9月も今日でおしまいです。酷暑はおさまりましたが,相次ぐ台風の通過でうんざりします。台風24号の影響で今晩の首都圏の路線は軒並み運休。しかし安堵もつかの間,今度は台風25号が同じコースでやってくるそうです。地球温暖化の影響でしょうか。
台風一過で,明日から晴天日がちょっと続きますので,布団を干すことにしましょう。生協の配達員の人と話したのですが,「お日様は貴重」です。
さて,恒例の教員不祥事報道の整理です。今月,私がネット上で把握した教員不祥事報道は34件です。赤字は注目事案。若手女性教員の研究授業で,「結婚してないのですか?」と挙手して発言した,59歳の男性教諭。
私の頃もいましたよ。中2の時,教育実習にきた女子学生が自己紹介した後,生徒から質問が出なかったので,担任の男性教員が「お前ら,何か聞かんか。『彼氏いるんですか?』とか」と言いました。
その実習生は,ちょっと顔を引きつらせて「いません」と答えましたが,実習の初めから不快極まりなかったことでしょう。今だったら,大学の実習担当に訴えられて,懲戒処分モノです。
秋らしくなってきました。涼しくなったので,昼食後は自宅裏の高台に上り,缶コーヒーを飲みながら相模湾を望むのが日課です。食後の運動になっていい。週末の昼,長井水産まで歩いて海鮮丼にあやかることもできるようになりました。
ただ明日は,台風一過で暑くなるので無理そうです。季節の変わり目なんで,夏服と冬服の両方をハンガーで吊るしています。来週の終わりになったら,半袖・半パンをしまえるかな。
日によって温度差が激しいので,体調管理に留意されますよう。背景を秋晴れ模様にチェンジします。
<2018年9月の教員不祥事報道>
・財布置引で中学講師を停職 奈良「ばれないと思った」
(9/1,京都新聞,奈良,中,男,26)
・警官に注意された後に酒気帯び運転 中学教諭を免職
(9/1,京都新聞,静岡,中,男,48)
・内申書作成ミスで4人不合格、進路担当を減給
(9/2,読売,大阪,中,男,57)
・長野の中学教諭逮捕 ひき逃げ疑い 男性けが
(9/2,信濃毎日,長野,中,男,40)
・体罰の男性教諭を県教委が処分 宇都宮の中学バレー部顧問
(9/4,産経,栃木,中,男,52)
・女性に触れた疑い 教諭を逮捕(9/2,NHK,福岡,特,男,29)
・商業施設で陰部出して歩く、容疑の中等教育学校講師を逮捕
(9/3,サンスポ,兵庫,中等,男,28)
・免許失効中に運転 教諭を停職(9/5,NHK,青森,中,男,53)
・小学校教諭 無免許運転で検挙(9/6,NHK,大分,小,女,20代)
・女性に暴行 高校講師を逮捕 大阪府警鶴見署
(9/6,産経,大阪,高,男,37)
・帰省先で盗撮容疑の小学校教諭を懲戒免職(9/10,産経,山梨,小,男,38)
・小学校の男性教諭が児童を殴り懲戒処分(9/10,日テレ,鹿児島,小,男,60)
・若手女性教員の授業で手を挙げ「先生、結婚してないんですか」
(9/11,産経,兵庫,中,男,59)
・都市大塩尻高の教諭処分 生徒に「行き過ぎた指導」
(9/11,信濃毎日,長野,高,男)
・特別支援学校の男性教諭が子どもに暴言や暴力(9/12,朝日,愛知,特,男)
・わいせつ行為で教諭免職 19年前、教え子にキスや性行為
(9/12,サンスポ,東京,高,男,59)
・男子高校生の口に8分間指入れた疑い(9/13,朝日,千葉,小,男,29)
・愛知:無断欠勤111日 小学校の男性教諭を免職処分
(9/13,毎日,愛知,小,男,47)
・女子バレーボール部で体罰 監督の男性教諭を減給
(9/13,産経,埼玉,高,男,47)
・「僕は記憶が弱い…」生徒に書かせる 中学教諭処分
(9/13,京都新聞,兵庫,中,男,37)
・酒気帯び運転の教諭、パトカーに止められ発覚
(9/14,埼玉新聞,埼玉,飲酒運転:特男28,交通事故:高男54,特女28)
・教諭「かっとなった」 組体操ふざけた中1を殴る蹴る
(9/14,沖縄タイムス,沖縄,中,男,48)
・知的障害児童に不適切行為で停職(9/18,NHK,岐阜,小,男,60)
・中1男子にわいせつ行為 大阪市立小教諭を懲戒免職
(9/19,サンスポ,大阪,小,男,34)
・小学校教諭を逮捕 中学生を買春疑い
(9/20,日刊スポーツ,神奈川,小,男,30)
・淫行疑いで中学教員逮捕 山口・宇部(9/21,産経,山口,中,男,37)
・小学校教諭が逮捕、女性宅に窃盗目的で侵入の疑い
(9/24,日刊スポーツ,茨城,小,男,50)
・男子高校生の下半身触る、痴漢容疑で高校教諭逮捕
(9/25,日刊スポーツ,京都,高,男,32)
・中学校教諭が盗撮で書類送検(9/25,NHK,富山,中,男,20代)
・中学校講師が体罰か 生徒が骨折(9/25,NHK,兵庫,中,男,20代)
・買春の疑い 小学校講師を逮捕(9/26,NHK,滋賀,小,男,59)
・電車内で痴漢容疑で中学教諭逮捕 (9/27,産経,奈良,中,男,45)
・<懲戒免職>府教委、教諭ら3人を 痴漢行為や盗撮など
(9/29,毎日,大阪,痴漢:小男27,盗撮:男34,万引:男23)
・元校長「風俗に」職員組合の4800万円着服か
(9/29,読売,高知,小,男,60)
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2018年9月30日日曜日
2018年9月24日月曜日
なぜ非正規でいるか
雇用の非正規化は,日本社会の変化を言い表す典型ワードの一つです。戦後初期の頃までは自営が多かったのですが,今では働く人の大半は雇用労働者です。
その雇用労働者は,正規雇用者と非正規雇用者に分かれます。「非」という冠がつくことで,後者は何やら劣っているような印象を与えますが,実際のところそうです。同じ仕事をしていても給与が違いますし,職場でも見下されたような態度をとられることがしばしば。日本は役職を重視する社会ですので。
私は国際統計をよくいじるのですが,国際統計の労働者のカテゴリー分けでは,正規・非正規なんていうのはないのですよね。労働時間に依拠して,フルタイム,パートタイムというのはありますが。正規・非正規という,上下関係を彷彿させる区分けをしているのは,日本の特徴なのかもしれません。
それはさておき,非正規雇用者は増えてきています。とくに90年代以降の増加が顕著です。『就業構造基本調査』によると,1992年の非正規雇用者(パート,バイト,嘱託,派遣社員)は952万人でしたが,四半世紀後の2017年では2133万人にまで膨れ上がっています。倍以上の増加です。
ツイッターでも発信しましたが,正規雇用者と非正規雇用者の比は以下のように変化しました。
1992年=4:1
2017年=3:2
今日では,雇用労働者の4割は非正規雇用者です。雇用の非正規化の数値的な表現です。大学進学率の上昇でバイト学生が増えていること,年金の足しにプチ労働をしている高齢者が増えていることによりますが,この変化はスゴイ。
生産年齢層でみても,非正規雇用率はアップしています。5歳刻みの年齢層ごとに非正規雇用率を出し,折れ線でつないだグラフにしてみましょう,下図は,男女に分けて,1992年と2017年のカーブを描いたものです。
20~50代の生産年齢層ですが,どの層でも雇用の非正規率は上がっています。20代前半の上昇幅が大きいですが,これは学生バイトが増えているためです。
女性の非正規率も上がっていますね。男女共同参画の取組の成果で「M字」の底が浅くなった,女性の社会進出が進んだといわれますが,働く女性が増えたといっても,増分の多くは非正規のようです。
働き盛りの男性の非正規率も上がっています。私の年齢層(40代前半)でいうと,1992年の1.8%から2017年の9.6%にアップです。学校卒業時に氷河期だったという世代的要因もあるでしょう。90年代初頭では,この層の雇用労働者では非正規はほぼ皆無でしたが,最近では1割ほどいます。
しかるに,非正規というのも一つの働き方です。ライト・柔軟でゆるい働き方をできる。非正規の仕事をしている人の思惑は様々でしょう。
非正規雇用者があまりに増えてきたことを受けてか,2017年の『就業構造基本調査』では,非正規雇用の人たちに対し,現在の就業形態を選んでいる理由を答えてもらっています。「なぜ非正規でいるのですか?」という問いです。
選択肢は7つですが,「その他」という曖昧なものを除いた6つのいずれかを答えた非正規雇用者を拾ってみます。男性は501万人,女性は1284万人です。5歳刻みの年齢層ごとに,6つの理由の内訳を面グラフで表現すると,以下のようになります。
ライフステージの違い,ジェンダーの違いが出ていますね。
学生が多い若年層では,学業の合間に小遣いや学費を稼ぎたいという理由が多くを占めますが,働き盛りになると,男性では「正規の仕事がないから」という理由が垂れてきます。女性では,「育児・介護と両立」「家計補助」が幅を利かします。明瞭なジェンダー差です。
「専門技能を活かせる」という理由も結構あるのですね。うーん。何とか自分の専門を生かしたいと,正規雇用の枠が著しく少ない専門職にしがみついている人たちでしょうか。図書館司書や大学非常勤講師とか…。これらの非正規率はハンパない。
ここで注目されるのは,上図のブラックの人たちです。正規の仕事がないので,やむを得ず非正規でいる人たち。いわゆる不本意非正規です。実数にすると男女合わせて268万2800人。京都府の人口よりちょっと多いくらいです。
男性の非正規では,不本意の人が多いようです。当然といえばそうです。ガツガツ稼ぐことを期待されますのでね。同じ仕事なのに正社員と給与差が大きいのは腑に落ちない,願わくは正社員になりたい。こう思っている人が多いでしょう。
昨今,どの企業も人手不足ですが,これらの人たちを掬うことはできないものでしょうか。まっさらのピチピチの新卒ばかりに目が向けられますが,非正規とはいえ,類似の職務を経験してきた人たちのほうが訓練費は安く上がりそうなものですけど。
年を食った人は人件費がかさむといわれるかもしれませんが,年齢に相応した高い給与を望んでいる人ばかりではないですよ,きっと。悪しき年功賃金は日本でも崩れつつありますし。
「非正規→正規」という流れの後押しばかりが目指されますが,その反対も起こり得るかもしれません。今後も,非正規の比重は高まっていくと思いますが,非正規がマジョリティになると,責任の重圧に晒される正規の働き方が疑問視されるようにもなるでしょう。
ツイッターでつぶやきましたが,AIの台頭により,世の中の仕事は機械がやってくれるようになります。いっそのことみんな非正規になって,ゆるい働き方をして,遊んで暮らせばいいのではないか。
パート大国のオランダのように,正規・非正規の給与差や社会保障格差をなくすならば,ゆるい働き方を志向する人たちは出てきます。私なら,そっちに傾きますけどね。最近メディアでよく報じられる「プチ勤務」「ちょい勤務」という言葉は好きです。
人間の労働に取って代わる機械労働が発達するまでは,生活の利便性が落ちるでしょうが,それでもいいのではないか。お客様を神様を崇める過剰サービスや,即日配達なんてしてもらわなくてもいい。みんながゆるい働き方し,健康で文化的な生活が営めればいい。
