アラサー,アラフォーに次いで「アラフィフ」というステージへの関心も高まってきました。around fifty,50歳近辺という意味です。
現在40歳の私より一回り上の年齢層ですが,人数的に多い「団塊ジュニア」の世代が,間もなくこのステージに達しようとしています。「アラフィフ」という片仮名をメディアで目にする頻度も高くなってくることでしょう。
先日,この言葉をタイトルに掲げた記事を目にしました。アラフィフの結婚が増えている,というものです。記事では,40代後半から50代女性の初婚数が増えていることを示すグラフが紹介されています。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170402-00005923-bengocom-life
私はこういう記事に接すると,自分でデータソースに当たり,より詳しいデータを作ってみたくなります。厚労省の『人口動態統計』の時系列統計をもとに,45~54歳(アラフィフ)男女の初婚件数がどう推移してきかたを,5年間隔の折れ線グラフにしてみました。各年に結婚を届け出た夫と妻の数です(初婚に限る)。
グラフは,下記リンク先の表9-7(1)のデータから作図しました。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001157966
ほう。確かに増えていますね。とりわけ,90年代以降の男性の増加が凄まじい。45~54歳男性の初婚届出件数は,1990年では2,848件でしたが,四半世紀を経た2015年現在では11,746件に膨れ上がっています。4.1倍の増です。
これは,団塊(ジュニア)のような量的に多い世代がこのステージに達したからという,人口的な要因によるものではありません。ベース人口の変動とは無関係に,結婚するアラフィフが増えている,ということです。
伸び幅は,女性より男性のほうがずっと大きくなっています。これだけ男女差があるってことは,自分よりかなり下の(若い)女性と結婚するアラフィフ男性が増えている,ということでしょうか。
このグラフをツイッターで発信したところ,面白い解釈をしてくれた方がいます。スクショで,該当ツイートを紹介させていただきましょう。
https://twitter.com/CH0BBY/status/849862995932889088
なるほど。農家の男性が跡継ぎ確保のため,外国人の若い奥さんをもらう,という構図ですか。確かに,こういう話はよく聞くところです。
しからば,アラフィフの初婚の増加は,都市よりも地方で顕著と思われますが,実態はどうなのでしょう。先ほどのグラフは全国のものですが,都道府県別に変化を出すこともできます。
私は『人口動態統計』の内部保管統計に当たって,1995年から2015年の20年にかけて,45~54歳男性の初婚件数がどう変わったかを,47都道府県別に明らかにしました。
全国値でいうと,1995年の5,820件から2015年の11,746件へと,2.02倍の増加です。しかるに,この倍率は県によって結構違っています。下表をご覧ください。
増加倍率が高い県がありますねえ。マックスは鳥取で,この20年間でアラフィフ男性の初婚数が4.75倍に増えています。その次が長崎の3.57倍,それに次ぐのが岩手の3.49倍……。
赤字は2.5倍超,黄色マークは3.0倍超ですが,ほとんどが地方県ですね。地図にはしませんけど,北東北,北陸・中部,北九州で,アラフィフ男性の初婚の増加が顕著である傾向が見えてきます。
上記のツイッターで言われているような,国際婚の増加の影響がなきにしもあらずです。ブローカーの暗躍というのは,話が穏やかではありませんが。
ちなみに,最初に紹介した記事において,地方では親や親戚からの「結婚しろ攻撃」がハンパでないことが言われています。私にも,よく分かります。それが嫌で,すっかり帰省から遠のいていますから。
山内太地さんが「地方都市では中学時代のスクール・カーストが一生続く」という,面白い見解を表明しておられますが,都会への転出者のUターンが進まないことの原因は,こういう所にもあるかもしれません。
これに乗っかっていうと,「結婚しろ,お見合いしろ」攻撃も,Uターンを妨げている面があるような気がするなあ。時代は変わっています。上の世代は,自分たちの価値観を子ども世代に押し付けることは慎むべきでしょう。それが,異世代の共存につながります。
地方におけるアラフィフ婚の増加。その原因として,1)国際婚の増加,2)未だにある「結婚しろ攻撃」,の2点があることがうかがわれます。後者を突き詰めたら,地方における家族葛藤いう問題が出てくるかもしれません。