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2011年11月11日金曜日

中高生の性犯罪被害率

「可憐な制服少女を見ると,男は欲情を掻き立てられる。よって,制服少女たちと常日頃接する教員らは,性犯罪に傾斜する確率が,常人と比べてとてつもなく高い」。このような趣旨の文章を,何かの本で読んだ覚えがあります。

 なるほど。生徒に対するわいせつ行為などで,教員が処分を受けたというニュースは,よく見聞するところです。統計でみても,最近,教員の性犯罪の件数が増えていることは,8月7日の記事でみたとおりです。

 ところで,少子化により,「制服少女」たちの実数はどんどん減ってきています。その一方で,性犯罪者予備軍たる成人男性の数は増えてきています。こうした状況変化のなか,女子生徒らが性犯罪に遭遇する確率は高くなってきているのではないでしょうか。

 警察庁の『犯罪統計書』から,中高生が被害者となった性犯罪事件の件数を知ることができます。ここでいう性犯罪とは,強姦と強制わいせつをさすものとします。この中には,男子生徒が被害者となった事件も含まれていますが,その数はほんのわずかとみてよいでしょう。

 この数を,文科省『学校基本調査』から分かる女子中高生の数で除せば,女子中高生の性犯罪被害率を計算できます。被害者の職業別に事件の数が集計されているのは,1972年からです。まずは,1972年と2010年とで,性犯罪被害率がどう変わったのかをみてみましょう。女子中高生の特徴をみるため,女子人口全体の被害率と対比してみます。


 1972年でいうと,年間で認知された性犯罪事件の数は7,816件です。この年の女子人口は約5,477万人です。よって,女子人口全体の性犯罪被害率は,10万人あたりでみて,14.3となります。中学生の被害率は23.5,高校生のそれは29.8です。中高生の被害率が,全体よりも高くなっています。

 はて,およそ40年を経た2010年ではどうでしょう。人口全体の被害率は減っていますが,中高生のそれは増えています。とくに高校生の被害率の伸びが顕著で,29.8から101.2と,3.4倍になっています。悪い予感が的中といいましょうか,性犯罪被害が中高生に集中する度合いが高まっているようです。

 いつ頃から,このような事態になったのでしょう。女子中高生の被害率と,女子人口全体のそれを逐年で出し,その推移をグラフにしました。


 女子中高生の被害率は,1990年代頃から上昇し,全体の被害率曲線と乖離してきます。2003年にピークを迎えた後,減少しますが,最近,微増に転じています。

 緑色の曲線は,女子中高生の被害率が全体の何倍かを示す倍率です。1972年では1.9倍でしたが,最新の2010年では5.4倍にまで高まっています。女子中高生が被害に遭う確率は,通常の5倍以上ということです。

 上記のグラフの期間中,女子中高生の絶対数は,1987年の564万人をピークに,その後は減少を続けます。その一方で,成人男性の数は増え続けます。被害者層の減少,加害者層の増加です。様相をクリアーにするため,下表をつくってみました。aとbの単位は千人です。2050年の数字は,国立社会保障・人口問題研究所の中位推計をもとにつくりました。


 加害者層/被害者層の倍率が急騰するのは,1990年代以降です。奇しくも,女子中高生の性犯罪被害率が上昇する時期と重なっています。この数値は,今から40年後の2050年には,20.8になることが見込まれます。どういう事態になることやら。

 子どもの犯罪被害というのは,こうした社会の基底構造の側面からも考察する必要があるのではないか,と思っております。