完全な絵空事ですが,非正規がマジョリティになり正規がマイノリティになったとき,どういう事態になるか。いっそ,後者を圧し潰してしまえ。こんなふうにも思うのです。
その雇用労働者は,正規雇用者と非正規雇用者に分かれます。「非」という冠がつくことで,後者は何やら劣っているような印象を与えますが,実際のところそうです。同じ仕事をしていても給与が違いますし,職場でも見下されたような態度をとられることがしばしば。日本は役職を重視する社会ですので。
私は国際統計をよくいじるのですが,国際統計の労働者のカテゴリー分けでは,正規・非正規なんていうのはないのですよね。労働時間に依拠して,フルタイム,パートタイムというのはありますが。正規・非正規という,上下関係を彷彿させる区分けをしているのは,日本の特徴なのかもしれません。
それはさておき,非正規雇用者は増えてきています。とくに90年代以降の増加が顕著です。『就業構造基本調査』によると,1992年の非正規雇用者(パート,バイト,嘱託,派遣社員)は952万人でしたが,四半世紀後の2017年では2133万人にまで膨れ上がっています。倍以上の増加です。
ツイッターでも発信しましたが,正規雇用者と非正規雇用者の比は以下のように変化しました。
1992年=4:1
2017年=3:2
今日では,雇用労働者の4割は非正規雇用者です。雇用の非正規化の数値的な表現です。大学進学率の上昇でバイト学生が増えていること,年金の足しにプチ労働をしている高齢者が増えていることによりますが,この変化はスゴイ。
生産年齢層でみても,非正規雇用率はアップしています。5歳刻みの年齢層ごとに非正規雇用率を出し,折れ線でつないだグラフにしてみましょう,下図は,男女に分けて,1992年と2017年のカーブを描いたものです。
20~50代の生産年齢層ですが,どの層でも雇用の非正規率は上がっています。20代前半の上昇幅が大きいですが,これは学生バイトが増えているためです。
女性の非正規率も上がっていますね。男女共同参画の取組の成果で「M字」の底が浅くなった,女性の社会進出が進んだといわれますが,働く女性が増えたといっても,増分の多くは非正規のようです。
働き盛りの男性の非正規率も上がっています。私の年齢層(40代前半)でいうと,1992年の1.8%から2017年の9.6%にアップです。学校卒業時に氷河期だったという世代的要因もあるでしょう。90年代初頭では,この層の雇用労働者では非正規はほぼ皆無でしたが,最近では1割ほどいます。
しかるに,非正規というのも一つの働き方です。ライト・柔軟でゆるい働き方をできる。非正規の仕事をしている人の思惑は様々でしょう。
非正規雇用者があまりに増えてきたことを受けてか,2017年の『就業構造基本調査』では,非正規雇用の人たちに対し,現在の就業形態を選んでいる理由を答えてもらっています。「なぜ非正規でいるのですか?」という問いです。
選択肢は7つですが,「その他」という曖昧なものを除いた6つのいずれかを答えた非正規雇用者を拾ってみます。男性は501万人,女性は1284万人です。5歳刻みの年齢層ごとに,6つの理由の内訳を面グラフで表現すると,以下のようになります。
ライフステージの違い,ジェンダーの違いが出ていますね。
学生が多い若年層では,学業の合間に小遣いや学費を稼ぎたいという理由が多くを占めますが,働き盛りになると,男性では「正規の仕事がないから」という理由が垂れてきます。女性では,「育児・介護と両立」「家計補助」が幅を利かします。明瞭なジェンダー差です。
「専門技能を活かせる」という理由も結構あるのですね。うーん。何とか自分の専門を生かしたいと,正規雇用の枠が著しく少ない専門職にしがみついている人たちでしょうか。図書館司書や大学非常勤講師とか…。これらの非正規率はハンパない。
ここで注目されるのは,上図のブラックの人たちです。正規の仕事がないので,やむを得ず非正規でいる人たち。いわゆる不本意非正規です。実数にすると男女合わせて268万2800人。京都府の人口よりちょっと多いくらいです。
男性の非正規では,不本意の人が多いようです。当然といえばそうです。ガツガツ稼ぐことを期待されますのでね。同じ仕事なのに正社員と給与差が大きいのは腑に落ちない,願わくは正社員になりたい。こう思っている人が多いでしょう。
昨今,どの企業も人手不足ですが,これらの人たちを掬うことはできないものでしょうか。まっさらのピチピチの新卒ばかりに目が向けられますが,非正規とはいえ,類似の職務を経験してきた人たちのほうが訓練費は安く上がりそうなものですけど。
年を食った人は人件費がかさむといわれるかもしれませんが,年齢に相応した高い給与を望んでいる人ばかりではないですよ,きっと。悪しき年功賃金は日本でも崩れつつありますし。
「非正規→正規」という流れの後押しばかりが目指されますが,その反対も起こり得るかもしれません。今後も,非正規の比重は高まっていくと思いますが,非正規がマジョリティになると,責任の重圧に晒される正規の働き方が疑問視されるようにもなるでしょう。
ツイッターでつぶやきましたが,AIの台頭により,世の中の仕事は機械がやってくれるようになります。いっそのことみんな非正規になって,ゆるい働き方をして,遊んで暮らせばいいのではないか。
パート大国のオランダのように,正規・非正規の給与差や社会保障格差をなくすならば,ゆるい働き方を志向する人たちは出てきます。私なら,そっちに傾きますけどね。最近メディアでよく報じられる「プチ勤務」「ちょい勤務」という言葉は好きです。
人間の労働に取って代わる機械労働が発達するまでは,生活の利便性が落ちるでしょうが,それでもいいのではないか。お客様を神様を崇める過剰サービスや,即日配達なんてしてもらわなくてもいい。みんながゆるい働き方し,健康で文化的な生活が営めればいい。
完全な絵空事ですが,非正規がマジョリティになり正規がマイノリティになったとき,どういう事態になるか。いっそ,後者を圧し潰してしまえ。こんなふうにも思うのです。
2018年9月22日土曜日
スマホと暴走族
暴走族。一般道を傍若無人に走り回り,集団非行もしでかす厄介者ですが,私が子どもの頃に比べて,メンバーの数は大きく減ってきています。
警察庁の統計によると,ピークは1982年で4万2000人ほどだったのが,2017年では6220人となっています。ピーク時の7分の1です。
減った理由については,警察の締め付けが厳しくなったことに加え,バイクに費やす時間もカネもなくなっていること,別の娯楽(ネットなど)も出てきたこと,などが指摘されています。
3番目に関わることですが,今日の沖縄タイムスに興味深い記事が出ていました。「沖縄の暴走族が激減したワケとは? 単車よりスマホ?」というものです。曰く,「スマホがあるから,昔と違ってすぐ人とつながれる。検挙されるリスクが高い暴走より他の遊びをしようと,少年たちの意識が大きく変わったからではないか」とのこと。
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/318570
少年がなぜ暴走族を結成して暴れ回るかについては,自己顕示欲の発現とか,社会への不満をぶつけるためとか言われますが,やっぱり仲間との「つながり」を求めるためなんですよね。通常の生活の場(家庭,学校…)に居場所を見いだせない,寂しい子たちなわけです。
しかし今では,こんな派手なことをせずとも,スマホを介して他者とつながることができます。若者の「ウチ化」をもたらしているといわれるスマホですが,よからぬことから手を引かせている効用もあるのだな,と思いました。
ここ数年のスマホ普及率と,暴走族人員数の推移をデータで固めてみると,以下のようになります。
スマホは2010年頃から普及し始め,2017年の世帯普及率は75.1%に達しています。高齢世帯以外は,ほぼ全ての世帯に1台はあるとみてよいでしょう。これとパラレルに暴走族のメンバーも減少傾向。
これは単なる共変傾向で,前者が後者をもたらしている因果関係とは言い切れませんが,変化が最も大きい時期が重なっているのですよね。これは,グラフにしたほうが分かりやすいでしょう。
横軸にスマホ普及率,縦軸に暴走族人員数をとった座標上に,2010~17年のドットを落とし線でつないでみます。
ドットは右下にシフトしますが,2011年と2012年の距離が最も大きいのですよね。スマホの普及率上昇と,暴走族人員の減少が共に最も顕著だった時期です。まあ,これだけをもって因果を推測するのは乱暴ですので,一応の事実として適示しておきます。
社会が適当なオプションを与えることで,青少年がエネルギーを向ける方向というのはガラッと変わるものです。
成長するにつれて,子どもにとって居心地のよい居場所,自身の思考や行為の拠り所となる準拠集団は,家族から仲間集団にシフトします。この仲間集団にはよいものと悪いものがあり,暴走族や非行集団は後者の極地です。
今では仲間集団の形態は多様化しており,ネットでのコミュニティも大きな位置を占めるようになっています。これを健全な方向に上手く育てることができれば,非行防止の上でも大きく寄与するでしょう。
T.ハーシのボンド理論で言われているように,社会との絆(ボンド)がある少年は悪さをしません。そのボンドは時代と共に多様化しており,現在ではネット上でのつながりが台頭してきています。あと10年後には,また違う形のものが出てくるでしょう。
それを異質なもの,受け入れがたいものと頭から排除しないで,「こういうつながり方もある」と青少年に提示してあげるのは,上の世代のなすべきことです。
警察庁の統計によると,ピークは1982年で4万2000人ほどだったのが,2017年では6220人となっています。ピーク時の7分の1です。
減った理由については,警察の締め付けが厳しくなったことに加え,バイクに費やす時間もカネもなくなっていること,別の娯楽(ネットなど)も出てきたこと,などが指摘されています。
3番目に関わることですが,今日の沖縄タイムスに興味深い記事が出ていました。「沖縄の暴走族が激減したワケとは? 単車よりスマホ?」というものです。曰く,「スマホがあるから,昔と違ってすぐ人とつながれる。検挙されるリスクが高い暴走より他の遊びをしようと,少年たちの意識が大きく変わったからではないか」とのこと。
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/318570
少年がなぜ暴走族を結成して暴れ回るかについては,自己顕示欲の発現とか,社会への不満をぶつけるためとか言われますが,やっぱり仲間との「つながり」を求めるためなんですよね。通常の生活の場(家庭,学校…)に居場所を見いだせない,寂しい子たちなわけです。
しかし今では,こんな派手なことをせずとも,スマホを介して他者とつながることができます。若者の「ウチ化」をもたらしているといわれるスマホですが,よからぬことから手を引かせている効用もあるのだな,と思いました。
ここ数年のスマホ普及率と,暴走族人員数の推移をデータで固めてみると,以下のようになります。
