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2018年7月29日日曜日

職業別の生涯未婚率(2017年)

 2017年の『就業構造基本調査』のデータ分析にのめり込んでいます。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2017/index.html

 この調査の目玉は有業者の所得を調べていることですが,配偶関係も調査項目に入っています。調査対象の有業者が未婚か既婚かも分かるわけです。

 職業とのクロスをとれば職業別の未婚率も出せるわけで,その統計表も公開されています。統計表02500です。性別と年齢も統制できます。e-statにて,「性別 × 職業 × 年齢 × 配偶関係」のクロス表を作るといいでしょう。


 私の年齢層(アラフォー)に注目しようかと思いましたが,世間の関心の高い生涯未婚率を出してみようと思います。字のごとく,生涯未婚のままにとどまる人の割合ですが,統計上は50歳時点の未婚率とされています。この年齢以降,結婚する人はほぼ皆無であろう,という仮定に立つわけです。

 5歳刻みの統計表から出す場合,40代後半と50代前半の未婚率を平均します。男性有業者でいうと,40代後半の未婚率は22.8%,50代前半は17.3%ですので,生涯未婚率は20.1%となります。女性有業者の生涯未婚率はちょっと下がって14.7%です。

 男性労働者の5人に1人,女性労働者の7人に1人が,生涯ずっと未婚のままにとどまると見込まれます。私も,そのうちの一人になりそうです。

 しかるに生涯未婚率は職業によって違っており,性差が逆転する職業も数多くあります。今回の主眼は,それを明らかにすることです。上記の統計表から,68の職業(中分類)の生涯未婚率を計算できます。以下は,その一覧表です。職業大分類に依拠して,敷居の線を引いています。

 母数が少なすぎて率を出せなかったセルは「**」としています。


 黄色マークは最高値,青色マークは最低値ですが,男性は1.2%~59.1%,女性は0.0%~40.8%の分布幅です。

 男性の鉄道運転手の生涯未婚率はわずか1.2%ですか。公共性の高い仕事で安定してますからね。女性の美術家・デザイナー・写真家・映像撮影者の生涯未婚率は40.8%。アーティストの未婚率が高いのは想像できますが,男性の18.3%と比すと性差が大きくなっています。

 どういう職業で生涯未婚率が高いかは,男女で異なるようです。赤字は25%(4分の1)を超える数値ですが,男性はブルーカラー(労務)職,女性は専門職で生涯未婚率が高い傾向にあります。

 女性の研究者,技術者,アーティストの生涯未婚率は高いですね。家庭との両立が難しいからか,十分な収入を得られるので結婚の必要を感じないからか…。

 二次元の散布図にすると,職業ごとのジェンダー差が読み取りやすくなります。横軸に男性,縦軸に女性の生涯未婚率をとった座標上に,それぞれの職業のドットを配置しましょう。


 斜線は均等線で,これより上にあるのは,生涯未婚率が「男性<女性」である職業です。ほとんどが専門職ですね。医師や教員もこのタイプです。右下は「男性>女性」の度合いが高い職業ですが,多くは労務職となっています。

 5年前の2012年データを使って同じデータを作ったことがありますが,傾向は同じですねえ。高度専門職の女性の未婚率が高いこと(家庭との両立困難性)は変わっていないようです。医師の未婚率の性差が縮まっているのは注目点ですが。

 さて,上記のグラフから,女性は収入が高い職業で生涯未婚率が高く,男性はその逆であることがうかがわれます。それも可視化しておきましょう。

 最初の表の右端には,女性が男性より何ポイント高いかという性差を掲げています。この差分が,それぞれの平均所得とどう相関しているか。横軸に後者,縦軸に前者をとった座標上に,両方が分かる64の職業を散りばめてみます。平均所得は,同じ資料の職業別の所得度数分布(200日以上の規則的就業をしている者)から,階級値を使って割り出したものです。


 所得が高い職業ほど,生涯未婚率の性差(男性<女性)が大きい傾向が見受けられます。相関係数は+0.5928です。所得がぶっ飛んで高い医師を外れ値として除外すると,+0.6231までアップします。

 所得の低い男性,所得の高い女性で未婚率は高い。

 これは個人単位のデータからも分かることで,所得階層別の未婚率カーブを性別に描くと「X」型になります(男性は右上がり,女性は右下がり)。上記の職業単位のデータは,同じことを表現しているだけです。

 女性の社会進出が叫ばれ,高度専門職の女性比率も高まっていますが,それは未婚化・少子化という副作用をもたらしてしまうものなのでしょうか。女性の社会進出と少子化の克服は,両立させ得ない「トレード・オフ」の関係なのでしょうか。

 そんなことはありますまい。高度専門職の女性比率が高い欧米では,日本よりも出生率が高い国はほとんどですので。職務との両立を可能ならしめる条件が整っているからでしょう(保育所,育休,テレワーク,フレックスタイム…)。日本で推奨されているような三世代同居とは違います。

 職業別の未婚率に,こうも明瞭なジェンダーが出てくるのは,おそらく日本の特徴ではないかとみられます。女性のハイタレントの活用と少子化の克服は,両立し得ないことではありますまい。