2013年1月31日木曜日

2013年1月の教員不祥事

 ツイッター上にて,教員の不祥事に関する報道記事(Web)を収集しています。毎月末のブログ記事にて,その月に集めた記事をまとめてみることにしました。

 落ちがあるかもしれませんが,私が把握した今月の教員の不祥事報道は40件なり。記事の略名,日付,メディア名,都道府県,校種,性別,ならびに年齢を記録します。件の詳細を知りたい方は,記事名をヤフーか何かに貼り付けて検索すれば引っかかると思います。

 毎月,この記録を蓄積していけば,それなりのデータベースができ上がることでしょう。がんばって継続しようと思います。

 しかし,ツイッターは便利ですね。自分が興味を持ったWeb記事に据えられているツイートボタンをクリックするだけで,自分のツイッターに当該記事をストックできます。新聞切り抜きの現代版です。朝と晩の2回,主要紙のWebに当たる習慣をつけてみてはいかがでしょう。学生さんにも勧めてみようかな。

<2013年1月の教員不祥事報道>
・顧問教諭の体罰翌日…高2男子キャプテンが自殺(1/8,読売,大阪,高,男性,47)
・小学校教諭、児童に頭突き・靴投げ 減給3カ月の処分(1/10,朝日,大阪,小,男性,39)
・勤務時間中に喫煙、教諭ら6人停職処分…大阪市(1/10,読売,大阪,小,男性)
・体罰で生徒の鎖骨折る…都教委、中学教諭を処分(1/10,読売,東京,中,男性,28)
・将来万引き犯になる…担任が女子生徒に暴言 (1/11,読売,埼玉,高,男性,58)
・頬たたいて鼓膜破る…体罰教諭5人処分 (1/11,読売,福岡,高,男性)
・山梨の県立高、男性教諭が平手打ちの体罰(1/15,読売,山梨,高,男性)
・女生徒を抱擁・作曲してプレゼント 神奈川県立高教諭、セクハラで停職6カ月
(1/15,産経,神奈川,高,男性,58)
・県立高男性教諭を聴取 自動車窃盗・飲酒運転容疑 青森県警
(1/16,福島民放,福島,高,男性,40代)
・50代教諭、児童に暴行/傷害容疑で書類送検へ (1/16,四国新聞,小,男性,50代)
・女子部員にセクハラの顧問高校教諭減給 「勘違いしてしまった」
(1/17,千葉日報,千葉,高,男性,51)
・授業受けない女子生徒の顔殴る…中学教諭を減給(1/17,読売,広島,中,男性,49)
・民間出身校長を解任 高校入試合否漏らす(1/18,産経,東京,高,男性,58)
・体罰、中学教諭2人処分 神戸市教委、殴り骨折などで (1/19,朝日,兵庫,男性,44・53)
・「かっとなって」児童を拳でたたいた40代教諭(1/19,読売,福岡,小,男性,40代)
・寝ている小6女児を触った疑いの担任、懲戒免職(1/19,東京,読売,小,男性,30)
・塩酸を水で薄め生徒に飲ませる 愛知、中学教諭が「罰」(1/19,朝日,愛知,中,男性,23)
・教諭、「もめ事」に駆け付けた警官の顔に頭突き(1/21,読売,山口,中,男性,37)
・聴覚支援学校教諭…生徒踏みつけ、多数回たたく
(1/21,読売,大阪,特,男・女,40代・50代)
・担任教諭、自閉症の小4の手を縛る 愛知の特別支援学級(1/23,朝日,愛知,小,男性,58)
・20代県立高講師が生徒に酒飲ませる(1/23,宮崎日日,宮崎,高,男性,20代)
・女子空手部員に平手打ち 島根の私立校、講師の契約解除
(1/23,朝日,島根,高,男性,30代)
・教諭が願書郵送忘れ、推薦受験できず…処分検討(1/24,読売,富山,中,男性)
・女性教諭を海に投げ入れる 野球部員に指示の顧問停職 (1/24,産経,埼玉,高,男性,36)
・公然わいせつ教諭 停職6カ月の処分 島根県教委(1/24,産経,島根,高,男性,47)
・中学校講師を逮捕=少女2人に買春容疑(1/24,時事通信,福岡,中,男性,28)
・教え子と性的関係、県立高教諭を懲戒免職(1/25,山形新聞,山形,高,男性,32)
・酒気帯び運転:事故の小学教諭を懲戒免--県教委(1/25,毎日,長野,小,男性,50)
・懲戒処分:男子生徒に体罰、特別支援校教諭を戒告(1/25,毎日,新潟,特,男性,40代)
・通勤手当不正受給で県立学校教諭戒告(1/25,毎日,愛媛,高,男性,50代)
・スピード違反免停中に追突事故、男性教諭を停職(1/25,読売,埼玉,小,男性,58)
・京都のバスケ部で体罰、顧問が複数部員に続ける (1/28,読売,京都,中,男性,29)
・教諭がサッカー部員を平手打ち 愛知、高蔵高で体罰(1/28,東京,愛知,高,男性,30代9
・進路指導主事、盗撮目撃され警備員にかみつく (1/29,読売,愛知,高,男性,50)
・バレー部顧問、2部員に体罰…長野・小布施中(1/29,読売,長野,中,男性,27)
・対岸の女子高生盗撮疑い、京都 元講師逮捕(1/29,共同通信,京都,高,男性,58)
・強豪高相撲部顧問が体罰、暴行容疑で書類送検へ(1/30,読売,兵庫,高,男性,34)
・口答えに立腹、担任が小3男児の頬つねりアザ (1/30,産経,和歌山,小,女性,49)
・教諭が体罰、生徒2人の鼓膜に傷…三重の高校(1/30,読売,三重,高,男性,47)
・コンビニで下半身露出の中学教諭、警官に頭突き(1/31,読売,山口,中,男性,37)