スマホは2010年頃から普及し始め,2017年の世帯普及率は75.1%に達しています。高齢世帯以外は,ほぼ全ての世帯に1台はあるとみてよいでしょう。これとパラレルに暴走族のメンバーも減少傾向。
これは単なる共変傾向で,前者が後者をもたらしている因果関係とは言い切れませんが,変化が最も大きい時期が重なっているのですよね。これは,グラフにしたほうが分かりやすいでしょう。
横軸にスマホ普及率,縦軸に暴走族人員数をとった座標上に,2010~17年のドットを落とし線でつないでみます。
ドットは右下にシフトしますが,2011年と2012年の距離が最も大きいのですよね。スマホの普及率上昇と,暴走族人員の減少が共に最も顕著だった時期です。まあ,これだけをもって因果を推測するのは乱暴ですので,一応の事実として適示しておきます。
社会が適当なオプションを与えることで,青少年がエネルギーを向ける方向というのはガラッと変わるものです。
成長するにつれて,子どもにとって居心地のよい居場所,自身の思考や行為の拠り所となる準拠集団は,家族から仲間集団にシフトします。この仲間集団にはよいものと悪いものがあり,暴走族や非行集団は後者の極地です。
今では仲間集団の形態は多様化しており,ネットでのコミュニティも大きな位置を占めるようになっています。これを健全な方向に上手く育てることができれば,非行防止の上でも大きく寄与するでしょう。
T.ハーシのボンド理論で言われているように,社会との絆(ボンド)がある少年は悪さをしません。そのボンドは時代と共に多様化しており,現在ではネット上でのつながりが台頭してきています。あと10年後には,また違う形のものが出てくるでしょう。
それを異質なもの,受け入れがたいものと頭から排除しないで,「こういうつながり方もある」と青少年に提示してあげるのは,上の世代のなすべきことです。
2018年9月20日木曜日
部活大好き教員
昨日の東洋経済オンラインに「手抜き授業をする『部活大好き教師』は辞めよ」という記事が出ています。手厳しいタイトルですが,元文科省事務次官・前川喜平氏が書かれたものです。
https://toyokeizai.net/articles/-/236918
部活指導が教員の過重労働の大きな原因になっている。こう指摘されて久しいですが,それに情熱を注いでいる教員がいるのも確かです。部活指導をしたいがために教員を志す学生もいるでしょう。
私の中学にも,こういう教員はいました。バスケ部の顧問をしている体育教師でしたが,「俺は今度の大会に賭けている」が口癖で,いつも夕方遅くまで,また土日も猛練習させていました。
しからば本業の授業はといったら,これが酷かった。この人は臨時免許状を付与されて社会科の授業も持っており,私は地理の授業を受けましたが,教科書の太字を黒板に書き出して写させるだけ。説明も,ほとんど教科書の棒読み。「おれ免許ないんだけど許してくれや」と言ってましたが,到底許せるレベルではありません。おそらくは,授業準備に1分たりともかけていないと思わます。
上記の記事でいわれている,手抜き授業をする「部活大好き教師」の典型です。
困りものですが,こういう教員ってどれくらいいるのでしょう。OECDの国際教員調査「TALIS 2013」では,中学校教員に週間の課外活動指導時間(≒部活指導時間)と,授業準備時間(自宅での作業含む)を訊いています。この2つを対比することで,部活大好き教員を取り出せないか。こう考えました。
http://www.oecd.org/education/school/talis-2013-results.htm
教員の本務は授業ですので,普通の教員なら,部活指導時間より授業準備時間のほうが長いでしょう。しかし日本では,そうではない教員が数多くいます。個票データを使って,6つの国のフルタイム教員を取り出し,「課外活動指導時間/授業準備時間」比の分布をとってみました。「瑞」はスウェーデンをさします。
日本以外の国では「1.0未満」,つまり課外活動(部活)指導時間が授業準備時間より短い教員が大半です。フランスとスウェーデンでは,こういう教員が9割以上です。
しかるに日本では,部活指導時間のほうが長い教員が半分います。部活指導時間が授業準備時間の倍以上の教員も,25.3%います。4人に1人です。部活指導にかまけて,本業の授業をなおざりにしている「部活大好き教員」とみなせるでしょうか。
しかし,嫌々やらされている教員もいるでしょう。そこで,職業満足度とのクロスをして,もうちょっと絞り込みます。上図の緑色の教員のうち,仕事に満足している者を取り出します。「全体的にいって,自分の仕事に満足している」という項目に,「とてもそうだ」ないしは「そうだ」と答えた教員です。
部活大好き教員
=課外活動指導時間が授業準備時間の2倍以上で,仕事に満足している教員
こういう定義を据えて「部活大好き教員」を取り出し,各国のフルタイム教員のサンプルに占める比率を出してみました。下図は36か国のランキングです。
日本は20.0%で最も高くなっています。部活指導時間が授業準備時間の2倍以上で,かつ今の仕事に満足感を覚えている。こういう「部活大好き教員」が5人に1人と見積もられます。
北欧では,こういう教員はおぼ皆無ですね。そもそも学校での部活という概念がなく,この手の活動は地域のスポーツクラブ等に委ねられていますので。
日本の中学・高校であまりに幅を利かせ,教員の本業たる授業をも疎かにさせている部活。これを外部化させ,学校での部活時間・日数を制限しようという動きも出ています。部活動指導員が正規の学校職員に位置づけられたのは,その最たるものです。
冒頭の前川氏の記事では,手抜き授業をする部活大好き教員は,教員という仕事を辞め部活指導員になったらどうか,と提言しています。授業をなおざりにされるのは,生徒の学習権の侵害にもなりますので,あながち的外れな言でもありません。私も,中1の時の社会科教師には,同じことを言いたい気持ちです。
ただ,ここで抽出した「部活大好き教員」の中には,部活指導も授業準備もがんばっている教員もいるでしょう。バーンアウト寸前の人です。前者の重荷を下ろさないといけません。
あと10年後には,日本の中高でも,学校での部活の位置づけが大きく変わっていると思います。部活指導を頑張りたいがために教員を志す若者は,部活動指導員のようなポストも視野に入れたほうが得策です。
https://toyokeizai.net/articles/-/236918
部活指導が教員の過重労働の大きな原因になっている。こう指摘されて久しいですが,それに情熱を注いでいる教員がいるのも確かです。部活指導をしたいがために教員を志す学生もいるでしょう。
私の中学にも,こういう教員はいました。バスケ部の顧問をしている体育教師でしたが,「俺は今度の大会に賭けている」が口癖で,いつも夕方遅くまで,また土日も猛練習させていました。
しからば本業の授業はといったら,これが酷かった。この人は臨時免許状を付与されて社会科の授業も持っており,私は地理の授業を受けましたが,教科書の太字を黒板に書き出して写させるだけ。説明も,ほとんど教科書の棒読み。「おれ免許ないんだけど許してくれや」と言ってましたが,到底許せるレベルではありません。おそらくは,授業準備に1分たりともかけていないと思わます。
上記の記事でいわれている,手抜き授業をする「部活大好き教師」の典型です。
困りものですが,こういう教員ってどれくらいいるのでしょう。OECDの国際教員調査「TALIS 2013」では,中学校教員に週間の課外活動指導時間(≒部活指導時間)と,授業準備時間(自宅での作業含む)を訊いています。この2つを対比することで,部活大好き教員を取り出せないか。こう考えました。
http://www.oecd.org/education/school/talis-2013-results.htm
教員の本務は授業ですので,普通の教員なら,部活指導時間より授業準備時間のほうが長いでしょう。しかし日本では,そうではない教員が数多くいます。個票データを使って,6つの国のフルタイム教員を取り出し,「課外活動指導時間/授業準備時間」比の分布をとってみました。「瑞」はスウェーデンをさします。
日本以外の国では「1.0未満」,つまり課外活動(部活)指導時間が授業準備時間より短い教員が大半です。フランスとスウェーデンでは,こういう教員が9割以上です。
しかるに日本では,部活指導時間のほうが長い教員が半分います。部活指導時間が授業準備時間の倍以上の教員も,25.3%います。4人に1人です。部活指導にかまけて,本業の授業をなおざりにしている「部活大好き教員」とみなせるでしょうか。
しかし,嫌々やらされている教員もいるでしょう。そこで,職業満足度とのクロスをして,もうちょっと絞り込みます。上図の緑色の教員のうち,仕事に満足している者を取り出します。「全体的にいって,自分の仕事に満足している」という項目に,「とてもそうだ」ないしは「そうだ」と答えた教員です。
部活大好き教員
=課外活動指導時間が授業準備時間の2倍以上で,仕事に満足している教員
こういう定義を据えて「部活大好き教員」を取り出し,各国のフルタイム教員のサンプルに占める比率を出してみました。下図は36か国のランキングです。
日本は20.0%で最も高くなっています。部活指導時間が授業準備時間の2倍以上で,かつ今の仕事に満足感を覚えている。こういう「部活大好き教員」が5人に1人と見積もられます。
北欧では,こういう教員はおぼ皆無ですね。そもそも学校での部活という概念がなく,この手の活動は地域のスポーツクラブ等に委ねられていますので。
日本の中学・高校であまりに幅を利かせ,教員の本業たる授業をも疎かにさせている部活。これを外部化させ,学校での部活時間・日数を制限しようという動きも出ています。部活動指導員が正規の学校職員に位置づけられたのは,その最たるものです。
冒頭の前川氏の記事では,手抜き授業をする部活大好き教員は,教員という仕事を辞め部活指導員になったらどうか,と提言しています。授業をなおざりにされるのは,生徒の学習権の侵害にもなりますので,あながち的外れな言でもありません。私も,中1の時の社会科教師には,同じことを言いたい気持ちです。
ただ,ここで抽出した「部活大好き教員」の中には,部活指導も授業準備もがんばっている教員もいるでしょう。バーンアウト寸前の人です。前者の重荷を下ろさないといけません。
あと10年後には,日本の中高でも,学校での部活の位置づけが大きく変わっていると思います。部活指導を頑張りたいがために教員を志す若者は,部活動指導員のようなポストも視野に入れたほうが得策です。
2018年9月18日火曜日
無断転載の使用料を払わせる
私が書いた記事を無断転載している匿名ブログがあり,メールで指摘し削除させました。よくあることですが,今回はもう一段重ねて,使用料を払ってもらいました。これは初めてのことです。
ツイッターでつぶやいた所,多くの人が興味を持ってくださり,「自分も似たような被害に遭うことがある。経緯を教えて欲しい」というリクエストがありましたので,ここに記録することにします。
https://twitter.com/tmaita77/status/1041164641068441600
