2016年3月31日木曜日

ラーメン二郎・三田参り

 私のツイッターをご覧いただいている方はご存知でしょうが,昨年の秋頃より,ラーメン二郎巡りをしています。「ヒマな野郎だ」と思っている方もいるでしょうが,そう,私はヒマ人です。

 今は授業がないので,週2回行っています。ツイッターにアップした店舗とラーメンの写真も溜まってきました。あとちょっとで,首都圏(1都3県)は全店制覇です。

 さて,二郎の総本山は三田本店ですが,桜の時期に行こうと決めていました。今がそうですが,今日は晴天だったので行ってきました。JR田町駅から徒歩10分ほど,慶應義塾大学正門のすぐ近くです。


 時間は,午前中にしました(ここは朝早くからやっています)。10時半ころ着きましたが,この並びよう。店外に10人ほど。

 細長の建物の一階にある店舗は,小じんまりとしています。コの字型のテーブルに囲まれた厨房に,総帥と助手2名が立ち,矢継ぎ早の注文を裁いていました。

 初めて見る,ラーメン二郎の総帥こと,山田拓美氏。各店舗に飾られている写真や挿絵の通りです(黒縁メガネはかけていませんでしたが)。馴染みのお客と親し気に会話しながら,手を動かされていました。気さくな人柄とお見受けします。界隈では「オヤジ」と親しまれているとのこと,さもありなん。

 私は小ラーメンの食券(600円)を買い,一番奥の丸椅子に着席。ここは,水はセルフではなく,助手さんが大きなコップについで出してくれます。コールはいつも通り,「ヤサイマシ,ニンニクマシマシ!」。


 豪快にヤサイが盛ってあります。テーブルに醤油がなかったので,「カラメ」もコールすればよかった・・・。スープは他店と比して脂っこく,麺は程よい固め。ブタも柔らかくて美味しかったです。本店の味を,確かに経験しました。

 15分ほどで平らげて,机を拭いて「ごちそうさま」。「ありがとうー」という総帥の声に見送られ退店。時間は11時15分頃,店の外の行列はさらに倍増。午後から授業という,慶大の学生さんでしょうね。

 ちなみに三田本店の近くには,東京タワーもあります。上ってみようかと思いましたが,また今度ということで,真直ぐ帰ってきました。

 これで首都圏は,残り1店で全店制覇です。あとは北関東に2店,仙台・札幌・新潟に1店ずつあるんでしたっけ。北関東の2店は,暑くなる前に行ってみようかなと思っています(泊りがけになるかもしれませんが)。

 考えてみれば,今日は3月末日ですよね。明日からは新年度。ブログの背景を桜色にします。

2016年3月30日水曜日

結婚期の「女性/男性」比率

 「結婚したければ,どこそこに移住せよ」という趣旨の記事を見かけました。県別の性別人口比をもとにした主張のようです。
http://j-town.net/tokyo/column/allprefcolumn/223494.html

 戦後初期の頃は,「男1人に女がトラック一杯」なんて言われていましたが,結婚期の人口の男女比というのも,結婚のしやすさを規定する条件となるでしょう。

 2014年の総務省『人口推計年報』によると,同年10月時点の25~34歳男性は720万人,女性は694万人です。男性100人に対し,女性は96人。女性が少ないのは,出生数に違いがあるためです。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001132435

 しかし,この比率は地域によって違っています。私の郷里の鹿児島でいうと,同年齢の男性は7.8万人,女性は8.7万人で,女性のほうが多くなっています。男性100人に対し,女性112人。この地方県では,大学進学や就職時に流出する若者が多いのですが,それは男性で顕著だからです。

 同じ値を47都道府県について計算し,地図にしてみました。結婚期の「女性/男性」比率のマップです。


 濃い色は,「女性>男性」の県ですが,地域性がありますね。おおよそ,西高東低の傾向です。トップは,わが郷里の鹿児島ではないですか。「結婚したけりゃ帰ってこい。同年齢の女性はたくさんいるぞ」と,高校時代の恩師から言われたことがありますが,数値でも出てるんだなあ。