単身未婚ニート

 2010年の『国勢調査』では,利用者のリクエストを募集して,需要が高いと判断した統計表を追加作成するサービスが実施されている模様です。これまで2回の募集がなされ,それに応えて追加作成された統計表が公表されています。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001044522&cycode=0

 その中に,労働力状態と配偶関係と世帯類型をクロスさせた表があります。この統計表から,単身未婚ニートの数を割り出すことが可能です。

 ニート(Neet)とは,就業していなければ,学校にも行っておらず,かといって職業訓練も受けていない人種です。ここでは,このニートのうち,未婚で一人暮らしをしている者の数を明らかにしてみます。会社,学校,職業訓練機関,さらには同居家族という,あらゆる縁から隔絶された人間というのはどれほどいるのでしょうか。

 25~44歳の年齢層に焦点を当てましょう。この年齢層の非労働力人口のうち,その理由が通学でも家事でもない「その他」というカテゴリーの者は413,763人。これがニートです。このうち,未婚の単独世帯主は31,502人。2010年の10月時点において,若年・中年の単身未婚ニートが3万人超いることが知られます。

 同時点の25~44歳の人口は約3,416万人ですから,ベース人口1万人あたりの数にすると9.1人となります。およそ1,087人に1人。この出現率を5歳刻みの層ごとに出してみると,下表のようになります。


 ほう。単身未婚ニートの量は,絶対数でみても人口あたりの出現率でみても,年齢が上がるほど多くなります。社縁や血縁などの縁を持たない人間が,加齢とともに増えてくる傾向というのは,懸念されるところです。

 『国勢調査』で追加作成された表には,面白そうなものが結構あります。第3回のリクエスト募集はされないのかな。もしされるのであれば,この変数とこの変数のクロス表というように,私も注文を出してみるつもりです。採用されるかは分かりませんが。