無断転載されたのは,9月5日にニューズウィーク日本版サイトに公開した「東大生の親の6割以上は年収950万円以上」という記事です。発見したのは,3日経った8日の夕方。
当該ブログの問い合わせフォームから,以下のメッセージを送りました。
**********
この記事(URL記載)ですが,私がニューズウィーク日本版に書いた記事( 下記)の転載ですね。タイトルとデータは同一,文章も「です・ ます」調にしただけですね。著作権侵害です。 すぐに削除されたい
9月8日 17:37
**********
1時間ほど経過して確認したところ,問題の転載記事は削除されていました。
いつもならこれでおしまいですが,当該ブログは投資のノウハウをメインにしたもので,アフィリエイトやアドセンス広告をベタベタ貼った営利性の強いものでしたので,使用料を請求することを思い立ちました。
問い合わせフォームから,2度目のメッセージを送りました。
**********
記事ですが,削除を確認しました。追加の要望ですが, 無断転載されていた間の著作物使用料として5000円を申し受け ます。下記口座に入金ください。
〇〇銀行 〇〇〇〇〇〇支店 普通 〇〇〇〇〇〇〇〇 舞田敏彦
期日は,2018年9月20日とさせていただきます。記事の控えはとってあります。入金がない場合, ニューズウィーク版元のCCCメディアハウス社と協議し対応を考 えます。
9月8日 18:51
**********
さあ,どう出てくるかと待っていた所,一週間ほど経った16日のお昼前に,以下のメールが届きました。
**********
●●●●というブログをやっている者です。先日の要望を受けて9月14日金曜日の午前10時半頃に、 5000円の振り込みをさせていただきました。「●●●●●●」 という名義での振り込みになっています。この度はご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。今後、 このようなこのようなことのないように十分に気をつけます。
9月16日 11:41
ツイッターでつぶやいた所,多くの人が興味を持ってくださり,「自分も似たような被害に遭うことがある。経緯を教えて欲しい」というリクエストがありましたので,ここに記録することにします。
https://twitter.com/tmaita77/status/1041164641068441600
無断転載されたのは,9月5日にニューズウィーク日本版サイトに公開した「東大生の親の6割以上は年収950万円以上」という記事です。発見したのは,3日経った8日の夕方。
当該ブログの問い合わせフォームから,以下のメッセージを送りました。
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この記事(URL記載)ですが,私がニューズウィーク日本版に書いた記事(
9月8日 17:37
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1時間ほど経過して確認したところ,問題の転載記事は削除されていました。
いつもならこれでおしまいですが,当該ブログは投資のノウハウをメインにしたもので,アフィリエイトやアドセンス広告をベタベタ貼った営利性の強いものでしたので,使用料を請求することを思い立ちました。
問い合わせフォームから,2度目のメッセージを送りました。
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記事ですが,削除を確認しました。追加の要望ですが,
〇〇銀行 〇〇〇〇〇〇支店 普通 〇〇〇〇〇〇〇〇 舞田敏彦
期日は,2018年9月20日とさせていただきます。記事の控えはとってあります。入金がない場合,
9月8日 18:51
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さあ,どう出てくるかと待っていた所,一週間ほど経った16日のお昼前に,以下のメールが届きました。
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●●●●というブログをやっている者です。先日の要望を受けて9月14日金曜日の午前10時半頃に、
9月16日 11:41
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仕上げとして,私は以下の返信をしました。
**********
今後は気を付けてください。他にも,こういう転載記事を載せているなら, 早急に削除したほうがいいです。転載期間が長期にわたると,相手によっては多額の使用料( 損害賠償)を請求されることになります。
9月16日 12:05
**********
以上が経緯です。この人は使用料の支払いに応じましたが,そうでない場合は弁護士を通して請求,それでも応じない場合は発信者を突き止め裁判を起こすつもりでいました。このプロセスを一度経験したいと思っていたのもあります。業務を委託する弁護士の目星もつけていました。
記事の無断転載・商用利用という権利侵害は明白ですので,弁護士を通して発信者情報開示請求すれば,プロバイダーも氏名・住所を開示せざるを得ません(応じない場合は裁判)。ネットに匿名なんてないのです。
https://twitter.com/OOHORI_bicycle/status/1037217822198456320
発信者の特定に要する費用は20万円ほどですが,権利行使のための調査費用ですので,相手に請求することができます。5000円ケチって20万円払う羽目になったら大馬鹿です。敵を褒めるわけではないですが,素直に支払いに応じたのは賢明な判断だったと思います。
今回は,転載の期間が3日だったので,使用料は5000円に設定しましたが,より長期にわたった場合,額はそれに比例して膨れ上がります。「ブタは太らせて食え」ではないですが,しばらく転載させておいてから,多額の使用料を請求する。こういう戦略をとる,意地の悪い人もいるかと思います。
問題のブログをみると,他にも無断転載と思しき記事があるようなので,「他にも,こういう転載記事を載せているなら, 早急に削除したほうがいい」と忠告しておきました。
当該ブログのURLをここに記してもいいのですが,更生の可能性を信じ,それは控えましょう。ただし,私の忠告に従わず,無断転載の記事を載せ続けているなら,対応を考えたいと思っています。他人の作品を,ブログの広告費稼ぎに使うなど言語道断です。
「言われたら削除すればいい」。こういう考えでは困ります。削除だけでは手ぬるい。今後は,毅然とした対応をしたいと考えています。
仕上げとして,私は以下の返信をしました。
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今後は気を付けてください。他にも,こういう転載記事を載せているなら,
9月16日 12:05
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以上が経緯です。この人は使用料の支払いに応じましたが,そうでない場合は弁護士を通して請求,それでも応じない場合は発信者を突き止め裁判を起こすつもりでいました。このプロセスを一度経験したいと思っていたのもあります。業務を委託する弁護士の目星もつけていました。
記事の無断転載・商用利用という権利侵害は明白ですので,弁護士を通して発信者情報開示請求すれば,プロバイダーも氏名・住所を開示せざるを得ません(応じない場合は裁判)。ネットに匿名なんてないのです。
https://twitter.com/OOHORI_bicycle/status/1037217822198456320
発信者の特定に要する費用は20万円ほどですが,権利行使のための調査費用ですので,相手に請求することができます。5000円ケチって20万円払う羽目になったら大馬鹿です。敵を褒めるわけではないですが,素直に支払いに応じたのは賢明な判断だったと思います。
今回は,転載の期間が3日だったので,使用料は5000円に設定しましたが,より長期にわたった場合,額はそれに比例して膨れ上がります。「ブタは太らせて食え」ではないですが,しばらく転載させておいてから,多額の使用料を請求する。こういう戦略をとる,意地の悪い人もいるかと思います。
問題のブログをみると,他にも無断転載と思しき記事があるようなので,「他にも,こういう転載記事を載せているなら,
当該ブログのURLをここに記してもいいのですが,更生の可能性を信じ,それは控えましょう。ただし,私の忠告に従わず,無断転載の記事を載せ続けているなら,対応を考えたいと思っています。他人の作品を,ブログの広告費稼ぎに使うなど言語道断です。
「言われたら削除すればいい」。こういう考えでは困ります。削除だけでは手ぬるい。今後は,毅然とした対応をしたいと考えています。
2018年9月14日金曜日
公的教育費支出の国際比較(2015年)
OECDの2018年版の教育白書が公開されました。原書名は『Education at a Glance 2018』です。ありがたいことに,OECDのサイトで全文をPDFでダウンロードできます。
教育の国際統計が満載の基本資料で,毎年今の時期に刊行されています。毎年注目されるのは,各国の政府が教育にどれほどカネを費やしているかです。公的な教育費支出がGDPに占める割合という形で出ています。
2018年版の資料には,2015年の34か国(OECD加盟)のデータが出ています。日本はGDPがそこそこある経済大国ですが,政府支出の教育費はそのうちの何%に当たるか,国際順位はどうか。以下は,高い順に並べた棒グラフです。
日本は2.9%で,34か国の中では最も低くなっています。このデータを初めて見る人は強烈なショックを受けるでしょう。しかし,同じデータを毎年採取している私にすれば「またか」って感じです。ここ数年,ずっと同じ結果ですので。
首位のノルウェーは6.3%で,日本の倍以上です。上位のは北欧の諸国が多いですが,大学までの学費が無償というのは,こういう財政的な条件によります。しかし,わが国ではそうではありません。教育にカネを使わない国といわれますが,その引き合いに出されるのは,上記のようなデータです。
しかるに,日本は分母のGDPが巨大なんで絶対額は多いのではないか,それに少子化が進んでいるので教育費のシェアは小さくて当たり前。こういう疑問もよく出されます。
では,子ども・若者あたりの絶対額にしてみましょうか。2015年の日本の名目GDPは4兆3954億8700万ドルです(総務省『世界の統計2018』)。政府支出の公的教育費はこのうちの2.93%なんで,これをかけて,公的教育費支出の実額は1287億5200万円となります。
同年の子ども・若者人口(25歳未満)は2874万人。したがって,子ども・若者1人あたりの公的教育費は4479ドルです。1ドルを110円とすると,だいたい50万円くらいですか。
