つい先ほど,2014年度の『学校基本調査』の速報結果が公表されました。ホカホカの統計表を眺めていると,やりたいことが次から次へと出てきますが,まずは基本的な分析からいきましょう。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
分析第1弾は,専攻別の大学入学者数の変化です。最近,理系人気が高まっているといいますが(理高文低),それは大学入学者数にも表れているでしょうか。また,性別でみるとどうでしょう。リケジョは増えているのか。
上記の速報結果から分かる,今年春の大学入学者数は約60万8千人です。10年前の2004年の59万8千人よりもちょっと増えています。この変化を専攻別にみると,表1のようです。
入学者の増減は,専攻によってまちまちです。右欄には,2014年/2004年の倍率を掲げましたが,人文科学,社会科学,理学,工学といった伝統的な専攻では,入学者が減少をみています。対して増えているのは,保健や学際的な専攻(その他)です。
医療や看護の保健系は,この10年間で入学者が1.6倍に増えています。スゴイっすね。需要を見越して,看護関連の学科がたくさん新設されたことによりますが,受験生の側も,就職の有利さのような計算をしてのことでしょう。
次に,男子と女子に分けて変化を観察してみます。はて,リケジョは増えているのか。2014年/2004年の倍率を棒グラフにしてみました。
点線(100)のラインよりも高い場合,入学者が増えていることを示唆しますが,工学,農学,保健の女子入学者の増が目を引きます。工学と農学は,男子の入学者が減っていることと対照的です。なるほど,この10年間でみて,確かにリケジョは増えているようです。
しかるに,今みたのは10年前と比した増加倍率であり,絶対量でみたらリケジョはまだまだ少ないことでしょう。最後に,入学者全体に占める女子比もみておきましょう。2004年と2014年の専攻別のパーセンテージを整理しました。
2014年の理系専攻の数値を赤字にしましたが,10年間で微増というところですね。でも農学なんかは,39.8%から45.1%へと5ポイント以上増えてる。あと数年もすれば,半分に達すると見込まれます。結構なことです。
ただ,理学や工学の女子比はまだまだ低い。工学の女子比はわずか14.0%です。新潟大学の工学部は,イケメンの写真入りの入学パンフの女子高生に配布しているそうですが,現場もそれなりに危機意識は持っているようです。
なお,わが国の女子高生の理系志向が他国に比して低いことは,先日公表された,国立青少年教育機構の『高校生の科学等に関する意識調査報告書-日本・米国・中国・韓国の比較-』から知ることができます。
http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/88/
私もだいぶ前に,PISA2006のローデータを使って国際比較をしたことがあります。ご覧いただければ幸いです。
http://tmaita77.blogspot.jp/2012/11/blog-post_8.html
次回は,大学進学率の分析をしようかしらん。2014年春の大学進学率は51.5%であり,昨年の49.9%よりもアップしました。2010年以降低下を続けていた大学進学率が上昇に転じたわけです。でもこれは全体の傾向であり,性差,地域差という視点を据えるとどうか。公表された統計表から計算可能ですので,作業はしてみようと思っています。