 対して,今住んでいる東京をはじめ,首都圏は真っ白です。私のように,地方から流入してきた男性がひしめいているためと思われます。東京は,男性100人につき女性95人。最低の茨城は,たった89人です。

 各県のこの値は,男性の結婚のしやすさと関連しているでしょうか。2012年の『就業構造基本調査』をもとに,25~34歳男性の未婚率を県別に出し,上記の「女性/男性」比との相関をとってみました。


 「女性/男性」比が高い県ほど,結婚期の男性の未婚率は低い傾向にあります。相関係数は-0.5158で,1%水準で有意です。

 当然といえばそうですが,人口的な条件も,結婚に影響するのですなあ。若者のUターンや移住を促すにあたっては,地域の人口構造もアピールすべきかもしれません。冒頭で紹介した,今朝のJ-cast記事のように。

 ちなみに,結婚期の「女性/男性」比は,市区町村別に出すこともできます。資料は,『住民基本台帳人口報告』です。最新の2015年の資料をもとに,同年1月時点の市区町村別の数値を計算してみました。25~34歳の男性100人につき,同年齢の女性は何人かです。
https://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&listID=000001135862&requestSender=estat

 分布をみると,最低の40.8人から最高の157.7人まで幅広いレインヂが観察されます。上位30位までの顔ぶれを示すと,以下のようです。


 トップは,奈良県の川上村で,男性100人につき女性157.7人。過疎地で25~34歳人口が67人しかいないことに注意が要りますが,スゴイですね。

 田舎が多いですが,人口の多い大都市も含まれています。福岡市,京都市,郷里の鹿児島市,大阪市・・・。

 Uターンや移住を促すアピールポイントとして,こういう統計も使えるでしょうか。郷里に秘められている,これまで知らなかった可能性に気付きました。

2016年3月27日日曜日

職業別の刑務所入所率

 3月23日公開のプレジデント・オンラインの記事では,男性の学歴別の刑務所入所率を紹介しました。こういうデータは珍しいためか,見てくださる方が多かったようです。
http://president.jp/articles/-/17610

 今回は,職業別の刑務所入所率を計算してみようと思います。社会階層と犯罪という,犯罪社会学のテーマの一環としてです。

 分子は,法務省『矯正統計年報』に掲載されている,男性の職業別の新受刑者数を使います。分母は,総務省『就業構造基本調査』に載っている,男性の職業別人口を用いることにしましょう。後者の最新が2012年なので,分子の年次もこれに合わせることとします。
http://www.moj.go.jp/housei/toukei/toukei_ichiran_kousei.html
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm

 2012年中の男性の新受刑者は2万2555人,同年10月時点の15歳以上の男性人口は5341万3200人です。よって,ベース10万人あたりの入所者数は42.2人となります。これが,ここでいう刑務所入所率です。

 これは男性全体の値ですが,職業別ではどうか。下表は計算結果です。


 ムショ入りする確率は,職業によってかなり違っています。建設・採掘従事者が108.5で,ダントツです。その次が無職となっています。おそらく,高齢者が多いと推測されます。生活苦ゆえの窃盗かもしれません。

 無職者の犯罪率が高いのは,ハーシ流にいうと,ソーシャルボンドの欠如ということもあるでしょう。

 管理的職業も結構高いですね。詐欺や背任といった,知能犯でしょうか。

 罪種の名前が少し出ましたが,刑務所入所率の職業差は,どういう犯罪かによって異なるでしょう。上記の表で終わりではつまらないので,この点を掘り下げてみます。

 まず職業カテゴリーを,ホワイトカラー,グレーカラー,ブルーカラー,無職という4区分にまとめます。上表の色で区分していますが,ホワイトは管理~事務職,グレーは販売~保安職,ブルーは生産工程~運搬・清掃・包装職,です。このような措置をとるのは,分子の受刑者を罪種別にバラすと,数が少なくなるからです。

