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2019年8月31日土曜日

2019年8月の教員不祥事報道

 8月も今日でおしまいです。夕刻は,涼しくなってきました。WKに出るのも楽になったような感じです。

 夏休みの8月も,新聞紙上を賑わせてくれました。今月,私が把握した教員不祥事報道は40件です。酒気帯び運転,体罰,セクハラの3大不祥事はいつものことですが,珍事案もあり(赤字)。

 女子中学生に裸画像を遅らせた小学校教諭。東京の小学校教員みたいですが,東京都では条例で,裸画像を要請する行為そのものが禁じられています。一度ネットに流れたら回収は困難。こういう要求を受けたらすぐに相談。お子さんにしっかり教えておきましょう。

 妻の空手道場で師範をやって,公務員の兼業制限規定に触れた中学校教員。任命権者の許可を得ればOKなんですが,無許可だったのでしょうね。公務員の兼業は全面禁止ではなく,「制限」という言い回しになっています。教員採用試験で,「任命権者の許可を受け,生徒指導関連の講演を行い,謝礼をもらった。これはアウトか?」という問題がよく出ますが,答えはセーフです。

 ただし,信用失墜行為と争議行為は全面禁止です。生徒へのわいせつ行為などは,前者の最たるもの。決して行うべからず。

 暦の上では,明日から秋です。普通の学校は,明後日から2学期でしょうか。気が重い子もいるでしょうが,助けを求める場はいくらでもあります。一人で思いつめないこと,遠慮なく相談をし,SOSのサインを出すこと。

<2019年8月の教員不祥事報道>
住居侵入未遂容疑で教諭を逮捕(8/1,NHK,長野,小,男,33)
「相談に乗る」と女子生徒をホテルに(8/1,TBS,東京,中,男,35)
鹿屋市の小学校で体罰 児童5人の頭などたたく
  (8/1,MBC,鹿児島,小,男,30代)
青藍泰斗野球部体罰か SNSに(8/1,NHK,栃木,高,男,27)
中学生にわいせつ行為で教諭免職(8/2,NHK,兵庫,高,男,41)
男性2教諭、停職6カ月 女子生徒に不適切言動、体罰
 (8/3,静岡新聞,静岡,不適切言動:20代,暴言・体罰:40代)
公立中教員逮捕 酒気帯び運転か(8/5,NHK,熊本,中,男,46)
わいせつ動画をアップロード、生徒指導担当の元教諭を逮捕
 (8/5,TBS,北海道,高,男,28)
中学校教諭を児童ポルノ違反で逮捕 16歳男子高校生に裸画像送らせる
 (8/6,毎日,新潟,中,男,48)
男性教諭が妻の空手道場で師範に…副業にあたると減給処分
 (8/6,朝日,愛知,中,男,52)
ベンチでうとうと‥県立高校教諭が生徒らの個人情報を紛失
 (8/9,CBC,愛知,高,男,20代)
飲酒逆走で事故の教諭懲戒免職(8/9,NHK,広島,高,女,49)
小6男児に「君が嫌い」 福岡市立の教諭口頭訓戒
  (8/9,産経,福岡,小,男,40代)
小学校男性教諭 窃盗で停職処分/高校助手は酒気帯びで
 (8/9,沖縄タイムス,沖縄,窃盗:小男25,酒気帯び運転:高助手23)
児童に体罰 大島地区の小学校教師が懲戒処分
 (8/9,KTS,鹿児島,小,男,60)
トーチの練習で中学生やけど、教諭「自業自得」(8/9,朝日,愛知,中,男)
大原高の教諭逮捕 佐倉署、死亡事故疑い 
 (8/10,千葉日報,千葉,高,男,55)
特別支援学校の男性教諭 逮捕(8/12,NHK,佐賀,特,男,38,痴漢)
小学校教諭が勤務校の女子更衣室にカメラ付き時計を設置して逮捕
 (8/12,MBS,和歌山,小,男,27)
「17歳と認識していた」 女子高生とみだらな行為、31歳小学校教諭を逮捕
 (8/20,神奈川新聞,神奈川,小,男,31)
泥酔男性を深夜バスに乗せ下半身触る 聾学校教諭を逮捕
 (8/20,産経,千葉,特,男,28)
器物損壊容疑で中学校教諭を逮捕(8/21,NHK,新潟,中,男,47)
酒気帯び運転:教諭2人を懲戒免 県教委
 (8/21,毎日,静岡,中男33,小男40)
小学校教諭、児童に「馬鹿じゃないの」ノートの取り方で
 (8/22,朝日,福島,小,女,48)
盗撮目的でカメラ設置 男性臨時教諭を懲戒免職
 (8/22,テレ玉,埼玉,小,男,24)
小学校教諭、人身事故で減給 県教委、50代女性に処分
 (8/22,山形新聞,山形,小,女,50代)
授業で誤答した生徒に腕立てを強要 三重県立高校の教諭を文書訓告
 (8/27,共同通信,三重,高,男,50代)
妻を殴り負傷させた疑い 45歳小学校教諭逮捕
 (8/27,北海道テレビ,北海道,小,男,45)
・体罰とセクハラの教諭減給 新潟、部活指導中
 (8/27,産経,新潟,高,男,40代)
男女10人を盗撮疑いで高校教諭を逮捕 飲食店トイレに小型カメラ設置
 (8/28,佐賀新聞,佐賀,高,男,40)
和歌山の中1女子の裸画像を送信させる 小学校教諭を逮捕 
 (8/28,神奈川新聞,東京,小,男,34)
18歳未満と知りながら…中学臨時講師の男が出会い系アプリ
 (8/28,神戸新聞,兵庫,中,男,31)
52歳小学校教頭、25年間無免許運転で懲戒免職
  (8/28,日刊スポーツ,千葉,小,男,52)
わいせつや飲酒運転教諭3人処分
 (8/28,NHK,福岡,わいせつ:小男20代,飲酒運転:高女40代,中男20代)
「自分でもなぜ盗んだのかよく分からない」 パチンコ店で財布盗み停職6か月
 (8/29,東海テレビ,愛知,中,男,36)
児童買春で小学校講師を逮捕(8/29,NHk,岐阜,小,男,34)
また公務員の不祥事 県立高校教諭 飲酒運転で摘発
 (8/30,山梨テレビ,山梨,高,男,40代)
男性臨時講師を減給処分 県教委/生徒から縦笛代金集めるも注文せず
 (8/30,東日新聞,愛知,中,男,31)
名前と進学希望先記載の書類を紛失 市岐阜商高
 (8/30,岐阜新聞,岐阜,高,男,30代)
住居侵入疑いで小学校教諭逮捕 「吐きたかった」
 (8/31,北海道新聞,北海道,小,男,48)

2019年8月30日金曜日

学ばない日本人

 教育は子ども期で終わるものではありません。人は生涯にわたって学び続ける存在です。

 社会の変化が速く,常に学んでそれに追いつかないといけない,また寿命の延びにより生じた余暇を,学習という能動的な形で使いたいもの。現代は生涯学習の時代であり,それを支持する社会的な条件も多いのです。

 本ブログで,この趣旨のことを何回書いたか分かりません。タイトルのごとく,日本人は大人になってからは学ばないからです。それを実証するデータが,また出てきてしまいました。パーソル総合研究所が,今年の2~3月に実施した「APAC就業実態・成長意識調査」というものです。
https://rc.persol-group.co.jp/research/activity/data/apac_2019.html

 アジア太平洋各国の労働者の意識や成長などを明らかにした調査で,日本を含む14か国の20~69歳の就業者が調査対象となっています。

 衝撃的な事実が露わになったのは,「あなたが自分の成長を目的として行っている,勤務先以外での学習や自己啓発活動について教えてください」という問いへの回答によってです。読書,セミナー,大学・大学院への在学等,11の選択肢を設け,当てはまるものを全て選んでもらう形式ですが,「とくに何も行っていない」を選んだ人のパーセンテージです。この数値が高い順に,14か国を並べると以下のごとし。


 プライベートの時間において,自身の成長を目的とした学習や自己啓発を一切していない。日本の労働者では,こういう人が全体の46.3%おり,他国と比してダントツで高くなっています。

 今から7年前,2012年の国勢成人力調査(PIAAC 2012)でも,類似のことが明らかになったのですが,今になっても事態は変わってないようです。

 ヤバいですねえ。日本人は,勉強は子ども期の学校でおしまいなのでしょうか。丸抱えの終身雇用・年功賃金が支配的である故,自分を磨いて,よりよい待遇を求めて組織を渡り歩くなんてことは少ないので,こういう結果になるのでしょうか。

 対して,ベトナム,インドネシア,インド,タイといった,アジア諸国の労働者は学習の実施率が高くなっています。インドネシアやインドでは,成人労働者の2割以上が,大学・大学院ないしは専門学校といった学校で学んでいる,と回答しています。仕事と教育の間を往来する,リカレント教育も普及を見ているようです。日本は4.6%と最下位なり。

 昨日,上記のグラフをツイッターで流したところ,「ひょええ」と多くの人が見てくださっています。しかし,「日本人は仕事時間が長いので当たり前では?」というリプも目につきます。仕事に疲れ切って,勉強なんてする暇(いとま)はないと。

 本当にそうでしょうか。上記のパーソル研究所の調査では,対象となった労働者の週あたりの労働時間もはじき出しています。労働時間を横軸,学ばない労働者の率(上記グラフ)を縦軸にとった座標上に,14か国を配置したグラフにしましょう。もう一ひねり加え,ドットの大きさで,国民1人あたりのGDP額を表します。経済発展,豊かさのレベルです。