 さしあたり,労働力状態と学歴のクロスがみたいな。そうすれば,高学歴ニートの量などを知ることができます。「統計は国民の共有財産」。この理念が着々と具現されているようです。このような条件を存分に利用しようではありませんか。

2013年1月30日水曜日

冬の都立桜ヶ丘公園

 寒波の影響により寒い日が続いていますが,昼は比較的暖かいように感じます。天気もいいようなので,ちょいと散歩。近場の都立桜ヶ丘公園をぶらり。


 昨年の11月21日の記事12月5日の記事に載せた写真と同じスポットを撮ったものです。季節の変化につれて,緑葉→紅葉→枯葉というように移り変わるのが面白い。定点観測です。

 私は東京都の多摩市に住んでいるのですが,この市の都市公園面積の比率は10.9%で,首都圏で1位であることを知りました。

 下図は,1都3県の194区市町村を,都市公園面積の比率に依拠して塗り分けたものです。さいたま市,千葉市,横浜市,川崎市,および相模原市の政令指定都市内の各区の塗り分けはしていません。


 194区市町村の都市公園面積率の上位5位は,以下のごとし。

1位 東京・多摩市 ・・・ 10.9%
2位 埼玉・滑川町 ・・・ 9.7%
3位 東京・武蔵村山市 ・・・ 7.8%
4位 東京・台東区 ・・・ 7.4%
5位 埼玉・戸田市 ・・・ 7.2%

 近場に緑が多いなと思っていましたが,その印象が裏づけられました。家賃相場も高くはないし,よいところ。

 春になったら,上の写真はピンク色に染まります。3月下旬頃に,同じ場所の写真を撮りましょう。定点観測です。

2013年1月29日火曜日

児童・生徒の理系職志望率

 文科省は毎年,『全国学力・学習状況調査』を実施していますが,2012年度調査より,学力調査の教科に理科が加えられています。理系人材の育成を重視しようという方針からでしょう。
http://www.nier.go.jp/kaihatsu/zenkokugakuryoku.html

 これに伴い,児童・生徒への質問紙調査においても,理科の嗜好や学習に関連する設問が盛られるようになっています。その中の一つに,以下のものがあります。

 「将来,理科や科学技術に関係する職業に就きたいと思いますか?」

 児童・生徒の理系職志向の程度を測ることができる,興味深い設問です。私は,この問いに対し「当てはまる」ないしは「どちらかといえば当てはまる」という,肯定の回答を寄せた者の比率がどれほどかに注目しました。以下では,理系職志望率ということにします。

 まずは,国公私という学校の設置主体によって率がどう変異するかをみてみましょう。調査対象学年の小6と中3について,3群の理系職志望率をグラフ化してみました。


 ほう。学年を問わず,国私立と公立の間に断絶がありますね。両者では,在籍児童・生徒の階層が違うと思いますが,国私立校の場合,理系の研究職の子弟が結構多かったりして。

 なお,国公私立とも,学年を上がるにつれて理系職志望率は下がってきます。内容の高度化するとともに,受験が近いということで,実験や観察の比重が減り,座学が多くなることの故でしょうか。ちなみに,わが国の理科の授業スタイルは,国際的にみて知識偏重型であることが知られています。
http://synodos.livedoor.biz/archives/1990703.html

 次に,都道府県別の傾向です。児童・生徒の理系職志望率が高い県はどこでしょう。下表は,公立校の数値の県別一覧表です。47県中の順位も添えています。


 同じ国内であっても,子どもの理系職志望率は地域によって多少違っています。両端の極差でいうと,小6では8.4ポイント,中3では7.6ポイントの開きがみられます。

 右欄をみると,小6と中3の順位に差がある県が多いようですが,両学年とも赤色(5位以内)なのは,栃木と富山です。この2県は,児童・生徒の理系志向が相対的に強い「理系」県として性格づけることができましょう。富山といえば「くすり」を想起しますが,そういう地域性の影響もあるのかしらん。

