人間は社会の中で一定の地位を占め,それに応じた役割を遂行していますが,地域のメルクマールとして最も重要なのは職業でしょう。
これまで本ブログでは,職業別の年収や労働時間等を比較してきましたが,これらを切り離して観察すると,「給与が高くても労働時間長いし・・・」「労働時間は短くても給与がね・・・」といった声が出てきます。
そこで今回は,これらを同時に観察することとし,ある尺度を出してみます。タイトルにあるような時間給の算出です。年収と年間労働時間の推定値を出し,前者を後者で除した値です。1時間あたりの給与はどれほどか。労働時間を考慮した給与比較ですが,このような試みはあまりないのではないでしょうか。
2014年の厚労省「賃金構造基本統計調査」に当たって,129の職業について,以下の数値を収集しました。短時間労働者を除く一般労働者のデータです。出所は,下記サイトの表1です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001054146&cycleCode=0&requestSender=estat
a:決まって支給する給与月額 (2014年6月分)
b:年間賞与額 (2013年1~12月分)
c:月あたりの労働時間
aには残業代等,cには超過労働時間も含まれます。月収(a)を12倍した値に年間賞与(b)を足して年収,cの月あたり労働時間を12倍して年間労働時間を出し,前者を後者で除せば,1時間あたりの収入額が出てきます。ラフな試算値ですが,職業別に比べてみましょう。
手始めに,7つの職業のデータをみていただきましょう。
医師の時間給は,{(892.7千円×12)+827.9千円)}/(174×12)=5527円 と算出されます。時給5500円,1日8時間労働とすると日給は4.4万円。大学教授は5736円,弁護士は4850円なり。トップクラスの職業の時間給の試算結果です。
一方,下の4職業の時給は低くなっています。保育士と介護員は1500円,バス運転手と自動車整備工は1800円ほど。「時給1500円なんていいじゃん」と思われるかもしれませんが,これは短時間労働者を含まない一般労働者(≒正社員)のデータです。分子の収入には,ボーナス等も含まれています。
それでは,129の全職業の時給(円)をみていただきましょう。下表は,値が高い順に並べたランキング表です。
トップはダントツでパイロットです。時給1万円! その次が大学教授,その後に医師,弁護士と続きます。記者,高校教員,電車運転士なども上位に位置していますね。
目ぼしい職業には黄色マークをつけましたが,社会的需要が著しく高まっている保育士や介護職員は低い位置にあります。それと,バス運転手とタクシー運転手の位置が大きく異なることも驚きです。タクシー運転手は,長時間労働が多いため,時間給にすると低くなるのでしょう。
労働時間を考慮した,職業別の収入比較の試みです。資料として,ランキング表を掲載しておこうと思います。