これが日本の公的教育費の絶対額ですが,こちらは他国と比してどうなのでしょう。先ほどみた対GDP比と,子ども・若者1人あたりの額のランキングを併置してみます。
対GDP比が最下位なのは先ほどみましたが,子ども・若者あたりの絶対額は,ちょうど真ん中というところです。欧米の主要先進国より少なくなっています。
トップのノルウェーはスゴイですね。1人につき年間1万5095ドル(166万円)もの教育費を,政府が支出していることになります。大学までの学費が無償というのも頷けます。日本との差額は100万円以上ですが,日本ではそれを家計が負担している(させられている)わけです。
発展途上国のメキシコは,1人あたり年間854ドル(9.4万円)。中等・高等教育の就学率が低いこともあるでしょう。しかし日本は,大学進学率50%超の教育大国です。その費用負担が家計で賄われている事実は,何度強調しても足りません。
ちなみにこの額は,近年減少の傾向にあります。上記は2015年のデータですが,5年前の2010年についても,同じやり方で子ども・若者1人あたりの公的教育費を計算できます。『Education at a Glance』は,ここ数年のバックナンバーもネットで閲覧可能です。
2010年と2015年の数値が得られた29か国について,5年間の増減率を計算してみました。
この5年間で,1人あたりの公的教育費支出が減っている国がほとんどですが,日本は減少率が大きくなっています。6810ドルから4479ドルと,34.2%の減少です。
2010年は円高でしたので,1ドル=90円とすると年間61.3万円。しかし2015年は,上述のように50万円ほどです。
日本の状況を詳しくいうと,生産年齢人口の減少のためか,名目GDP額はこの5年間で減っています。公的教育費支出の対GDP比も,3.59%から2.93%に減少。その結果,公的教育費の実額も減少。その幅は,子ども・若者人口の減少よりも大きい。ゆえに,1人あたりの公的教育費支出も減っていると。
少子高齢化が進んでいるので,他のことにカネを回さないといけないのですが,教育への投資を蔑ろにしていいものか。子ども・若者1人あたりの額も,主要国では最低レベルです。
教育費が目減りしていく傾向が続くとすると,少子化に拍車がかかりそうで怖い思いがします。何度も書くように,教育費を家計に負担させるやり方は,加齢と共に昇給する年功賃金・終身雇用制を前提とします。しかし,それが崩れつつあるのは肌感覚でも分かりますし,データでも示せます。アラフォー男子の所得も大幅に減っていますからね。
http://tmaita77.blogspot.com/2018/07/40.html
古い言い回しですが,教育は国家百年の計。これを蔑ろにしてない社会では,優秀な人材が生まれ,社会を支える新参者も出てきます。残念ながら,今の日本はそれから遠ざかりつつあるように思えます。
教育の国際統計が満載の基本資料で,毎年今の時期に刊行されています。毎年注目されるのは,各国の政府が教育にどれほどカネを費やしているかです。公的な教育費支出がGDPに占める割合という形で出ています。
2018年版の資料には,2015年の34か国(OECD加盟)のデータが出ています。日本はGDPがそこそこある経済大国ですが,政府支出の教育費はそのうちの何%に当たるか,国際順位はどうか。以下は,高い順に並べた棒グラフです。
日本は2.9%で,34か国の中では最も低くなっています。このデータを初めて見る人は強烈なショックを受けるでしょう。しかし,同じデータを毎年採取している私にすれば「またか」って感じです。ここ数年,ずっと同じ結果ですので。
首位のノルウェーは6.3%で,日本の倍以上です。上位のは北欧の諸国が多いですが,大学までの学費が無償というのは,こういう財政的な条件によります。しかし,わが国ではそうではありません。教育にカネを使わない国といわれますが,その引き合いに出されるのは,上記のようなデータです。
しかるに,日本は分母のGDPが巨大なんで絶対額は多いのではないか,それに少子化が進んでいるので教育費のシェアは小さくて当たり前。こういう疑問もよく出されます。
では,子ども・若者あたりの絶対額にしてみましょうか。2015年の日本の名目GDPは4兆3954億8700万ドルです(総務省『世界の統計2018』)。政府支出の公的教育費はこのうちの2.93%なんで,これをかけて,公的教育費支出の実額は1287億5200万円となります。
同年の子ども・若者人口(25歳未満)は2874万人。したがって,子ども・若者1人あたりの公的教育費は4479ドルです。1ドルを110円とすると,だいたい50万円くらいですか。
これが日本の公的教育費の絶対額ですが,こちらは他国と比してどうなのでしょう。先ほどみた対GDP比と,子ども・若者1人あたりの額のランキングを併置してみます。
対GDP比が最下位なのは先ほどみましたが,子ども・若者あたりの絶対額は,ちょうど真ん中というところです。欧米の主要先進国より少なくなっています。
トップのノルウェーはスゴイですね。1人につき年間1万5095ドル(166万円)もの教育費を,政府が支出していることになります。大学までの学費が無償というのも頷けます。日本との差額は100万円以上ですが,日本ではそれを家計が負担している(させられている)わけです。
発展途上国のメキシコは,1人あたり年間854ドル(9.4万円)。中等・高等教育の就学率が低いこともあるでしょう。しかし日本は,大学進学率50%超の教育大国です。その費用負担が家計で賄われている事実は,何度強調しても足りません。
ちなみにこの額は,近年減少の傾向にあります。上記は2015年のデータですが,5年前の2010年についても,同じやり方で子ども・若者1人あたりの公的教育費を計算できます。『Education at a Glance』は,ここ数年のバックナンバーもネットで閲覧可能です。
2010年と2015年の数値が得られた29か国について,5年間の増減率を計算してみました。
この5年間で,1人あたりの公的教育費支出が減っている国がほとんどですが,日本は減少率が大きくなっています。6810ドルから4479ドルと,34.2%の減少です。
2010年は円高でしたので,1ドル=90円とすると年間61.3万円。しかし2015年は,上述のように50万円ほどです。
日本の状況を詳しくいうと,生産年齢人口の減少のためか,名目GDP額はこの5年間で減っています。公的教育費支出の対GDP比も,3.59%から2.93%に減少。その結果,公的教育費の実額も減少。その幅は,子ども・若者人口の減少よりも大きい。ゆえに,1人あたりの公的教育費支出も減っていると。
少子高齢化が進んでいるので,他のことにカネを回さないといけないのですが,教育への投資を蔑ろにしていいものか。子ども・若者1人あたりの額も,主要国では最低レベルです。
教育費が目減りしていく傾向が続くとすると,少子化に拍車がかかりそうで怖い思いがします。何度も書くように,教育費を家計に負担させるやり方は,加齢と共に昇給する年功賃金・終身雇用制を前提とします。しかし,それが崩れつつあるのは肌感覚でも分かりますし,データでも示せます。アラフォー男子の所得も大幅に減っていますからね。
http://tmaita77.blogspot.com/2018/07/40.html
古い言い回しですが,教育は国家百年の計。これを蔑ろにしてない社会では,優秀な人材が生まれ,社会を支える新参者も出てきます。残念ながら,今の日本はそれから遠ざかりつつあるように思えます。
2018年9月10日月曜日
高校生の体重と肥満意識
週の初めですが,どんよりとした曇り空で,つまらない揉め事もあり,気分がすぐれず,今日は仕事をしていません。何も生産しないというのは虚しいので,ブログを書きましょう。
肥満の子どもが増えているといいますが,その逆の痩身も増えています。「そうしん」と読みます。やせ過ぎ,という意味です。思春期女子でそれは顕著で,12歳女子の痩身率をみると,1980年では2.4%だったのが,2017年現在では4.4%に増えています(文科省『学校保健統計』)
今の日本では「やせ」を美とする風潮がつよく,それを鋭敏に察知するのが,多感な思春期の女子です。痩せたいばかりに減食をする,果ては食事を抜くなど。当局も危機意識を持ち,文科省『食に関する指導の手引き』(2010年)では,無理な減食(欠食)は身体に異変をきたし,女子は初経が遅れ,無月経にもつながり得ると警告し,家庭でバランスよい食事をとらせるよう,呼び掛けています。
お腹がすくと集中力が途切れるので,勉学にも支障をきたします。ついでにいうと,朝食を抜くのは太る素です。昼食時にカロリーが過剰に貯蔵されることになり,かえって肥満になりやすいと言われます。
しかるに,わが国のうら若き女子は体型に非常にセンシティブです。今年春に公表された,国立青少年教育振興機構の調査結果によると,日本の女子高生の45.3%が自分は肥満と思うと回答しています(「少し太っているほうだ」+「太っているほうだ」)。しかしながら,客観的な体重を尋ねてみると,51.9%が体重50キロ未満です。
http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/126/
痩せているにもかかわらず,自分を肥満と思い込んでいる子が多いんじゃないですかねえ。横軸に体重50キロ未満,縦軸に「自分は太っていると思う」の割合をとった座標上に,4か国の高校生男女を配置したグラフは以下です。
日本の女子生徒(Jf)は,右上の極にあります。痩せている子の割合が最も高いにもかかわらず,自分を肥満と思っている子の割合も最高となっています。同じ女子でも,アメリカとは大違いですね。
日本の女子は,客観的な状況と認識のズレが大きくなっています。痩せているにもかかわらず,自分を肥満と思い込む。日本は,ジェンダーの差(mとfの距離)も大きくなっています。「やせは美」という風潮に過剰適応している(させられている)女子の姿は痛々しい。
上記の文科省文書でいわれているように,無理なダイエットは身体に異常をきたす,という啓発が求められます。また思い込みを解くには,上記のようなグラフを保健の授業等で見せるのもいいでしょう。日本では,痩せているにもかかわらず肥満と思い込んでいる子が多いのだと。それを分からせるのは,国際比較のデータが一番です。
ちなみに,痩身を美とする風潮は普遍的でも何でもありません。世界を見渡せば,「ぽっちゃり」がモテる社会はいくらでもあります。多くが発展途上国です。日本も,近世の時代まではそうでした。当時の絵画には,ふくよかな女性が多く描かれてますよね。
太ろうにも太れない国(昔)では「ぽっちゃり」が美とされ,飽食の国(今)では「やせ」が美とされる。大雑把にいって,こういう傾向が見受けられます。実現し難いことが「美」とされるのでしょうか。
こういう「相対性」の知識を持っていると,今・ここの風潮に振り回されにくくなります。社会学を学ぶことの効用の一つです。
肥満の子どもが増えているといいますが,その逆の痩身も増えています。「そうしん」と読みます。やせ過ぎ,という意味です。思春期女子でそれは顕著で,12歳女子の痩身率をみると,1980年では2.4%だったのが,2017年現在では4.4%に増えています(文科省『学校保健統計』)
