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2017年10月31日火曜日

教員の教育職以外の経験年数

 OECDの国際教員調査「TALIS 2013」では,各国の中学校教員に対し,教育職以外の経験年収を尋ねています。
http://www.oecd.org/edu/school/talis.htm

 この問いに対し「0年」と答えた教員の割合は,教育職以外の経験がない教員の出現率と読むことができます。この数値を国別に出し,高い順に並べたグラフをツイッターで発信したところ,多くの方に見ていただけました。日本は79.2%で,対象国の中ではトップです。
https://twitter.com/tmaita77/status/924223243887640578

 しかるに,回答の分布にも関心が持たれるでしょう。アメリカでは,0年という教員(17.6%)よりも,10年以上という教員が33.6%と,ずっと多くなっています。この大国では,中学校教員の3人に1人が,教育職以外の仕事を10年以上経験してきているのですね。

 上記調査のローデータを加工して,ラフな4区分の分布を国ごとに出してみました。0年,1~4年,5~9年,10年以上,の4カテゴリーです。下表をご覧ください。赤字は,最頻値(Mode)です。無回答・無効回答は除いた有効回答の分布です。


 日本と同様,0年(≒経験なし)という教員が最多である国が多いですが,そうではない国もあります。メキシコとアメリカでは,10年以上という教員が最も多し。メキシコでは,4割近くにもなります。

 上表のデータをグラフにしましょう。そうですねえ。「0年」の比率と「5年以上」の比率を拾って,帯グラフにしましょうか。朝日新聞流に,中抜きのグラフにしてみました。国の配列は,0年の比率が高い順によります。


 かつてジョン・デューイは,「学校は陸の孤島である」と述べ,地域社会と学校の間に橋をかける必要があると提言しました。その中に人事交流が含まれていたか,記憶が定かでないですが,日本はそれが最も活発でない社会であるようです。

 22歳まで学生をやり,その後もずっと学校に奉職し続ける。学校の外の世界を知らない…。こういう教員が,全体の8割も占めるというのは,少しばかり怖い気がします。近年重視されているキャリア教育は,民間経験のある教員のほうが高いパフォーマンスを発揮するという説をどこかで聞いたことがありますが,そういう面もあるでしょう。

 現行の採用試験では,社会人採用の枠もありますが,これをもっと広げてもいいのではないか。もっと思い切ったことを言えば,一定年数の就業経験をもって,採用試験の受験資格にしてもいい。「学生しか経験してない私に何が教えられるのだろう?」。大学を卒業してすぐに教壇に立たされることに,戸惑いを覚えている学生もいるのでは。
https://twitter.com/kanas_office/status/924588992133083139

 ただ,現行の制度でも,民間人が教員になれる道は開かれています。にもかかわらず,現状は上記のデータのごとしというのは,教員は「ブラック」であることが知れ渡り,敬遠されているからかもしれません。待遇を改善しなければ,優秀な人材(社会人経験者)は集まらない。これは道理です。

 タイムカードや残業代という概念がない。民間の感覚からすれば驚愕するようなことが,学校ではまかり通っています。学校と外部社会の間に「橋」をかけるには,採用試験の制度改革だけでは足りないでしょう。

2017年10月28日土曜日

学用品に恵まれない子ども

 日本は,学用品に恵まれない子どもが多いそうです。
http://www.from-estonia-with-love.net/entry/pc-in-jp

 この記事によると,8つの学用品(机,パソコン,辞書,教科書…)のうち4つ未満しか家にない生徒の割合は,日本は5.6%であり,OECD加盟国の中で4位となっています。

 日本は経済大国であると同時に,子どもの貧困大国でもあるといいますが,それを象徴するデータですね。上記記事のデータソースは,OECDの「PISA 2006」です。今から10年以上前のデータですが,最近ではどうなのか。最新の「PISA 2015」のデータで追試をしてみようと思います。

 「PISA 2015」の生徒質問紙調査では,13の学用品を提示し,それぞれが家にあるかを尋ねています(Q11)。調査票の質問のスクショを掲げましょう。調査対象は,15歳の生徒です。
http://www.oecd.org/pisa/data/2015database/


