本ブログの読者には,教員採用試験を受験予定の方もおられると思いますが,教員採用試験では教職教養が必須科目です。字のごとく,教職に就くに際して必要不可欠な教養があるかを試されます。
内容は,教育原理,教育史,教育法規,そして教育心理の4領域からなりますが,3番目の法規にウエイトを置いている自治体が多いようです。とくに最近,教員の不祥事が続発していることから,地公法で定められている公務員の服務規定についてよく問われます。
必要があって,2010~14年度の47都道府県の過去問を分析したところ,10の県で5回中5回(毎年),13の県で5回中4回出題されています。前者は必出県,後者は頻出県です。これら2タイプの分布を地図にすると,以下のようです。
東京では必出,私の郷里の鹿児島では頻出です。想像ですが,以前に比してこの地図の色は濃くなってきているのではないでしょうか。
さて,公務員たる教員が従うべき服務は,地方公務員法にて規定されています。職務上の義務が3つ,身分上の義務が5つです。六法をお持ちの方は当該法規の箇所を開いてみてください。
<職務上の義務>
①服務の宣誓義務(地公法31条)
②法令等及び上司の職務上の命令に従う義務(32条)
③職務に専念する義務(35条)
<身分上の義務>
④信用失墜行為の禁止(33条)
⑤秘密を守る義務(34条)
⑥政治的行為の制限(36条)
⑦争議行為等の禁止(37条)
⑧営利企業等の従事制限(38)
③は職務専念義務です。勤務時間中にツイッターなどをすることは,この規定に抵触します。昨今,新聞紙上をにぎわせているわいせつ行為などは,④に相当します。⑤は,いわゆる守秘義務であり,職を退いた後も適用される規定です。
⑥は試験で最頻出。一般の地方公務員は自分が勤務する自治体の外で政治的行為ができますが,教育公務員の場合,国公法が適用されますので,政治的行為の制限の範囲は全国に及びます。
⑧も頻出。任命権者の許可を得ないバイト(原稿書き,講演・・・)は不可。だいぶ前,ゴーストライターの副業をして荒稼ぎした教員がいましたが,これは完全にアウトです。
私は後期,杏林大学の教職課程で教育社会学を担当していますが,この科目は「教育に関する社会的,制度的又は経営的事項」の科目に該当しますので,こうした法規の話もすることにしています。学生さんには,ポケットでもいいので,最新の六法を購入するよう勧めています。
だいたい1400円くらい。年に一回の買い物としては,高くはないではありませんか。こういうところには,きちんと投資をしましょう。