今の日本では「やせ」を美とする風潮がつよく,それを鋭敏に察知するのが,多感な思春期の女子です。痩せたいばかりに減食をする,果ては食事を抜くなど。当局も危機意識を持ち,文科省『食に関する指導の手引き』(2010年)では,無理な減食(欠食)は身体に異変をきたし,女子は初経が遅れ,無月経にもつながり得ると警告し,家庭でバランスよい食事をとらせるよう,呼び掛けています。
お腹がすくと集中力が途切れるので,勉学にも支障をきたします。ついでにいうと,朝食を抜くのは太る素です。昼食時にカロリーが過剰に貯蔵されることになり,かえって肥満になりやすいと言われます。
しかるに,わが国のうら若き女子は体型に非常にセンシティブです。今年春に公表された,国立青少年教育振興機構の調査結果によると,日本の女子高生の45.3%が自分は肥満と思うと回答しています(「少し太っているほうだ」+「太っているほうだ」)。しかしながら,客観的な体重を尋ねてみると,51.9%が体重50キロ未満です。
http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/126/
痩せているにもかかわらず,自分を肥満と思い込んでいる子が多いんじゃないですかねえ。横軸に体重50キロ未満,縦軸に「自分は太っていると思う」の割合をとった座標上に,4か国の高校生男女を配置したグラフは以下です。
日本の女子生徒(Jf)は,右上の極にあります。痩せている子の割合が最も高いにもかかわらず,自分を肥満と思っている子の割合も最高となっています。同じ女子でも,アメリカとは大違いですね。
日本の女子は,客観的な状況と認識のズレが大きくなっています。痩せているにもかかわらず,自分を肥満と思い込む。日本は,ジェンダーの差(mとfの距離)も大きくなっています。「やせは美」という風潮に過剰適応している(させられている)女子の姿は痛々しい。
上記の文科省文書でいわれているように,無理なダイエットは身体に異常をきたす,という啓発が求められます。また思い込みを解くには,上記のようなグラフを保健の授業等で見せるのもいいでしょう。日本では,痩せているにもかかわらず肥満と思い込んでいる子が多いのだと。それを分からせるのは,国際比較のデータが一番です。
ちなみに,痩身を美とする風潮は普遍的でも何でもありません。世界を見渡せば,「ぽっちゃり」がモテる社会はいくらでもあります。多くが発展途上国です。日本も,近世の時代まではそうでした。当時の絵画には,ふくよかな女性が多く描かれてますよね。
太ろうにも太れない国(昔)では「ぽっちゃり」が美とされ,飽食の国(今)では「やせ」が美とされる。大雑把にいって,こういう傾向が見受けられます。実現し難いことが「美」とされるのでしょうか。
こういう「相対性」の知識を持っていると,今・ここの風潮に振り回されにくくなります。社会学を学ぶことの効用の一つです。
2018年9月8日土曜日
40代前半男性の相対的所得ギャップ
9月になり,酷暑はちょっと和らぎました。初秋の土曜日ですが,いかがお過ごしでしょうか。横須賀では,きれいな青空です。
7月14日の記事では,40代前半男性の所得が,90年代初頭に比してどう変わったのかを明らかにしました。所得分布から出した中央値は,1992年では524万円だったのが,2017年では472万円です。この四半世紀で50万円以上の減少。「失われた25年」にかけて,アラフォー男性の所得は大きく失われました。
あまりに衝撃的な事実のためか,当該記事では本ブログで最も読まれています。今の40代前半といったら,世紀の変わり目に大学を出たロスジェネですが,この世代の関心をひいたのでしょう。76年生まれの私も,この世代に属します。
今回は,両年の所得分布表を加工して,別の事実を浮き彫りにしようと思います。アラフォー年代内部での所得格差がどう変わったかです。所得が減っていることに加え,同世代内部での格差も広がっているのではないか。こういう仮説です。
格差の指標といえばジニ係数で,これまで何度も計算したことがあります。ちょっとややこしい指標ですが,これよりもシンプルな尺度もあることを知りました。相対的所得ギャップというものです。
https://resemom.jp/article/2016/04/14/30905.html
所得の下位10%値が中央値に占める割合です。下から10番目の人(プア)の稼ぎが,ちょうど真ん中の人(普通)の何%に当たるかです。
両方とも,所得の度数分布表から割り出せます。2017年の40代前半男性の所得分布表から出してみましょう。出所は,同年の『就業構造基本調査』です。
所得が分かる439万人の分布です。左端は人数,真ん中は全体を100とした相対度数,右端はそれを積み上げた累積相対度数です。
累積相対度数から,下位10%値が200万円台前半,中央値は400万円台の階級に含まれることが分かります。按分比例を使って,それを推し量りましょう。もう慣れっこですよね。
下位10%値:
按分比=(10.0-7.9)/(14.4-7.9)=0.3243
下位10%値=200万円+(50万円×0.3243)=216.2万円
中央値:
按分比=(50.0-37.4)/(55.0-37.4)=0.7169
中央値=400万円+(100万円×0.7169)=471.7万円
下位10%値は216.2万円,中央値は471.7万円と出ました。よって,上記の意味の相対的所得ギャップは,前者を後者で割って45.8%と算出されます。アラフォー男性でみると,プアの稼ぎは普通の人の半分弱というところです。
1992年の所得分布では,下位10%値は253.4万円,中央値は524.1万円なので,所得ギャップは48.3%となります。プアが普通に占める割合は,この四半世紀でちょっと下がってますね。すなわち,所得格差が拡大している,ということです。
これは全国値ですが,地域別の数値も出せます。47都道府県別にみると,相対的所得ギャップ値には幅があります。下の表は,高い順に並べたランキングです。
この四半世紀にかけて全国的に,プアの所得が普通に占める割合が下がっています。アラフォー男子の所得格差が開いている,ということです。
1992年では31の県で50%(半分)を超えてましたが,2017年ではそういう県は10県しかありません。3分の1に減っています。逆に,プアの所得が普通の4割にも満たない県が出てきています(沖縄,奈良,和歌山)。奈良は,陥落が大きくなっています(51.3%→37.1%)。
1992年では,分布の幅は「60.4%~42.8%」でしたが,2017年では「55.4%~36.6%」とやや広がっています。格差の大きい県と,そうでない県の分化が進んでいます。
上表のデータを地図にすると,この四半世紀の変化が分かりやすいでしょう。50%を超える県(上表の緑色)に,色をつけたマップにしてみます。なるべく簡素なほうがいいです。
プアの所得が普通の人の半分に達している県が,この四半世紀で減っている様が明らかです。アラフォー男子の所得格差の拡大。「失われた25年」は,働き盛り・子育て年代の所得を低下させるのみならず,内部での格差も開かせています。
所得の低下と格差の拡大が同時進行するという,最もよくない動きです。
上述のように,今の40代前半といえば,学校卒業が超氷河期と重なったロスジェネです。上手く正規就職できた人もいれば,それが叶わず非正規雇用に滞留し,キャリアや昇給が順調にいってない人も,他世代に比して多くいます。首尾よくいっている人と,そうでない人の格差が大きい世代であるのは,肌感覚でも分かります。
この世代は子育ての最中で,あと数年で子どもは高校・大学に進みますが,親世代のこうした分化が影を落とすこともあり得るでしょう。教育格差です。
当該世代の今後も心配です。今は40代前半ですが,40代後半,50代,60代というように,年齢を重ねていくにつれどうなっていくか。日本は,新卒時点での遅れが尾を引く社会ですので,ろくに年金も納めていない困窮層が多く出てくるでしょう。私も,たまにくる「ねんきん特別びん」で,将来の受給予定額を見ると笑っちゃいます。自分で稼ぐしかないなと。
私は,いくつかのWebメディアで売文仕事をやっていますが,ちょっとばかり嫌気がさしてきました。別に編集者を介する必要はないのだし,自分でやるのもいいかなと。実は今,一つの所ともめていまして…。この性分,死ぬまで直りません(笑)。
来年から,有料「note」を始めようかな…。「舞田さんなら楽に月5万はいきますよ」と言われますが,それだけもらえれば,今の頼まれ仕事の合算よりも多くなります。
今に安住してはいけない。今の殻を破らないといけない。もしかしたら来年は,そういう節目の年になるかもしれません。私にとって。
7月14日の記事では,40代前半男性の所得が,90年代初頭に比してどう変わったのかを明らかにしました。所得分布から出した中央値は,1992年では524万円だったのが,2017年では472万円です。この四半世紀で50万円以上の減少。「失われた25年」にかけて,アラフォー男性の所得は大きく失われました。
あまりに衝撃的な事実のためか,当該記事では本ブログで最も読まれています。今の40代前半といったら,世紀の変わり目に大学を出たロスジェネですが,この世代の関心をひいたのでしょう。76年生まれの私も,この世代に属します。
今回は,両年の所得分布表を加工して,別の事実を浮き彫りにしようと思います。アラフォー年代内部での所得格差がどう変わったかです。所得が減っていることに加え,同世代内部での格差も広がっているのではないか。こういう仮説です。
格差の指標といえばジニ係数で,これまで何度も計算したことがあります。ちょっとややこしい指標ですが,これよりもシンプルな尺度もあることを知りました。相対的所得ギャップというものです。
https://resemom.jp/article/2016/04/14/30905.html
所得の下位10%値が中央値に占める割合です。下から10番目の人(プア)の稼ぎが,ちょうど真ん中の人(普通)の何%に当たるかです。
両方とも,所得の度数分布表から割り出せます。2017年の40代前半男性の所得分布表から出してみましょう。出所は,同年の『就業構造基本調査』です。
所得が分かる439万人の分布です。左端は人数,真ん中は全体を100とした相対度数,右端はそれを積み上げた累積相対度数です。
累積相対度数から,下位10%値が200万円台前半,中央値は400万円台の階級に含まれることが分かります。按分比例を使って,それを推し量りましょう。もう慣れっこですよね。
下位10%値:
按分比=(10.0-7.9)/(14.4-7.9)=0.3243
下位10%値=200万円+(50万円×0.3243)=216.2万円
中央値:
按分比=(50.0-37.4)/(55.0-37.4)=0.7169
中央値=400万円+(100万円×0.7169)=471.7万円