 このような大まかな職業分類に即して,分子と分母を計算し直し,再度割り算をしました。農林漁業は,分子がとても少なくなる罪種があるので,ここではオミットします。


 上段は罪種ごとの入所者数で,中断はベース10万人あたりの入所者数(入所率)です。窃盗犯は,職業の差が大きくなっています。ホワイトが1.1,グレーが4.7,ブルーが7.5,無職は35.1にもなります。無職者の率が高いのは,生活苦ゆえの高齢者の万引きのためと思われます。

 罪種ごとの職業差をはっきりさせるため,下段の倍率をグラフにしておきましょう。ホワイトカラーの入所率を1.0とした倍率値です。


 折れ線の傾斜が急なほど,職業差が大きいことを示唆します。窃盗犯と粗暴犯で差が大きいことが知られます。

 いずれも,近年の高齢者の苦境が影を落としているように思えます。生活苦ゆえの万引き,キレる高齢者(暴走老人)・・・ 解釈の素材はいろいろあるでしょう。

 これは若者も高齢者もひっくるめたデータですが,年齢の影響を除いたら,どういう結果になることか。若年層に限ったら,上図の折れ線の傾斜は,もっと急になるのでは。若い年齢層の男性では,働かない者,稼げない者に対する圧力はうんと強くなるでしょうし。

 学歴別に続いて,職業別の犯罪率格差も明らかになりました。利用できる官庁統計からのラフな試算ですが,「社会階層と犯罪」という古典的テーマは,もっと精緻なデータを揃える余地はありそうです。

2016年3月25日金曜日

ツリーマップ

 先月にパソコンを新調し,それまで使っていたエクセル2007が2013に変わりました。グラフ作成の操作法が変わっていて,ずいぶん戸惑いましたが,やっと慣れてきました。

 昨日,オフィスの自動バージョンアップにより,さらに最新のエクセル2016になりました。グラフの作り方は2013と同じですが,作成できるグラフの種類が増えています。

 新たなグラフとして,「ツリーマップ」というのが追加されています。データの階層構造(組成)を表すのに使えるのだそうです。
http://www.petitmonte.com/excel/excel2016_treemap.html

 ちょっと試してみると,これがなかなか面白い。私が属する30代後半男女の労働力状態を,この図法で表現してみましょう。下表は,2012年の『就業構造基本調査』から準備した元データです。


 男性476万人,女性464万人の内訳ですが,前者では正社員,後者では非正規職員が最も多くなっています。女性の無業者は,多くが専業主婦(家事従事)です。

 これを,件のツリーマップグラフで表現すると,下図のようになります。


 各カテゴリーの比重が,四角形の面積で表現されています。私がよく使うモザイク図では,縦に積み上げる方式しかなく,少量のカテゴリーは判別困難なほど細長の図形になってしまうのですが,上記の図法ではその弊がなくなっています。できるだけ判別可能になるよう,各カテゴリーの図形の位置が,柔軟に変更されるようになっています。これはいい。

 上図は2012年の断面ですが,1992年の図形と並べてみましょう。この20年間の変化が見て取れます。


 男性は,非正規の比重が増しています。1992年では2.7%でしたが,2012年では1割近くです。雇用の非正規化とは,このことです。

 女性は以前に比して無業者(主婦)の割合が,ちょっと減っています。これでもって,女性の社会進出進展と評されることが多いのですが,正社員よりも非正規職員の増分が多くなっています。正社員は25.9%から29.0%への微増ですが,非正規職員は22.0%から33.7%と,10ポイント以上の増です。非正規依存型の社会進出です。

 グラフのレパートリーが増えました。これもまた,いろいろな社会現象を可視化するのに使えそうです。

2016年3月22日火曜日

犯罪認知度の国際比較

 犯罪の原因とは大きく,逸脱主体と統制機関に関わるものに分けられます。前者は,生物学的・心理学的・社会学的要因に分かれます。「バイオ・サイコ・ソシオ」とカタカナにすると,覚えやすい。

