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2017年12月23日土曜日

子どもを大学まで出すのにいくらかかるか

 文科省『子供の学習費調査』(2016年度)の結果が公表されました。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/1268091.htm

 各学年の保護者が2016年度間に支出した教育費の平均額を知ることができます。原資料では「学習費」という言葉になっていますが,ここでは「教育費」ということにしましょう。授業料・PTA会費・給食費・修学旅行費等の学校教育費と,学習塾費・習い事月謝等の学校外教育費からなります。

 言わずもがな,学年によってかなり違います。公立小学校1年生は34.3万円ですが,中学校3年生になると57.1万円になります。高校受験のため,塾通いをさせる家庭が多いためです。

 公私の差も大きく,小学校1年生でいうと,公立は上述の通り34.3万円であるのに対し,私立は184.3万円にもなります。高額な授業料に加え,制服代や通学費などもかさむためでしょう。

 上記の資料には,幼稚園3歳から高校3年生までの保護者が,2016年度間に支出した教育費の平均額が掲載されています。公立と私立に分けてです。これらをつなぎ合わせることで,子どもを高校まで出すのに必要な教育費のトータルを明らかにできます。

 しかるに大学進学率が50%を超える現在,「子ども一人を育てる」=「大学まで出す」という意味合いになってます。願わくは,大学段階までの教育費も知りたいもの。この部分については,日本学生支援機構の『学生生活調査』(2014年度)のデータを使いましょう。国・私立大学の各学年の年間学費(授業料のほか,課外活動費や通学費等も含む)を充てます。
http://www.jasso.go.jp/about/statistics/gakusei_chosa/2014.html

 以上の仮定を置いたうえで,幼稚園3歳から大学4年生までの年間教育費を公立と私立に分けて整理すると,以下の表のようになります。大学の公立欄は,国立大学の数値です。


 どうでしょう。一番下の数値によると,幼稚園から高校まで公立で,大学は国立に進んだ場合,トータルは803万円です。対して,幼稚園から大学までオール私立だと2274万円にもなります。

 右側の累積によると,オール私立の場合,小学校を上げるまでに1000万円かかることが知られます。

 まあ,オール私立のコースをたどる子どもは少数派でしょう。小学生のうち,私立に通う児童は100人に1人くらいですので。多くの子どもがたどるのは,幼稚園は私立,小学校から高校は公立,大学は私立,というコースではないでしょうか。

 この標準コースの教育費総額は,黄色マークの数値を合算することで出せます。結果は右下の赤字の数値で,1120万円です。子ども一人育てるのに必要な教育費は,1120万円。1000万円超えですが,違和感はない数値です。

 安倍政権の「人づくり革命」とやらで,幼児教育と高等教育(一部)の費用が無償化されるとのことですので,額は今後下がるかもしれませんが,そういう楽観を許さない事実があります。

 冒頭の調査結果のエッセンスを各紙が報じていますが,2014年度から2016年度にかけて,学習塾費が増えているとのこと。

 両年度について,各学年の保護者が支出した学習塾費の平均値を採取し,対比させてみると,以下の表のようになります。人数的に多い公立校のデータです。


 右端の増分をみると,ほとんどの学年で増えていますね。小4と小5,高1と高2は,5000円以上の増です(黄色マーク)。高校生で大幅に増えているのは,国から支給される高校就学支援金で浮いた分を,学習塾費に充てる家庭が多いためでしょうか。

 学習塾費の増加について,日本経済新聞のツイッターでは,「安部政権が進める教育無償化。家計は浮いたお金で塾代を増やすことになるような気もします。となるとこれは教育産業への補助金?」と揶揄されていますが,言い得て妙だと思います。
https://twitter.com/nikkei/status/944228808265048065

 多額の税金(1億円!)をかけて育てた(行き場のない)博士が,塾・予備校に流れているといいますが,国が教育費を投じるほど,こういう業界が潤う仕組みになっているのですかねえ。

 それはひとまず置いといて,最初の表を参考に,お子さんに辿らせようとしているコースを想定し,大学まで出すのにかかる教育費総額をシュミレートしてみてください。東京の場合,「幼稚園は私立,小学校は公立,中学から大学は私立」というコースも多いでしょう。地方では,「高校まで公立,大学だけ私立」という家庭も多いかな。

 各段階の公私組み合わせによって,教育費総額を試算するためのツールとして提供いたします。