 全部持っている子もいれば,2・3個しかないという子もいるでしょう。学用品に恵まれない子どもを取り出すためのラインをどこに引くべきか。「PISA 2006」では4個未満としていますが,尋ねている品目の数も違うので,この基準を流用するわけにはいきません。

 個票データを加工して,家にある個数の分布を観察することから始めましょう。13の品目全てに有効回答を寄せたのは,64か国の40万584人です(小地域は除く)。家にある学用品の個数の分布は,下表のようになっています。


 中央に山があるノーマル分布ではなく,上方に偏っています。最も多いのは10個です(13.86%)。右端の累積相対度数から,ちょうど真ん中の生徒(中央値)も10個であることが知られます。

 どうやら,10個というのがフツーの生徒であるようです。しからばその半分の5個に満たない生徒をもって,学用品に恵まれない子としましょう。上表の分布でいうと,その割合は5.37%です。

 当然,この割合は国によって大きく違っています。たとえば,メキシコでは20.30%(5人に1人)にもなります。一方,北欧のデンマークでは0.85%しかいません。

 この国際基準(13個中5個未満)を適用して,64か国の15歳生徒のうち,学用品に恵まれない子どもが何%いるかを計算してみました。下表は,高い順に並べたランキングです。


 トップはアルジェリア,2位はインドネシアです。この2国では,15歳の4人に1人が学用品剥奪状態にあるとみられます。当然ですが,上位には発展途上国が多くなっています。

 しかし,表をちょっと下がると日本が出てきます。学用品に恵まれない子どもの割合は5.23%で,64か国中17位。主要国の中では,アメリカを抜いてトップです。

 下位のほうをみると,ロシア,ラトビア,ポーランドなどがありますが,共産主義の名残りでしょうか。

 しかし,日本とアメリカが主要国の中でトップだとは…。両国はGDPが世界トップレベルの経済大国で,多くの富を有しているのですが,それが子どもの生活には届いていないと。

 上表から,OECD加盟の34か国を取り出し,各々の名目GDP額(2015年)と絡めてみると,下図のようになります。アメリカはGDPがぶっ飛んで高いので,横軸は端折っています。GDPの出所は,総務省『世界の統計2017』です。
http://www.stat.go.jp/data/sekai/index.htm


 単純に考えれば,多くの富を持っている(GDPが高い)国ほど,学用品剥奪状態の子どもは少なくなるように思えますが,さにあらず。メキシコとトルコを除くと,プラスの相関関係すら見受けられます。

 為政者は,富が増えると使い方を誤る性を持っているのか。GDPが低くとも,原点付近の社会のほうが,子どもにとって「生きやすい」という見方ができなくもありません。

 学用品という所持の点でも,日本の子どもの「貧しい」状態が露わになりました。冒頭の品目表のうち,日本の子どもの所持率が際立って低いのは,パソコンと勉強用のソフトウェアです。これは,教育のICT化の遅れの表れですが,それが進んだ国では,こういうアイテムも必需品とみなされるのでしょう(生活保護世帯にも支給される)。

 日本も,状況は変わっていくでしょう。社会の変化に伴い,何を必需品(奢侈品)をみなすかのラインは,絶えず変えていかないといけません。

 現状でいえるのは,日本は,豊かな富と子どもの貧困を併せ持った,何とも奇妙な社会である,ということです。

2017年10月25日水曜日

労働量ベースの労働生産性

 一国の経済活動のパフォーマンスを測る指標として,労働生産性というものがあります。頻繁に聞く言葉ですが,概念を知っている人はどれほどいるでしょうか。

 労働生産性とは,就業者1人あたりのGDP額のことです。日本は,GDPの額は世界でもトップレベルですが,それを就業者数で割った労働生産性は,さほど高くありません。2014年の数値は7.3万ドルで,統計が分かる34か国中21位です(総務省統計局『世界の統計2017』)。

