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2019年9月6日金曜日

フリー編集者の増加に思う

 『Webにはなぜ三流編集者がのさばるのか?』という本が出ています。電子書籍です。買ってはいませんが,目次をみて内容は推して知るべし。私の実体験に照らしても頷けることばかりです。

 今やオンラインは大きな広告収入源で,そこそこの規模のある出版社は,この分野に手を出さないわけにはいきません。オンラインは,問題があった場合でもすぐに修正ないしは削除が可能で,クオリティ担保の必要性は「紙」に比して低し。そこで,ろくに訓練も受けてないフリー編集者に担当が振られる。私の担当についた編集者は,こういう人でした。

 出版不況が言われる中,記者や編集者の数は減少傾向です。しかしフリーの編集者は…。下表を見てください。


 記者・編集者の数は,2000年の9万5899人をピークに減少傾向で,2015年には7万8730人にまで減っています。『国勢調査』で観測可能な期間では最低です。出版不況の影響でしょう。

 しかしフリー編集者は,同じ期間になけて8171人から1万1540人に増えています。総数に占める比率も8.5%から14.7%にアップ。2015年では,記者・編集者の7人に1人がフリーランスです。出版社の人件費抑制志向が高まり,またネットメディアの普及にもよるとみられます。

 フリー編集者の質が劣っていると決めつけるのではないですが,酷い目に遭った立場から言わせてもらうと,基本的な訓練や倫理教育を受けてない人が結構いるのではないかなあ,と邪推してしまいます。

 4月の半ばくらいでしたか,とあるネットメディアの記事が私のグラフを無断転載していました。4つもです。私が抗議したところ,「出典を書いており,舞田先生の元記事へのリンクも張っている。正当な引用であると捉えています」というリプが返ってきました。

 何をいわんや。引用とは,自説を補強する意味合いで,必要最低限の範囲でなされるものです。自分の主張・コンテンツが「主」で,引用部分は「従」でないといけません。しかし問題の記事は,私のグラフ4つをメインに書かれており,主従関係が完全に逆転しています。正当な引用(フェアユース)とは,到底言えません。こういう使い方をする場合は,許諾を得ないといけません。

 私がこの点を指摘すると,しばらくしてから「上司に確認した結果,おしゃる通りでした。申し訳ありませんでした。記事を削除し,ご希望でしたら使用料を払います」というメールがきました。その後,上司から「大変申し訳ありませんでした。外部スタッフが担当したもので,今後は教育を徹底します」というお詫びもきました。

 出版は国の文化の根幹です。「紙」も「ネット」も,社内(社員)も社外(フリー)もありません。業務に当たらせる前に,編集者としての訓練,倫理教育をしっかりしてほしいと願います。