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2012年9月4日火曜日

専攻別にみた博士課程修了生の惨状(補正)

 8月30日の記事では,大学院博士課程修了生の無業者率,死亡・進路不明率を細かい専攻ごとに出したのですが,この記事をみてくださる方が多いようです。

 いただいたコメントやツイッター上でのつぶやきを拝見したところ,上記記事の分析には,いくつかの不備があることに気づきました。また,不適切な解釈もあります。今回は,その補正をしようと思います。

 文科省の『学校基本調査』では,博士課程修了生(単位取得退学者含む)の進路状況が調査されています。そこにて設けられている進路カテゴリーは,以下のようです。8月30日の記事でも紹介しましたが,重複を厭わず再掲いたします。

 ①:進学
 ②:正規就職
 ③:非正規就職
 ④:臨床研修医
 ⑤:専修学校・外国の学校等入学
 ⑥:一時的な仕事
 ⑦:左記以外の者
 ⑧:死亡・進路不明

 先の記事では,無業者率(⑥~⑧の者の比率)と進路・死亡不明率(⑧の者の比率)を計算したのですが,後者が前者の内数に含まれるのはおかしなことです。⑧は,3月修了生のうち,『学校基本調査』の調査時点(5月)までの間に死亡が確認された者,あるいは進路が不明という者のことです。よって無業者と確定した者ではありません。

 今回は,⑥と⑦の者の比率をもって,無業者率ということにします。死亡・進路不明率は,先の記事と同様,⑧の者の比率です。

 では,2011年3月の修了生(単位取得退学者含む)について,無業者率と進路・死亡不明率を,専攻ごとに再計算してみます。データ・ソースは,下記サイトの表86です。2012年3月修了生のデータも公表されていますが,こちらは速報値ですので,細かい専攻ごとの数値はまだ公表されていません。よって前年の統計を用います。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001037176&cycode=0

 下図は,修了生数が100人超の30の専攻を,無業者率と死亡・進路不明率のマトリクス上に位置づけたものです。点線は,博士課程修了者全体でみた比率です。


 図の形状は,8月30日の記事のものと変わりありませんが,無業者率の水準が異なっています。無業者率が最も高いのは,人文科学系のその他(文学,史学,哲学以外の専攻)の47.9%です。縦軸の死亡・進路不明率の最高値は,法学・政治学の29.2%です。

 ただ,法学・政治学専攻の進路不明率の高さは,司法試験浪人が多いためではないか,という疑いが持たれます。しかし,司法浪人という者は上記進路カテゴリーの⑦に含まれるような気もします。いや,そういう人の多くは,進路届けそのものを出さないのでしょうか・・・。

 それはさておいて,横軸と縦軸の双方から評価すると,やはり,文学,史学,そして法学・政治学専攻の惨状が際立っています。とある方は,ツイッター上で「史学」を「死学」と表現されていましたが,うまいなあと思いました。

 さて,8月30日の記事と同じく,傾向を手短なフレーズでまとめましょう。博士課程修了者全体では,4人に1人が無業者,10人に1人が死亡・進路不明者です。しかし,2人に1人が無業者,3人に1人が死亡・進路不明者,という専攻もあります。
 
 あと一点,2012年3月修了生の統計では,細かい専攻ごとの数字が公表されていないのですが,これはまだ速報の段階であるからで,正式発表の統計では,おそらく専攻別のデータも出されると思います。先の記事では,当局が隠ぺいを図っているのではないかと邪推しましたが,それは取り消したいと思います。

 8月30日の記事に対し,コメントやツイッターにて,多くのご指摘をいただきました。感謝申します。