 おや,日本の労働時間は長いかと思いきや,14か国では,一番短いですね。パートで働く女性の影響かと思われます。サンプルは各国1000人で,性・年齢均等割り当てとのことですので,女性サンプルに偏している,というような歪みは正されています。

 労働時間と,学ばない労働者の率はプラスの相関かと予想しましたが,そうではありません。むしろ,マイナスの相関です。右下のアジア諸国では,労働時間は長いものの,学ぶ人の率も高し。個人単位でみればどうかは分かりませんが,「仕事時間が長いから学べないのだ」と声高に言うのは,ちょっと恥ずかしい気がします。

 男性の家事にしてもそう。仕事時間で男性を群分けし,家事時間の平均を比べても,あまり変わらないのですよね。日本の男性は仕事時間が長いから家事をしない(できない)。この見方が正しいという保証はなし。定時に上がっても,家庭ではなく酒場に足が向く「フラリーマン」も少なくないわけでして…。

 ドットのサイズをみると,右下の諸国は小さいものの,よく働き,よく学ぶ「勢いのある国」といえましょうか。10年後,20年後には,日本の1人当たりGDPを凌いでいるかもしれないですね。

 日本は教育大国と言われ,子どもは本当によく勉強するが,大人はさにあらず。この断絶は非常に大きい。国際学力調査の結果はいつも上位で,潜在能力はあるのだから,大人が学べば,国はもっとよくなるのでは,と異国の人は感じるかもしれません。

 そういえば,2012年の国勢成人力調査(PIAAC 2012)の結果が公表された時期,「日本の大人の学力世界一!」なんてお祭り騒ぎになりましたっけ。しかるに,「新しいことを学ぶのが好き」という好奇心の軸も加味してみると,違った側面が浮き上がります。

 アラフォー年代を取り出して,数学の学力と知的好奇心の布置図を描いてみます。下の図をみてください。


 日本の働き盛りは,数学の学力(横軸)はトップですが,未知のことを学ぶのを好む知的好奇心(縦軸)は,韓国に次いで低くなっています。メディアでは横軸だけが切り取られて,浮かれたムードが漂いましたが,未知なる知識への渇望も加えた2次元にしてみると,「うーん」となってしまいます。

 長い目で見ると縦軸が大事なんですよね。変動の激しい時代,未知のことが続々と出てきますが,それを捕まえていこうという気構えですので。日本と韓国は,仲良く右下に位置しています。学力は高いが,好奇心は低い。子ども期の受験勉強で,勉強は苦行ってい刷り込みがされているのでしょうか。

 人生100年の時代,最初の20年間(児童期~青年期)だけガリガリと勉強し,あとの80年を思考停止状態で生きるなんて愚の骨頂。子ども期の学校教育で教えるべきは,生涯にわたって学び続けようという態度です。

2019年8月28日水曜日

老いた,勢いのない社会

 総務省統計局が日本統計年鑑という資料を毎年出しています。あらゆる分野の統計が網羅された,公的な総合統計書です。

 私は学生の頃,図書館でよく見ていました。黒いハードカバーで700ページほどだったかな。必要箇所に付箋をはさみ,えっちらおっちらコピー室に運びコピーをとって,必要なデータをせっせとエクセルに入力し,グラフにしていました。

 今は,全部ネットでみることができます。統計表はエクセルでアップされてますので,入力の手間も要りません。必要なデータを自分のエクセルにコピペし,加工すればよし。便利になったものです。

 最近,ちまちまと細かいデータばかりをいじっているので,大きなマクロ統計に立ち返ろうと思いました。その最たるものは人口統計です。上記資料の「人口」というチャプターをみると,過去から現在までの人口の長期推移が出ています。20世紀初頭の数年間は以下のごとし。


 1900年は和暦だと明治33年ですか。この頃は人口が4400万人ほどしかいなかったのですね。しかし人口は右上がりで,戦前期は毎年,人口が50~70万人ほど増え続けていました。

 今から100年以上前の話ですが,上記のデータを現在,さらには未来まで延ばすとどうでしょう。グラフで表してみますが,視覚化したいのは,右欄の「前年からの増減」です。社会の勢いを見て取るには,こっちのほうがベターでしょう。人口推移のグラフは,いろんな所で出てますしね。


 1945年に戦争が割った直後は,帰還兵や団塊世代の誕生により,年間の人口増加が大きくなっています。1949~50年の1年間では,8177万人から8412万人へと234万人の増加。スゴイですね。

 その後,凹凸しながらも,高度経済成長期にかけて人口増加の時代が続きます。均すと,年間100万人増のペースです。まさに日本社会が成長する時代でした。人口が1億人を突破したのは1967(昭和42)年のことです。

 しかし70年代前半(団塊ジュニア誕生)をピークに,人口増のペースは低下に転じます。出生数が減り,死亡数が増加に転じたからです。その傾向は続き,ついに2005年,対前年の人口がマイナスを記録します。人口減少時代の幕開けです。

 人口減少の速度は速まり,2017~18年の1年間では53万人減りました。「1年間で人口53万人減!」という見出しがメディアに踊ったので,ご存知の方は多いでしょう。言わずもがな,少産多死の時代になっているからです。

 グラフを右に目を移していくと,2020年代以降,50万人,70万人,さらには100万人減る時代になると予想されます。たった1年間でです。あまりピンとこない人がおられるかと思いますが,人口50~100万の大都市が毎年ごっそり無くなっていく,といえば分かりやすいでしょう(私が住んでいる横須賀市は39万人)。ある論者の表現を借りると「静かなる有事」です。

 日本は国土が狭いので人口が減ってもいいじゃん,という声もあります。ですが問題なのは,人口の中身です。そう,バリバリ働ける生産年齢人口が少なくなり,体力の弱った高齢者が多くなります。

 上記グラフの終点である2060年をとると,日本の人口は9284万人で,そのうちの38.3%(A)が65歳以上の高齢者になると予測されます。国民の4割が高齢者になると。人口は減り続け,2055年から2060年の5年間の人口増加率はマイナス3.73%(B)です。

 Aは老いの指標,Bは社会の勢いの指標と読めます。この2つをとった座標上に,世界の各国を位置づけてみましょう。さらにもう一ひねり加え,ドットの大きさで人口量も表してみます。国連の人口推計サイトからデータを呼び出しました。
https://population.un.org/wpp/


 ドットの大きさをみると,人口首位はインド,2位は中国,3位はナイジェリアです。日本は,この頃には世界の人口ランクが20位まで転落します(現在は11位)。

 横軸は人口の高齢化率,縦軸は人口増加率です。上述のように,前者は老い,後者は社会の勢いの尺度と読めます。左上は,若くて勢いのある社会です。ほとんどがアフリカの諸国です。今後の世界の人口は増え続けますが,増分の多くはアフリカの国々によります。世界の3人に1人がムスリムになるなんていう予測もありますね。女性に厳しい宗教ですが…。

 中ほどをみると,先進国のアメリカやイギリスは,2060年になっても人口増を保つことが見込まれます。中国は,この頃には人口減少社会に仲間入りです。この大国が外国人材を欲するとなったら,争奪戦がさぞ激しくなるでしょう。

 さて日本はというと,右下のゾーンにあります。老いて,勢いのない社会です。その極地は,お隣の韓国となっています。

 今から40年後の国際社会の布置図ですが,いかがでしょうか。この頃の日本は,5人に2人が高齢者で,毎年人口が100万人減っていくような社会です。今のレベルの生産活動が行えているかどうか。機械化,ICT化,そして移民の受け入れを極限まで進め,何とか国の体裁を保っているのでしょうか。

 昨日のニューズウィーク日本版に「日本はもはや後進国であると認める勇気を持とう」という記事が出ています。そうでしょうね。日本の若者は,「ずっと自国に住み続けたい」と考える人の率が他国に比して高いですが,いつまでもつか未知数です。異国で暮らしを立てる術を持っておくのも大事です。
https://twitter.com/tmaita77/status/1140960468812599297

 お隣の韓国は,「一定期間,外国に住みたい」「自国と外国を往来して住みたい」という回答が多くなっています。日本の若者より,先を見据えた現実的な考えを持っていますね。

2019年8月26日月曜日

居眠りの日米比較

 国際化が進んでいますが,日本にきた留学生が驚くのは,学生が教室で居眠りをしていることです。

 私も大学で10年間教えた身ですが,学生の居眠りにはしょっちゅう遭遇しました。でも,咎めることはしませんでした。授業に興味が持てないのだろう,バイトで疲れているのだろう,授業妨害ではない…。こう解釈していました。日本の大学には,こういう(やさしい)ティーチャーが多いと思います。私語や無断退出は,かなり厳しく取り締まっていましたが。

 しかし欧米はさにあらず。授業中に居眠りなんてしたら,教室から追い出されます。日本では職場で居眠りをする人もいますが,「母国だったらクビになりかねない」と,異国の人の目には奇異に映るようです。

 2017年に国立青少年教育振興機構が実施した高校生の国際比較調査で,授業中に居眠りをする頻度を尋ねています。これは面白い。日本とアメリカの生徒の回答分布をグラフにすると,以下のごとし。
http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/114/


 同じ高校生ですが,回答はかなり違っています。「よくする」+「時々する」の割合は,日本では63.1%,アメリカでは17.2%です。日本の生徒の居眠り率は,アメリカの3倍以上なり。