 後者の統制機関とは,警察や世論などです。ある行為に犯罪というラベルを付与し,警察統計に計上する活動です。この有様によっても,犯罪量は大きく左右されます。統計上の犯罪量は,こちらに大きく依存しているともいえるでしょう。

 当局の統計によると,2013年中に刑法犯で検挙された人員は26万2486人です。法に触れることをして御用となった人間(14歳以上)の数ですが,実際の量はこれだけではありますまい。逮捕を免れている,あるいは事件そのものが発覚していない暗数が相当多いものとみられます。

 2010~14年に実施された『世界価値観調査』によると,日本の18歳以上の国民のうち,「この1年間で犯罪被害に遭ったことがある」と答えた者の比率は3.5%です。2013年の人口(1億2717万人)にこの比率を乗じると,年間の犯罪被害者数は443万人ほどと見積もられます。

 警察統計上の年間の犯罪検挙者数は26万人ちょっと。推定される年間の犯罪被害者数は443万人。うーん,両者は著しく乖離していますねえ。後者に占める前者の割合は,5.9%でしかありません。

 統計上の犯罪者数と推定犯罪被害者数を照合した結果ですが,やはり,統計に表れていない膨大な暗数がありそうです。前者が後者に占める比率は,警察統計によって犯罪がどれほど掬われているか,いうなれば警察のガンバリ度の尺度とも読めるでしょう。この値の国際データを作ってみましたので,紹介いたします。

 各国の犯罪検挙者数とベース人口は,国連薬物犯罪事務所の統計によります。国民の1年間の犯罪被害率は,上記の『世界価値観調査』(2010-14)によるものです。


 統計上の犯罪者数を推定被害者数で除した値(右端)が犯罪認知度ですが,日本は低いほうです。データを計算できた,24か国の順位は18位。

 ドイツやオランダは高いですねえ。半分超です。大国アメリカも4割を超えています。

 日本の統計の犯罪認知度は高くないことを知りましたが,日本の警察の検挙率は世界一。よって,事件そのものが発覚していない(届けられていない)という問題が大きいと思われます。万引きも説諭で済ます,羞恥心から性犯罪を届け出ないなど。わが国のカルチャーからして,頷けることです。海外では,軽微な犯罪もガンガン通報され,警察に捜査してもらうと。

 日本では事件の認知にバイアスがかかるのですが,その度合いは加害者の属性によっても異なります。よくいわれるのは,加害者が家族ないしは親戚である場合,通報が控えられるケースが多いことです。

 このことは,強姦の加害者の内訳を,警察統計と被害経験女性の申告で比較してみると,よくわかります。


 家族・親戚の割合は,警察の検挙統計では5.6%しか占めませんが,被害女性の申告では28.2%をも占めています。家族の絆(名誉)を重んじる日本では,家族間の犯罪は公になりにくいようです。

 三世代同居を推奨し,介護や保育を家族で担ってもらおうという目論見があるようです。家族というのは,政府にしたら,諸々の闇を封じ込めるのに使える,実に都合のよい「装置」です。情緒・情愛依存の病理。

 ちなみにわが国では,少年と成人の犯罪率に「異常」ともいえる乖離があります。大人は自分たちのことを棚上げして,少年ばかりを厳しくとり締まっている。少年の犯罪化,成人の非犯罪化の進行。恩師・松本良夫先生の言葉を借りると,「少年犯罪『多』ではなく,成人犯罪『少』」の病理。

 犯罪統計を,逸脱者の実際量ではなく,統制機関の姿勢の指標と考えると,当該社会の病理が見えてきます。今しがた述べた,犯罪認知の世代差にまつわる問題については,次回公表の日経デュアル記事で詳しくお話いたします。どうぞ,お楽しみに。