 蛇足ですが,発達段階を上がった中学校3年生の理系職志望率の都道府県地図を掲げておきます。黒色は,25%(4分の1)を超える県です。


 当局の公表資料から知ることができるのはここまでなり。これだけでも面白いのですが,残念なのは男女の差,すなわちジェンダー差が分からないことです。

 理系志向の男女差はよく知られているところであり,昨年の11月8日の記事では,日本の女子高生の理系志向が国際的にみて最低であることが明らかになりました。

 男性はかくあるべし,女性はかくあるべしというジェンダー規範が強いわが国では,女子児童・生徒の理系志向が抑制される過程が,暗にも明にも存在するのかもしれません。今回分析した理系職志望率が男女別に分かれば,小6から中3にかけての男女差の変化を観察することで,そうした過程が本当にあるのかどうかが分かります。

 『全国学力・学習状況調査』の児童・生徒質問紙調査の結果が,学校の設置主体別や県別に公表されているにもかかわらず,性別のデータがなぜ出されていないのかが疑問です。性というのは,最も基本的な属性カテゴリーだと思うのですが・・・。

 報道によると,この4月に実施される2013年度調査より,全児童・生徒を対象とした全数調査に戻されるとのこと。それだけデータ数も増えるのですから,性別や地域類型別の結果なども公表していただきたいものです。

2013年1月27日日曜日

殺人率と自殺率の国際比較(改)

 殺人率と自殺率。いずれも物騒な指標ですが,殺人は外向き,自殺は内向きの逸脱行動の最たるものです。

 この2つは別個に観察されることが多いのですが,両者を併せてみることで,所与の社会の国民性のようなものを抽出することができます。今回は,それをしてみようと思うのです。

 この作業は,2011年6月26日の記事でもしていますが,WHO(世界保健機関)やUNODC(国連薬物犯罪事務所)のホームページを改めて閲覧したところ,より多くの国のデータが公表されていることを知りました。ここにてデータを更新することにいたしましょう。

 私は,WHOUNODCのホームページにあたって,2008年の188か国の自殺率と殺人率を収集しました。先の記事ではわずか40か国の統計しか得られませんでしたが,今回はその4倍以上の国のデータを集めることができました。なお殺人率は,一部の国のデータ年次が若干違っていることを申し添えます。日本は,双方とも2008年のものです。

 前後しますが,殺人率とは2008年中に当該国の警察が認知した殺人事件件数を,人口10万人あたりの比率にしたものです。自殺率とは,同年中の自殺者数を同じく人口10万人あたりの数に換算したものです。両者とも,計算済みの数値が原資料に掲載されています。

 では,188か国の殺人率と自殺率をご覧いただきましょう。当然ながら,ベタな一覧表を提示する紙幅はありませんのでグラフ表現をします。横軸に自殺率,縦軸に殺人率をとった座標上に,188か国をプロットしました。


 右下に位置する国は,殺人率が低く自殺率が高いことを示唆します。左上に位置する社会はその反対です。

 ホンジュラス,ジャマイカ,ベネズエラといった中南米の社会では,自殺率よりも殺人率のほうがはるかに高くなっています。一方,日本はといえば,自殺率が高くて殺人率がきわめて低いので,右下の底辺を這うような位置にあります。主要先進国も同じようなもの。米国は,外向的な犯罪が多いなどといわれますが,多くの国際データの中でみると,まだまだ可愛いものです。

 図中の斜線は均等線であり,これよりも上にある場合,殺人率が自殺率よりも高いことを意味します。188か国中85か国(45.2%)が,この線よりも上に位置しています。世界的にみれば,自殺よりも殺人が多い社会って結構あるものですね。われわれが信じて疑わない常識というものが相対化されますなあ。

 それでは,この2つの逸脱指標を使って,それぞれの国の国民性のようなものを明らかにしてみましょう。外向的か内向的か,ということです。

 いま,殺人率と自殺率を合算した値をもって,当該社会における極限の危機状況の量とします。これで表される危機量のうち,どれほどが自殺(自分を殺る)で処理されているか,どれほどが殺人(他人を殺る)で処理されているか,という見方をとります。