 しかるに,GDPを就業者数で除すだけというのは,いささか不十分な気がします。生産の費やされた労働量は,就業者数と就業時間の掛け算で決まります。厳密には,後者の要素も考慮する必要があるでしょう。私は,以下の式を適用して,各国の労働生産性を計算し直してみました。

 労働生産性 = 名目GDP額/(就業者数 × 就業時間)

 タイトルのごとく,生産に費やされた労働量ベースでみた労働生産性です。計算に必要な3つの要素は,総務省統計局『世界の統計2017』で知ることができます。

 まずは,主要国の試算結果をご覧いただきましょう。お隣の韓国は就業時間のデータが載っていないので,対象から外しました。


 日本の15歳以上の就業者は6億3770万人,週間の平均就業時間は39.3時間,2015年の名目GDP額は4兆3835億8400ドルなり。就業時間が思ったより少ないのは,女性や高齢者も含めた,全就業者のものだからです。

 上記の式に当てはめると,日本の労働量ベースの労働生産性は,1.75と算出されます(単位は度外視)。お決まりですが,欧米諸国と比して低いですね。

 ノルウェーは4.29で,日本の2.5倍近くです。費やされた労働量あたりの生産性は日本よりもずっと高し。就業者数のみを考慮した場合よりも,差が大きくなっています。それもそのはず,就業時間も違いますからね。

 では,他国はどうでしょう。a~cの3要素を知ることができた38か国について,同じやり方で,労働量ベースの労働生産性を出してみました。下図は,高い順に並べたグラフです。


 日本は,ちょうど真ん中あたりです。38か国の平均値(1.78)には及びません。うーん,就業時間も加味した労働生産性では,お気楽な働き方をするブラジルやスペインにも劣るのですねえ。

 トップは北欧のノルウェー,下位には発展途上国の諸国があります。まあ,納得がいく順位構造です。

 労働生産性が高いノルウェーについては,いろいろ言われています。ネットで検索してみると,フレックスタイム制やリモート労働制が進んでいることを強調する記事がたくさん出てきます。

 それもあるでしょうが,社会の基底的な特性に注目すると,次の3つが進んでいることが大きいと思います。1)女性の社会進出,2)ICT化,3)生涯学習化,です。女性のタレントを活かす,業務を効率ならしめるICT機器を活用する,労働者が絶えず(外部機関で)学び続ける…。いずれも,労働生産性を高めるための必須の条件でしょう。

 上記の3つの度合いを,簡単な指標で数値化し,日本とノルウェーで比べてみましょう。下表をご覧ください。BとCは,国際ランキングをツイッターで発信したところ,多くの方に興味を持っていただけました。
https://twitter.com/tmaita77/status/922404634471284737
https://twitter.com/tmaita77/status/922362605791875073


 働き盛りの女性の労働参加率は,ノルウェーのほうが高し。これは分かり切ったことですが,ICT教育の進み具合(B)は,両国では比較にならぬほど違っています。

 この指標のランキングを見た人が,「日本は未だに人海戦術依存型」とつぶやいておられましたが,少子高齢化が進む中,これがいつまでも持たないことは明らかです。

 Cは生涯学習化の指標ですが,大学等の入学者の平均年齢は,日本は18歳,ノルウェーは23歳。これは初めて入学した人に限ったもので,何回も入り直している人(リカレント学生)も含めたら,ノルウェーの平均年齢はもっと高くなるでしょう。

 変動社会では,人生の初期に学校で学んだ知識や技術などすぐに陳腐化します。絶えず学んで,最新の知識・技術を摂取しないといけません。それは企業内教育だけでは不十分で,どこでも通用する汎用性あるスキルを身に付けるには,職場を離れた外部機関(大学等)で学ぶことも必要になります。

 こうした「Off-JT」は,職業訓練とは別の効用も持っています。職場を離れた別の世界の空気を吸うことで,イノベーションのきっかけが得られる,ということです。わが国では,「閉じた」職場内訓練が支配的ですので,こういう機会が決定的に不足しています。これなども,労働生産性向上の阻害要因になっているのではないでしょうか。

