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2021年4月29日木曜日

夫婦の所得組み合わせ

 共稼ぎの夫婦が増えていますが,夫と妻がどれほど収入を得ているかは多様です。私くらいの年代だと,正社員の夫が400~500万ほど稼いで,妻はパートで就業調整してマックスで100万ちょっと。こんな夫婦が多数でしょうか。

 しかし両者の稼ぎが対等,ないしは妻が夫を上回るという夫婦も存在するでしょう。夫婦の稼ぎの組み合わせというのも,多くの人が興味をもっている所です。

 毎度使っている『就業構造基本調査』に,この点を知れる統計表があります。最新の2017年調査だと,★コチラの統計表です。共稼ぎ世帯の数を,夫と妻の所得階級別に知ることができます。この2つをクロスすることで,目的のデータが得られます。


 年代は子育て年代に絞ることとし,妻が35~44歳の世帯を分析対象としましょう。この年代の世帯で,夫と妻の所得の双方が分かる共稼ぎ世帯は約360万5200世帯です。

 「9×9」の81のセルに該当する世帯(夫婦)の数を,視覚的なグラフで表してみます。以下のグラフです。横軸は夫,縦軸は妻の所得階級で,双方をクロスした各セルに該当する夫婦の数を,円のドットの大きさで表しています。


 真ん中の下あたりが多くなっています。一番ドットが大きい,すなわち該当の夫婦が多いのは,夫が所得400万未満,妻が100万未満という組み合わせです(23万1300世帯)。

 私くらいの年代だと,男性正社員の所得中央値は500万円弱で,妻はパートで就業調整しているでしょうから,納得の結果です。子育ての最中ですが,夫婦の合算で大よそ600万円弱。子を2人,私学に通わせるとなったらキツイでしょうね。教育費を理由に,出産をためらう夫婦が多いのはよく知られていること。「安い」ニッポンは,少子化にも影を落としています。

 右上,黄色囲いは夫婦とも700万円以上「パワーカップル」です。その数は3万3400世帯で,全体の0.9%に相当します。

 ドットの色分けですが,青色は「夫>妻」,緑色は「夫≒妻」,赤色は「夫<妻」という夫婦です。夫の稼ぎが多い青色が全体の84.3%とマジョリティを占めます。対等は9.3%で,夫より妻が稼ぐ夫婦(赤色)は6.5%となっています。

 しかし何と言いますか,妻の稼ぎの寄与度は小さいですね。上述しましたが,最も多いのは「夫400万円台,妻100万未満」の夫婦です。ツイッターで流しましたが,地方では,夫婦二馬力の稼ぎが東京の一馬力に及ばない県が大半です。東京の一馬力の方がいいと,地元へのUターンをためらう家庭もあるとのこと。

 妻は,夫の扶養の範囲内で就業調整するためですが,配偶者控除制度ってのは,女性の労働力を押さえ込んでいるなと思います。人手不足の時代だというのに。この制度は,妻の稼ぎが少ない世帯を救済しようという意図のものですが,今では女性の稼ぎを押さえ込むことに貢献しています。いつまでも残しておいていいものかどうか…。

 最近では,妻の正社員として働いている世帯も増えています。上記のデータを,妻が35~44歳の正規職員という夫婦に絞るとどうなるでしょう。このグループだと,夫と妻の双方の所得が分かる共稼ぎ世帯は130万8900世帯です。先ほどの全体の3分の1ほどですね。このグループのデータで,上記の同じグラフをつくってみました。


 妻が正社員の夫婦ですので,先ほどの全体図と比して,分布がタテの上方にシフトしています。最も多いのは,「夫400万円台,妻200万円台」です。うーん,正社員でも妻の稼ぎの最頻階級は200万円台。家事・育児が足かせになるのでしょうか。

 右上のパワーカップルの率は2.1%です。青色の「夫>妻」は65.0%,緑色の「夫≒妻」は19.6%,赤色の「夫<妻」は15.4%となります。妻の稼ぎが夫と対等以上の夫婦は,全体の3分の1ですね。

 お見せした2つのグラフですが,どういう印象を持たれるでしょうか。女性の能力がフェアに活用されている事態を想定すると,左上の赤色のドットがもっと大きくなっているはずかと思うのですが。

 フルタイムで働いている有配偶女性に,自分の稼ぎと夫の稼ぎを比べてもらうと,「対等」ないしは「自分の方が多い」という回答が多くなっています。以下の表は,25~54歳の既婚フルタイム就業女性のうち,夫と対等以上の収入がある人の率です。2012年のISSP調査の個票から作成しました。


 何もいいますまい。日本の状況が普遍的でも何でもない,むしろ特異なんだということを見取ってほしいと思います。中高生にもこういうデータを見せて,自分が日頃目にしている光景が万国共通ではないことを,しっかりと分からせてほしいです。