 どちらでもいいのですが,自殺のウェイトでみることにしましょう。日本の場合,自殺率は24.8,殺人率は0.5です。よって,危機の処理の仕方がどれほど内向きであるかは,以下の値で計測されます。24.8/(0.5+24.8)=98.0%

 わが国では,極限の危機状況に陥った人間の大半は,その打開の経路を自らを殺めることに求めています。他人を殺めたり,社会に反旗を翻すというような,外向きに向かうのはごくわずかです。

 同じ値を主要国について出すと,アメリカが67.8%,イギリスが85.7%,ドイツが93.5%,フランスが92.6%なり。いずれもわが国より低し。ちなみに,殺人率1位のホンジュラスはたったの9.0%です。逆をいえば,この中米の社会では,危機状況の9割以上が外向きの逸脱によって処理されていることになります。

 これだけでも,わが国の内向的な国民性がうかがえますが,188か国全体の中での位置をみてみましょう。私は,上の測度(内向率)を全ての国について計算し,高い順に並べてみました。下の図は,この順番に,自殺と殺人の組成がどうなっているかを図示したものです。

 188の国名を軒並み記すのは煩雑ですので,日本,アメリカ,そして南米の大国ブラジルの位置だけを示しましょう。カッコ内の数値は,内向率の順位です。


 日本は188か国中4位,アメリカは76位,ブラジルは163位です。日本とアメリカでは自殺のシェアのほうが大きいですが,ブラジルになるとそれが反転します。この南米の国では,危機状況の8割が他人を殺めることで処理されているわけです。

 日本人の内向性はよくいわれるところですが,殺人率と自殺率という逸脱指標からも,その様を浮き彫りにすることができます。

 同じ分析を手掛けた前の記事でもいいましたが,このような内向的な国民性があるのをいいことに,お上が惰眠をむさぼるようなことがあってはならないでしょう。昨今,「自己責任」という言葉が幅を利かせている状況をみるに,このような懸念を強く持ちます。
 
 今回計算した内向率という指標を考案されたのは,私の恩師の松本良夫教授です。前の記事と同じ結びになりますが,以下の論文を紹介させていただきます。松本良夫・舞田敏彦「殺人・自殺の発生動向の関連分析-20世紀後半期の日本の場合-」『武蔵野大学現代社会学部紀要』第3号,2002年。

2013年1月26日土曜日

都道府県別の教員の病気離職率

 文科省『学校教員統計』の教員異動調査では,調査実施年の前年度間に離職した教員の数が計上されています。最新の2010年調査では,前年の2009年度間の離職教員数が明らかにされているわけです。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kyouin/1268573.htm

 教員が教壇を去る理由はさまざまでしょうが,統計上は,以下の9つの理由カテゴリーが用意されています。数字は,2009年度間に当該の理由で離職した幼・小・中・高の教員数です。

 ①:定年 ・・・ 21,023人
 ②:病気(精神疾患) ・・・ 909人
 ③:病気(精神疾患以外) ・・・ 869人
 ④:死亡 ・・・ 601人
 ⑤:転職 ・・・ 5,916人
 ⑥:大学等入学 ・・・ 198人
 ⑦:家庭の事情 ・・・ 6,799人
 ⑧:職務上の問題 ・・・ 472人
 ⑨:その他 ・・・ 10,085人

 当然ですが,定年が最も多くなっています。次に多いのは,8つの理由のいずれにも該当しない「その他」です。一身上の理由というような曖昧なものは,この中に含まれることでしょう。現在,退職金の目減りを恐れて「駆け込み退職」する教員がいるようですが,この理由は,統計上は「その他」に括られることと思います。

