日本は経済大国ですが,教育にカネを使わない国であることは,もうすっかり知れ渡っています。その証拠として出されるのが,公的教育費の支出額がGDPの何%か,という指標です。
OECDの「Education at a Glance 2016」にて,最新の2013年の数値を拾うと,日本はわずか3.25%で,OECD加盟国では下から2番目となっています。
https://twitter.com/tmaita77/status/848342449005117441
しかし,対GDP比でみるのは不適切ではないか,日本は少子化が進んで子どもが少ないのだから,教育費のシェアが小さくなるのは当たり前ではないか,という意見も聞かれます。
これに対しては,「教育の対象は子どもだけではない。生涯学習社会では,教育の対象は大人も含めた全国民である」という反論ができますが,それは脇に置きましょう。
それでは,GDPに対する割合ではなく,子ども・若者1人あたりの公的教育費の額を算出してみましょう。上記の比率を,国内総生産(名目GDP総額)に乗じると,公的教育費の実額が出てきます。それを,25歳未満の子ども・若者人口で除せば,目的の数値が得られます。
先ほどみたように,2013年の日本の公的教育費支出額の対GDPは3.25%です。総務省統計局『世界の統計 2015』によると,同年の名目GDPは4,920,680(百万ドル)。よって公的教育費の支出額は,前者を後者に乗じて,159,779(百万ドル)となります。
国連の人口推計サイトによると,2013年の日本の25歳未満人口は28,891(千人)。したがって,子ども・若者1人あたりの公的教育費支出額は,5,530ドルとなる次第です。1ドル=110円とすると,1人あたり60万円くらいですか。
はて,これは他国に比してどうなのか。同じやり方で,29か国の数値を計算してみました。計算に使った要素も含む,結果の一覧表をご覧いただきましょう。
右端が目的の数値ですが,日本よりも高い値が多いですねえ。マックスは北欧のノルウェーで,1人あたり20,230ドル(222万円)。日本の4倍近くです。デンマーク,スウェーデン,スイスも5ケタです。大学の授業料無償,充実したICT教育環境などは,こういう条件によるのですね。
欧米の先進国をみると,アメリカが6,722ドル,イギリスが7,070ドル,ドイツが7,256ドル,フランスが6,854ドルと,いずれも日本よりは高くなっています。
お隣の韓国をはじめ,日本より低い国もちらほらありますが,先進国の中では最下位で,29か国全体では19位という有様。子どもが少ないという点を考慮しても,日本が教育にカネを使わない国ということは言えるでしょう。
これは,初等教育から高等教育までを含めた全教育費の結果ですが,高等教育に限ったら,悲惨な結果が出てきそうですねえ。日本は大学進学率50%超で,高等教育を受けている人口が多いのですが,公的な高等教育費支出の対GDPは最下位です。
https://twitter.com/tmaita77/status/848783584722731008
「学費メチャ高」&「実質ローン奨学金」という,ダブルパンチになるはずです。日本のユニバーサル型の高等教育は,家計に費用負担を押し付けることで成り立っていることを忘れてはいけません。
高等教育機関の学生1人あたりの額を出したら,どういう結果が出てくるか。やりたくもない計算ですが,興味ある結果が出てきたら,ここで報告することにいたしましょう。