幼子がいる母親の就業率(専業主婦率)については,これまで何度か書いてきましたが,観察される値は地域によって大きく違います。
私は,2010年の『国勢調査』のデータを使って,首都圏(1都3県)の243市区町村の専業主婦率を計算してみました。ここにて,その地図をご覧に入れようと思います。
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/index.htm
私が住んでいる多摩市を例にして,計算の方法を説明しましょう。2010年10月時点の当市でみると,末子が0歳である核家族世帯の数は1,001世帯です。ここでいう核家族世帯とは,夫婦がいる世帯であり,母子世帯,父子世帯は除きます。
このうち,母親が就業している世帯(パート,バイト等も含む)は336世帯。よって,母親が就業していない世帯,すなわち専業主婦世帯の比率は,(1,001-336)/1,001 ≒ 66.4%となります。この値をもって,乳児がいる母親の専業主婦率とみなすことにします。
これは,0歳の乳児を抱える母親の専業主婦率ですが,末子の年齢によって比率がどう変化するかをみると,下表のようになります。
末子の年齢が上がるにつれて,母親の専業主婦率は減じていきます。子どもが大きくなるにつれて,手がかからなくなるためでしょう。
私はこのやり方にて,首都圏243市区町村の母親の専業主婦率を明らかにしました。最初に,0~2歳の乳幼児がいる母親の専業主婦率地図をみていただきましょう。塗り分けの区分は,他の年齢層でみた分布も勘案して,40%未満,40%台,50%台,および60%以上としています。
真っ赤ですね。子が乳幼児の段階でみると,ほぼすべての地域の専業主婦率が50%,半分を越えています。うち多くが6割以上。地域差がもっとあるかなと思っていましたが,ここまで一様であるとは驚きです。
しかるに,子の年齢が上がるにつれて,専業主婦率は下がりますから,地図の色が全体的に薄くなってきます。また,地域間のバラつきも大きくなってきます。幼児がいる母親と,小学校に上がった児童がいる母親の専業主婦率地図をみてみましょう。
地図上の濃い色がどんどん少なくなってきますね。子が小学校に上がった後になると,専業主婦率が4割を切る地域(白色)が,全体の3分の1を占めるようになります。
しかし,この段階でも率が50%,60%を超える地域があり,多くが都心や政令指定都市内の区です。6割を超えるのは,東京・港区(61.3%),東京・世田谷区(62.0%),東京・武蔵野市(61.0%),横浜市青葉区(61.8%),川崎市宮前区(61.1%),そして川崎市麻生区(61.6%)なり。
なお,地域差という点でいうと,子が3~5歳の幼児段階で最も大きいようです。ご覧のように,4つの色がほぼ満遍なく存在する形になっていますから。この段階での,都内や政令指定都市での濃い色が気になりますねえ。おそらく,各地域の保育所供給量のような指標と強く相関していることでしょう。この点については,3月26日の記事をご覧ください。
ただ,上の地図は2010年10月時点のものです。より近況でみれば,図柄は大きく変わっていることと思われます。待機児童ゼロを達成した横浜市については,とりわけそうでしょう。2015年の『国勢調査』から描かれる,同市内の各区の色がどうなっているか見ものです。
今では,『国勢調査』などの官庁データをネット上で収集することができ,かつ,MANDARAのような地図作成ソフトが同じくネット上で無償提供されています。おかげで,私のような人間でも,今回のような作品を簡単につくることができます。感謝です。今後も,この恩恵を活用して,情報発信に努めていきたいと思います。