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2018年2月14日水曜日

危険な40代

 今日の日経新聞に,「賃上げ,取り残される団塊ジュニア 若い世代優先で」と題する記事が出ています。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26847110T10C18A2EE8000/

 記事で紹介されている,正社員の賃金変化の年齢グラフがショッキングです。2012年から16年にかけて,多くの年齢層で所定内月収はアップしていますが,40代だけが下がっています。

 今の40代といったら,70年代前半生まれの団塊ジュニアから,私くらいのロスジェネまでの世代ですが,量的に多いので人余りが生じているとのこと。学校卒業時が就職氷河期で,スキルや職歴を積めなかった人の賃金が伸びていないのでは,という見方も提示されています。

 世紀の変わり目のどん底の時期に大学を出た,私なんかの世代には,こういう人が多いでしょうね。
http://tmaita77.blogspot.jp/2018/01/blog-post_22.html

 40代といえば,いろいろな役割がのしかかってくるステージです。子どもが高校や大学に進学する時期で,おカネもかさみます。早い人では,老親の介護も始まるでしょう。にもかかわらず,給料が上がらないのはキツイ。年功賃金を前提に諸制度が組み立てられているわが国では,なおのことです。

 40代にあっては,生活苦と犯罪が強く相関しています。注目されるのは,失業率と強盗率の時系列変化です。

 失業率とは,就労意欲のある労働力人口のうち,職に就けずハロワ等で職探しをしている人(完全失業者)が何%かです。強盗率は,人口10万人あたりにした強盗検挙人員数です。

 計算に使った要素も含めた時系列変化を整理すると,以下のようになります。a~cは『労働力調査』,dは『犯罪統計書』から採取した数値です。『労働力調査』の統計が1968年からになってますので,この年次から最新の2016年までの推移をみています。
http://www.stat.go.jp/data/roudou/index.htm
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/sousa/year.html


 黄色マークは観察期間中の最高値,青色は最低値です。失業率・強盗率とも,マックスは2009年です。前年(2008年)のリーマンショックの影響でしょう。

 失業率3%以上,強盗率2.0以上は赤字にしましたが,世紀末から今世紀初頭の10年間がヤバかったことが知られます。私の世代は,就職・結婚・出産といったイベントが,こういう時期と重なってしまったわけです。

 表の数値から,40代の失業率と強盗率がかなり相関していることがうかがわれます。失業率が低い時期は強盗率も低く,その逆も然り。

 恐ろしいですが,グラフにしてみましょう。


 傾向が非常によく似ています。1968~2016年の49年次の数値をもとに,失業率と強盗率の相関係数を出すと,+0.9055にもなります。

 これが因果関係とは限りませんが,失業に象徴される生活苦が,強盗という財産犯に結び付くのは,想像に難くありません。いろいろな重荷を背負う40代にあっては,それがひときわ顕著でしょう。

 失業と強盗の時系列相関は,他の年齢層でも観察されますが,その程度は40代で最も強くなっています。
https://ci.nii.ac.jp/naid/40016941572

 50代では失業と自殺が強く相関していますが,40代では,失業と強盗の関連のほうがクリアーです。子育ての最中ですので死ぬに死ねない,ないしはまだエネルギーがあるので,外向型の犯罪に走ってしまうのでしょうか。

 これまでは,40代といえば,順調に給料が上がり,しっかりとした家族につなぎ留められ,生活態度は安定していました。しかし今は,そうではありません。人余り,氷河期に学校卒業という世代要因により,給料が上がらず(冒頭日経記事),キャリアを積めていない非正規雇用者も多く滞留しています。

 団塊ジュニアの世代ですので量的にも多く,2016年の40代人口は1887万人にもなります(最初の表)。総人口の15%,7人に1人です。

 この人たちが大暴れしたら恐ろしい。今回のデータでみたように,40代といったら,生活苦と凶悪犯罪が最も鋭敏に関連するステージといえます。現在では,このステージの人たちの生活がヤバく,かつ人口量も多いと。言葉が良くないですが,社会にとっての爆弾といってもよいでしょう。

 時代にそぐわなくなった,これまでの社会の悪弊を吹き飛ばすために,この爆弾が使われるなら大いに結構なことですが。