 投入できるインプット(労働力量)は,ますます制限されるようになってきます。移民受け入れについて議論されていますが,インプットをひたすら増やす「人海戦術型」ではなく,労働の質を向上させる。随所で言われていることですが,できることはあるでしょう。上記の3つは,その切り口の一端です。

2017年10月21日土曜日

学部と修士の正社員就職率

 「頭のいい女子はいらないのか:ある女子国立大院生の就活リアル」と題する記事が目に止まりました。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171020-00010000-binsider-bus_all

 内容は,タイトルから推して知るべし。シューカツに臨んだ院生が,「大学院ねえ。そんなに勉強してどうするの」「あなたの学歴ではもったいない」などと,嫌味を言われるケースです。

 女子の場合,男子にもまして,こういう風当たりは強いでしょう。私が修士課程で一緒だった女子院生も上記のようなことを言われたことがあるそうで,「逆学歴差別だ」と憤っていました。

 大学院まで行くと,かえって就職がなくなる。だいぶ前からこういうことが言われていますが,データでみるとどうなのでしょう。今年春の卒業生の正規職員就職率を,大学学部と修士課程で比べてみましょう。分子と分母は以下です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001011528

 分子=正規職員就職者数+臨床研修医数
 分母=卒業生数-大学院等進学者数-専修学校等入学者数

 分子ですが,医学部の場合,キャリアが臨床研修医からスタートすることが多いですので,この数も含ませます。分母は,就職の意思がない大学院等進学者と専修学校等入学者は除外します。

 このやり方で,学部卒業者と修士課程修了生の正規職員就職率を計算してみました。下図は,結果をグラフにしたものです。ジェンダー差をみるため,性別で分けています。


 男子は,学部から修士にかけて,正社員就職率がちょっと上がります。しかし女子は,学部では85.4%だったのが,修士になると69.5%と大きく陥落します。学部では「男子<女子」だったのが,修士卒では大逆転です。

 ただこれは,専攻の違いによるかもしれません。理系では,学部卒より院卒が有利といいますが,理系の院生の大半は男子です。対して,女子院生の多くは文系の専攻であると。

 そこで,学部・修士の正社員就職率を専攻別に出してみました。下表は,結果の一覧です。上段は学部,下段は修士の専攻別の正社員就職率です。


 女子でも,理学専攻は,学部から修士にかけて正社員就職率がアップします(87.4%→90.6%)。

 予想通りといいますが,下落が大きいのは文系の専攻です。人文科学の女子では,学部の83.3%から修士の45.0%へと,40ポイント近くも落ちています。社会科学も,88.7%から59.1%と大下落です。

 文系の院に行くと悲惨であるのは男子も同じですが,女子はそれが顕著であると。ちなみに冒頭の記事で紹介されているのは,国立大の社会学の女子院生のケースです。

 男女の専攻別の正規職員就職率が,学部から修士にかけてどう変化するか。この点を視覚的に見て取れるグラフを作ってみましょう。横軸に学部卒,縦軸に修士卒の正社員就職率をとった座標上に,男女の10専攻のドットをプロットしてみました。

 青色は男子,オレンジ色は女子です。専攻名は,頭文字で略記しています(人=人文科学,社=社会科学…)。


 斜線は均等線です。このラインより上にあるのは,学部より修士の正社員就職率が高い専攻です。下にあるのは,その反対です。

 修士に行くメリットがあるのは,男子の理系専攻ですね。男子の理学専攻は,学部の78.6%から修士の89.3%へと,10ポイント以上の増。この専攻に限っては,女子も院進学の利点があるようです。

 しかるに女子にあっては,理学を除く全ての専攻で,大学院に進学すると正社員就職チャンスが狭まります。その度合いは,均等線からの垂直距離で見て取れますが,悲惨を極めているのが,人文・社会系です(緑枠)。

