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2013年6月9日日曜日

年層別・事業所の規模別にみたワープア率

 ワーキングプア。すっかり知れ渡った言葉ですが,今のわが国にあっては,就業者の中にこうした「働く貧困層」が確実に増えてきています。

 2007年の総務省『就業構造基本調査』によると,15歳以上の有業者6,598万人のうち,年収200万円未満の者は2,227万人となっています。働く人間の3人に1人がワープアです。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm

 これは,家計の補助的なパートやバイト等も含めた数値ですが,正規就業者に限定すると,ワープア率は10.4%となります。10人に1人。しかるに,正規就業者(正社員)といっても,いろいろな人がいます。言わずもがな,属性条件によって,ワープア率は大きく変異します。その様相を可視化してみましょう。

 第1の分類軸は年齢です。給与が安い若年層ほど,ワープアは多いことでしょう。あと一つ,勤めている事業所の規模という軸を据えてみます。大企業,中小企業というような企業規模も,労働者の収入を規定する重要なファクターです。

 私は,この2変数を組み合わせた属性ごとに,正規就業者のワープア出現率を計算しました。結果を,等高線図の形で表現します。色の違いに依拠して,ワープア率の大よその水準を読み取ってください。


 図の左上に高率ゾーンがありますね。紫色は30%台,水色は40%台,黒色は50%(半分)超です。零細企業の若年労働者では,正規雇用であってもワープアが多いようです。しかし全体的にみると,青色(10%未満)や赤色(10%台)というような安泰色が幅を利かせています。

 ですが,派遣社員になると,図の模様が激変します。正社員とほぼ同じ仕事をする「ハケン」の方々ですが,ワープアはどれほどいるのでしょう。上図と同様,年齢階層×企業規模のマトリクスでみてみましょう。


 言葉がよくないですが,膿だらけです。多くの属性グループにおいて,ワープア率が50%を超えています。全職種への派遣労働の解禁により,この種の雇用形態が増えてきています。やる仕事は正社員とほぼ同じ。にもかかわらず。上の2図の模様の違うこと。「雇用の崩壊」とは,こういうことなのかもしれません。

 間もなく公表される2012年の『就業構造基本調査』のデータを使って,同じ図を描いたらどうなることか。もしかすると,真黒になっているかもしれません。最初の正規就業者の図でも,黒色の領分が広がっている可能性が高いと思われます。

 転職希望率などを同じ図式で表現してみるのもまた一興。『就業基本調査』は宝の山です。e-Sataにアップされている基礎集計表をみると,こういうことまで分かるのか,と気づかされることが多々あります。ああ,2012年データの公表が待ち遠しい。