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2014年3月6日木曜日

都内49市区の子どもの総合診断②

 コマーシャルが入りましたが,前々回の続きといきましょう。A)発育,B)能力,C)逸脱の側面を測る6指標を総動員した,都内49市区の子どもの総合診断です。ここでいう子どもとは,公立小学校の児童をいいます。

 各指標の順位をもとにした,5段階の相対スコア表を再掲します。1~9位は5点,10~19位は4点,20~30位は3点,31~40位は2点,41~49位は1点,としたものです。


 この6つのスコアを均した値をもって,各市区の子どもの状態の良好度を測る一元尺度といたしましょう。

 その際,値が高いほど好ましいという意味を持たせるため,AとCの4指標のスコアは反転させます。5→1,4→2,2→4,1→5,というように置き換えます。この場合,千代田区のスコアは,虫歯は5,肥満は5,学力は5,体力は3,いじめは2,不登校は5,となります。よって,この区の良好度スコアは,これらの平均をとって4.17となる次第です。

 ほう。5段階のスコア平均が4を超えるというのは,かなり高いと判断されます。他の市区はどうでしょう。同じやり方で,子どもの良好度スコアを出し,ランキング表にすると以下のようになります。多角的な観点を合成した,総合スコアです。


 いかがでしょう。最高は世田谷区,最低は足立区です。スコアが4を超える地域はマークをしましたが,都心の富裕そうな区が多いですねえ。

 各市区の子どものすがたは,もしかしたら住民の経済的富裕度と相関しているのでは・・・。こんな疑いが出てきます。私は,住民一人あたり都民税・区民税課税額との相関をとってみました。2011年度の数値であり,ソースは『東京都税務統計年報』です。


 撹乱はありますが,住民の富裕度が高い市区ほど,子どもの良好度スコアが高い傾向です。相関係数は+0.570であり,1%水準で有意と判定されます。なお,港区,千代田区,および渋谷区を「外れ値」として除くと,相関係数は+0.735にアップします。

 今回のスコアは,学力のような能力面だけではなく,病気や問題行動の指標も組み込んだ総合スコアですが,そうしたトータルな子どものすがたとて,社会階層の要因によって少なからず規定されていることが知られます。

 教育社会学では,学力の社会的規定性の問題に関心が向けられますが,子どもの育ちの他の面にもスポットを当てる必要がありそうです。