 最近は大学院修士課程への進学率が上がっているといいますが,正社員就職率という点でみると,メリットがあるのは男子の理系専攻に限られるようです。

 素朴な人的資本論に従えば,学部卒より院卒のほうが生産性に優れているので重宝されるはずなのですが,わが国の現実はさにあらず。ある方がツイッターでつぶやいていましたが,「欲しいのは学力・能力ではなく,ただの奴隷」なんだなと。
https://twitter.com/WadaJP/status/921264218728361984

 確かにそうかもしれませんねえ。採用面接で,学校で何を学んだかなんて聞かれないし…。先方が知りたいのは,性格にクセがないか,言われたことを従順にやってくれるか,これだけです。知識や技術は入社後に訓練すると。

 中には,学生の有している資質・能力に関心を持つ会社もあるでしょう。「大学院でプラス2年間学んだそうだが,それで得られたものは何か」と。学生の側は,それを分かりやすく伝える術を身に付けないといけません。
https://twitter.com/vc66AaZmbH5oZbE/status/921313998938578944
 
 ただ,同じ専攻にもかかわらず,大学院に進むと一般社会に出るチャンスが明瞭に「男子>女子」となるのは,「学のある女は要らぬ」という,旧態依然としたジェンダー観念が未だに蔓延っていることの証左といえるでしょう。

 国際比較をやったら,日本固有の傾向なのかもしれません。

2017年10月12日木曜日

18歳と19歳の投票率

 今月22日は衆院選の投票日ですが,昨年より選挙権の付与年齢が18歳に引き下げられ,高校生も投票できるようになっています。それに伴い,各地の高校で主権者教育が行われています。

 関心が持たれるのは,若きティーン(18・19歳)の投票率ですが,昨日の神戸新聞の記事によると,18歳から19歳にかけて投票率がガクンと下がる傾向があるそうです。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171011-00000016-kobenext-soci

 「ホンマかいな」と,昨年の参院選の年齢別投票率をグラフにすると,下図のようになります。昨日,ツイッターで発信した図です。


 ほう。18歳では51.2%と半分を超えていたのが,19歳では39.7%に急落し,22歳まで低下を続けます。大学在学中にかけて投票率は下がるのですねえ。

 上記の神戸新聞でも言われていますが,18歳の高校生は,学校で密な主権者教育(啓発)がされますが,教師と学生の距離が大きい大学はさにあらず。要するに,野放しの大学生は投票所に足を運ばないのでしょう。

 あと考えられるのは,住民票を移していない学生が多いということ。これでは,自分が住んでいるアパートに投票案内は届きません。実家に戻って投票するなんて,億劫なことはしたくない。よって,投票率が低くなると。

 それをうかがわせるデータもあります。問題の19歳の投票率が,都道府県でどう違うかです。昨年の参院選でいうと,19歳の投票率の全国値は39.7%ですが(上図),都道府県別にみると,最高の53.8%から26.6%までの開きがあります。倍の格差です。

 各県の19歳の投票率を地図にすると,以下のようになります。


 値が相対的に高いのは,都市部ですね。実家から大学等に通っている学生が多いためでしょう。

 対して西日本のエリアでは,投票率が35%に満たない県(白色)が多くなっています。私の郷里の鹿児島も然り(34.3%)。住民票を移さないまま都会に出ている学生が多いので,投票率が低くなってしまうのでしょう。

 このマップの白色の県は,大学進学の際,住民票をきちんと移すよう,指導を強化する必要があるのではないでしょうか。

 住民票を移してない学生さんも,帰省せずして投票できる「不在者投票制度」なるものもあるようですが,結構手続きが煩瑣です。また,利用できない自治体もあるとのこと。住民票を移すのがベストであるのは,言うまでもありません。
https://www.buzzfeed.com/jp/sumirenakazono/senkyo-hitorigurasi-touhyo?utm_term=.ile5gOdVDM#.xuEPnaZv6J

 私は,事情あって18歳から独立生計でしたので,役所関係の諸手続きはきちんとする習性が身についています。そうでないと,病院すらいけないですからね。

 学生さんもやがては親の扶養を離れ,独立生計者となりますが,各種の行政手続きを「親任せ」ばかりにしていると,後々痛い目をみるでしょう。大学入学に伴い転居したら,まずはその地の役所に足を運び,ちゃんと住民登録をしましょう。

