ページ

2018年7月27日金曜日

40代前半夫婦の所得の見積もり

 7月14日の記事では,40代前半男性の所得がバブル期に比してかなり下がっていることを明らかにしました。中央値でみると,1992年では524万円でしたが,2017年では472万円です。この四半世紀で,50万円以上減っています。
http://tmaita77.blogspot.com/2018/07/40.html

 何度も書きますが,大学卒業時に超氷河期だったロスジェネがこのステージに達したことによるでしょう。ロスジェネ効果です。

 この世代も,子どもがもうすぐ高校や大学に進学しますが,その費用の負担はキツイというものです。男性(夫)だけの稼ぎで,子どもを2人大学にやるのは難しいと思われます。「共働きでないとやっていけない」という声が各地で上がっています。だからこそ,幼子がいる親は,血眼になって保活に取り組むのです。

 これから子どもを高校や大学にやる,40代前半の夫婦の所得が,妻の就業タイプによってどう違うかを明らかにしてみましょう。材料として,以下の3つのグループの所得の中央値を計算します。

 A:40代前半の有配偶の正規雇用男性
 B:40代前半の有配偶の正規雇用女性
 C:40代前半の有配偶の非正規雇用女性

 これらを使って,正社員夫婦の所得(A+B),夫正規・妻非正規の夫婦の所得(A+C),夫正規・妻無業の夫婦の所得(Aのみ),を割り出せます。

 2017年の『就業構造基本調査』より,上記の3群の所得分布を得ました(都道府県編,人口・就業に関する統計表02300)。原資料では,配偶関係のカテゴリーが「総数」と「未婚」となってますので,前者から後者を引いた数を有配偶者とみなします。離別者や死別者も含まれちゃいますが,40代前半ではわずかとみていいでしょう。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2017/index.html

 所得が分かるのは,Aが267万人,Bが98万人,Cが161万人です。以下の表は,これら3群の所得の度数分布を,累積相対度数の形に整理したものです。所得階層の区分は,原資料によります。


 中央値は,下から積み上げた累積相対度数が50ジャストの値です。男性正規は500万円台,女性正規は300万円台,女性非正規(パート等)は100万円台前半の階級に含まれることが分かります。

 按分比例を使って,中央値を割り出しましょう。

男性正規:
 按分比=(50.0-42.6)/(61.1-42.6)=0.402
 中央値=500万円+(100万円×0.402)=540.2万円 … A

女性正規:
 按分比=(50.0-40.6)/(61.5-40.6)=0.452
 中央値=300万円+(100万円×0.452)=345.2万円 … B

女性非正規:
 按分比=(50.0-48.5)/(77.2-48.5)=0.052
 中央値=100万円+(50万円×0.052)=102.6万円 … C
 
 40代前半の有配偶者のデータですが,中央値はこうなりました。一部のやり手に影響される平均値はもっと高くなりますが,中央値はこんなものでしょう。これらを組み合わせて,夫婦の所得の3パターンを推し量ることができます。

 夫も妻も正社員の夫婦 = A+B = 885.4万円
 夫は正規・妻は非正規(パート等)の夫婦 = A+C = 642.8万円
 夫は正規・妻は無業(主婦)の夫婦 = A = 540.2万円

 子ども2人を大学にやるのは600万円はないとキツイといいますが,最後の専業主婦世帯はこれを下回っています。妻がパートの世帯は,かろうじて超えるというところ。子どもが18歳になる,40代後半から50代前半になればもっと上がるかもしれませんが,年功賃金が薄れている今,その保証はありません。

 ちなみにこれは全国の数値で,地域別にみれば様相は違っています。所得に地域差があるのは,誰もが知っていますよね。私の郷里の鹿児島は,所得水準が低いので,夫婦が正社員でないと子を2人大学になんてやれない,といわれます。

 私は,上記のA~Cを都道府県別に計算し,40代前半夫婦の所得の3パターンを県ごとに出してみました。以下は,その一覧表です。600万円を超える数値は赤字,800万円以上には黄色マークをつけています。


正社員夫婦でみると全県で600万円を超えますが,妻がパートになると19県に減り,主婦世帯となると2都県しかなくなります。28の県では,夫婦との正社員の共働きでないと,子を2人大学にやるのはキツイと。

 余談ですが,沖縄の正社員夫婦の所得(623万円)が,東京の主婦世帯(676万円)に及ばないというのは驚愕ですね…。

 右端をみると,主婦世帯では600万円を切る県が大半で,500万円にも満たない県も少なくありません。男性の腕一本で家族を養える時代など終わっている,というべきでしょう。

 こんなわけですので,乳幼児がいる親御さんが必死に保活に取り組むというのはよく分かります。しかるに,保育園に入れるかどうかは運に左右される部分も大です。ラッキーな夫婦は,数百万円の妻の稼ぎを失わなくて済み,不運な夫婦はそれを奪われてしまう。

 保育園に入れず妻が離職を強いられた世帯は,子どもの大学の学費を減免したらどうか,という気にもなります。ツイテないロスジェネには慰謝料を与えたらどうかという,過激な提言もありますけど。
https://twitter.com/hayashi_r/status/924804950101696512

 昨日・今日になり,暑さが和らぎましたね。しかし30℃に達しているのは間違いなく,これを涼しいと感じてしまうのは,感覚が狂っていることの証左です。慣れって恐ろしいものです。