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2018年6月15日金曜日

光文社新書からの経緯書

 井上智洋『AI時代の新・ベーシックインカム論』(光文社新書,2018年4月刊行)にて,私が作成したグラフを無断使用されました。出典の記載にも不備がありました(掲載誌名の不記載)。

 本件につき,同社新書編集部より経緯説明書(謝罪文)が届きました。無断で使われたのは,『ニューズウィーク日本版』サイトの下記記事の図1です。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/02/20-12.php


 出典記載不備について経緯が書かれていますが,無断使用については一言も言及がありません。法で定められた引用という理解なので,会社の文書で取り立てて謝罪する必要はない,という認識なのでしょう。

 「筆者からの要望で,図表を掲載する決定をしました」と書いてありますが,許諾もなしに,他人の作品を「掲載する決定」を勝手にしてよいのでしょうか。

 記事の一文や二文をカッコ付けで引用するのとはワケが違います。作者の思い入れや労力が多く詰まった写真,イラスト,統計グラフといったコンテンツを使うに際しては,事前に許諾を求めるのが礼儀です。商業出版という営利事業での利用なら,なおのことです。相手の意向によっては,使用料を払うことも求められます。

 光文社さん。そちらが無断で使って下さったのと同じグラフを使用するに際して,別の出版社さんはちゃんと許諾を求めてきましたよ。メールをお見せしましょうか。


 そもそも,『ニューズウィーク日本版』サイトの利用規約には,「コンテンツの無断使用・複写は禁止します」と明記されています。この規定も侵害していることになります。
https://www.newsweekjapan.jp/tos.php

 まあ先方も非は認めているようで,担当編集者のメールに「許諾申請を怠っていました。誠に申し訳ございません」という謝罪の言葉があり,使用料も払うと言ってきました。また,「今後は気を付けます」という文言もありました。もう,同じことはしないでしょうね

 新書の業界も大変で,次から次へと新作を出さないといけないプレッシャーに晒されているのは分かりますが,倫理にもとる行為は慎んでほしいと思います。法に触れるかどうか,ということは関係なくです。

 スタイルアクトという会社が,首都圏の学区別の平均年収を出して注目を集めています。思想や感情の表現ではない,事実としてのデータは著作物ではありません。よって無断で拝借し,商業誌に載せて金儲けしても違法ではありません。でもそんなことをしたら,この会社が黙っていませんし,世間から集中砲火を浴び,業界から追放されることは必至ですよね。

 要は,倫理の問題です。世の中,法で対処できない部分は,人々の「倫理」「良識」で成り立っているのです。

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 この会社の新書の制作過程については,小谷野敦氏も疑問を呈されています。
http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20100124
http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20100904