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2021年5月14日金曜日

所得と貯蓄のクロス

 気温が上がってきました。今日の横須賀のマックスは25度,半袖を着て,久里浜の床屋に行ってきました。

 さて生活のゆとり(富裕度)の指標としての所得については,いろいろな角度から分布や中央値を明らかにしてきました。しかし入ってくるおカネ,収入面をみるだけというのでは不十分です。いざという時への備え,湯浅誠さんの言葉でいうと「溜め」がどれほどあるかも,合わせて見ないといけません。

 2019年の厚労省『国民生活基礎調査』にて,年間所得階級と貯蓄額階級のクロス表の形で,世帯数を呼び出すことができます。★こちらのページの表160です。


 私は原資料の表を,「所得階級13 × 貯蓄階級12」の形に整理し,各セルに該当する世帯数をグラフで可視化してみました。最近ツイッターでよく出している,ドットグラフです。ドットの大きさを使って,2変数のクロス表のデータを表現します。

 ツイッターでも出しましたが,ブツを見ていただきましょう。


 横軸は所得,縦軸は貯蓄額の階級で,この2つの組み合わせの各セルに該当する世帯数が,ドットの大きさで表されています。

 ぱっと見,所得が少なく貯蓄も少ない困窮世帯(左下)が多いことが分かります。所得300未満,貯蓄200万未満の世帯(緑の枠囲い)は全体の15.1%に該当します。7世帯に1世帯です。その一方で,右上の富裕世帯(所得たっぷり,貯蓄ガッツリ)も結構あります。社会の富の格差も見取れますね。

 所得が少なくが貯蓄はたくさんある世帯は,リタイアしている高齢世帯でしょう。

 赤マルは,所得・貯蓄とも100万未満の世帯で,生活困窮のレベルが甚だしく,生活保護の対象のレベルです。全体の3.2%に相当し,2019年1月時点の全世帯数(5853万世帯)にかけると,実数で187万世帯ほどと見積もられます。

 現実の生活保護受給世帯数はどうかというと,2019年の1か月平均でみて約164万世帯です(厚労省『被保護者調査』)。うーん,やっぱり日本の生活保護は困窮世帯を十分に掬えて(救えて)いないようです。日本の生活保護の捕捉率の低さは,よく指摘されること。

 あと一つ特記すべきこと。「日本で一番多い世帯は?」という問いへの答えです。上記のグラフのドットサイズから,答えは「所得100万円台,貯蓄ゼロの世帯」ということになります。単身非正規の若者,ないしはカツカツの暮らしをしている高齢者世帯でしょう。強烈な現実です。

 これでは経済も回らないというもの。これでいて企業の内部留保が過去最高というのですから,開いた口がふさがりません。モノが売れなくなり,必ずや自分たちにも跳ね返ってきます。

 所得と貯蓄のクロスで,日本の世帯数分布を可視化してみると,怖い現実が露わになりますね。できれば年齢層別に出して,若年層,中年層,高齢層でドットの色分けもしたいところです。