顔をしているのは,青森の方が多かったりして・・・。

 しかし青森でも,新卒時の試験の競争率が低かった世代があります。40代です。上表から分かるように,どの年齢も3倍未満です。2倍を下回る世代もあります(41歳,45歳,48歳)。

 現在の40代が試験を受けたのは,1980年代後半から90年代初頭のバルブ期です。民間が好景気にあったので,全国的に教員採用試験の競争率が低かった頃です。地方の青森では,人口的な要因もあったのでしょうか。同じ時期の東京に比しても,競争率は低くなっています。

 こうみると,青森では,くぐってきた関門の競争率の世代差が激しいことが,一つの特徴といえそうです。世代間の断絶や葛藤といった問題が潜んでいるかも分かりません。

 次に,上表のデータを,両都県の教員の年齢ピラミッドの形で表現してみましょう。各世代の量的規模も勘案するためです。2010年の文科省『学校教員統計』の中間報告結果から,両都県の年齢別の教員数を知ることができます。このデータを使って,公立小学校教員の年齢ピラミッドを作図し,各世代の新卒時の試験競争率で色分けをしました。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001033683&cycode=0

 なお,東京と青森では教員数のケタが違いますので,全教員数に占める比率(%)のピラミッドをつくりました。母数である公立小学校の全教員数は,東京が28,409人,青森が5,029人であることを申し添えます。


 まずピラミッドの形状ですが,青森は下層部がやせ細っている,逆ピラミッド型です。東京は,近年の採用者数増により,20代後半の層が厚くなっています。20代の教員が全体に占める比率は,東京は21.1%ですが,青森はたったの2.6%です。青森の20代教員は,133人です。県全体の公立小学校で,20代の教員が133人しかいないのですね。対して,東京は5,990人なり。

 このように量的に少ない青森の若年教員ですが,彼らは激戦を経て採用された世代です。ピラミッドの下層部は真黒に染まっています。青森の若年教員は,「少数精鋭」というような感を呈しています。東京のほうは,どういう言葉をあてがったらよいかしらん。

 うーん,東京と青森の20代教員を比較したら,かなりの違いが出てきそうです。3月11日の記事では,各県の教員のパフォーマンス指数を出したのですが,若年教員に限定した数字が出せれば面白いのになあ。ただ,間もなく公表される,2010年の文科省『学校教員統計調査』の詳細結果から,若年教員の離職率の県別数値を得ることができます。数値が公表され次第,相関分析を行うつもりです。

 なお,青森では,40歳以上の世代は,ほとんどが白色です。くぐってきた関門が広かった世代です。先にも書きましたが,同県では,年輩教員と若年教員のコントラストが比較的際立っています。このような世代断層が,総体としての教員集団のパフォーマンスにどう影響するかは,興味ある問題です。

 他県についても同じ統計図をつくり,随時,面白いケースをご覧に入れようと存じます。