 日本の生徒は,部活の朝練や深夜まで及ぶ塾通いで疲れ切っているのでしょうか。

 生徒の生活や教師の厳しさの違いで片付けるのは簡単ですが,もっと大きな国民性に照らしていうと,日本では,勉強・仕事をする時と休む時,「オン・オフ」の境界が曖昧であることによるでしょうね。

 これは高校生のデータですが,サラリーマンにアンケートをとっても,同じ結果になるのではないでしょうか。海外では,定められた時間内に集中して課業を済ませ,定時にさっさと帰宅します。残業は無能の証です。日本でよく見られる「忙しい」アピールは,自分は無能,ないしはガツガツ働かないと生活できない哀れな人,という公言に他なりません。労働生産性を高める上でも,見習いたいものです。

 なお,体質が夜型になりやすい青年期の生徒に早寝早起きを強いるのは好ましくない,という指摘もあります。アメリカのシアトル州で,高校の始業時間を7時50分から8時45分に遅らせたところ,生徒の睡眠時間が増え,学業成績も向上した,というデータが出ています。
https://diamond.jp/articles/-/212266

 1時間遅らせるだけで,効果が出るのですね。公立学校の場合,休業日を決めるのは設置者の自治体ですが,始業時間をどうするかは各学校の任意です(学校教育法施行規則60条)。ちょっとばかり工夫することで,授業での生徒の集中力も増すかもしれません。朝のラッシュも緩和されるでしょう。

 定型の学校運営にこだわる必要はありますまい。宿題,定期テスト,クラス担任廃止等,学校の定型を覆している公立中学校が千代田区にあるそうですが,学校(校長)の裁量って大きいのです。

 教員免許状がなくても,校長にはなれます。学校経営に敏腕を振るう,面白い人が増えるといいと思います。始業は朝の10時なんてのもいい。始業時間に幅を持たせたいもの。それが効果を持ち得るのは,上記の米国の実験でも確かめられています。

2019年8月25日日曜日

高所平気症の子ども

 東京都の港区に,高さ330メートルの超高層ビルが建設されるそうです。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190822/k10012044561000.html

 入るのはオフィスや商業施設等ですが,54階以上の高層階には一般住宅も入るとのこと。54階以上の天空の暮らしって,どういうものなんでしょう。下々の私には,思いも及びません。

 当然,子どもがいる世帯も入居すると思うのですが,高さの感覚が育っていない乳幼児の場合,高所平気症が懸念されます。高所から下を見下ろしても怖さを感じないことで,幼児がベランダから身を乗り出して転落する事故が相次いでいます。

 タワマンの高層階に住む子どもなんて,超マイノリティだろうと思われるでしょうか。ネイションワイドでみればそうですが,東京のような大都会ではさにあらず。都内23区に住む0~4歳の乳幼児は36万1401人ですが,このうちの2万8470人(7.9%)が,共同住宅の11階以上に住んでいます(『国勢調査』2015年)。

 東京23区では,乳幼児の13人に1人が,マンションの11階以上の高層階に住んでいると。区別にみると,もっとスゴイ値が出てきます。


 赤字は10%で,ゴチの赤字は20%を超える区です。中央区と港区では,高層階の居住率が3割を超えます。中央区では34.6%,ヨチヨチの乳幼児の3人に1人が,マンションの11階以上に住んでいることになります。タワマンタウン,恐るべしです。

 地図にして,地域性もあぶり出しておきましょう。5%未満,5%以上10%未満,10%以上,の3段階で23区を塗り分けてみました。


 タワマンが林立する湾岸エリアでは,高層階に居住する子どもの率が高くなっています。

 東京は狭し。にもかかわらず人口がどっと押し寄せ,経済や文化の中枢としての役割も負わされたまま。そこで狭い土地を有効活用せんと,東京はどんどん「空に伸びる」と言われます。前から疑問なんですが,23区の総面積のうち,10回以上の高層階の面積って何%くらいなんですかね。延べ面積にしたら,土地の面積を越えているかもしれません。

 東京の都心では,少子化などどこ吹く風。子どもは増え続け,とくに湾岸エリアの学校は悲鳴を上げています。タワマンに越してくるファミリーの影響ですが,これから先,高層階の部屋で暮らす子どもは増えてくるでしょう。

 自宅のベランダや窓からの転落はむろん,学校での事故も怖い。高さへの恐怖がないと,学校の校舎や校庭の遊具からの転落事故が起きやすくなります。地上50メートル,100メートルの高さで暮らしている子にとって,学校の校舎や校庭の遊具の高さなんて何でもありません。それで無茶をして,事故が起きてしまう。

 高さの感覚は,小学校に上がる前の幼少期である程度固まってしまうといいます。この時期の外遊びで,ジャングルジムや滑り台等の遊戯に上らせ,高さへの恐怖(警戒心)を植え付ける必要があります。

 子どもを狙った犯罪が多発していることから,幼子の外遊びを控える家庭が多くなっているといいますが,幼少期の大半を,大地から離れた天空で過ごさせるのは避けねばなりません。

2019年8月21日水曜日

『教職教養らくらくマスター』2021年度版

 8月も下旬,暑いのは相変わらずですが,ちょっとだけ陽が落ちるのが早くなったような気がします。

 実務教育出版から『教職教養らくらくマスター』(2021年度版)が届きました来年夏に実施される,2021年度採用試験に向けて使っていただくものです。24日頃から,本屋さんに並ぶかと思います。
https://jitsumu.hondana.jp/book/b457268.html


 昨年は落ち着いた体裁でしたが,今年はポップなイラストが入っています。この本は毎年刊行されるもので,出るたびにブログでアナウンスするのは気が引けるのですが,ぜひともアピールしたい目玉ポイントがありますので,書かせていただきます。

 今回出た2021年度対策用では,冒頭に,全自治体の出題頻度表を入れています。本書は112のテーマ(教育原理53,教育史11,教育法規35,教育心理13)からなりますが,それぞれの内容が,過去5年間(2015~19年度試験)で何回出題されたかをカウントしたものです。


 「112テーマ × 51自治体」,16ページを要しましたが,出版社さんも「受験生のためなら」と増ページを快諾していただきました。

 各セルには,過去5年間の試験で出題された回数が記されています。たとえば岩手県では,教育原理のテーマ2「教授・学習理論」が5年間で5回,つまり毎年出題されていると。

 「5」は5年間で5回の必出,「4」は5年間で4回の頻出であることを意味します。16ページにわたる全自治体の表をみると,「5」や「4」という数字が結構あります。教職教養の内容は広範ですが,試験で出る内容はある程度決まっているのですよね。

 受験者が最も多い東京都では,学習指導要領がよく出ますねえ。小・中・高とも,ここ5年間で4回出ています。教育法規の「教員の服務」は5年間で5回,必出です。教員の不祥事が続発していることを受けてのことでしょう。

 この表を活用することで,受験する自治体の頻出テーマを割り出すことができます。まずは「5」と「4」のテーマを潰し,徐々に学習の射程を広げていくとよいかと思います。

 逆に言うと,過去5年間で全く出ていない「0」というテーマは,思い切って捨てるのもアリかと思います(時事的なテーマは除く)。中身をちょい出しすると,宮城県や福島県では,教育心理は過去5年間で全く出ていません。完全に「アウト・オブ・眼中」です。福島県では,教育史も全く出ていません。広大な本県の受験生は結構多いかと思いますが,教育原理と法規に絞った,深い学習をするのもいいでしょう。

 4領域からなる教職教養の内容は盛りだくさんですが,ド真面目に全部をくまなく学習する必要はありません。それに越したことはないですが,学習に割くことのできる時間や労力は限られています。横着を推奨するわけではないですが,この出題頻度表を活用し,効率のよい学習をしていただければと存じます。

 タイトルのごとく,教職教養を「らくらくマスター」していただくため,内容の盛り方にも工夫を凝らしています。視覚人間である私のポリシーを前面に出し,図や表を多用し,見やすい体裁に仕立てています。読む本というよりも,「みる」本です。

 無味乾燥な条文が並ぶ教育法規には抵抗感を持つ学生さんが多いでしょうが,どういうことが現場で問題になっているか,どういうことを汲み取るべきかを,私の言葉で書いています。暗記学習の暗さを感じさせない作りになっていると自負します。学校に行かせてもらえない子ども,虐待を受ける子ども…。こういう問題を念頭に置きながら,法規の条文を音読してください。

 目まぐるしく動く教育時事も,しっかりフォローしています。教員の働き方改革の答申も盛り込んでいます。当局の仕分けに基づき,教員が担う必要のない業務,負担軽減な可能な業務がどれかを知っておきましょう。


 他にもアピールポイントはありますが,昨年の紹介記事との重複は避けましょう。
https://tmaita77.blogspot.com/2018/08/2020.html

 来年夏の試験を受験予定の学生さん,本書をぜひ手に取っていただきたく思います。他社から分厚い電話帳みたいな参考書も出ていますが,まずは薄手の要点整理集にて,教職教養の内容をざっくりと押さえることからです。本書では,自分が受ける自治体でよく出る事項が何かを知れる,出題頻度表というサービスもついています。

 教員採用試験の競争率は低下を続けており,最近の小学校試験の競争率は3倍を下回る自治体が多く,2倍を切る所すらあります。オリンピックが終わったらまだ不況になるという予測もありますが,そうなったら試験は難関化するかも分かりません。今がチャンス。受験生諸氏の健闘をお祈りいたします。

