週が明けたとおもったら,もう明日は金曜です。早いですね。自宅仕事の私がこう感じるのですから,勤め人の人は,時の流れがもっと早く感じるのではないでしょうか。
昨日の毎日新聞に,主要国の中で,日本だけ修士・博士号学位取得者が減っている,という記事が出ています。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180822-00000074-mai-life
人しか資源のない日本にとってこれはイタイ,研究力の低下だ。こういうトーンですが,背景要因として,学位取得後も不安定な非正規雇用(非常勤講師,研究員…)しかなく,大学院が敬遠されているからではないか,と結ばれています。
まさにその通りです。統計でみても,大学院博士課程入学者は,2003年をピークに減少の傾向です。2003年では1万8232人でしたが,2018年春は1万4904人です。修士課程入学者も,同じ期間にかけて7万5698人から7万4096人に減っています。
2007年に水月昭道さんの『高学歴ワーキングプア-フリーター生産工場としての大学院』(光文社新書)が出たこともあり,大学院修了者,とりわけ博士号取得者の悲惨な末路が知れ渡ってきたためでしょうか。
しかし,大学院入学者は20代前半の若き学徒だけではありません。年輩の社会人もいますし,最近は留学生も増えています。
文科省統計では,大学院入学者を,伝統的学生,社会人,留学生という3つの群に分けて拾えます。伝統的学生とは,学部から修士,修士から博士へとストレートに進学する人たちです。入学者の合計から,社会人と入学者を差し引いて出せます。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?tstat=000001011528
この3つの群に分けて,入学者の変化を観察すると,下表のようになります。
この15年間で,修士入学者は2.1%,博士入学者は18.3%も減りました。しかるに,大きく減っているのはストレートの伝統的進学群です。博士課程では,修士からのストレート進学組は,ほぼ半減しました。
その一方で,修士では留学生,博士では社会人がうんと増えています。社会人の博士課程入学者は,3952人から6374人に増え,今年春では伝統的学生よりも多くなっています。今となっては,博士入学者のマジョリティは社会人です。
大学院博士課程も,社会人のリカレント教育の場になりつつあるようですね。結構なことです。ところで,大学院は設置主体で国立,公立,私立に分かれますが,上記と同じデータをこの3群に分けて出すと,興味深い事実が分かります。
社会人が大きく増えている博士課程に注目しましょう。今年の速報データでは,設置主体別のデータはまだとれませんので,昨年春の入学者数をみてみます。
伝統的学生が減り,社会人が増えているのは国公私立共通ですが,その傾向は公立で顕著です。修士からのストレートの伝統群は6割も減り,代わって社会人入学者が186人から589人と,3倍以上に増えています。
その結果,入学者の内訳も様変わりしています。下図は,3つのグループの構成変化を帯グラフで表したものです。
変化が最もドラスティックなのは公立大学の博士課程で,社会人の割合は2003年では16.3%でしたが,昨年春では6割も占めるに至っています。国私立でも,社会人の比重が増していることに注目です。
地域と密着している公立大学は,住民のニーズを反映する度合いが高い,ということだと思われます。リカレント教育の先端を行っているのは,公立大学なんですね。何となくそうだろうなと思ってましたが,データで浮き彫りにできました。
『学校基本調査』では今年から,大学学部入学者の年齢も集計しています。ツイッターで発信しましたが,77%は18歳で,25歳以上は0.58%,30歳以上となると0.18%しかいません。
https://twitter.com/tmaita77/status/1032530831783260161
ただ,公立大学に限ると違うかもしれませんね。速報集計では,国公私別のデータは見れませんが,12月に公表される確報集計結果を楽しみに待ちましょう。
現在は,生涯学習社会。ニューズウィークの記事で,大学入学者の将来予測を出しましたが,やせ細る18歳人口を奪い合うことに躍起になる大学は,淘汰されるしかありません。少子高齢化という人口変動と同時に,社会変化の加速化という要因も,リカレント教育の普及を強く求めています。子ども期に学校で習ったことなど,すぐに陳腐化しちゃうのですから。
文科省統計で,大学院だけでなく,大学学部入学者の年齢も集計されるようになったことは,「未来形」のすがたに変身することを大学に促す姿勢の表れととれ,うれしく思います。
今から10年後,社会人,高齢者,外国人など,多様な学生でキャンパスが溢れかえっているといいなと思います。