 さて,今月の衆院選は,ティーンに選挙権が与えられた2度目の国政選挙ですが,投票率はどうなるでしょう。今年の19歳は,昨年(18歳時)の経験があるので,最初のグラフのような大幅な陥落傾向は消えているかもしれませんね。

 ここ数日,10月とは思えぬ暑さが続きましたが,明日は気温が一気に下がり,肌寒くなるそうです。今日のマックスが28度に対し,明日は17度(横浜)。10度以上の落差です。ちゃんと,布団を被って寝ましょう。

 今日は立川病院に行き,先日受けた歯根端切除手術の予後観察を受けましたが,「予後不良,再手術の必要あり」という判断。確定ではありませんが,来月にまた入院し,手術を受ける可能性が高くなってしまいました。やれやれです。(-_-;)

2017年10月9日月曜日

首都圏の大学学部別の公務員・教員就職率

 前回は,母校・東京学芸大学と文教大学教育学部について,卒業生の教員就職率を出してみました。資料は,旺文社の『大学の真の実力 2018年度用』です。
https://www.obunsha.co.jp/product/detail/051009

 各大学の学部別に,公務員就職者数と教員就職者数が分かる,スグレモノです。私はこれを使って,公務員就職率と教員就職率の分布を明らかにしたいと考えました。また上位の20位を拾い,「公務員(教員)になるならココ」という情報も出したいと思いました。

 ひとまず首都圏(埼玉・千葉・東京・神奈川)の分だけ,データベースを作りました。それぞれの学部について,就職率の算出に必要なデータを入力した次第です。その数,720学部なり。



 公務員(教員)就職率を出すに当たっては,就職の意思のない大学院等進学者を,卒業生全体から除いた数をベースにしました。東京学芸大学教育学部でいうと,今年春の卒業生は1131人,進学者は213人,教員就職者は317人ですので,教員就職率=317/(1131-213)=34.5% となります。これは,前回の記事で明らかにしたことです。

 公務員(教員)就職者が非公表であるなど,率の計算ができない学部,分母(卒業生から進学者を除いた数)が50人に満たない学部は,分析対象から外します。

 私はこのやり方で,首都圏の664学部の公務員就職率,649学部の教員就職率を明らかにしました。下表は,その分布です。

 なお,本資料に計上されている就職者数は,フルタイムの雇用形態のようですので,臨時職員や時間講師の類は含まれないと思われます。フルタイムの公務員(教員)就職率です。


 公務員や教員になる学生は多くないので,就職率が5%ないしは10%未満という学部がほとんどです。

 私の母校・東京学芸大学教育学部は,公務員就職率が5.1%,教員就職率が34.5%ですので,表の黄色マークの階級に属します。

 しかし,率が高い学部もありますね。公務員就職率のマックスは48.9%,教員就職率のそれは79.5%です(いずれも私立)。教員就職率およそ8割。前回みた文教大学教育学部の74.8%をも凌駕していますが,どこかしら。

 では,首都圏の大学の学部のうち,公務員就職率ないしは教員就職率が高い学部の顔ぶれをみていただきましょう。まずは,前者の上位20位です。表の「母数」は,パーセンテージの分母となった数(=卒業生数-進学者数)です。


 トップは,日本文化大学ですか。公務員就職率48.9%,およそ半分。公務員に強い大学として定評があり,公務員志望者向けの「公共コース」,警察官・消防官向けの「法心理コース」といった課程を設けているようです。
http://www.nihonbunka-u.ac.jp/about/feature/

 その次は,同じ八王子市にある創価大学看護学部。そして3位は,東京大学・法学部です。多くが国家公務員でしょう。

 上位20学部の内訳は,国立が10,私立が9で,公立は首都大学東京の都市環境学部がランクインしています。

 次に,教員就職率です。わが母校・東京学芸大学は,首都圏の上位20位にランクインするか。50%以上,進学者を除く卒業生の半分以上が教員になる学部は赤字にしました。


 トップは,千葉の秀明大学です。文教を上回るって,ここですか。「学校教師学部」と名にふさわしく,強いですねえ。全寮制で,1年次から学校現場で研修をしているそうです。
http://www.shumei-u.ac.jp/faculties/edu/index.html

