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2012年12月12日水曜日

東京の単独世帯率地図

 日本社会の変動を言い表す語として,「孤族化」があります。簡単にいうと,いざという時に頼れる身寄りがいない,一人ぼっちの人間が増える傾向です。

 このトレンドを可視的に表すために用いられる代表的な指標は,単独世帯率でしょう。むろん,一人暮らしであっても,離れて暮らしている家族や親族と密な関係を保っている人はいますが,この点は置いておきます。

 2010年の『国勢調査』の結果によると,施設等の世帯を除く一般世帯は5,184万世帯です。このうち,単独世帯は1,678世帯。したがって,単独世帯率は32.4%と算出されます。現在では,3世帯に1世帯が,一人暮らしの単独世帯ということになります。
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/index.htm

 1965年(昭和40年)では,単独世帯率はわずか7.8%でした。暮らしの形態面からすると,この半世紀の間に,わが国では孤族化が進行したことが知られます。ちなみに,国立社会保障・人口問題研究所の「日本の世帯数将来推計」によると,2030年には,この比率は37.4%に達することが見込まれます。およそ4割です。
http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Mainmenu.asp

 しかるに現在にあっても,地域によっては,この水準を既に超えています。東京の単独世帯率を,2010年の国調から出すと,45.8%にもなります。半分近くです。おそらく,全県で最高の値でしょう。

 この大都市・東京都内の地域別に,単独世帯率を計算すると,もっとスゴイ値が出てきます。都内の53市区町村の単独世帯率を計算し,結果を地図化してみました。下図は,10%の区分で各地域を塗り分けたものです。


 黒色は50%超,すなわち全世帯の半分以上が単独世帯である地域です。最も高いのは,新宿区の62.6%なり。以下,渋谷区(62.5%),豊島区(60.9%),中野区(60.2%),そして杉並区(56.5%)と続いています。

 黒色の地域は都心に固まっていますが,黒色の帯は,下,左,そして左上に伸びています。東海道線,中央線,東北線の沿線です。都心へのアクセスの良好さにひかれて,単身者が多く住まう,ということでしょうか。

 ここで明らかにした,各地域の単独世帯率は,いわゆる孤独死の頻度と相関していることでしょう。部屋の中で急逝しても,気づいてくれる同居者がいないわけですから。また同時に懸念されるのは,自傷行為や自殺といった,内向的な逸脱行動との関連です。「自殺は孤立の病」といいますが,心理的虚無感や視野狭窄などに陥り,自らを傷つけるようなことも起こりやすくなると思われます。

 11月24日の記事では,都内の48市区について,自損行為によって救急車で搬送された者が,人口のどれほどを占めるかという,自損行為搬送人員出現率を出しました。リストカットやオーバードーズ等によって,自殺未遂を企てた者も多く含まれると思います。

 今回出した単独世帯率と,この自損行為搬送人員率の相関をとると,下図のようになります。稲城市と4町村を除く,48市区の統計です。


 明瞭ではないですが,単独世帯率が高い地域ほど,自損行為の発生頻度が高い傾向にあります。相関係数は+0.377であり,48というデータ数を考慮すると,1%水準で有意な相関と判定されます。

 暮らしの形態面からした孤独と,内的な逸脱行動との連関が見受けられます。なお,こうした関連の強度は,年齢層によって違っています。一人暮らしと自損行為の関連が相対的に強いのは,どの層でしょうか。次回は,この点に関する統計をご覧に入れようと思います。