2019年8月19日月曜日

高齢期の働き方

 昨日の毎日新聞に「60歳以上労災死傷者急増,4分の1占める,転倒,腰痛,サービス業で」という記事が出ています。
https://mainichi.jp/articles/20190817/k00/00m/040/232000c

 高齢化が進む中,体力の弱った高齢の就業者が増えているためです。人手不足もそれを後押ししています。池袋で,70代のタクシー運転手が運転中に意識を失い,ガードレールに衝突し死亡する事故が起きました(乗客は無事)。ドライバー不足で,高齢の乗務員を雇用せざるを得ない,業界の事情もあるそうです。

 これから高齢の就業者が増えていきますが,彼らはどういう働き方をしているのでしょう。自分が見聞きした経験からイメージするのは容易いですが,客観的なデータで固めてみようと思います。官庁統計を紐解けばすぐ分かることですが,この点はあまり明らかにされてないようです。

 基幹統計の『国勢調査』から,働く人の従業地位や職業を知ることができます。65歳以上の就業者を取り出し,分布をとってみましょう。以下に掲げるのは,従業地位と職業が共に分かる,719万3606人の高齢就業者のデータです。2015年の『国勢調査』によります。


 従業地位をみると,非正規雇用が32.7%と最も多くなっています。3人に1人です。その次がフリーランス(雇人のない業主)で23.2%となっています。就業者全体の分布とはだいぶ違いますね。高齢層では,正社員は14.6%しかいません。

 次に職業をみると,農林漁業が15.1%で最多です。2位はサービス職,3位は販売職ですか。管理職・専門技術職・事務職のホワイトカラーは4人に1人で,残りは体を動かす現業職であると。

 上記の2つの変数をクロスさせると,事態がより立体的に分かります。以下の表は,各セルに該当する人数を示したものです。65歳以上の就業者全体(719万3606人)を1万人とした場合の人数です。


 「5 × 12」の60のセルがありますが,上位5位には黄色マークを付けました。最も多いのは,フリーランスの農林漁業ですね。高齢就業者全体の7.8%,13人に1人です。年金の足しに,家庭菜園をやっているような人でしょうか。

 それに次ぐのは非正規雇用の運搬・清掃職,サービス職となっています。これは日々の生活においてよく目にするところです。会社の経営(管理)に携わる役員・業主は,およそ5.8%となっています。

 おそらく事務職を希望する人が多いのでしょうが,正規の事務職は全体の3.2%,非正規を合わせては6.7%しかいません。ハロワで事務職の求人を検索しても,ヒットがほぼ皆無であるのはよく言われること。

 なお地域差もあります。上記のデータは,高齢者が多い地方の傾向を反映したものかと思いますが,都市型の働き方のケースとして,東京都のデータをご覧に入れましょう。従業地位と職業の両方が分かる,68万412人のデータです。


 全国データでは,フリーランスの農林漁業が最多でしたが,東京都だと,非正規の運搬・清掃業が最も多くなっています。駅の清掃とか,需要がありますからね。会社を経営する管理職も,全国データより多し。非正規のサービス職とは,マンションや駐車場の管理人などでしょう。これも都市部では多し。

 以上,従業地位と職業を手掛かりに,働く高齢者のすがたをラフに描いてみましたが,参考になりましたでしょうか。ざっとまとめると,地方ではフリーランスの一次産業,都市部では非正規の清掃業・サービス職が多い,というところです。

 デスクワークが多くなったといいますが,高齢層に限ると,体を動かす現業職がマジョリティであるのが知られます。冒頭の毎日新聞の記事で,高齢者の労災急増が報じられていますが,その大半はこういう業種で起きています(サービス職等)。

 ホワイトカラーを希望しつつもそれが叶わず,不慣れな肉体労働を始める高齢者が多いのですが,無理は禁物。職場においても,高齢就業者の増加に合わせた,働き方改革が要請されます。お店で,辛そうな表情をしてレジに立っているシニアスタッフを見かけますが,座って勤務してもいい。屋外労働者用の空調服や,介護士向けのアシストスーツなどのテクノロジーも活用すべし。

 今朝の日経新聞に,無人店舗の普及を伝える記事がありましたが,こういうニュースを見ると,働く人の割合が国民の半分未満でも社会が回るようになるのかな,という期待も持たれます。日本は高齢者の就業率が高いのですが,日本と同様,かなり高齢化が進んでいるドイツやイタリアはさにあらず。この違いは,最新のテクノロジーをどれほど活用できているか,サービスの質をどれほど下げることができているか,によると思います。
https://twitter.com/tmaita77/status/1163354878451695616

 あるいは,移民をたくさん受け入れていると。日本は外国人の受け入れ数が4位,世界移民大国だそうですが,多文化共生の在り方を考えないといけないステージにきています。

 日本より少ない労働力で社会を回している国は数多し。国民の多数が死ぬまで働かないといけない社会になるかどうかは,まだ未知数です。今回お見せしたデータは,今となってはもう古い2015年時点のもの。あまり悲観的にならないよう。

2019年8月15日木曜日

正規・非正規の収入格差(性別,年齢,労働時間を統制)

 日本の雇用労働者は正規雇用と非正規雇用に分かれ,官庁統計でもこの区分がしっかりと採用されています。正規と非正規では待遇の格差,収入の格差が大きいことは誰だって知っており,このブログでもデータで繰り返し明らかにしてきました。

 とある方から,「日本の正規と非正規の格差が大きいのは分かった。他国はどうなのか。正規・非正規の給与差の国際比較をやってほしい」というリクエストがありました。

 同じ要望を複数いただいていますが,お応えできません。データがないからです。海外では「正規・非正規」なんていう区分はありません。労働時間に依拠して,フルタイム・パートタイムっていう区分があるだけです。昨日,ツイッターで呟いたところ,予想以上に反響が大きいので驚いています。あまり知られていないのでしょうか。

 久々に正規と非正規の収入格差を露わにしてみたくなりましたが,前からもどかしく思っていることがあります。労働時間を揃えた比較ができないことです。働く時間が違えば,年収が違うのは当たり前ですからね。

 何とか統制できないものか。2017年の『就業構造基本調査』の公表統計を丹念にサーチしたところ,見つけました。全国編の表05200です。この表から,「性別 × 年齢 × 従業地位 × 就業時間 × 年間所得」のクロス表を作ることができます。当該の表に飛べるリンクを貼っておきますので,興味ある方はどうぞ。
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003222437

 私の属性であるアラフォー男性で,年間250~299日・週35~45時間働く労働者を取り出し,正規雇用と非正規雇用に分けて,年間の所得分布を比べてみましょう。性別,年齢,労働時間を統制した比較です。


 %値の母数は,正規雇用が98万2400人,非正規雇用が10万2300人です。働き盛りの男性雇用者ですが,非正規はネグリジブル・スモールではありません。

 普通に働くアラフォー男性ですが,正規と非正規では所得分布がかなり違います。最頻階級をみると,正規は400万円台ですが,非正規は200万円台前半です。同性,同年齢で,同じ時間働く労働者でコレです。異国の人にすれば,「働く時間が同じなのに,何でこんなに収入差が出るんだ」「セイキ,ヒセイキって何なんだ?」と言いたくなるでしょう。

 労働時間や仕事の質よりも,会社の正規のメンバーであるかを重視するニッポン。否とあらば,ボーナスは支給されないし,社会保障からも外される。メンバーシップ型の日本的雇用は,ジョブ型の欧米人からすればさぞ奇異に映るでしょう。

 上記の分布から中央値(median)を出しましょう。右欄の累積相対度数から,50ジャストの中央値は,正規は400万円台,非正規は200万円台前半に含まれることが分かります。按分比例を使って割り出すと,以下のごとし。

正規:
 按分比=(50.0-37.2)/(60.5-37.2)=0.549
 中央値=400+(100×0.549)=454.9万円

非正規:
 按分比=(50.0-33.7)/(61.5-33.7)=0.586
 中央値=200+(50×0.586)=229.3万円

 同じアラフォー男性で,労働日数・時間も同じであるにもかかわらず,正規と非正規では所得中央値が倍以上違います。同じやり方で,男女の各年齢層の正規・非正規の所得中央値を計算しました。下図は,結果を折れ線グラフで表したものです。


 このグラフから読み取れることは,以下の3点です。

 ①:1日8時間労働では,年間所得400万円に達するのは難しい。
 ②:同性,同年齢で,労働日数・時間が同じであっても,正規と非正規では所得に大きな格差がある。
 ③:同年齢で,同じ時間働く正社員同士でも,所得には大きなジェンダー差がある。

 参院選のポスターで「1日8時間労働で普通の暮らしができる社会を」と訴えていた候補者がいましたが,今の日本はそれとは程遠し(①)。正規と非正規の格差は,もはや身分格差といってもいい(②)。男性と女性の差もスゴイ,同時間働いてコレです(③)。

 上記のグラフから,中高年の男性正社員に富が集中しているのも注目ですね。この層を妬むのは簡単ですが,役割期待(一家の大黒柱)の重圧がかかって大変だなとも思います。日本の中高年男性では,失業率と自殺率が非常に強く相関するのは道理です。

 話が逸れましたが,ここでの主眼は,正規と非正規による格差です。日本の悲惨な状況は嫌というほど分かりましたが,海外はどうなのか。上述のように,諸外国では「正規・非正規」という区分はありません。ただ,契約形態による区分(無期雇用,有期雇用)はあり,これが,日本でいう正規・非正規と類似しているのではないか,というコメントをいただきました。

