8月1日の記事では,「この10年間で増えた職業,減った職業」を明らかにしました。今回は,その産業バージョンです。
職業と産業は別個の概念で,「最近,この業界は・・・」というとき,多くは産業区分が想定されています。
参照したのは,『国勢調査』の産業小分類統計です。先日公表された,2015年調査の速報結果では,253の産業の就業者数が集計されています。これを,10年前の2005年の数値と照合してみました。
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2015/kekka.htm
たとえば,保育所や児童養護施設といった児童福祉事業で働く就業者は,2005年では63万5087人(①)でしたが,2015年では90万2000人(②)に増えています。増加率にすると,(②-①)/①=42.0%,4割の増となります。共働き世帯が増えていることもあってか,増えていますね。
同じやり方で,それぞれの産業の就業者の増加率を出しました。まずは,この10年間で大幅に増えた産業を見ていただきましょう。下表は,就業者が20%以上増えた産業です。増加率が高い順に並べています。
トップは,郵便業で,なんと174%(1.74倍)もの増加率です。郵便局で働く人だけでなく,宅配業も含まれるとみられます。ネット通販の普及により,需要が高まっている業種です。
老人福祉,障害者福祉,児童福祉といった福祉産業も増えていますね。配達飲食サービス業も,4割近くの増。高齢化という時代変化の影響を感じます。
不動産業も増えていますが,空き家の管理・仲介といった形で,この産業も需要が増えているのでしょうか。
では逆に,この10年間で就業者が大幅に減った産業は何か。20%以上就業者が減った産業のリストは,以下のようです。
最も減っているのは,労働者派遣業です。ブラック労働の温床ということで,ハケンへの風当たりが強くなっていますが,その影響でしょうか。
たばこ製造業も減っていますね。最近は,どこもかしこも禁煙。私も学生の頃は吸っていましたが,2008年に止めました。
出版不況ゆえか,出版業や印刷業も減っています。最近は,大学の紀要やシラバスも電子化されており,印刷会社への発注も減っていることでしょう。ネットの普及のダメージをもろに被っている業種です。
本屋や文具業も減っていますね(マイナス24%)。街の書店が全国的に淘汰されていることは,先日ニューズウィーク日本版サイトで公表した拙稿でも触れました。人口当たりの書店数マップの変化は,まるで文化の「生き血」が抜かれているかのような変化です。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/08/ga-1.php
大雑把にみて,福祉など,人を顧客とする産業が増えて,製造業など,モノを扱う産業が衰退しているように見えます。産業のソフト化という変化です。少子高齢化が進む中,これから先も,こういう変化は続いていくでしょう。