 3位は鎌倉女子大学の教育学部で,4・5位が千葉大と埼玉大の教育学部となっています。私が出入りしていた武蔵野大学の教育学部は48.1%で9位。割と頑張っているんだな。

 母校・東京学芸大学(34.5%)は,首都圏の649学部の中では17位となっています。横国は19位。前回も書きましたが,ゼロ免課程の学生が結構おり,この部分を除けば率はもっと上がるでしょう(それは千葉大や埼玉大の教育学部も同じですが)。

 14位の聖徳大学児童学部は,亡き恩師・陣内靖彦先生が,学大を定年後に行かれたところです。

 上記の2つの表は,「公務員(教員)になるならココ」という情報にもなるかと思います。これは首都圏(1都3県)のデータです。射程を全国に広げれば,顔ぶれはガラリと変わるでしょう。過激な広告で知られる,関西の雄・近畿大学は強そうだな。

 どなたか時間のある方,関西版をぜひやってみてください。旺文社の『大学の真の実力 2018年度用』は,2300円です。

2017年10月8日日曜日

旺文社『大学の真の実力』

 3連休の2日目ですが,いかがお過ごしでしょうか。秋晴れの空が広がっていますね。近くのソレイユの丘は,家族連れで賑わっていることでしょう。私は変わらず,自宅仕事ですが。

 さて,毎年この時期になると,各社の大学調査の結果をまとめた冊子が公刊されます。翌年度の受験生の参考に供するためです。私は毎年,読売新聞社の『大学の実力』を購入していますが,旺文社も独自に調査をやっているようです。

 受験雑誌『蛍雪時代』で知られる会社ですが,その特別号として,大学調査のデータをまとめた冊子が出るようです。その名は『大学の真の実力』。今年(2017年)の調査には,全国の751大学全てが回答しているとのこと。
https://www.obunsha.co.jp/product/detail/051009

 今年の調査結果の冊子を,アマゾンで取り寄せました。


 全大学が回答しているのは,大学(学部)別の退学率のようなデータは出さない,という編集方針の故でしょう。

 しからば,読者の目を引く「きわどい」データが載ってないかというと,そんなことはありません。入学者の地元出身率・現役率,卒業者のうちの公務員就職者・教員就職者など,読売新聞調査にはないデータも載っています。

 公務員就職者・教員就職者数を,全国の大学の学部別に知れるのはスゴイ。私は,東京学芸大学という教員養成大学の出身ですので,教員就職率という指標に関心を持ちます。

 この資料が集計している教員就職者とは,無期雇用,ないしは雇用期間1年以上で週の労働時間が30~40時間程度の者,ということですので,フルタイムの雇用形態の者とみてよいでしょう。時間講師の類は含まれないと思われます。

 はて,今の学大はどれくらい頑張っているか。300ページに,今年春の学大の卒業生(1131人)の進路が出ています。私の頃からのライバル,埼玉の私大・文教大学教育学部との優劣も,気になりますねえ。以下のシンプルな比較表を作ってみました。


 教員就職者数は,学大が317人,文教大が347人です。卒業者は学大の方が多いのに,教員就職者は文教のほうが多し。就職の意思のない大学院等進学者を除く卒業生(学大の場合,1131-213=918人)に占める,教員就職者の割合は,学大が34.5%,文教が74.8%です。

 ぐうう,倍以上の差です。だいぶ水を開けられていますねえ。まあ学大の場合,ゼロ免課程が結構ありますので,この部分を除いたら教員就職率はもっとアップするでしょうが,それでも文教の74.8%には及ばないだろうなあ。