 OECDの国際成人力調査「PIAAC 2012」では,雇用労働者の労働時間,契約形態,そして年収を訊いています。やや年齢幅が広いですが,25~54歳の男性雇用者を取り出し,無期雇用者と有期・臨時雇用者に分け,年収の分布を比べてみます。年収は,「有業者全体の中でどの辺と思うか」と問う形式で,主観の歪みを排せませんが,参考にはなるでしょう。

 以下の図は,6か国の比較結果です。アメリカとドイツは,上記調査のローデータでは,なぜか年齢がペンディングになっているので分析不能です。そこで,パート大国といわれるオランダ(蘭)を加えています。瑞はスウェーデンです。


 Aは無期雇用者(パーマネント),Bは有期ないしは臨時雇用者です。週35~45時間働く男性労働者ですが,2つの群の年収差は,国によって異なっています。

 差が最も大きいのは日本で,ヨーロッパ諸国では差は小さく,イギリスではほとんど差はありません。なお日本もイギリスも,雇用労働者に占める有期・臨時雇用者(B)の割合は1割ほどです。

 詳しく調べてはいませんが,諸外国では,契約の形態によって,待遇に著しい傾斜がつけられるなんてことはないのでしょう。重視されるのは労働時間,仕事の中身です。これぞジョブ型。日本のメンバーシップ型とは対をなしています。

 少子高齢化に伴い,労働力の量を維持するには,「緩い働き方」が増えざるを得なくなります。パート労働やフリーランスの比重はぐんぐん高まるでしょう。「正社員にあらずんば人にあらず」の慣行は撤廃すべし。どういう働き方を選ぼうが,まっとうな暮らしが得られる社会の実現が望まれます。AIによる省力化,BIによる収入補填をもってすれば,不可能なことではありますまい。

 日本では「何ができるか」よりも「何であるか」が重視され,定年後の老人のアイデンティティの源泉が「元**部長」とかいう名刺だったりします。これも馬鹿げたこと。「名刺を捨てろ,ツイッターをやれ」という,田端信太郎氏の言葉は好きです。

2019年8月11日日曜日

通信制の生徒の増加

 2019年度の文科省『学校基本調査』の速報結果が出され,その知見について,いろいろ報じられています。その中で「通信制課程の生徒が1万人余増 不登校生徒の受け皿にも」という記事が目に留まりました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190808/k10012028531000.html

 高校は全日制・定時制のほかに,通信制課程もあります。学校に登校せず,通信教育を受けながら,レポートの提出等で単位を取得していく課程です。少子化で高校の生徒数は年々減っていますが,通信制の生徒だけは増えていると。

 高校の生徒数を,全・定時制と通信制に分けて,この20年間の推移を辿ってみると,以下のようになります。各年の5月時点の生徒数で,『学校基本調査』のバックナンバーから採取しました。ありがたいことに,今では軒並み「e-Stat」で見ることができます。


 全・定時制の生徒は,1999年では421万人でしたが,20年を経た2019年では316万人にまで減っています。25%の減少です。少子化,恐るべし。全国の至る所で,高校の統廃合が行われているのは周知のこと。

 対して通信制の生徒は,17.1万人から19.8万人に増えています。推移をみるとジグザグしていますが,2019年の生徒数(19万7779人)は過去最高ですね。近年になるほど増加のスピードが増しており,昨年から今年の1年間で1万人以上も増加しています。

 トレンドを視覚化すべく,始点の1999年の生徒数を100とした指数の推移をグラフにしてみましょう。


 全・定時制は滑り台のごとく減っていますが,通信制は大局的には増加の傾向です。2015年以降はずっと増加で,ここ2年間,その傾斜が強くなっています。上述のように,この1年間だけで1万人以上も生徒が増えているのです。

 冒頭のNHK記事では,不登校生徒の受け皿になっている面が強調されています。登校して集団生活をしなくていいのですから,そういう面はあるでしょう。小・中学校の不登校児の増加とパラレルなのも興味深い。

 自分のやりたいことをしながら,マイペースで学習を進められる通信制を選ぶ生徒もいるのではと思います。3年ないしは4年という,最低在籍年数は定められていますが,上限はありません。通信制の場合。10年近くかけて単位を積み上げて卒業する生徒もいます。

 ユーチューバーやeスポーツのプロを志す子どもが増えているみたいですが,動画を撮ることやアルバイトをメインに据えながら,学習の証(単位)をゆっくりと積んでいくのもよし。通信制高校は元々,働きながら高卒学歴の取得を目指す勤労青年の教育機関でした。本業の傍らで学ぶ学校としての性格は,今日でも残っているでしょう。「本業」の意味合いが,昔とは異なるとはいえ。

 今後は,こういう「夢追い型」の生徒も増えてくるのではないか。経済学者の森永卓郎氏の言葉を借りると,「一億総アーティスト」の時代になるのですから。多感な思春期・青年期を,四角い空間の中で過ごす必要はない。それをせずとも,高卒の学歴は得られます。その場が通信制高校なり。

 なお公立と私立でみると,増えているのは後者です。増加傾向が始まった2015年と2019年現在の生徒数を比べると,以下のようになります。


 公立は減っていますが,私立は増えています。近年の通信制の生徒増加は,もっぱら私立によるもののようです。

 通信制への需要を見越した学校法人が,通信制高校の経営に乗り出しているのでしょうか。私立の場合,生徒募集の範囲を定めない広域制をとることも可能です。対して公立は,生徒募集の範囲が県内に限定される「狭域」制です。

 通信制というユニークな課程が,学費のかかる私立によって寡占されるのは考え物です。公立の通信制も,柔軟な運営をとっていただきたいと思います。

 小学校ないしは中学校で不登校状態にある皆さん,将来はどうなるのかと,過度に思い詰めるべからず。学校に行かなくても,中学校は自動的に卒業できます。その後,集団生活のない通信制の高校に行くもよし,あるいは独学で高校の教育内容を修め,高卒認定試験に合格して大学入学資格を得る,という道もあります。学級という牢獄を全く経験せずとも,高卒学歴をゲットでき,大学にだって入れるのです。

 通信制は,高校教育の残りカスのように見られている節もありますが,これからはその比重を高めていくでしょう。情報化社会,IT社会という時代の趨勢にも適っています。2019年現在では,高校生の5.9%,17人に1人が通信制の生徒です(最初の表より計算)。

 『脱学校の社会』を著したイリイチは,「情報化社会では,学校の領分は縮まり,それに代わって,人々の自発的な学習ネットワークが台頭してくる」と予言しました。自発的な学習ネットワークだと,教育内容の体系性に欠け,青年期教育の全部をそれで染めてしまうのはよくありません。調和のとれた人間形成のため,教育内容の枠つけも必要。

 通信制高校は,教育内容の質の保障と,学習の自発性・自由という,新旧のスタイルの長所を兼ね備えた,理想的な型であるように思います。「一億総アーティスト」の時代になったら,小・中学校においても,この形態を普及させてもいいでしょう。

2019年8月9日金曜日

都道府県別の大学進学率(2019年春)

 今年度の文科省『学校基本調査』の速報結果が公表されました。学校数,児童・生徒数,卒業後の進路などが載っている,公的な統計資料です。統計表は,e-Statにて見ることができます。

 教員の女性比率が上がった,高校生が減るなか通信制高校の生徒だけは増加している…。面白いファインディングスが報じられています。私はというと,この資料のデータが公開されたら,真っ先に,都道府県別の大学進学率を計算することにしています。地方出身という身の上もあり,教育機会の地域格差の問題には関心を抱いています。都道府県別の大学進学率は,それを「見える化」するのにうってつけです。

 大学進学率とは,18歳人口ベースの浪人込みの4年制大学進学率をいいます。短大は含みません。分子には,大学入学者数を充てます。分母は,推定18歳人口(3年前の中学校卒業者,中等教育学校前期課程卒業者)を使います。分子には上の世代(浪人経由者)も含まれますが,当該年の現役世代からも,浪人を経由して大学に入る者が同数いると仮定し,両者が相殺するとみなします。これは私が独断で考えたのではなく,公的に採用されている計算方法です。

 今年春の大学入学者は63万1267人,推定18歳人口は117万4801人。よって大学進学率は,前者を後者で割って53.7%となる次第です。同世代の半分が大学に行くという,今の時代の数値的な表現です。性別でみると,男子が56.6%,女子が50.7%と,ジェンダー差があります。

 ここまでは文科省の調査結果概要に載っていること。では,47都道府県別の大学進学率を計算した結果をご覧いただきましょう。都道府県別に出す場合,分子には,当該県の高校出身の大学入学者数を充てます。上記e-statの「出身高校の所在地県別大学入学者数」という表に出ています。


 黄色は最高値,青色は最低値です(赤字は上位5位)。全国値は53.7%ですが,県別にみると,最高の73.3%(東京)から最低の38.1%(岩手)まで,大きな開きがあります。

 女子の大学進学率の最低は,今年も郷里の鹿児島ですか…。東京の女子は73.5%,鹿児島の女子は33.7%と,倍以上の開きがあります。同じ国内とは思えぬほどの格差です。2015年だったか,鹿児島県知事が「女子に三角関数を教えて何になる」と発言したことが思い出されます。

 右端の性差は,男子と女子の差分です。大半の県で「男子>女子」ですが,10ポイント以上開いている県もあります。北海道,埼玉,山梨です。女子は,地元の短大や専門学校に行くのでしょうか。ここでの大学進学率は,高校の所在地に依拠して出してますので,埼玉の場合,優秀な女子が都内の高校に流れ込んでいるためとも考えられます。