 「家庭の事情」という理由も結構多いですね。老親の介護というものがメインでしょう。結婚退職などもこれに含まれるのかな。

 あと一つ,4ケタ台なのが「転職」ですが,この中には,現場の教諭から指導主事になったというようなケースも入れられているようです。教職に嫌気がさして他の職に転じたという者だけではないとのこと。

 さて,教職危機の量を測る指標(measure)として離職率がよく用いられるのですが,上記の①~⑨のうち,どの理由の離職者数を分子に据えたものでしょう。2011年5月7日の記事では,⑨の「その他」の数を分子にして離職率を出したのですが,後から分かったところでは,任期満了による離職もこの中に含まれるとのことです。これはいけません。現在,有期雇用の教員が増えていますしね。

 そこで,②と③を足し合わせた広義の病気離職者数を分子にして,離職率を計算することとしました。精神疾患とその他の病がほぼ半々ですが,病気を患って職を辞す教員の量は,教職の危機や困難の程度を可視化するのに使える指標であると思います。

 昨年の7月23日の記事では,公立小学校教員について,この意味での離職率(病気離職率)の時系列推移をたどってみました。そこで分かったのは,直近の3年間(2006年~2009年)にかけて率がかなり上がっていること,その傾向はとりわけ若年層で顕著なことです。

 今回は,教員の病気離職率を都道府県別に出してみようと思います。各県における教職危機の程度を数量化してみようという試みです。

 私は,2010年度の『学校教員統計』から分かる,2009年度間の病気離職者数を,同年5月1日時点の本務教員数で除して,教員の病気離職率を計算しました。分母の出所は,文科省の『学校基本調査』です。

 全国統計でいうと,2009年度間の幼・小・中・高の病気離職教員数は1,778人です。同年5月1日時点の幼・小・中・高(全・定)の本務教員数は1,020,323人。したがって,2009年度の教員の病気離職率は,1万人あたり17.4人と算出されます。約575人に1人。決して多い数ではありませんが,この値の相対水準でもって,各県の状況を診断してみようと思うのです。

 下表は,このやり方で明らかにした,47都道府県の病気離職率の一覧です。rank関数で出した,各県の相対順位も添えています。


 最高値には黄色,最低値には青色のマークをしました。ほう。最高の広島と最低の岩手では,教員の病気離職率が5倍近くも違いますね。

 上位5位は,広島,東京,奈良,鳥取,そして石川なり。地理的に分散しているようですが,47都道府県全体を見渡してみて,教職危機の地域性のようなものがみられるでしょうか。この手のことを確認するには,地図化(mapping)が一番です。上表の病気離職率をMANDARAで地図化してみました。


 高率県は地理的に分散していますが,首都圏や近畿圏が濃い色になっています。地方中枢県の広島と福岡も濃い青色で塗られていますね。

 ざっとみた限り,教職危機の量は,都市性と関連があるように思われます。2010年の『国勢調査』から各県の人口集中地区居住率を出し,教員の病気離職率との相関をとったところ,+0.448という正の係数値が出てきました。47というサンプル数を考慮すると,1%水準で有意な相関と判定されます。

 都市性の度合いが高い県ほど,教員の病気離職率が高い傾向です。まあ,都市部ほど,教員に無理難題をふかっけてくるモンスター・ペアレントも多くいるでしょうしね。それに住民の学歴構成も高いので,いろいろと口うるさい保護者も多いことでしょう。このことは,久冨善之教授がどこかでいわれていたような気がします。

 ところで,上図の地図で濃い青色になっている広島と福岡ですが,この2県は少年非行の発生率が高い県です。2009年の警察庁統計を使って,各県の非行少年出現率(小・中・高の刑法犯検挙・補導人員数/小・中・高の全児童・生徒数)を出し,教員の病気離職率との相関係数を出すと+0.334となります。こちらは5%水準で有意です。

 児童・生徒の問題行動の頻度というのも関連している模様です。教員から生徒への暴力(体罰)が大問題になっていますが,その逆(対教師暴力)もあり。手ひどい暴力を受けて,労災認定される教員もいます。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20130117-OYT8T00477.htm?from=tw