2016年3月20日日曜日

都道府県別の子どもの生活保護受給率

 山形大学が発表した,都道府県別の子どもの貧困率が注目を集めています。総務省『就業構造基本調査』から計算したそうですが,私の力量不足のゆえか,再現が叶いません。

 そのうち,計算方法の詳細を記した論文になるとのことですので,それを待つことにいたしましょう。

 しかし,県によって所得水準や物価も違いますので,県別の貧困率は,読み方に注意がいるかなとも思います。それもいいですが,生活保護を受けている子どもがどれほどいるか,という指標はどうでしょう。

 生活保護の認定基準は,地域の物価等を勘案して決められています。東京と沖縄は同じではありません。生活苦の状態にある子どもの量を測るには,こうした公的扶助の受給率に注目するのも,一つの手かと思います(これとても,各県の保護行政の影響は免れませんが)。

 分子となる,子どもの生活保護受給者数は,厚労省『被保護者調査』から知ることができます。最新の2014年調査によると,同年7月末時点における,15歳未満の生活保護受給者は20万1631人です。生活保護世帯で暮らす,15歳未満の子どもは全国で20万人超。

 これを,同年10月時点の15歳未満人口(1623万人)で除すと,1.24%という比率になります。これが,最新の子どもの生活保護受給者率です。この値は,今世紀初頭の2000年では0.69%でした。今世紀以降,子どもの生保受給率は1.8倍に増えています。子どもの貧困化が「見える化」されます。

 では,この指標を都道府県別に出してみましょう。下表は,数値が高い順に47都道府県を並べたランキング表です。


 子どもの生活保護受給率を県別に出すと,3.05%から0.08%までのレインヂがあります。トップは北海道で,33人に1人。北海道の次は,大阪,京都と続いています。

 マップにすると,下のようになります。3つの階級幅を設け,ラフに塗り分けたものです。大雑把にみて,西高東低となっています。


 いろいろな教育地図をつくっている私ですが,上記の生活保護受給率地図の模様は,少年の非行発生率のそれに似ていると感じました。

 相関をとってみましょう。2014年の非行少年出現率は,同年中に警察に検挙・補導された犯罪少年・触法少年(主要刑法犯による)の数を,同年10月時点の10代人口で除して出します。分子には10歳未満の少年も含まれますが,それはごく少数ですので,ベースを10代としてよいでしょう。

 2014年の非行少年出現率の全国値は,6万207人/1172万人=0.51%となります。分子の出所は,警察庁『2014年における少年の保護及び補導の概況』です。


 各県の非行少年出現率は,子どもの生活保護受給者率とプラスの相関関係にあります。後者が高い県ほど,前者も高い傾向。相関係数は+0.5122であり,1%水準で有意です。

 貧困と逸脱の可視化ですが,いろいろな経路が考えられます。子どもですので,生活困窮による盗みといった,生活型の非行は稀でしょう。それよりも,周囲と比した相対貧困による剥奪感,自我の傷つきによる生活態度の不安定化要素が大きいかと思います。

 思春期にもなれば,やれスマホだとか,仲間との交際にもカネがかかるようになりますが,それが叶わないとつまはじきにされる・・・。いじめ被害や不登校の発生率は,家庭の経済水準と相関していることは,前に明らかにした通りです。

 都道府県レベルのマクロ統計でしか,この手の問題を検討できないことに,もどかしさを覚えます。子どもの貧困が社会問題化している状況です。『全国学力・学習状況調査』において,家庭環境の変数を若干盛り込み,個人単位での分析ができるようになればと思います。

 そこから生み出された実証データが,子どもの貧困対策を押し進めるエビデンスになることでしょう。

2016年3月19日土曜日

保育士の離職率

 「保育所落ちたの私だ!」ブログが政治を動かしつつありますが,「保育士辞めたの私だ!」というツイッター投稿にも関心を持ちます。

 保育士の待遇が劣悪なのは,よく知られていること。保育所の設置には,土地・建物・ヒトが必要ですが,一番不足しているのは最後の「ヒト」ではないでしょうか。都市部では,「空きがあるのに入れない」事態になっているようです。
http://www.asahi.com/articles/DA3S12263463.html