下位10%値は216.2万円,中央値は471.7万円と出ました。よって,上記の意味の相対的所得ギャップは,前者を後者で割って45.8%と算出されます。アラフォー男性でみると,プアの稼ぎは普通の人の半分弱というところです。
1992年の所得分布では,下位10%値は253.4万円,中央値は524.1万円なので,所得ギャップは48.3%となります。プアが普通に占める割合は,この四半世紀でちょっと下がってますね。すなわち,所得格差が拡大している,ということです。
これは全国値ですが,地域別の数値も出せます。47都道府県別にみると,相対的所得ギャップ値には幅があります。下の表は,高い順に並べたランキングです。
1992年では31の県で50%(半分)を超えてましたが,2017年ではそういう県は10県しかありません。3分の1に減っています。逆に,プアの所得が普通の4割にも満たない県が出てきています(沖縄,奈良,和歌山)。奈良は,陥落が大きくなっています(51.3%→37.1%)。
1992年では,分布の幅は「60.4%~42.8%」でしたが,2017年では「55.4%~36.6%」とやや広がっています。格差の大きい県と,そうでない県の分化が進んでいます。
上表のデータを地図にすると,この四半世紀の変化が分かりやすいでしょう。50%を超える県(上表の緑色)に,色をつけたマップにしてみます。なるべく簡素なほうがいいです。
プアの所得が普通の人の半分に達している県が,この四半世紀で減っている様が明らかです。アラフォー男子の所得格差の拡大。「失われた25年」は,働き盛り・子育て年代の所得を低下させるのみならず,内部での格差も開かせています。
所得の低下と格差の拡大が同時進行するという,最もよくない動きです。
上述のように,今の40代前半といえば,学校卒業が超氷河期と重なったロスジェネです。上手く正規就職できた人もいれば,それが叶わず非正規雇用に滞留し,キャリアや昇給が順調にいってない人も,他世代に比して多くいます。首尾よくいっている人と,そうでない人の格差が大きい世代であるのは,肌感覚でも分かります。
この世代は子育ての最中で,あと数年で子どもは高校・大学に進みますが,親世代のこうした分化が影を落とすこともあり得るでしょう。教育格差です。
当該世代の今後も心配です。今は40代前半ですが,40代後半,50代,60代というように,年齢を重ねていくにつれどうなっていくか。日本は,新卒時点での遅れが尾を引く社会ですので,ろくに年金も納めていない困窮層が多く出てくるでしょう。私も,たまにくる「ねんきん特別びん」で,将来の受給予定額を見ると笑っちゃいます。自分で稼ぐしかないなと。
私は,いくつかのWebメディアで売文仕事をやっていますが,ちょっとばかり嫌気がさしてきました。別に編集者を介する必要はないのだし,自分でやるのもいいかなと。実は今,一つの所ともめていまして…。この性分,死ぬまで直りません(笑)。
来年から,有料「note」を始めようかな…。「舞田さんなら楽に月5万はいきますよ」と言われますが,それだけもらえれば,今の頼まれ仕事の合算よりも多くなります。
今に安住してはいけない。今の殻を破らないといけない。もしかしたら来年は,そういう節目の年になるかもしれません。私にとって。
2018年9月6日木曜日
法律婚か,事実婚か?
将来,子どもにしてほしくないことを日本の親に尋ねると,62.3%が「未婚で子を持つこと」を選んでいます。スウェーデンでは,こういう考えの親は17.6%で,忌み嫌われるのは「自分との同居」です(国立女性教育会館『家庭教育に関する国際比較調査』2006年)。
常道から外れたことに対する仕打ちが厳しい日本では,当然のことかもしれません。わが子に辛い道を歩んで欲しくない,という親心でしょう。しかるに,「結婚してから出産」というルートを常道とみなす思考そのものが,普遍的ではありません。上記で比較対象にしたスウェーデンでは,事実婚の状態で出産し,子育てしているカップルが数多くいます。
「あなたの配偶関係は,法律婚か,それとも事実婚か?」。各国の子育て年代を取り出し,この問いを投げかけたならば,どういう答えが返ってくるでしょうか。2010~14年にかけて実施された『世界価値観調査』の個票データを使って,それを明らかにできます。
http://www.worldvaluessurvey.org/WVSOnline.jsp
子がいる25~44歳のサンプルを取り出し,配偶関係が「法律婚(Married)」の人と,「事実婚(Living together as married)」の人の数を明らかにしました。日本でいうと,法律婚が397人,事実婚が2人です。事実婚は本当に少ないですね。しかし,そうでない国もあります。手始めに,6つの社会のデータをみてみましょう。
日本の事実婚は2人ですが,お隣の韓国では皆無です。伝統的家族観が強いためでしょう。しかし,欧米になると事実婚の率は跳ね上がり,アメリカは13.6%,ドイツは18.3%,スウェーデンは35.7%となります。スウェーデンでは,3人に1人が法律婚ではなく事実婚を選んでいます。事実婚にも保護や権利を付与する「サムボ法」は有名です。
南米のコロンビアでは,事実婚の比重が6割を超えます。この国では,法律婚よりも事実婚が幅を利かせています。国民の大半が離婚御法度のカトリックなんで,法律婚をためらい,事実婚を継続する人が多いのでしょう。
他の国はどうでしょう。全部で58の国のデータが分かります。私は,上表の右端の事実婚比重を高い順に並べたランキング表を作ってみました。法律婚と事実婚の合算に占める,事実婚の割合です。
トップは先ほどみたコロンビアの62.2%で,お隣のペルーも半分を超えます。「法律婚 < 事実婚」の社会です。上位6位までが中南米の国で占められています。離婚御法度のカトリックのお国柄ゆえでしょう。
北欧や東欧の国も高し。しかし右段のアジア諸国になると率は5%未満になり,婚前交渉厳禁のイスラーム諸国では皆無になります。
事実婚の浸透度合いの国際比較ですが,国によって違うものですねえ。ちなみに時系列比較も可能です。『世界価値観調査』は,5~10年間隔でこれまで6回実施されてきています。上記は,2010~14年に実施された第6回調査のデータですが,20年前の1990~94年の第3回調査のデータと比べてみましょうか。
第3回調査は対象国が少なく,16か国の数値しか得られませんが,分布の幅を比べることには意義があります。第3回の16か国,第6回の58か国の事実婚比重の分布を,縦軸のドット布置図で表すと,以下のようになります。
90年代前半では,最高のブラジルでも14.2%でした。しかし20年後では,2割を超える国が多くなり,コロンビアやペルーのように半分を超える国も出てきています。
時代と共に事実婚比重は上がるのが国際的趨勢で,ブラジルは14.2%から40.2%,スウェーデンは2.0%から35.7%にアップです。しかし日本は,1.5%から0.5%にダウンしています。事実婚がほぼ皆無である状況は,20年の時を経ても変わっていません。
いろいろと縛りが生じる法律婚をせずとも出産できるようになれば,加速度的に進む少子化に歯止めがかかるのではないか。
「結婚はいいが子どもは欲しい」。実は,こういう考えの若い女性は結構いるのです。具体的な比率で示せます。それを20代未婚女性数にかけ,推定数を出すと*万人。これらの女性が出産に踏み切ったら出生数は団塊…。おっと,この議論は今月半ば公開の日経DUAL記事ですることにいたしましょう。
https://dual.nikkei.co.jp/article/023/63/
ただ言いたいのは,どういうライフスタイルを選ぼうが,子を産み育てられる社会になればいい,ということです。事実婚のカップルの権利を保証する,一人親家庭の支援を手厚くする…。少子化が克服されるなら,そのコストも回収されるでしょう。朝日新聞で報じられましたが,千葉市はその一歩を踏み出しています。
常道から外れたことに対する仕打ちが厳しい日本では,当然のことかもしれません。わが子に辛い道を歩んで欲しくない,という親心でしょう。しかるに,「結婚してから出産」というルートを常道とみなす思考そのものが,普遍的ではありません。上記で比較対象にしたスウェーデンでは,事実婚の状態で出産し,子育てしているカップルが数多くいます。
「あなたの配偶関係は,法律婚か,それとも事実婚か?」。各国の子育て年代を取り出し,この問いを投げかけたならば,どういう答えが返ってくるでしょうか。2010~14年にかけて実施された『世界価値観調査』の個票データを使って,それを明らかにできます。
http://www.worldvaluessurvey.org/WVSOnline.jsp
子がいる25~44歳のサンプルを取り出し,配偶関係が「法律婚(Married)」の人と,「事実婚(Living together as married)」の人の数を明らかにしました。日本でいうと,法律婚が397人,事実婚が2人です。事実婚は本当に少ないですね。しかし,そうでない国もあります。手始めに,6つの社会のデータをみてみましょう。
日本の事実婚は2人ですが,お隣の韓国では皆無です。伝統的家族観が強いためでしょう。しかし,欧米になると事実婚の率は跳ね上がり,アメリカは13.6%,ドイツは18.3%,スウェーデンは35.7%となります。スウェーデンでは,3人に1人が法律婚ではなく事実婚を選んでいます。事実婚にも保護や権利を付与する「サムボ法」は有名です。
南米のコロンビアでは,事実婚の比重が6割を超えます。この国では,法律婚よりも事実婚が幅を利かせています。国民の大半が離婚御法度のカトリックなんで,法律婚をためらい,事実婚を継続する人が多いのでしょう。
他の国はどうでしょう。全部で58の国のデータが分かります。私は,上表の右端の事実婚比重を高い順に並べたランキング表を作ってみました。法律婚と事実婚の合算に占める,事実婚の割合です。
トップは先ほどみたコロンビアの62.2%で,お隣のペルーも半分を超えます。「法律婚 < 事実婚」の社会です。上位6位までが中南米の国で占められています。離婚御法度のカトリックのお国柄ゆえでしょう。
北欧や東欧の国も高し。しかし右段のアジア諸国になると率は5%未満になり,婚前交渉厳禁のイスラーム諸国では皆無になります。
事実婚の浸透度合いの国際比較ですが,国によって違うものですねえ。ちなみに時系列比較も可能です。『世界価値観調査』は,5~10年間隔でこれまで6回実施されてきています。上記は,2010~14年に実施された第6回調査のデータですが,20年前の1990~94年の第3回調査のデータと比べてみましょうか。
第3回調査は対象国が少なく,16か国の数値しか得られませんが,分布の幅を比べることには意義があります。第3回の16か国,第6回の58か国の事実婚比重の分布を,縦軸のドット布置図で表すと,以下のようになります。
90年代前半では,最高のブラジルでも14.2%でした。しかし20年後では,2割を超える国が多くなり,コロンビアやペルーのように半分を超える国も出てきています。
