2012年の文科省『学校基本調査』によると,同年3月の大学院博士課程修了生は16,260人です。このうち,単位取得満期退学者は4,488人。したがって,学位取得者は差し引き11,772人ということになります。修了生中の学位取得者比率は72.4%なり。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
現在では,修了生の4人に3人が博士号学位取得者です。昔に比べて課程博士の取得が容易になったといわれますが,とりわけ文系の専攻ではそうでしょう。下の表は,10の専攻系列ごとに,上記の学位取得者率を計算したものです。1990(平成2)年と2012年の数値を比べてみます。
この20年間で,学位取得者率は65.2%から72.4%へと7.2ポイント伸びましたが,伸び幅は専攻によって違っています。倍率にすると,人文科学系,社会科学系,そして私が出た教育系では,学位取得者率が倍以上になっています。人文系では,1990年ではわずか15.8%でしたが,現在では34.4%,3人に1人にまで増えています。
最近では,満期退学後1年くらいまでは課程博士の枠内で審査してくれる大学も多いので,そうした退学組も含めれば,たとえ文系といえども,院生が学位をゲットできる確率はもっと高くなることでしょう。
文系の博士号は,以前は研究者の集大成とみられていましたが,今では研究者の基礎ライセンスのような位置づけに変わってきていいますしね。私が知るある先生(教育系)は,「今の博論なんて僕らの頃の修論,いやそれ以下だよ」とおっしゃっていました・・・。
それはさておき,上記の専攻系列の下には,細かい下位の専攻分野があります。人文系は文学,史学,哲学などを内包し,社会系には法学,経済学,社会学などの分野が含まれています。
私は,修了生数が50人を越える34の専攻分野について,2012年春の修了生の学位取得者比率を出してみました。下図は,高い順に並べたものです。
理高文低になっているのは予想通りですが,やっぱり人文系の3分野(文学,史学,哲学)はまだ低いですねえ。最低は哲学で,現在でも24.1%です。哲学の博論なんて難しそうだな。
まあこれでも,以前に比したら値は高まっています。たとえば文学は,1990年の学位取得者率は9.2%でしたが,今では上図の通り26.9%にまで増えているわけです。
今回は,当局の原資料をもとに,博士課程修了生の学位取得者比率を専攻別に明らかにしてみました。最近,「専攻&博士取得率」というような検索ワードでブログにきてくださる方が多いので,こういうデータを出しておこう,と思った次第です。
なお,国公私別や性別の学位取得率も計算することができます。気が向いたときに,ツイッターにでも載せようかと思います。国公立と私立では,どっちが学位とりやすいのかなあ。ジェンダー差とかもあるんかなあ。
追記:国立国会図書館さま。国内一の規模を誇る貴図書館において,文科省『学校基本調査』のバックナンバーが所蔵されていないことに驚き(憤り)を禁じ得ません。教育分野の基幹統計です。『学校教員統計調査』も然り。全巻揃えていただきたいと思います。*8/30に行った時に配られた利用者アンケートに書いたことママ。