月末恒例の,教員不祥事報道のまとめです。今月私がキャッチした,教員がらみの不祥事報道は49件です。 先月よりもちょっと減っています。
記事名,日付,メディア名に加えて,処分を受けた教員の属性を記録しておきます。件の詳細を知りたい方は,記事名でググってみてください。
わいせつが多いのは毎月のことですが,児童に暴言を吐く,仕事のストレスを麻薬で紛らわせる,というような事案も顔をのぞかせています。教員の世界にも「イライラ」は相当蔓延しているようです。
教員の不祥事(犯罪)防止にあたっては,研修を強化するのもいいですが,それと並行して,勤務条件の改善等もなすべきでしょう。「締め付け」と「緩め」の双方がなされねばなりませんが,私のみるところ,前者に偏しているような印象を持ちます。このような不均衡の是正が求められると思います。
明日から7月。夏も盛りです。体調を崩されませぬよう,ご自愛のほど。
<2013年6月の教員不祥事>
・金曜夜は生徒と校内マージャン 大阪の中学教諭を処分へ(6/1,朝日,大阪,中,男,57)
・名作と誤って教室でアダルトビデオ再生した教諭(6/1,読売,香川,中,男,50代)
・中学教諭、盗撮目的で住居侵入容疑 女子中学生のぞく (6/2,朝日,三重,中,男,32)
・児童女子トイレにカメラ…「自分が」と男性教諭(6/4,読売,滋賀,小,男,40代)
・北照高スキー部監督、遠征先の韓国で酒飲み体罰(6/5,読売,北海道,高,男,35)
・保護者は見た…男女教諭が体育館で不適切行為(6/6,読売,埼玉,小,40代男女)
・複数児童に「死ね」「ごみ」…44歳教諭を停職3ヶ月(6/6,読売,栃木,小,男,44)
・児童への不適切な言動,体罰(6/6,読売,栃木,小・男44,中・男50)
・<建造物侵入容疑>中学校に日本代表の落書き 教諭逮捕(6/6,毎日,愛知,中,男,26)
・児童と不適切メール、小学校教諭を懲戒処分(6/6,読売,青森,小,男,46)
・戒告処分:スピード違反の延岡・教諭を(6/6,毎日,宮崎,小,男,45)
・生徒に「脳みそ手術しなさい」で謝罪の女性教諭(6/7,読売,宮城,中,女,40代)
・酒気帯び運転:逮捕の35歳教諭、懲戒免職(6/8,毎日,福岡,中,男,35)
・わいせつ容疑で逮捕 小学校教諭懲戒免職(6/8,産経,宮城,小,男,48)
・盗撮:吉野川市の小学校教諭を容疑で摘発(6/9,毎日,徳島,小,男,53)
・喉にオレンジ詰まらせ児童脳障害…教諭書類送検(6/10,読売,宮城,特,女,45)
・吹奏楽部女性顧問、部員に「消えろ」「邪魔」 山形の県立高校
(6/11,産経,山形,高,女,30代)
・強制わいせつ容疑で中学教諭逮捕=路上で女性の体触る
(6/11,時事通信,埼玉,中,男,24)
・<体罰>強豪テニス部顧問が主将平手打ち 奈良・高田商高
(6/12,毎日,奈良,高,男,55)
・児童ポルノ提供容疑 埼玉の小学校教諭逮捕(6/12,産経,埼玉,小,男,25)
・市立小教諭、女子大生のスカートにスマホかざす (6/13,読売,大阪,小,男,29)
・男子中高生3人を買春容疑、大阪 元男性教諭を逮捕(6/14,共同通信,大阪,小,男,31)
・保護者に暴行の中学教諭ら処分 県教委(6/15,産経,広島,中,男,58)
・同上:担任学級で実施したテストの答案用紙1572枚のうち910枚を紛失
(6/15,産経,広島,小,女男,46)
・同上:ストーブに給油する際、過失で教室の一部が燃える火災
(6/15,産経,広島,高,男,54)
・テスト3年分、大半返却せず…女性教諭を減給(6/15,読売,広島,小,女,46)
・部活出張旅費など72万円不正受給、高校教諭を懲戒免職(6/18,産経,新潟,高,男,47)
・同上:生徒に体罰を行った(6/18,産経,新潟,高,男,50代)
・パチンコカード盗んだ教諭、書類送検隠し授業(6/18,読売,愛知,小,男,27)
・済美高の教諭を書類送検 自動車運転過失傷害容疑 (6/18,朝日,兵庫,高,男,37)
・仕事のストレス…麻薬輸入の教諭、使用で再逮捕(6/18,読売,広島,小,男,41)
・選抜出場の京都翔英 野球部コーチが体罰 学生野球協会、謹慎処分
(6/20,産経,京都,高,男,27)
・「体罰もありだよね」20代女性教諭がツイート (6/20,読売,大阪,中,女,20代)
・部活顧問が部員に「人間のくずだ」 米沢の中学校、地区総体で発言
(6/20,山形新聞,山形,中,男,50代)
・違法ドラッグ密輸容疑、小学教諭を逮捕(6/22,朝日,愛知,小,男,43)
・ネット上の投稿動画で教師の体罰発覚 大阪の私立高校(6/24,産経,大阪,高,男)
・痴漢容疑で特別支援学校の教諭逮捕(6/24,産経,神奈川,特,男,56)
・「胸が見たくなった」教諭、校内で女児の胸触る(6/26,読売,福島,小,男,37)
・「犠牲者作れば真剣に」逆立ち20分強要 中学教諭懲戒(6/26,朝日,兵庫,中,男,27)
・女子生徒触った高校教諭を停職処分(6/27,埼玉新聞,埼玉,高,男,43)
・兵庫・西宮の県立高校教諭、発表前に合格漏らす (6/27,朝日,兵庫,高,男,48)
・松江工の実習助手 懲戒免職処分 盗撮目的トイレ侵入(6/27,産経,島根,高,男,37)
・我孫子市立中学の調査書ミス 当時の校長を戒告処分(6/27,産経,千葉,中,男,56)
・教室にデジカメ、女児着替え盗撮の教諭懲戒免職(6/27,読売,茨城,小,男,32)