 女子の大学進学率が男子より高いのは,東京と徳島。この2都県は毎年こうなのですが,その理由は如何。東京は,自宅から通える大学が多いからでしょうが,徳島は何ででしょう。ツイッターで意見を募ったところ,「県内の大学に,文学,教育,栄養,薬学,音楽といった学科が多いからではないか」ということでした。
https://twitter.com/PKR2000G/status/1159457167449006080

 おっと細部に入ってしまいましたが,大学進学率には,本当に大きな地域格差があるのだなあと,実感させられます。今では同世代の2人に1人が大学に行くと言われますが,それは一部の地域に限った話です。大学進学率が50%を超えるのは,16県だけです(女子は9県!)。

 大学に進学する・しないは自由ですが,上記の統計的事実が,各県の高校生の意向の差とは思えませんよね。まぎれもなく,環境の要因を被っています。子どもの学力トップの秋田の大学進学率が低いのも,その証左なり。

 まず考えられるのは,家庭の所得水準です。大学の学費は高く,地方の場合,都市部に下宿するための費用も上乗せされます。ただでさえ所得が低い地方の家庭にとって,このダブルパンチは痛い。東京大学は,2017年度から女子学生の家賃を補助する制度を始めていますが,地方の才女を呼び寄せるのに有効だと思います。

 あとは,親の考え方もあるでしょう。大学を出ている親は,そうでない親よりも大学の価値を認め,子の進学に肯定的な態度をとると。事実,大卒の親が多い県ほど,大学進学率は高い傾向にあります。下図は,親世代の大卒者率と,上表の大学進学率の相関図です。親世代の大卒者率は,2017年の『就業構造基本調査』より計算しました。


 明瞭なプラスの相関関係が見受けられます。相関係数は+0.834にもなります。ダイレクトな因果関係と言い切ることはできませんが,親世代の大卒率は,県民所得よりも大学進学率と強く相関しています。貧しくとも,大学に価値を認める親なら,子を行かせようとしますからね。経済資本よりも文化資本が効く,ということでしょう。

 大卒の住民が地域にたくさんいるというクライメイトが,大学進学を当然視するよう,子どもを仕向けることも考えられます。

 東京工業大学は,親が大学を出ていない学生に奨学金を給付する制度を始めるとのこと。親が進学に否定的な地方在住者の進学を促すのが狙いだそうです。賛否両論ありそうですが,いい視点だとは思います。

 あと一つの大きな要因は,自地域に大学があるかです。自宅から通えるかどうかは,結構デカイ。否とあらば,下宿費用が加算され,コストが直ちに倍増しちゃうからです。また大学がない田舎の場合,大学とはどういうものかのイメージができないのですよね。この点は,鹿児島の奄美群島を調査してよく分かりました。勉強ができる生徒であっても,進路の選択肢に大学が入ってこないのです。これは私が修論を書いた頃の話で,IT化が進んだ今では,この障壁は低くなっているとは思いますが。

 ざっと考えて,こういう環境要因が,当人の能力に関係なく,大学進学チャンスを規定しているのではないかとみられます。女子の場合,男子にもましてそれが顕著でしょう。大学進学率の都道府県格差は,その可視化に他なりません。

 昨年度から給付型奨学金が導入され,来年度から高等教育無償化政策がスタートします。対象がかなり限られていますが,地方から都会に出てくる学生には,各大学の裁量で支援を上乗せしてほしいものです。地元へのUターンを条件とした,奨学金を支給するのもいいでしょう。高等教育を修めた人材のチカラが,地方の発展に寄与してくれるのは間違いありません。

2019年8月7日水曜日

水泳の授業はスイミングスクールで

 酷暑の日が続いています。海がすぐ近くなんで,いつでも海水浴ができるのですが,見苦しい裸体を晒す度胸はないです。

 学校では体育の授業で水泳をしているかと思いますが,昨日,面白い記事を見かけました。タイトルは「この手があった!スイミングで学校の授業は一石三鳥」。3つのメリットとは,熱中症の心配なし,指導充実,コスト半分以下,というものです。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190806-00010000-tokai-soci

 スイミングスクールの屋内プールなら,熱中症の心配はなし。講師は水泳のプロなんで,指導も充実。スイミングスクールに払う費用は,学校のプールの維持管理費の半分ですむ。至れり尽くせりですね。スクールの側にしても,一般客の少ない午前中に使ってもらえばありがたい。

 この記事をRTしたところ,「日本はスイミングスクールが至る所にあるので,どんどん活用すべきだ」というリプがありました。そうなんですかね。文科省の『体育・スポーツ施設現況調査』という資料に,公共・民間のスポーツ施設のプール数が出ています。

 2015年度とデータがちと古いですが,都道府県別の表をみると,東京都は379,私の郷里の鹿児島県は103となっています。屋内・屋外の合算です。

 これだとピンとこないので,1つのプールを何人の児童で使うことになるか,またどれほどの広さの土地に1つのプールがあるか,という情報も出してみます。公的統計からa~cの3つの数値を取り出しました。いずれも2015年度の数値です。


 東京には56万2969人の児童がいるので,1つの学校外のプールを1485人で使うことになります。1回に使える人数が50人とすると,30回ローテーションすればいい計算です。まとまった時間の水泳の授業が年間5回とすると,1つのプールのトータルの使用回数は150回ですか。この程度なら,一般の利用客の妨げにはならないのでは。学校の授業での使用は午前中と決めればよろしい。鹿児島は,もっとゆとりある形で使えそうです。

 次に気になるのは,学校からプールへの移動です。送迎は施設やスイミングスクールがバスでやってくれるみたいですが,あまりに遠すぎると困る。そこで,何㎞四方の土地にプールが1つあるかを出してみたところ,東京では5.6㎢(2.4㎞四方)の土地に1つはあるじゃないですか。これなら,バスですぐですね。鹿児島は,ちょっと時間がかかるかな。

 この2つが,学校外の施設のプールの利用しやすさを測る指標になります。47都道府県の数値をご覧いただきましょう。まずは,プール1つあたりの児童数です。


 児童数の多い都市部はちとキツイですが,地方ではゆったり使えますね。山梨は1つのプールあたり571人。1回50人とすると,たった11回ローテーションすればいいだけです。授業回数が年間5回とすると,1つのプールの使用回数は55回。余裕です。1回の使用人数をもっと少なくしてもよさそうです。

 次に,スポーツ施設のプールの立地密度です。


 高知や北海道は,学校からプールまでバスで30分ほどかかりそうですが,右下の都市部では数分で済みそうです。ただ渋滞や事故など思わぬ事態があり,他の授業時間の侵食もあり得ますので,スポーツ施設での水泳の授業は,夏季休暇等にまとめて行うのがいいかもしれません。屋内なら,夏である必要はなし。

 熱中症の心配なし,指導充実,コスト半分以下。学校外と連携することで,こんなにものメリットが引き出せます。

 昨年春にスポーツ庁が出した『部活動ガイドライン』では,中学校の運動部活動を,学校外のスポーツクラブ等に委ねるのもアリだと述べています。授業ではない課外活動なんで,全然OKです。北欧の諸国では,こういうスタイルです。中学校教員の8割が,課外活動指導時間「ゼロ!」と言い切っています(OECD「TALIS 2018」)。
http://tmaita77.blogspot.com/2019/06/2018.html

 教育を行う場は,学校だけにあらず。学校外とも手を携え,教育の効果を高めていきたいものです。子どもは社会全体で育てる。こういう構えが大切。日本では,学校と外部社会の敷居が高いのですが,教育資源の活用や人事交流の面でも,これを崩していく必要があるでしょう。

2019年8月5日月曜日

独り身の女性の貧困

 ロスジェネは現在40代前半で,この世代が高齢期に達する20年後はどうなるのかと,悲観的な予測が飛び交っています。不遇なまま放置されてきた世代です。年金など碌にもらえない人が多し。私もそうです。

 目を凝らしてみると,ロスジェネと同じく先行きが心配な人たちがいます。夫のいない,独り身の女性です。女性は男性に経済的に扶養されるべしという考えが根強い日本では,女性が自身の収入で自活する生き方は想定されていません。

 そんなことを考えるのは悪いことだと言わんばかりに,給与にはジェンダー差がつけられています。「つまらんことを考えないで,家事・育児に専念しろ」とね。明瞭な性役割分業で社会が築かれてきた経緯があり,今でもそれが残存しています。

 しかし時代は変わり,結婚しない女性が増えてきました。40歳,50歳を過ぎてもです。45~54歳(アラフィフ年代)の女性人口,そのうちの未婚者数の長期推移を跡付けると,下表のようになります。『国勢調査』の時系列統計より採取しました。2017年の数値は,同年の『就業構造基本調査』によります。


 戦前期では,アラフィフの未婚女性は4万人ほどしかおらず,同年代の女性に占める比率は2%,50人に1人もいませんでした。お見合いで,強制的に結婚させられていた時代ですから。

 しかし時代を下るにつれぐんぐん増えてきて,1995年に50万人を越え,2015年には100万人を突破,2017年では126万人に達しています。今では,アラフィフ女性の14.4%,7人に1人が結婚経験のない未婚者です。

 ここまで増えてくると,もはやネグリジブル・スモールではありません。夫に依存せず,自活しようと奮闘するも,長らく続いてきた通念や制度に阻まれ,貧困状態におかれる女性の問題がクローズアップされてくるのは道理です。今日の現代ビジネスのウェブサイトで,「非正規・無職の女性たちをずっと無視してきた日本社会の罪」という記事が出ています。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66225

