70年代の名曲集をかけていたら,久保田早紀さんの「異邦人」が流れました。79年に大ヒットした曲ですが,36年の時を経た今になって聴いても実にいい。一昨日から,すっかり聴き入っています。
神秘的でエキゾチックな曲です。久保田さんも,そんな雰囲気を醸し出しています。父上が中東のイランから買ってきたアルバムを,幼少期に繰り返し聴いたことが,異国情緒あふれる音楽感を養うことに貢献したのだそうです。
聴くだけでなく,歌いたいという欲求にかられてしまいました。となるとカラオケですが,仲間内で行くのでは,同じ曲を何度も選べません。そこで,いわゆる一人カラオケとなるわけですが,今の若い人で,ヒトカラに行く人が結構いるみたいです。*藤本耕平『つくし世代』光文社新書,2015年,75~78ページ。
私は学生の頃に何度か行ったことありますが,友人とのつながりの多さをステータスと考える今の若者の間で,ヒトカラが流行っているとは,ちょっと驚きました。まあ,友達とSNSで常につながっている(がんじがらめにされている)からこそ,たまには一人になりたい,ということなのかもしれませんね。
ちなみに,ヒトカラにいくときは,歌う曲を前もってメモっていくことが重要なのだそうです(76ページ)。同伴者が歌っている間に曲を選ぶ時間がないからです。それに,一人であの分厚い冊子をめくるというのもちょっと空しい・・・。
カラオケに限らず,一人で食事をする,映画に行く,呑みに行くなどの行為を総称して「おひとりさま」というそうですが,大学生の「おひとりさま」行動の経験率が載っている調査データを見つけました。東京都広告協会の「大学生と友人関係の意識調査」(2012年度)です。
http://www.tokyo-ad.or.jp/activity/seminar/uni-sent.html
大学生に対し,10の「おひとりさま」行動の経験率を尋ねています。それぞれについて,「ある」と答えた学生の割合をグラフにしてみました。ジェンダー差もみるため,男女別にしています。
一人牛丼やラーメンは,男子学生なら8割くらいが経験済みです。そうでしょうね。二郎みたいに,連れ立っての来店をあまり歓迎しない店もありますし。
一人学食の経験率は,男子が54.5%,女子が32.8%です。これくらいいるとしたら,学食に「ぼっち席」を設けることも必要かもしれません。問題の一人カラオケは,男子の30.5%,女子の23.3%が「ある」と答えています。だいたい3割弱。これが,現代大学生のヒトカラの経験率です。
それより右の旅行,呑み,焼肉,遊園地は,経験率はもっと低くなっています。一人での旅行や呑みは,カラオケよりも低いんだな。一人旅行,いいじゃないすか。呑みにしても,ビールジョッキを傾けながら海外旅行記などを読むのは,私の楽しみの一つです。
なお私は,上記の10の「おひとりさま」行動を全てやったことがあります。いずれも,学生時代にです。一人での牛丼,ラーメン,ファミレス,学食,呑みなんてのは,しょっちゅうでした(今も)。映画は,95年上映のジブリ「耳をすませば」を一人で観に行ったのを覚えています。言わずもがな,周りはカップルだらけ!
焼肉は,博士論文の審査がパスした日に行きました(2005年の2月上旬)。もう気分最高で,ガツガツ食って呑み,1万円くらい使ったかな。遊園地は,学部2年のとき,一人で豊島園に行きました。これは,ジェットコースターへの耐性をつけるためです。
これから先,人口構成の上で単身化が進行することは明白ですが,人々の意向や行動の面の「おひとりさま」化が進むともみられます。上記の調査は2012年度のものですが,5年のスパンが開く2017年度あたりに,同じ調査を再度やってほしいと思います。経験率のアップがみられるかが,注目ポイントです。データで実証されるか。
意識や行動の「おひとりさま」化は,重要な社会変化といえます。それは,マーケティングのあり方を大きく揺さぶることになるでしょう。聞くところによると,ヒトカラへの需要の高まりを見越して,最近では一人客専門のカラオケ店があるそうですが,この種の「おひとりさま」ビジネスは,今後増えていくことになるでしょうか。
今ふと思ったのですが,ラーメン二郎が爆発的な人気を博しているのは,味のよさに加えて,一人での来店を想定したシステムになっているからかもしれません。ほとんどの店舗がカウンター・オンリーですし。
今後の動きが注目されます。社会は変わる。だから社会学は面白い。さて,その一人専門店とやらを近場で探し出し,上記の名曲を歌いに行くことにいたしましょう。