http://www.kyoiku-kensyu.metro.tokyo.jp/08ojt/fukyu/index.html
時間のとれる夏休みに外部の話を聞こうということで,私にお声がかかったのですが,「統計でみる東京の子どもたち(学力・体力)」という主題で講演してほしい,という依頼でした。前に日経デュアルに寄稿した「子どもの学力,体力,富裕度の相関関係」という文章をみて,とのことです。現場の先生も,見てくださっているのだな。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=3033
私は,提案のあった学力・体力に,生きるための最も重要な要素である「健康」も加え,学力,体力,健康状態の3本柱で,東京の子どものすがたをとらえようと考えました。写真のプログラムのタイトル副題は「学力・体力・健康状態」となっていますが,お話した順序はこの反対です。生きるための条件として必須の健康状態(土台)から入り,徐々に上に上がって行きました。
パワポで最初にお見せした,全体の見取り図のスライドを掲げます。
本ブログや日経デュアルをご覧いただいている方なら,各項目の内容がどういうものかは想像がつくかと思います。格差社会化が進んでいる今日の状況にかんがみ,貧困と健康・体力・学力の相関関係の提示に力点を置きました。
現場の先生方にすれば痛快な情報だったようで,都内23区の肥満・虫歯・体力・学力地図などは,みなさん食い入るようにスライドを見ていらっしゃいました。「日ごろ何となく思っていたことが,まさに可視化されている」。終了後,こういう感想を多数いただきました。私としても,「ミッション・コンプリート!」という感じです。お役所の資料に,こんな赤裸々な地図はまず載らないでしょうし。
3-③の「学力を推計する」では,年収・高学歴率・教育扶助率の3指標から,都内23区の小学生の算数正答率を予測し,実測値と照合しました。結果,足立区は実測値が期待値よりも高い「がんばっている」区と判明したのですが,同区の中学校の先生が「こういう見方は面白い。日ごろの苦労が報われた気がします」とおっしゃってました。こちらもうれしい。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=5305
質疑応答の時間で,ある高校の先生より質問がありました。子どもの健康格差の是正に際しては,当人に対する指導だけでなく,保護者に対する保健指導(学校保健安全法9条)も必要である,という私の提言に関連してです。
「ウチの高校は家庭に問題がある生徒が多く,保護者会に親が出てこない,個別指導の呼び出しにもまず応じない。こういう場合は,どうずればいいのか?」
その時は,私は答えに窮したのですが,今考えると,「そういう場合は,こちらから出向くしかない。いわゆる訪問指導というのはどうか」という答えがあったかなと思います。むろん,教員だけが担うのではなく,現在導入が検討されている外部組織人材「チーム学校」のメンバーに委ねてもよいでしょう。その中には,相応の知識を持った人材も含まれるでしょうから。
終了後の総括で,教育庁の先生が言われていましたが,学校だけで丸抱えできる時代は終わっています。かといって,家庭に丸戻しするわけにもいかない。これら2つの主体の間で子どもを押しつけ合うのではなく,両者をとりまく外部社会によるサポートが要請されるところです。
謝辞:貴重な機会を与えていただき,ありがとうございました。お声かけいただいた,都教育庁の安岡先生,江戸川区立葛西第二中学校の松島先生をはじめ,2時間にもわたり,私の拙い話を聞いてくださった先生方に感謝の意を表します。
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講演が終わった後,何人かの先生と立ち話をしたり,お昼を一緒に食べたりしたのですが,そこで聞いた現場の「こぼれ話」です。①については,ちぎれるほど首を縦に振りました。
①:とにかく無駄な調査が多い。国や教育委員会からガンガン調査票が送られ,回答を求められる。中には,「これ,こないだ答えただろ」と思うものも多数。費用・労力の無駄・重複を省けないものか。
②:教員は,ストレスのあまりパチンコにハマる人が多い。職業別のパチンコ実施率のグラフを見せていただいたが,教員は平均値は低いだろうが,常軌を逸してのめり込んでいる者もいる。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2015/08/post-3838.php
③:外国籍の子が増えて,対応に苦慮している。宗教の違いから,給食のメニューにも気を配らないといけない。
④:昼食をカップめんや菓子パンで済ます大学生が多いという話だが,教員でもそういう人が結構いる。
以上