 保育士が来てくれない問題と同時に,出ていく(辞めてしまう)問題も大きいでしょう。「保育士辞めたの私だ!」という人は,統計でみてどれくらいいるのか。今回は,保育士の離職率の計算結果をご覧に入れようと思います。

 2014年の厚労省『社会福祉施設等調査』には,調査時点の前の1年間における,常勤保育士の離職者数が計上されています。2013年10月~14年9月の離職者数です。その数,3万2406人。1年間で,3万人超の常勤保育士が辞めているのですね。結婚・出産による離職も多いでしょうが。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/23-22.html

 この期間の始点(2013年10月時点)の常勤保育士数は32万196人。よって,上記の1年間における,常勤保育士の離職率は,32406/320196=10.1%と算出されます。ちょうど1割です。最近では,常勤保育士の10人に1人が,1年間で辞めると。

 この離職率を公私別に出すと,公立は5.4%,私立は12.0%となります。公私では,保育士の離職率の倍以上の差があります。

 これは全国の数値ですが,都道府県別に計算することもできます。常勤保育士の離職率が高いのは,どの県でしょう。下表は,計算結果の一覧です。黄色マークは最高値,青色マークは最低値,赤字は上位5位を意味します。*政令指定都市の分は,当該市がある県に含めて計算しています。


 まず総数をみると,常勤保育士の離職率は全国では10.1%ですが,県別にみると5.4%から14.6%までのレインヂが観察されます。鳥取は,保育士の離職率が低いですねえ。公立・私立の別でみても,軒並み最下位です。

 離職率トップの徳島は,公立の離職率が高くなっています(17.3%)。私立より公立が高い珍しい県ですが,何か特殊事情でもあったのでしょうか。

 量的に多い私立保育所でみると,こちらは,都市部で離職率が高い傾向がみられます。トップは奈良で,埼玉,神奈川,大阪といった都市県が赤色になっています。保育所不足が深刻で,定員をかなり超えた幼児を収容している保育所も少なくないだけに,業務負担も大きいゆえでしょうか。都市部では,保護者からの要求が厳しい,ということもありそうです。

 これは想像ですが,統計で可視化される事態があります。私立保育所の常勤保育士の離職率が,保育士の給与水準と相関していることです。後者は,保育士の年収が全職業の何倍かという倍率で,2014年11月23日の記事にて,県別の値を出しました。

 この指標を横軸,先ほど計算した私立の保育士の離職率を縦軸にとった座標上に,47都道府県を配置すると,下図のようになります。保育士の給与水準と離職率の相関図です。


 明瞭ではないですが,保育士給与の相対水準が低い県ほど,私立の保育士の離職率が高い傾向にあります。相関係数は-0.41318で,1%水準で有意です。

 大都市・東京では,保育士の給与は全職業の半分ちょいですが,こうした状況は,保育士らの不満を高めるのに十分でしょう。図の左上には,こういう県が位置しています。*福島は,震災という特殊事情を考慮する必要があるかと思います。

 マクロ統計から明らかになる,保育士の給与と離職率の相関。保育士の給与が月額1万円アップされることになりましたが,これで問題が解決されることにはなりますまい。保育士の「やりがい感情」によりかかっているばかりでは,いつ保育所内で悲劇が起きるか分かりません。やりがい疲労が内に向くのが離職としたら,外に向くのは・・・。考えるだけでも,恐ろしいこと。
http://tmaita77.blogspot.jp/2016/03/blog-post_6.html

 私が考えているのは,保育士の待遇改善のための公的な基金を設けること。非利用者から反発が出ること必至ですが,保育サービスを充実できるか否かは,社会の維持存続にかかわることです。上の世代は誰もが,老後は下の世代の世話になります。わが国の人口ピラミッドは「下」がやせ細っていますが,この部分に養分(資源)を傾斜配分し,太らせることが不可避です。

 保育士の待遇改善は,その政策の一環に他なりません。