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2013年6月6日木曜日

20代の正規就業者の収入状況

 昨日,某報道機関の記者さんと地方青年の困難について語り合ったのですが,すさまじいお話を聞きました。

 ある地方県の話ですが,正規の職を探しにヤング・ハローワークに出向いても,提示される求人というのは,月給12~13万円というのがザラ。中には「昇給なし」と明記されているものもあるのだそうです。

 賞与(ボーナス)はといえば,年間1万円というものも。この場合の想定年収は,(12万×12か月)+1万=145万円ということになります。完全なワーキングプアですが,これは,れっきとした正規職の求人です。

 まあ,雇ってもらった最初の年くらいは,これで辛抱しよう,という気構えを持てないこともありません。しかるに,上記のように「昇給なし」という条件が付いている場合,それがいつまでも続くことになります。まったく展望が持てないわけです。
 
 ごく一部のブラック求人ではないかと思いましたが,決してマイノリティーではないとのこと。「雇用の崩壊」がいわれますが,安泰と信じられている正規職もその波を免れていないようです。そういえば,「名ばかり正社員」なんていう言葉を最近よく聞くようになりました。

 私は,総務省『就業構造基本調査』の統計にあたって,20代の正規就業者の給与(年収)を調べてみました。前回までと同様,バブル崩壊直後の1992年と最新の2007年のデータを比べてみます。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm

 この期間にかけて,20代の正規雇用就業者は1,080万人から707万人へと減少しました。有業者全体に占める比率も,80.0%から63.1%へと減じています。前々回みたような,雇用の非正規化と表裏です。

 量的に少なくなった正規就業者ですが,年収分布はどう変わったのでしょうか。両年の年収分布曲線を描いてみました。比較対象として,非正規も含む有業者全体の曲線も添えています。


 有業者全体では,低収入層のウェイトが増しています。これはワープアの増加を示唆するものであり,前々回の記事でもみた通りです。一方,正規就業者の年収曲線はこの15年間でほとんど変わっていません。

 上記の年収分布から平均年収を計算すると,有業者全体では,1992年では267万円だったのが,2007年では250万円にまで下がりました。しかるに正規就業者に限ると,291万円から303万円へと増加をみています。

 正規雇用の崩壊(崩れ)という現象は,2007年までのデータでみる限り,観察されませんでした。*収入という一つの視点を据えただけですが。

 とはいえ,より近況ではどうなっているか分かりません。2008年には,「100年に1度の不況」とまで形容されたリーマンショックを経験しています。来月,2012年の『就業構造基本調査』の結果が公表されますが,それから描かれる曲線は,歪な型になっている可能性が十分あります。先の記者さんのお話も,最近3年間の取材結果だそうです。

 最後に,都道府県別のデータも提示しておきましょう。若年の正規就業者といっても,状況は県によって異なるでしょう。1992年と2007年の正規就業者のワープア率(年収200万未満),および平均年収の一覧を掲げます。左端の正規率とは,有業者全体での正規就業者の比率です。

 黄色マークは47都道府県中の最高値,青色マークは最低値です。上位5位の数値は,赤色にしています。


 この15年間の変化は,ほとんどの県が全国的傾向と同じです。若年正規就業者ワープア率は減じ,平均年収はアップしています。

 ですが,岩手,宮城,そして奈良のように,正規就業者でみても,ワープア率が微増している県もあります。表の数値からは読み取れませんが,宮城では,平均年収も微減しています(271.5万円→271.0万円)。

 繰り返しますが,今回お見せしたのは,2007年までのトレンドです。直近の2012年データではどうなっているか。全国のヤングハローワークが冒頭のような状況になっているとしたら,正規雇用の崩壊現象がはっきりと可視化されることになるでしょう。

 『就業構造基本調査』の分析ばかりが続いて恐縮ですが,既公表のデータを詰めておき,2012年調査のデータと直ちに接合させよう,という意図を持っています。