5月19日の記事では,国民の悩み・ストレスの状況をみましたが,こうした「心」の負担は,身体にも影響します。これを心身相関といいます。今回は,病気やけが等の自覚症状を持っている者がどれほどいるか,その内実はどういうものかを観察してみようと思います。
厚労省の『国民生活基礎調査』では,対象者(入院者除く)に対し,病気・けが等の自覚症状の有無を尋ねています。2010年調査の標本の回答結果をもとにすると,病気・けが等の自覚症状を有する国民の数は4,052万人ほどと見積もられます。国民全体のおよそ3割です。
現在の日本では,国民の2人に1人が悩み・ストレスを持ち,3人に1人が身体の故障を感じているようです。後者の比率を年齢層別に計算すると,下表のようになります。ベースの人口は,『国勢調査』の速報集計結果によるものです。分母,分子とも単位は千人です。
病気やけが等の自覚症状を有する者(以下,有訴者)の比率は,高齢層ほど高くなっています。ピークは,70代後半の52.8%です。加齢に伴い,身体の故障が増えてくるのは,まあ当然といえば当然です。
しかるに,若年の有訴者も少なからずいます。20~30代の有訴者の数,約720万人なり。私が属する30代後半では,有訴者率は26.5%,4人に1人です。私は,今の時点ではこの中に含まれませんが,今後どうなることやら。
さて,有訴者はトータルで4,052万人ほどいるわけですが,彼らが感じている身体症状はどういうものなのでしょう。年齢層による違いも気になります。厚労省の上記調査では,最も気になる症状を1つ,有訴者に選んでもらっています。私は,その分布を年齢層別に明らかにし,結果を面グラフで表現しました。以下に,作品?を展示します。
子どもでは,鼻づまりやせき・たんが多くを占めます。私も子どもの頃は,よく鼻炎にかかったなあ。「ゼイゼイする」とういうのは喘息でしょう。かゆみや発疹のような皮膚系の症状も幅をきかせています。うーん,これもよく分かる。
成人期以降になると,肩こりと腰痛の比重が急に大きくなります。いずれも,オフィスでのデスク・ワークと関係が深い症状です。腰痛は,肥満とも関係があります。お腹が出てくると,各種の動作の際,腰に負担がかかりますので。私は今,そのことで悩んでいます。いつ,腰をやることやら。
高齢期以降では,手足の関節痛といった身体症状が目立ってきます。聞こえにくい,見えにくいなど,感覚関連の症状も出てきます。また,もの忘れなど,認知面の症状も浮上してきます。まあこれらは,加齢(エイジング)に伴う生理的な変化ともいえます。
これまで,①自殺の原因,②悩み・ストレス,そして③病気・けが等の自覚症状について,上図のような統計図を描きました。いずれも拡大プリントして,部屋の壁に貼っています。学生さんに話したら,「先生,よくそんな部屋で食べたり寝たりできますね」と言われました。返す言葉がありませんでした。
統計アート(Statistic Art)というジャンルがあるのかどうか知りませんが,つくった図を,東京都の統計グラフコンクールにでも応募してみようかなあ。