時代と共に事実婚比重は上がるのが国際的趨勢で,ブラジルは14.2%から40.2%,スウェーデンは2.0%から35.7%にアップです。しかし日本は,1.5%から0.5%にダウンしています。事実婚がほぼ皆無である状況は,20年の時を経ても変わっていません。
いろいろと縛りが生じる法律婚をせずとも出産できるようになれば,加速度的に進む少子化に歯止めがかかるのではないか。
「結婚はいいが子どもは欲しい」。実は,こういう考えの若い女性は結構いるのです。具体的な比率で示せます。それを20代未婚女性数にかけ,推定数を出すと*万人。これらの女性が出産に踏み切ったら出生数は団塊…。おっと,この議論は今月半ば公開の日経DUAL記事ですることにいたしましょう。
https://dual.nikkei.co.jp/article/023/63/
ただ言いたいのは,どういうライフスタイルを選ぼうが,子を産み育てられる社会になればいい,ということです。事実婚のカップルの権利を保証する,一人親家庭の支援を手厚くする…。少子化が克服されるなら,そのコストも回収されるでしょう。朝日新聞で報じられましたが,千葉市はその一歩を踏み出しています。
2018年9月3日月曜日
職業別の年収変化(2010~17年)
今日の午後,ツイッターで職業別の年収変化を発信しました。2010年から2017年にかけて,推定年収が何%増えたかです。上位20位と下位20位を切り取った結果を載せました。
多くの方が見てくださっているようですが,2010年と2017年の年収の絶対額を知りたい,というリクエストが多々寄せられています。ツイッターではそんな膨大な情報提供は不可能ですが,ブログでは可能ですので,ここに載せましょう。
職業別の推定年収は,厚労省の『賃金構造基本統計』からはじき出したものです。残業代込みの月収額(決まって支給する現金給与額)の12倍に,年間賞与額を足して推し量りました。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html
一般労働者・職種のページにある,「職種別きまって支給する現金給与額,所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」という統計表に,職業別の月収(6月)と年間賞与額(前年)が出ています。一般労働者とは短時間労働者を除く労働者のことで,フルタイム労働者とほぼ同義と考えてよいでしょう。
129の職業について,2010年と2017年の推定年収,ならびに両年間の増加率の一覧表を掲げます。2010~17年の増加率が高い順に並べた表です。表がタテに長くなるので,2つに分けます。
トップは精紡工で,この8年間で年収が1.5倍になっています。黄色マークは注目の職業。運転手,介護職員の年収の増加幅が大きくなっています。少子高齢化に伴い,需要が増しているためでしょう。
ただし,絶対水準はまだまだです。今日のNHKサイトで,待遇の劣悪さからバスの運転手が離職する,というニュースが出ていました。上表のように,全国統計では年収が427万円から457万円にアップしていますが,これは都市部に釣り上げられた結果で,地方では悲惨な事態になっています。
人手不足もあってか,現業系の職業の年収がアップしているようです。次に,残りの後半部を見ていただきましょう。
横線より下は,好況にもかかわらず年収が減っている職業です。予備校講師,教員,大学教授,弁護士…。供給過剰が言われる職業ですね。弁護士は,1271万円から1029万円と,2割の陥落です。社会保険労務士も激減。
高度化した社会は,人々の分業で成り立っていますが,職業の需要というのは時代によって大きく変動します。求人倍率だけでなく,職務遂行に対する対価,すなわち年収の変化によっても,それを可視化できるようで面白い。
参考資料としてご覧ください。
多くの方が見てくださっているようですが,2010年と2017年の年収の絶対額を知りたい,というリクエストが多々寄せられています。ツイッターではそんな膨大な情報提供は不可能ですが,ブログでは可能ですので,ここに載せましょう。
職業別の推定年収は,厚労省の『賃金構造基本統計』からはじき出したものです。残業代込みの月収額(決まって支給する現金給与額)の12倍に,年間賞与額を足して推し量りました。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html
一般労働者・職種のページにある,「職種別きまって支給する現金給与額,所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」という統計表に,職業別の月収(6月)と年間賞与額(前年)が出ています。一般労働者とは短時間労働者を除く労働者のことで,フルタイム労働者とほぼ同義と考えてよいでしょう。
129の職業について,2010年と2017年の推定年収,ならびに両年間の増加率の一覧表を掲げます。2010~17年の増加率が高い順に並べた表です。表がタテに長くなるので,2つに分けます。
トップは精紡工で,この8年間で年収が1.5倍になっています。黄色マークは注目の職業。運転手,介護職員の年収の増加幅が大きくなっています。少子高齢化に伴い,需要が増しているためでしょう。
ただし,絶対水準はまだまだです。今日のNHKサイトで,待遇の劣悪さからバスの運転手が離職する,というニュースが出ていました。上表のように,全国統計では年収が427万円から457万円にアップしていますが,これは都市部に釣り上げられた結果で,地方では悲惨な事態になっています。
人手不足もあってか,現業系の職業の年収がアップしているようです。次に,残りの後半部を見ていただきましょう。
横線より下は,好況にもかかわらず年収が減っている職業です。予備校講師,教員,大学教授,弁護士…。供給過剰が言われる職業ですね。弁護士は,1271万円から1029万円と,2割の陥落です。社会保険労務士も激減。
高度化した社会は,人々の分業で成り立っていますが,職業の需要というのは時代によって大きく変動します。求人倍率だけでなく,職務遂行に対する対価,すなわち年収の変化によっても,それを可視化できるようで面白い。
参考資料としてご覧ください。
2018年9月1日土曜日
東京に行く若者
前々回は,1)東京への転入超過数が増えていること,2)そのメインは22歳の就職流入であること,3)就職期の若者の転入超過率の地域差が拡大していること,を知りました。若者を呼び込む都市と,若者が出ていく地方の分化です。
同郷の長渕剛さんの名曲『とんぼ』(1988年)に,「死にたいくらい憧れた 花の都大東京」という歌詞がありますが,いつの時代も若者は東京に憧れるもの。地方県から東京に移住する若者は,増加傾向にあるのかどうか。
前々回は,若者の流出入を県ごとにみましたが,今回は,東京に出る若者に限定しようと思います。東京に出る若者がどれほどいるか,増えているのか。これが観察ポイントです。
総務省の『住民基本台帳による人口移動報告』では,各県からの転出者数が,行先の都道府県別,また年齢層別(10歳刻み)に集計されています。こういう細かい統計表は,2012年版から見ることができます。
移動のステージは,18歳の高卒時と,20代前半の就職時(大卒は22歳)です。よって10代と20代を取り出し,各県から東京に転出した人が何人かを見てみます。
以下の表は,2012年と2017年の人数を対比したものです(外国人は含まない)。この5年間で転出率が何%増えたかという,流出率も計算しました。黄色マークは10%,ゴチ赤字は20%以上増えたことを意味します。ゴチ青字はマイナス,つまり東京への転出者が5年間で減ったことを示唆します。
全体的にみて,10代では東京への流出が減っている県が多く,20代では全県で増えていることが分かります。大学進学時での上京は減っているが,就職時の上京は増えていると。
北海道・東北・北関東は,10代の東京流出者が軒並み減少しています。
ある方がツイッターで言われていましたが,これは地方の疲弊を表しているのではないか。家計が厳しくなり,大学進学では上京させられない,せめて近県止まり(九州なら福岡)だが,地元に雇用がないので就職では一気に出ていく。こんな仮説です。
右側の20代をみると,ゴチの赤字(20%以上増)は関西に多くなっています。滋賀から和歌山は,軒並みこれです。大阪の大学を出て東京に行く。関西から東京への若者の移動が増えています。本社を大阪から東京に移す企業が増えていると聞きますが,雇用の口もそれに釣られているのでしょうか。
東京から大阪への移動も5年間で増えていますが,逆方向の増分にはとうてい及びません。大阪から東京に転出した20代は,2012年では7887人でしたが,2017年では10323人と,3割も増えています。
この5年間で,東京への転出者が何%増えたか。各県の増加率をグラフにしておきましょう。地図にしようか迷いましたが,縦軸上に47都道府県のドットを置いた布置図にします。
10代(大学進学時)では,東京への流出が増えた県と減った県がちょうど半々ですが,20代は全県で増えています。高知の20代の東京転出者は34.7%の増です(544人→733人)。
その高知県ですが,大阪に行く20代は減っています(666人→624人)。高知からの20代の転出先の首位は,大阪から東京にシフトしています。
実は,西日本にこういう県が多いのです。私の郷里の鹿児島も,大阪に出る20代は減る一方で,東京に高飛びする20代は増えています。
中国・四国・九州の西日本の諸県について,東京・大阪への20代の転出者数がどう変わったかを示すと,以下のようになります。
西日本の全県で,大阪よりも東京への転出者の増加率が大きくなっています。8つの県では,東京は増加,大阪は減少です。2017年現在では,鳥取と徳島以外の県で,「東京>大阪」となっています。西日本からの若者の流出先のメインも,大阪から東京(関西から首都圏)にシフトしつつあるようです。
21世紀はイノベーションの時代ですが,イノベーション都市・東京の利点がますます強まっているのでしょうか。
東京への一極集中の度合いが最も大きいのは,IT産業です。この産業は,地域を問わずどこでも仕事ができそうなものですが,蓋を開けるとそうではない。イノベーションがモノをいう産業では,一流の知や人材が集積する,それとの接点が日常的に持てる大都市に拠点を構えるのが有利であるとのこと(モレッティ『年収は住むところで決まる』)。
ネットの普及でどこでも仕事ができるようになった,労働者も地方分散も自ずと進むだろう。放っていては,こういう楽観的な予言が実現する可能性は低いようです。ネットの普及とイノベーション化はパラレルで,後者は都市への人口集中を促す条件となっています。
政府も放任策をとる気はないようで,地方に移住・起業した者には300万円補助する政策を検討するとのこと。人の移動を促すのに加えて,拠点を移した起業は大幅減税など,雇用の口の移動も後押ししたいものです。
あるいは,人口減少がどんどん進み,今の半分くらいになったら,人々が居住するエリアも限られたものになってしまうのか(首都圏,中京圏,関西圏のみなど)。こういう究極の可能性も否定できないでしょう。