 教職危機の指標としての病気離職率と関連する要因は,他にもいろいろあるでしょう。教員の給与水準やTP比等,勤務条件指標との相関も興味深いところです。上の地図で白色になっている東北の県は,教員の給与の相対水準(対民間)が高いのだよな。

 あと,教員集団の構成というのも侮れない要因です。病気離職率は若年教員で圧倒的に高いのですが,教員集団の年齢ピラミッドの型がいびつで,少数の若年教員に圧力がかかるような構造ができている県では,病気離職率の水準は高い,という仮説を立てることもできます。

 教職危機の地域差の要因分析というのは,大変重要な課題ですが,まだ手つかずのようです。面白い結果が出たら学会で報告しようと考えているのですが,そこまでは至らず。もっと枠組みを洗練させて取り組んでいきたい課題です。

2013年1月24日木曜日

教員の権威低下のデータ

 昔に比べて教員の威厳が低下した,教員の権威が失墜したなどとよくいわれます。そのことが,現在の教職危機を発生せしめる条件をなしている面もあります。

 学校に理不尽な要求をつきつけるモンスター・ペアレントの存在が社会問題化していますが,半世紀前の人間がタイムマシンでやってきて,保護者が教員に怒鳴り散らす,教員が保護者に土下座するなどの光景を目にしたら,それはもう仰天することでしょう。

 ところで,教員の権威低下がよく指摘される割には,それを示す客観データを目にしたことがありません。ちょいと探してみたところ,統計数理研究所の『国民性調査』の中に,関連する設問が盛られていることを知りました。
http://www.ism.ac.jp/kokuminsei/table/index.htm

 『国民性調査』は,1953年(昭和28年)以降,5年間隔で実施されているもです。対象は20歳以上の国民。以下の設問への回答変化を,最新の2008年調査までたどることができます。

 問い 「先生が何か悪いことをした」というような話を,子供が聞いてきて,親にたずねたとき,親はそれがほんとうであることを知っている場合,子供には「そんなことはない」といった方がよいと思いますか,それとも「それはほんとうだ」といった方がよいと思いますか?

 先生様が悪事を働いたなどと子どもに知らせたりしたら示しが立たない。こう考える者は,「そんなことはない」といった方がよいと答えるでしょう。先生だろうが何だろうが悪は悪だ。子どもにきちんと伝えるべきだという意見の者は,「ほんとうだ」といった方がよいと回答することでしょう。

 この設問は合理主義の程度を測るものとも読めますが,教員の権威低下の様相を可視化するのにも使えると思います。半世紀ちょっとの間にかけて,寄せられた回答の分布はどう変わってきたのでしょう。


  「そんなことはない」と隠すべきという回答は,時代と共にみるみる減ってきています。1953年では38%でしたが,2008年では21%です。代わって,「本当だ」と事実を教えるべきという回答が42%から63%へと,20ポイント以上も増えているのです。

 これは20歳以上の全対象者をひっくるめた傾向ですが,年齢層別にみるとどうでしょう。予想としては,若い年代ほど,「そんなことはない」と否定すべしという回答は少ないように思われます。

 「そんなことはない」という権威派の回答比率に注目しましょう。下図は,5年刻みの調査実施年ごとの年齢層別数値を上から俯瞰したものです。色の違いに依拠して,率の大まかな水準を読み取ってください。本ブログを長くご覧頂いている方はもうお馴染みですよね。時代×年齢の「社会地図」図式です。


 いかがでしょう。時を下るほど,若い年齢層になるほど,権威派の回答比率は小さくなっていきます。昔の高齢者にあっては,半分近くの者が,教員の非を子どもに知らせるべきでないと答えていました。ところが現在の若年層にあっては,そのような考えの者は2割ほどです。