 上表のデータをグラフにしましょう。進学者を除く卒業生ベースの教員就職率がイメージしやすいようにします。この場合,横幅も使えるモザイク図が一番。横幅を使って,進学者とそれ以外に分かち,後者の中での教員就職者の比重を可視化します。


 違いがよく分かりますね。進学先も就職先も決まってない進路未定者は,教員養成大学の場合は,多くが教員採用試験の浪人組でしょう。

 これは2つの大学の結果ですが,他にも教員養成大学(学部)はたくさんあります。学大の教員就職率は34.5%ですが,全体の中の位置はどうなのかなあ。国立と私立の分布の差も知りたいところ。国立の教員養成大学は,未だに研究志向が強く,社会のニーズに応えていない,という社説を新聞で読んだことがありますが,国立と私立ではどっちに軍配が上がるか。

 目下,首都圏(1都3県)の分のデータベースを作っているところです。おカネのある研究者なら,バイトを雇って全国の大学(学部)の卒業生の進路DBを作るのも容易でしょうが,私はそうはいきません。
https://twitter.com/tmaita77/status/916614544906117120

 しかるに,限られた労力(資源)から有意義なアウトプットを引き出すのも,研究者の腕の見せ所。首都圏のデータをもとに,教員就職率の分布と,「教員ないしは公務員を目指すなら,**大学の**学部!」ということが分かるデータを作ってみようと思います。

2017年10月2日月曜日

47都道府県の真正待機児童数の推定

 すっかり知れ渡っている,待機児童問題。待機児童とは,保育所に入りたくても入れず,待たされている児童のことです。

 この数はどれほどか。毎年,厚労省が数値を発表していますが,この統計が「抜け」だらけで,実態を把握し切れていないことはよく知られています。「どうせダメだろう」と,保育所への入所を申し込まなかった場合はカウントされない,母親が求職活動をしなかった場合はカウントされないなど…。

 こういう状況に危機感を持ったのか,野村総研が,就学前の乳幼児がいる母親を対象にした大規模調査をもとに,真正の待機児童数を推し量ってくれました。希望しつつも入れなかった乳幼児の数で,厚労省の狭い定義から外れるものも含みます。その数,34万6千人とのこと。
https://mainichi.jp/articles/20170930/k00/00m/040/133000c

 厚労省発表によると,2016年4月時点の待機児童数は2万3553人。ずいぶん違いますねえ。公的統計の背後には,13倍もの暗数があると推測されます。

 さて,上記の真正待機児童の推定数34万6千人ですが,この数は,2016年10月時点の保育所等在所者(約369万人)の9.37%に該当します。保育所等非在所者とは,0~5歳人口から,認可保育所および幼保連携・保育型認定こども園の在所者数を引いた数です。

 私はこの比率(9.37%)を適用して,47都道府県の真正待機児童の数を見積もってみました。各県の0~5歳の保育所等非在所児の9.37%が,希望しつつも入れないでいる,真正の待機児童である。こういう仮定です。


 真正の待機児童数(c)は,保育所等非在所児数(=a-b)に0.0937をかけることで得られます。東京の場合,出てきた数は3万9620人。厚労省発表の2016年4月時点の数値(8466人)と隔たってますね。

 厚労省統計(d)によると,9の県で待機児童数がゼロという素晴らしい結果が出ていますが,母親の生の声をもとにすると,残念ながら4ケタの待機児童がいると推測されます。

 北海道,埼玉,千葉,東京,神奈川,静岡,愛知,大阪,兵庫,福岡では,5ケタの暗数があると見込まれます(黄色マーク)。cの赤太字は,真正待機児童数が当局発表の100倍以上に上る県で,北海道,群馬,岐阜,愛知,和歌山,佐賀が該当します。

 以上は,9.37%という比率を一律に適用したラフ推計です。保育所不足が深刻な都市部では,もっと高い比を乗じるのが妥当でしょうから,真正待機児童数はもっと多くなると思われます。

 ただ言えるのは,待機児童数を掬う現行の網の目があまりにも粗い,ということ。上表の右端に示された潜在需要数に,各自治体は目を向けてもらいたいと思います。