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2013年6月17日月曜日

幼子がいる男性の家事・育児時間の都道府県比較

 6月12日の日経新聞Web版に,「家庭科で保育や介護 男性も家事当たり前に」と題する記事が載っています。私の頃は,男子は技術,女子は家庭というようにパッカリ別れていましたが,現在では,中高の家庭科は男女共修になっています。
http://www.nikkei.com/article/DGXBZO56074270R10C13A6WZ8000/

 最近では,「調理や裁縫など家事だけでなく,保育や介護など」も内容に盛り込まれているとのこと。「より実践的な授業内容にすることで,家事分担などができる男子を育て,少子化対策などに役立てる狙い」があるそうです。

 何とも結構なことだと思います,男女共同参画社会の実現にも大きく寄与することでしょう。男性の側にしても,仕事一色の生活が是正され,生活構造の均衡がとれることにもつながります。

 しかし現実問題として,わが国の男性の家事・育児時間が極端に短いことはよく知られています。この点についてはメディア等で頻繁に報道されていますが,都道府県別にみるとどうでしょう。今回は,細かい県別のデータを提示することにより,関係者の方々の参考に供しようと思います。

 総務省『社会生活基本調査』から,1日の主要な生活行動の平均時間を,対象者のライフステージ別に知ることができます。私は,子育て期にある男性のうち,末子が「就学前」という者に注目することとしました。小学校に上がる前の幼子がいる男性です。*一人親は除きます。
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2011/index.htm

 最新の2011年調査の結果によると,幼子がいる男性の1日の平均家事時間は11分,平均育児時間は37分となっています。足して48分。・・・平日や休日をひっくるめた「週全体」の数値ですが,短いですねえ。対して,同じく幼子がいる女性のほうは407分,男性の8.5倍です。

 男性の家事・育児時間は短く,多くが女性に担われている(押し付けられている)ようです。これは全国のデータですが,今回の主眼は,様相を地域別に観察することです。

 下表は,幼子がいる男女の家事・育児時間の平均一覧表です(1日あたり)。男性については,47都道府県中の順位も記しました。また,男性の平均時間が女性のどれほどに相当するかという,相対倍率も計算してみました。


 黄色は最高値,青色は最低値です。男性の1日あたりの家事・育児時間は,埼玉の71分から福島の30分まで,倍以上の開きがあります。2011年の統計ですので,福島については,震災の影響があるのかもしれません。

 数値を赤色にしているのは上位5位ですが,東北の県が多いですね。一方,近畿圏の箇所をみると,30分台の数値が目につきます。

 幼子がいる男性の家事・育児時間を地図化してみましょう。10分刻みで各県を塗り分けた地図をつくってみました。色が濃いほど,平均時間が長いことを示唆します。流行りの言葉でいうと,イクメン県です。


 男性の1日あたり平均時間が1時間を超える「イクメン県」は,岩手,宮城,秋田,山形,埼玉,島根,広島,徳島,そして大分です。地方で長く都市で短い,というような単純な構造ではありませんが,イクメン県は東北や中国・四国に多いようです。

 ただ,近畿圏が薄い色に染まっているのが気がかりです。上の表からも分かるように,近畿の府県では,「男性/女性」の相対倍率も低くなっています。和歌山でいうと,男性31分,女性386分であり,前者は後者の8%ほどでしかありません。

 この相対倍率も加味して,各県の性格づけをしてみましょう。横軸に「男性/女性」の倍率,縦軸に男性の平均家事・育児時間をとったマトリクス上に,47都道府県をプロットしてみました。絶対水準と相対水準(対女性)の2軸において,各県の状況を評価しようという仕掛けです。点線は,全国値を意味します。


 右上に位置するのはイクメン県であり,左下の暗雲立ち込めるゾーンにあるのは,それとは隔たった県です。平均時間が最も長いのは埼玉ですが,対女性の相対水準も勘案すると,イクメン県No1は島根でしょうか。

 図の右上にある県でどういうことがなされているかをみると,埼玉県では,育児初心者の父親向けの育児ヒント集「イクメンの素」を配布している模様です。図版が多く,なかなか分かりやすい。
http://www.pref.saitama.lg.jp/site/ikumen/

 島根県では「子育てしやすい職場づくり推進計画」が策定されており,「男性の育児休業等の取得促進」,「男女共同参画の推進」というような事項が盛られています。2014年度の数値目標として「男性の育児休業等取得率50%」というものもあり。スゴイですね。
http://www.pref.shimane.lg.jp/kyoikuiinkai/iinkai/syokuba/keikaku.html

 こういう実践の所産であるといえましょう。ただ島根の場合,三世代家族が多く,親(子からすれば祖父母)から,家事や育児の手ほどきを受けやすい,という条件があるのかもしれません。こういう社会経済特性にも目を向ける必要かあるかと思います。

 実践を行うにあたっては,自らの立ち位置を絶えず点検することが大切であると考えます。目下重視されている,男性の家事・育児参画の推進施策を実施するに際して,今回のデータが,各県の関係者諸氏の参考に与するところがあれば幸いです。