 2008年のデータでみると,権威派の回答比率が最も小さいのは30代で18%なり。子育ての最中にある親御さんの年齢層です。なるほど。今の学校でMPが問題化しているというのも,さもありなんです。
 
 教員の権威低下の原因については,いくつか考えられますが,よくいわれるのは,今の教員は希少な知識人ではなくなっている,ということです。

 小・中・高の教員数(本務)は,戦後初期の1950年では57万人ほどでしたが。2012年現在では91万人にまで膨れ上がっています(文科省『学校基本調査』)。また大学進学率が上昇した今日,保護者の多くは教員と同じ大卒です。対等の立場でガンガン口出ししてくるというのも,頷けるところです。

 これではということで,現在,教員養成の期間を6年間に延長し,教員志望者には修士の学位を取らせようという案が出されています。名目上は専門性の向上ということになっていますが,教員の学歴水準を一段高くして,知識の伝達者としての教員の威厳の基盤を担保しよう,という意図が込められていることがうかがわれます。

 デュルケムもいうように,権威(autorité )とは教師にとって不可欠の資質です。何の権威も感じられない,そこいらの人間と同じような輩が口にすることに,子どもが熱心に耳を傾けるはずはありますまい。

 ですが,権威の源泉というのは,学歴がどうとかいう外的なものに限られません。デュルケムは,教師の権威の源泉として,教師が自らの職務にどれほど誇りを感じているか,ということが重要であると述べています。また,教師は社会という道徳的人格の代弁者であるがゆえ,当の社会に教師が抱いている愛着の程度も,権威の源泉として作用すると指摘しています(『道徳教育論』)。

 これらは,外的な源泉とは区別されるところの,内的な源泉であるといえましょう。実のところ,教師の源泉として重要であり,かつ望ましいのはこちらのほうです。

 学歴とか身なりという外的なものに由来する権威は,しばしば傲慢,さらには権威主義に転化します。デュルケムが,教師の権威を重視しながらも,学校が権威主義の場となってはならないと厳に戒めしていることはよく知られています。

 しかるに,上述のような内的な源泉から湧き出るところの権威というのは,それとは違います。教師が偉ぶったり,子どもに体罰を振るったりすることの因となるのではなく,子どもの内に教師への敬意を喚起させ,教授活動を効果的ならしめるプラスの条件として作用します。

 今の状況をみるに,教師の権威の内的な源泉が枯れ果てているように感じるのは私だけでしょうか。教室の中において,人を欺いてはならぬと道徳を説いたところで,目の前の子どもの何割かは,それを業とするような悪徳企業に入っていくわけです。教室の中と外の社会が大きく違っていることを,教師たちは知っています。

 実社会で求められる資質能力は「学問よりもコミュニケーション」などとあからさまにいわれると,自分がやっていることは何なのだろうと懐疑に陥る大学教員も少なくないことでしょう。そういう思いで教壇に立つ教員の言に耳を傾ける学生は少なし。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130122/edc13012216020003-n1.htm

 もっと根源的にいえば,自殺者が毎年3万人を超えるような「病んだ」社会に愛着を抱く教師などいるのかしらん。

 教師の権威の低下については,子どもや保護者が自己チューになったとか,教師が希少人材ではなくなったとか,いろいろなことがいわれますが,教師の「内」にも原因はありそうです。己の職務への誇り,自らが代弁するところの道徳的人格としての社会への愛着。デュルケムが述べた,教師の権威の(内的な)源泉の枯渇です。今回紹介したデータは,そういう傾向が今になって強まってきていることの表れともいえるでしょう。

 今年(2013年)は,『国民性調査』の実施年です。先ほどの統計図を下に延ばしたら,どういう模様になることか。この5年間の社会変化の有様と同時に,2009年度より実施されている教員免許更新制の目的「教員が自信と誇りを持って教壇に立ち,社会の尊敬と信頼を得ること」がどれほど具現されているかが評されることにもなるでしょう。結果を期して待ちたいと思います。