ある社会において,教育がどれほど普及しているかは,国民の在学率で計測されます。学校で学んでいる人のパーセンテージです。
今の日本は高校進学率95%超,大学進学率50%超の社会ですので,世界でもトップレベルでしょう。「日本は教育大国」という評価も定着しています。
しかしこれは,20代前半くらいまでの子ども・若者を切り取った話であって,もっと広い年齢のスパンでみたら,全く違った様相が浮かびあがってきます。ツイッターにて,15~64歳人口のうち,学校で学んでいる学生は何%かを国別に出し,ランキングにした表を発信しました。「目から鱗!」と,注目を集めています。「どうやって計算したのですか?」という質問がきましたので,ここにて回答をいたしましょう。
まず日本の数値は,2017年の『就業構造基本調査』から計算しました。リンク先の「表00201」に,年齢層別の人口と在学者数が出ています。15~64歳人口を5つの層に分け,ベース人口と在学者数を整理すると,以下のようになります。年齢階層の区分は,後で使う国際統計に揃えています。
10代後半をみると,599万人のうち545万人(91.1%)が学生です。高校,大学,専修学校等で学んでいる人たちでしょう。20代前半の学生比率は4割弱。しかしその後ガクンと落ち,20代後半では2.7%,30代では0.6%,40~64歳では0.1%と,地を這う形になります。
5つの年齢層の人口と在学者を合算し,15~64歳人口の在学者率を出すと,赤字の通り10.8%となる次第です。
次に,日本以外の国の数値です。OECDの「Education at a Glance 2020」という資料に,上表の年齢層ごとの在学者比率が出ています(2018年,表B1-1)。これを同年の各年齢層人口にかけて,学生数を算出しました。2018年の年齢層別人口は,国際連合の人口推計資料から得ました。
以下は,アメリカとスウェーデンのデータです。
人口に在学率をかけ,各年齢層の学生数を出し合算すると,アメリカは3403万人,スウェーデンは129万人となります。15~64歳人口に占める割合は,前者が15.9%,後者が20.8%です(赤字)。
両国とも,先ほどはじき出した日本の10.8%より高くなっています。子ども期に限ると日本のほうが高いのですが,成人期以降だと日本は地を這う推移になり,大きく水を開けられるためです。
もっと国を増やした中で,日本の数値を位置付けるとどうなるか。日本以外の国については,上記のアメリカ・スウェーデンと同じやり方にて,15~64歳の学生比率を計算しました。データが得られた37か国を高い順に並べると、以下のようになります。昨日,ツイッターで発信した表です。
最初の2つの表から,学生の25歳以上比率を計算すると,以下のようになります。
日本= 32/817 =3.9%
アメリカ= 802/403 =23.6%
スウェーデン= 56/129 =43.2%
日本はたった3.9%ですが,アメリカは23.6%,スウェーデンは43.2%にもなります。国民の年齢構成をみると,日本が最も高齢化が進んでいるにもかかわらず,学校で学んでいる人の大半は子ども・若者です。これはいかにもおかしい。
「子供期 → 教育期 → 引退期」という直線的なライフコースが支配的で,厄介なことに,3つのステージにふさわしい年齢幅も固定されています。社会の変化が速く,大人といえど学び直しを迫られ,かつ少子高齢化が進む中,これではいけないことは明白です。高齢期を「引退期」としてだけ過ごすのは,経済的にも心理的にも不可能です。
大学のキャンパスの中は,社会全体の縮図にならないといけません。リカレント教育を推進しないといけません。