 「非正規・無業の女性」というと,家計補助のパートや専業主婦をしている妻を思い浮かべるでしょうが,夫のいる有配偶女性と未婚女性では,意味合いが違います。後者の場合,こういう状況に置かれること=「貧困」でしょう。親と同居しているとか,資産があるとか,例外はあるでしょうけど。

 上表によると,2017年のアラフィフ未婚女性は125万6100人です。このうちの59万7000人(47.5%)が,非正規雇用者もしくは無業者となっています。アラフィフ未婚女性の半分近くが,非正規・無業であると。

 この値には地域差もあります。47都道府県別の率を高い順に並べると,以下のようになります。


 トップは沖縄で61.0%,15の府県で50%を超えています。女性が独り身でやっていくのは辛い地域といえましょうか。

 こういう有様ですので,アラフィフ未婚女性の稼ぎも推して知るべし。働いている人の年間所得分布(税込み)から中央値を計算すると,283.8万円となります。300万円に届かないですね。地域別にみると,もっと悲惨な値が出てきます。


 300万円を越えるのは8都県しかありません。富山と福井が入っているのは,正社員率が高いからでしょう。

 その他の県はこのラインを割り,半分の県が250万円を下回っています。言葉はキツイですが,ワーキングプアの部類です(沖縄と青森は200万未満)。夫のいない未婚者なんで,就業調整をしているとは考えられません。独り身を養うべく,フルタイム就労をしている人が大半でしょう。

 これは,幸運にも正規雇用の職に就けている人も入ったデータです。非正規雇用者に絞ると,目も当てられない惨状になります。東京を除く全県が200万未満です。2番目の表にあるように,アラフィフ未婚女性の半分が非正規・無業であることを思うと,問題の深刻さが分かるでしょう。
https://twitter.com/tmaita77/status/1148162055813263360

 女性が自活するって,本当に大変なんだなと思います。女性の自活なんて想定していない,社会の通念や制度の問題です。昔はネグリジブル・スモールとして問題化しなかったのですが,現在ではそうはいきません。最初の表でみたように,夫のいない独り身の女性はどんどん増え,今後もそうなるのですから。

 まずは,最低賃金の遵守です。フルタイムで働いて,年間の所得(税引き前!)が200万円に満たないというのは,それが守られてない証拠です。言わずもがな,賃金のジェンダー差の是正も必要。

 そうなれば,結婚に際して,女性が相手の男性に高収入を期待せざるを得ない度合いも下がります。自分も加勢すればいいのですから。未婚化・少子化の壁も取り払われます。貧困への転落を恐れ,夫のDVを耐え忍ぶなんてことも少なくなる。

 そもそも「結婚はオワコン」とまで言われる時代。こういう時代にあって,今の状況を放置しておくならば,大変なことになるでしょう。ロスジェネは特定世代の問題ですが,独り身の女性はこれから常に増えてくるのですから。社会を揺るがす不安因子として,累積されることがあってはなりません。

2019年8月4日日曜日

宿題の国際比較

 夏休みですが,子どもたちはせっせと宿題に精を出していることと思います。

 ねらいは,1学期に習ったことの定着,生活のリズムを整える,というものでしょう。休みとはいえ,勉強の習慣が崩れてしまうのは困る。1日,一定時間は机に向かってほしい。こういう思いから,長期休暇には宿題が出されています。

 ただ宿題は学習指導要領で規定されたことではなく,出すか出さないかは,各学校,ないしは教員の任意です。休み中は色々な体験をしてほしいという願いから,宿題は最小限,ないしは撤廃している学校も稀にあると思います。学部の比較教育学の授業で聞いた話ですが,バカンスの国・フランスでは,小学校では宿題なんて出ないそうです。

 ホントですかねえ。IEAの理数教科の国際学力調査「TIMSS 2015」で,宿題の設問があったような気がします。教員に対し,算数(数学)ないしは理科の宿題を,週にどれくらいの頻度で出すかを問うものです。
https://timssandpirls.bc.edu/timss2015/international-database/

 算数の宿題をどれくらいの頻度で出すか? 小学校4年生の教員の回答分布を,主要国について出すと,以下のようになります。リモート集計でやりましたので,粗い整数値になっていることをお許しください。「瑞」はスウェーデンです。


 日本をみると,「毎日出す」という回答が58%で最も多くなっています。アメリカとドイツも,結構出すようです。

 フランスは,出さないという回答が33%と最多です。ただこの国では,他の階級に回答が分散しており,出す教員もいれば出さない教員もいる,というのが正確ですね。子どもによかれと思うなら出す,そうでないなら出さない。教員の裁量の幅があるみたいです。お国柄が出ているようで,ちょっと面白い。

 なお宿題をいっても,数分で終わるライトなものから,手間がかかるヘビーなものもあります。宿題を出す頻度だけでは不十分。そこで,宿題を出すと答えた教員に対し,「受け持っている児童がする場合,どれくらいの時間がかかるものを出すか」も訊いています。この設問の回答分布は以下のごとし。


 フランスを除く6か国では,16~30分の宿題が最も多いようです。こんなものですかねえ。私が小4の時は,B5のわら半紙1枚の計算プリントがよく出ていたな。10分程度で終わるものでした。

 フランスは,15分以下で終わる簡単なワークが大半です。宿題を出す頻度が少なく,出るとしてもイージーなもの。宿題に,あまり重きを置いてないようです。押し付けをとことん嫌う国ですが,子どもの自主性が尊ばれているのでしょうか。

 「TIMSS 2015」から,48か国のデータを知ることができます。宿題を出す回数と,かかる時間の平均値を出し,それを比べてみましょう。各国の回答分布から,階級値を使って割り出します。階級値は,以下のように設定しました。

宿題を出す頻度
 出さない=0回
 週に1回未満=0.5回
 週に1・2回=1.5回
 週に3・4回=3.5回
 毎日=7回

宿題にかかる時間
 15分以下=15.0分
 16~30分=23.0分
 31~60分=45.5分
 60分以上=74.5分

 この場合,日本の教員が週に宿題を出す回数の平均値は,以下のようになります。

 {(0回×7)+(0.5回×1)+…(7回×58)}/100=5.12回

 このやり方で,宿題を出す回数と,宿題にかかる時間の平均値を国別に計算しました。以下のグラフは,横軸に前者,縦軸に後者をとった座標上に,48か国を配置した布置図です。


 右上は,比較的ヘビーな宿題が多く出る国です。旧共産圏やアジア諸国が多し。勤勉な国民性とリンクしているように思えます。日本もこのゾーンです。

 対極の左下は,宿題に重きが置かれない社会。先ほどみたフランスはこの典型で,自由の国・オランダもここにあります。韓国もこのタイプですが,他のアジア諸国から隔たっているのが意外です。超受験社会で,小学校のうちから塾通いする子が多いためでしょうね。

 宿題の国際比較をやってみましたが,宿題が多い社会もあれば,少ない社会もある。それぞれのお国柄の所産で,どっちがいい悪いという話ではありません。ただ,「日本は宿題が多すぎる(少なすぎる)!」という,極端な偏見は正されるかと思います。

 長期休暇中の宿題なんて,子どもの才能の芽を摘む足かせ。夏休みくらい,やりたいことをうんとさせればいいのではないか。ユーチューバーを志す子がいるなら,思う存分,動画を作らせればいい。理想と現実のギャップを知る機会にもなる。こういう考えもあるでしょう。

 一方で,夏休みの宿題は,大きな仕事をコツコツ計画的に成し遂げることを体験させる「隠れたカリキュラム」にもなっている。それを取り上げるのは,子どもの成長を阻むことになる。こういう捉え方もあります。共働きの親御さんにすれば,子どもがヒマにならぬよう,宿題をたくさん出してほしい,と願うでしょうか。

 極端な結論を出さず,地域や学校の実情に応じて,グラデーションをつければいいと思います。ただ,昨今台頭している,宿題代行業はいただけないです。子を受験勉強に集中させたい親からせっせと依頼を受けていますが,ズルをしてもいいのだと,子どもに教え込むことになってしまう。宿題は学習指導要領で定められたことではないので,取り締まりのしようがないのですが,文科省もよくは思っていないようです。

 今は「代行」の時代ですが,家事や育児等,許される代行もあれば,そうでない代行もある。この辺の区別はつけておきたいもの。

 暑くなりました。こまめに水分を補給し,熱中症には気を付けましょう。

2019年8月2日金曜日

結婚前向き人口

 人口は男性と女性に分かれますが,男性のほうがちょっと多く生まれますので,結婚期では「男余り」が生じます。

 男児選好が強く,堕胎や間引き等で女児を意図的に減らしているインドや中国では,結婚期の未婚男女では,男性が女性よりかなり多いとのこと。人口大国の中国も,間もなく人口減少の局面に入りますが,その最大の要因は,結婚期の性別人口のアンバランスなのではないかと言われています。

 結婚期の男余りは日本も同じ。25~34歳の未婚人口(日本人)をみると,男性が375万538人,女性が297万2769人となっています(『国勢調査』2015年)。男性5人に対し,女性4人です。差の実数は77万7769人。こんなにも差があるのですね。

 インドや中国の男余りの程度は知りませんが,日本もかなりスゴイ部類なんじゃないでしょうか。しかし,男余りを問題視するニュースや論説はあまり見かけません。むしろ,相手が見つからないと嘆く女性の問題のほうが目立っているように思えます。

