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2014年10月21日火曜日

有休消化率の国際比較

 企業は,半年以上勤務した労働者に年次有給休暇を与えねばなりません(労基法第39条2項)。労基法は道交法と同じくらい守られないといいますが,さすがにこの規定は遵守されていることと思います。

 しかし,与えられた休暇を使うかどうかは労働者の任意であり,わが国にあっては,有休の消化率が高くないことはよく知られています。政府も休暇取得に向けた取組をいろいろしてきましたが,埒が明かないので,有休の消化を企業に義務づけることも検討しているそうです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141018-00000006-wordleaf-pol

 私は上記の記事を見て,有休消化率の国際比較をしようとデータを探したところ,オンライン旅行会社のエクスぺディア社がこの手の調査を毎年実施していることを知りました。最新の2013年調査のデータでグラフをつくり,ツイッターで発信したところ,見てくださる方が多いようなので,ブログにも載せておこうと思います。

 2013年8~9月に行われた同社の調査によると,日本の18歳以上の有職男女の年間有休付与日数は,平均して年間18日だそうです。消化日数の平均は7日。よって,わが国の有休消化率は38.9%となります。
http://www.expedia.co.jp/p/corporate/holiday-deprivation2013

 与えられた年次有給休暇の4割ほどしか使われない。日本はこういう社会ですが,他国はどうなのでしょう。上記のサイトからデータを収集し,表にまとめてみました。


 ブラジル,フランス,香港では有休消化率が100%です。労働者が,与えられた有休を漏れなくバッチリ消化する社会なり。他の国も,8割,7割を超えています。消化率が半分にも満たない社会というのは,世界広しといえど日本だけのようです。

 その一方で,日本の労働者は有休消化日数に対する不満はさほど持っていません。51.0%という不満率は,下から3番目です。フランスなんかは,年間30日フルに使っても,まだ不満だと感じている者が9割にもなります。

 日本の労働者の社畜ぶりをうかがわせるデータですが,これを視覚化してみましょう。横軸に有休消化率,縦軸に有休消化日数への不満率をとった座標上に,表の13の社会を位置づけてみました。昨日,ツイッターで発信した図もこれです。点線は,13か国の平均値を意味します。


 日本の外れっぷりが見事なこと。有休消化率がダントツで低く,かつそれに対する不満も高くない「社畜」ゾーンに位置しています。その対極にあるのはフランスです。

 国民性の違いといってしまえばそれまでですが,それで片付けてしまえる問題ではなく,わが国の「働き方」の変革を促す警告と受け取るべきでしょう。冒頭のニュース記事によると,「ヨーロッパの企業では,労働者が長期休暇を取ることを前提に,担当者間で常に仕事内容を共有し,誰が休んでも仕事が回るよう,普段から上司が仕事の配分をうまく管理している」のだそうです(黒田祥子教授)。

 これを最もよく具現しているのがフランスで,それとは最も程遠いのが日本。他の社会は,この両極の中間に位置している。上図が示しているのは,こういうことではないでしょうか。

 休暇の取得の強制だけでは,「同僚に迷惑がかかる」「後が大変」・・・といった不安がぬぐえず,後ろ髪を引かれる思いで休暇に入る労働者が増えるだけでしょう。これにプラスして,働き方の変革もが伴わねばならない。

 「バカンスを楽しむ国へ変わっていくためには,制度だけでなく職場の働き方も合わせて変えていく必要がある」。黒田教授の提言に賛意を表したいと思います。