昨日,今年の『学校基本調査』の速報結果が公表されました。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001011528
朝日新聞では「大卒の就職率,過去最高」,「短大生の減少」といった記事が出ていますが,私は都道府県別の大学進学率に関心を持ちます。『学校基本調査』のデータが公開されたら,最初に明らかにするのはコレです。
今年春の4年制大学進学率(以下,大学進学率)は,全国値では52.0%となっています。昨年の51.5%より上がっていますね。これは,18歳人口ベースの浪人込みの進学率です。
分子と分母の数値を引き合いにして,計算の方法を説明しましょう。分子は,今年春の大学入学者数です。その数,61万8424人。分母は推定18歳人口で,3年前(2013年春)の中学校・中等教育学校前期課程卒業者数(119万262人)です。よって大学進学率は,上述のように52.0%となります。同世代の2人に1人が大学に行く状況の,数値的な表現です。
分子には浪人も含まれますが,今年春の18歳人口からも,浪人経由の大学入学者が同程度出るものと仮定し,両者が相殺するとみなします。
これは,公的に採用されている,18歳人口ベースの浪人込みの大学進学率の計算方法です。私が独断で考えたものではありませぬ。
県別の大学進学率を出す場合は,分子には,当該県の高校出身の大学入学者数が用いられます。私の郷里の鹿児島を例にすると,今年春の本県の高校出身の大学入学者(浪人込み)は5988人。推定18歳人口(3年前の中卒者数)は1万6724人。よって,今年春の鹿児島の大学進学率は35.8%となります。全国値の52.0%よりだいぶ低い。
同じやり方で,2016年春の47都道府県の大学進学率を計算しました。ジェンダー差もみるため,男女別の進学率も出しました。下表は,その一覧です。黄色マークは最高値,青色マークは最低値です。赤字は上位5位を意味します。
どうでしょう。男女計の大学進学率をみると,最高は東京の72.7%,最低は鹿児島の35.8%で,倍以上のレインヂがあります。同じ国内でも,大学進学率にこうも違いがあることに驚かされます。毎年のことですけど。
大学進学率は,大学がたくさんある都市部で高くなっています。地域分布のマップは,昨日ツイッターで発信しました。リンクを貼っておきます。
https://twitter.com/tmaita77/status/761194883566624768
大学進学率には,ジェンダー差もあります。全国値では男子は55.6%,女子は48.2%で,前者は後者の1.15倍です。昔からのことですが,家庭の事情が許すなら「男子優先」という考えは未だにに残っていると思われます。
その程度は県によって違っているようで,鹿児島では,男子の進学率は女子の1.37倍です。進学率には10ポイント以上の性差があります。「三角関数を女子に教えて何になる」という,昨年の県知事の発言も思い出されますねえ。
首都の東京では大学進学率の性差はほとんどなく,徳島では,女子のほうが高くなっています。性差に地域的なバリエーションがあることは,人為的な政策によって,大学進学チャンスの性的不平等を解消できるという,希望的な事実とも読めます。
想像がつくと思いますが,各県の大学進学率は,社会経済指標と非常に強く相関しています。県民所得,住民の高学歴率・・・。この分析は,本ブログでも何回かしましたが,今回紹介した最新のデータを使っての分析は,これから執筆する,プレジデント・オンラインへの寄稿記事でやることにしましょう。公開は,今月の下旬です。ご覧いただければと思います。