 ソロ社会研究者の荒川和久氏は,「300万人男余りでも女性が婚活で苦労する背景」という記事を書かれています(東洋経済オンライン,7月25日)。そこで言われているのは,未婚者の頭数は「男性>女性」だが,結婚を前向きに考えている人でみると違う,ということです。

 そうですよね。未婚者の全員が結婚を望んでいるとは限りませんし。2015年の国立社会保障・人口問題研究所『出生動向基本調査』によると,25~34歳の未婚者のうち,1年以内に結婚する意志のある者の率は,男性で54.1%,女性で66.6%です。荒川氏の言葉でいうと,結婚に前向きな人の率は,男性より女性で高いようです。10ポイント以上の差があります。

 この比率を25~34歳の未婚男女人口(上述)にかけると,男性は202万7987人,女性は198万996人となります。1年以内に結婚する意志のある,結婚前向き人口です。未婚人口に比して,かなり接近しますね。未婚人口では男性は女性の1.26倍でしたが,結婚前向き人口に絞ると1.02倍です。

 まあこれでも,男性が女性より多いわけで,女性が婚活で苦労するようには思えないのですが,地域別にみると様相が違うのです。25~34歳の未婚者の結婚前向き率(男性54.1%,女性66.6%)を,47都道府県の同年齢の未婚者数にかけて,結婚前向き人口にしてみると,以下のようになります。


 未婚者数だとどの県でも「男性>女性」なんですが,結婚前向き人口だと違います。17の県で,女性のほうが多くなっていますね(赤字)。ゴチは,女性が男性より1.1倍以上多い県です。大阪,奈良,福岡,そして郷里の鹿児島ですか。

 鹿児島は,進学や就職で男性がどっと出ていくので,未婚男女人口がかなり接近していて,結婚前向き人口率が「男性<女性」なものですから,こういう結果になるんですなあ。「結婚したいなら帰ってこい,居残っている女性はたくさんいるぞ」という,高校時代の恩師を言葉を思い出します。

 よい言い方ではないですが,結婚前向き人口の「女性/男性」比は,男性にとっての「結婚しやすさ」の尺度になるかもしれません。最も高いのは鹿児島で,1.17倍! 若年人口を呼び寄せるに際しては,こういう情報を添えるといいのでは…。

 結婚前向き人口が男性より女性で多い県は,西で多いことが分かります。マップにすると,西高東低の模様がはっきりと浮かび上がります。「女余り」の県です。

 荒川氏がいう「男余りでも女性が婚活で苦労する背景」が分かるような気がします。かつ,女性はある条件によって結婚相手をソートする傾向がありますので,候補となる男性はますます絞られてしまいます。ある条件とは,ズバリ年収です。

 昨年に内閣府が実施した『少子化社会対策に関する意識調査』によると,20~40代の未婚女性の半分弱が,年収500万円以上の男性を結婚相手として望んでいます。対して同年齢の未婚男性の年齢をみると,この条件を満たすのは15.9%しかおらず,53.3%が年収300万円未満のプアです。悲しいかな,このレベルの稼ぎでよしとする女性は,全体のたった9.0%しかいません。

 キツイですねえ。「いや,都市部では年収の高い未婚男性がたくさんいるはずだ」と,期待を持たれるでしょうか。残念ながら,さにあらず。25~34歳の未婚男性の所得中央値を都道府県別に計算し,高い順に並べると,以下のようになります。


 若い未婚男性のフツーの稼ぎですが,大都会の東京でも,500万円どころか400万円もいっていません。29の県が300万円を割り,250万円にも満たない県も6県あります。郷里の鹿児島は,その一つです。この県では,300万円稼ぐ男性に出会えたら御の字です。

 未婚女性の半分が望む「年収500万円」のラインを超える人って,若い未婚男性の何%くらいなんでしょう。25~34歳の未婚男性有業者の中でのパーセンテージを,都道府県別に出せます。上位5位と下位5位は,こんな感じです。

 上位5位=東京22.4%,愛知13.9%,千葉13.7%,神奈川12.7%,埼玉12.1%
 下位5位=宮崎2.5%,沖縄2.3%,大分1.5%,高知1.4%,鹿児島0.4%

 東京では4人に1人ですが,競争は楽ではありません。下位の地方県は悲惨で,鹿児島では0.4%,250人に1人しかいないじゃないですか。

 うーん,最初の表でみたように,鹿児島は結婚前向き人口の「女性/男性」比は全国一。それでいて,未婚男性の所得水準は全国最低レベル。女性の婚活の苦悩は多そうです。

 まあ,年収500万円を望むというのは,内閣府の調査の数字であって,鹿児島の女性でそういうことを思っている人は少数派でしょう。本県は共働きも多いので,二馬力で何とかやっていこう,という気概も強いはず。本県の25~34歳女性の既婚率は50.7%で,47都道府県の中では高い方です(東京は44.9%)。*2015年の『国勢調査』による。

 随所で言っていますが,女性が結婚相手に高い年収を望むことは,「高望み」の文脈で捉えるべきではないと思います。そうならざるを得ない事情があるわけです。結婚するとフルタイム就業が難しくなる,稼げない…。女性の社会進出,ジェンダー平等が進んだ北欧諸国において,収入に関わる未婚男女の擦れ違いなんてあるのでしょうか。データがあったら,ぜひ見てみたい。

 荒川さんのアイディアを参考に,結婚前向き人口というのを出してみました。その性別構成は,地域によって違っています。結婚を欲する若い男性のみなさん,最初の表を参考にされ,西南への移住なんてのはどうでしょう。

2019年8月1日木曜日

地方からの東京通勤者数

 冷夏が終わり,うだるような暑さになっています。避暑地に逃れたいところですが,勤め人はそう簡単にはいきません。

 しかし交通網の発達により,地方と都市はより短時間で結ばれるようになっています。7月25日の毎日新聞に「人気の新幹線通勤 1時間ほどで軽井沢や佐久平から首都圏」という記事が出ています。
https://mainichi.jp/articles/20190725/k00/00m/040/297000c

 よく耳にするようになった新幹線通勤ってやつですね。費用は会社が補助してくれるので,経済的負担は重くありません,往復2時間,自分の時間が持てるのもいい。100%座れますので,読書もよし仕事もよし。首都圏の通勤(痛勤)電車の場合,こうはいきません。上記の記事に出てくる男性サラリーマンは,「新幹線通勤はメリットしかない」と言い切っています。

 新幹線通勤をしている人はどれほどいるか。こんな統計はありませんが,『国勢調査』のデータから見当をつけることはできます。就業者の常住地と従業地のクロスをするのです。2015年のデータによると,常住地が長野県軽井沢町で,従業地が東京都という就業者は304人となっています。

 新幹線かどうかは分かりませんが,軽井沢から都内に通勤している人は304人であると。5年前の2010年データでは288人で,ちょっと増えています。北陸新幹線開業の効果でしょうか。

 これは長野県軽井沢町のケースですが,他の地域からはどうでしょう。市町村レベルだとデータが膨大になりますので,大雑把ですが都道府県単位でみてみます。46の道府県に住む就業者で,東京都内に通勤している人の数を出してみました。


 ほう,東京から遠く離れた地方県からの通勤者もいるのですね。私の郷里の鹿児島からも374人おり,5年前に比して増えています。飛行機で1時間半ほど,空港から鹿児島市内まで1時間ほどですので,不可能ではないです。週に2日くらいなら,余裕でしょう。

 新幹線効果ゆえか,北陸3県の増加率は高いですね。当然,飛行機もアリ。ZOZOの田端信太郎氏のご実家は小松空港の近くで,「7時半くらいまでご飯食べても,飛行機に乗れば,10時の都心の会議に間に合う」と言われていました。
https://twitter.com/tmaita77/status/1155107878946009088

 上記の表の人たちは,どういう人たちか。おそらくは,週に2日ほど都内のオフィスに出勤するだけで事足る,会社役員や高度専門職ではないかと思われます。福島,栃木,群馬,新潟,北陸・中部の諸県では,新幹線通勤をしているリーマンが多そうです。

 ちなみに職業とのクロスをとることもできます。2015年だと,石川県からの都内通勤者は603人(上表)。この603人の職業分布をみると,以下のようになります。


 3割が管理職ないしは専門職ですが,事務職や販売職が半分近くです。会社勤めをする普通のサラリーマンかと思いますが,先ほどの毎日新聞に出てくる人のように,毎日新幹線通勤している人も含まれるでしょう。

 あるいは,基本はテレワークで,週に何日か東京のオフィスに出社するだけの人もいそうです。実家で親の介護をしながら,同じような働き方をしている人もね。

 新幹線通勤から話を始めましたが,地方から東京都内への通勤者は増えています。全国的にです。高速交通網の発達はもちろん,テレワーク,老親の介護といった人間模様も投影されているようで興味深い。

 情報技術が進化した今,オフィスに出勤するのは週に2~3日でもよくなりそうです。となると,サラリーマンの居住地の地方分散が進みそうです。介護離職の歯止めにもいい。

 多くの自治体が人口を呼び寄せようと躍起になってますが,遠距離通勤の補助なんてのも,重要なポイントになりそうです。静岡県のどっかの自治体が,都内への新幹線通勤の費用補助を目玉に,移住者を募っていたような気がします。

 2020年の『国勢調査』では,どういう数値になっているか。増えているのは間違いないでしょう。