今年初めの日経デュアル記事にて,共働き夫婦の夫の家事分担率の都道府県比較をしたのですが,国際比較ができないものかと,前々から思っていました。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=4493
ISSP(国際社会調査プログラム)の「家族とジェンダーに関する調査・第4回」(2012年)にて,対象者に自分とパートナーの家事時間を聞いているではありませんか。ローデータがありますので,個人単位の分布と平均値を出すことができます。後述のようにサンプルが多くとれないのですが,試算結果としてご報告します。
http://www.issp.org/index.php
この調査では,週当たりの家事時間と家族ケア時間を対象者に尋ねると同時に(Q16a,16b),パートナーのそれも問うています(Q17a,17b)。私は,自分もパートナーも有業である,25~54歳の夫の回答に注目しました。生産年齢の,共働き夫婦の夫に対象を絞った次第です。
日本の場合,上記の問い(Q16a~17b)の全てに有効回答を寄せた夫は,58人です。条件を細かく設定したのでサンプルが少なくなりましたが,この58人について,家事・家族ケア分担率を計算してみました。当人の時間とパートナーの時間の合算に占める,当人の時間の比重です。
他の主要国(米・英・西独・仏・瑞典)についても,同じ条件の夫を取り出し,家事・家族ケア分担率の分布をとってみました。サンプル数は,米が67,英が57,西独が107,仏が149,瑞典が98です。お隣の韓国は,サンプル数が50を割りましたので,分析から除いています。
少ないケース数ではありますが,共働き夫婦の夫の家事・家族ケア分担率(以下,家事分担率)の分布は,下図のようになっています。
他国に比して,日本は家事分担率が低い人が多いようです。最も多いのは,10%台となっています(赤色)。
しかし他国はそうではなく,米は40%台,英独は30%台,仏瑞は50%以上,つまり半分以上自分がしている旦那さんが最多です。
以上は分布ですが平均値(average)を出すと,日本の58人は24.3%です。アメリカは40.4%,イギリスは41.1%,西ドイツは34.9%,フランスは42.5%,スウェーデンは43.5%となります。DUAL夫婦の夫の家事分担率は,日本では2割ちょいですが,欧米では4割ほどが普通のようです。違うものですねえ。
これら6か国以外の平均値も出してみました。下図は,値が高い順に並べたランキング図です。分析対象のサンプル数が50を超える国に限っていることを申し添えます。
わが国の24.3%は,ダントツの最下位です。夫の分担率が4割という国が多く,最高の中国では48.8%とほぼ半分です。この大国では,夫婦とも同じくらいの割合で家事・家族ケアを分担するのが普通のようです。
中国が北欧を凌駕しているというのは,初めて知りました。女性のフルタイム就業率が高いので,夫婦で公平に分担しようということなのでしょう。中国では,基本的に料理は夫がするのだそうです。
http://www.news-postseven.com/archives/20131101_222679.html
今回の統計は,妻の就業形態の差を反映しているともいえます。しかし,パート就業の妻が多いことを差し引いても,日本の共働き夫婦の夫の分担率は,低いと言わざるをえません。
なぜ日本の夫は家事をしないかについては諸説がありますが,私は,男女の家事スキル格差という点に関心を持ちます。夫に手伝う意思があっても,スキルが低く戦力にならず,妻が一手に担うことになる。これは,学校における家庭科教育にかかわる問題でもあります。
中高における家庭科の男女共修実施前の世代と後の世代でどう違うか。夫の年齢別の分析もしたいところですが,サンプルがとれないので,それは叶いません。国内の『社会生活基本調査』でも,そこまではできないようです。問題意識のメモとして記しておくこととします。