・スカート内盗撮で中学教諭免職=通販でカメラ購入(6/27,時事通信,広島,中,男,54)
・女子生徒にキス 教諭を懲戒免職(6/27,北海道新聞,北海道,高,男,37)
・テニス部顧問「殺すぞ」 石川の高校 (6/28,産経,石川,高,男,40代)
・延岡学園高で体罰 男子部員の顔たたく(6/29,宮崎日日,宮崎,高,男,48)
・女子児童の着替え盗撮しようとした男性教諭謝罪(6/29,読売,岐阜,小,男,34)
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2013年6月30日日曜日
2013年6月27日木曜日
家計を支える女性の国際比較
二神能基さんの『ニートがひらく幸福社会ニッポン-進化系人類が働き方・生き方を変える-』明石書店(2012年)を読んでいます。よくあるような,ニートへの説教論とは違った内容にひかれ,図書館で借りてきました。
今,第一章を読み終えたところですが,これがまた面白い。「ニートの魅力に気づいた女性たち」,「ヒモで生きる覚悟を決めた38歳の彼の『男らしさ』」等,興味深いケース報告が盛りだくさんです。
定職もないニート男と結婚する女性なんているわけない。こういう思い込みが蔓延していますが,それは100%妥当というのではありません。男女共同参画社会の進展により,定職を持つ女性が増えていますが,彼女らの中には,自分よりガシガシ稼ぐ男性よりも,癒しを提供してくれる男性を求める向きもあるのだそうな。
分かる気がします。仕事のことで常日頃イライラを募らせている男性よりも,稼ぎはなくともよいから,家事や育児をやってくれて,かつ,疲れて帰宅した自分を癒してくれる男性のほうがいい。こう考える女性が一定量いるとしても,何ら不可解なことではありません。
上記の「ヒモで生きる覚悟を決めた38歳の彼」とは,小学校の正規教員の女性と結婚した,バイト暮らしの男性です。教員にとって,今の職場はまさに戦場。せめて家庭くらいは,あらゆる緊張や葛藤から解放されることのできる,安らぎの場であってほしい。ニート男性は,それを実現してくれる条件を持った存在といえるのかもしれません。
さて私は,こういうケース報告に接すると,マクロな統計でみてそれはどれくらい存在するのか,という関心を持ちます。今回は,家計を主に支える女性の量でもって,この点を測ってみようと思います。
毎度利用する『世界価値観調査』(5wave,2005-2008)では,15歳以上の対象者に対し,「お宅の家計を支えているのはあなたですか」と尋ねています。この問いに対し,「はい」or「いいえ」の有効回答を寄せた,日本の有配偶女性は371人。このうち「はい」という者は18人。比率にすると4.9%です。
パートナーがいる女性のうち,家計を主に支えている者(chief wage earner)は4.9%,20人に1人というところです。まあ,数でみるとこんなものでしょうか。
この調査は国際調査ですので,他国についても同じ値を出すことが可能です。日本を含む51か国について,有配偶女性中の「主たる家計支持者」比率を出し,高い順に並べてみました。このデータは,WVSサイトのオンライン集計ツールを使って,私が独自に作成したものであることを申し添えます。
http://www.wvsevsdb.com/wvs/WVSAnalize.jsp
世界を見渡すと,女性が頑張っている社会が結構ありますね。最高は南米のペルーの42.8%,その次は北欧のフィンランドで36.1%です。二神さんの本でいわれている「ニートを愛する女性」がマイノリティーではない社会なのだと思われます。
日本はというと,4.9%という絶対値の低さもさることながら,51か国中の相対順位も低くなっています。下から3番目です。もうちと高い位置にあるかと思っていましたが,現実はこうなのですね。
これは各国の社会文化的な要因の所産であり,どうにも動かし難いものだという悲観を持たれるかもしれませんが,それは違うと思います。このことは,過去との比較から知られます。
私は,第3回『世界価値観調査』のデータを用いて,上図の51か国のうちの21か国について,同じ指標を出してみました。1990年頃の値です。上図の2005年近辺の数値と比べることで,1990年代以降の変化を明らかにしてみましょう。下図をみてください。
斜線の均等線よりも上にあるのは,この期間中に,有配偶女性中の「主たる家計支持者」比率がアップした社会です。フィンランドは17.8%から36.1%と倍増しています。ブラジルに至っては,伸び幅がもっと大きくなっています。値はすこぶる可変的です。
わが国は微変動にとどまっていますが,今後どうなるかは分かりません。男女共同参画に向けた取組は強まることはあれその逆はないでしょう。また,「男性不況」という言葉があるように,今の日本では製造業の比重が縮まり,代わって福祉・介護のような分野の市場が開けてきています。
こういう状況変化のなか,「ニートを愛する女性」,「ヒモで生きることを決意する男性」も増えてくることでしょう。それは,否定的に捉えられるべきことではありません。
また,もっと基底の部分では,結婚観の変化もじわじわと進行しているのではないかと思われます。双方の家柄が釣り合うか,相手の生涯獲得見込み所得はナンボかを気にした,算盤片手の結婚は,二神さんの言葉を借りると,物々交換にも似た「20世紀型価値観」に基づく結びつきです。
しかし21世紀の社会では,そういう条件だけにとらわれない,相手の内面や人間性にも思いを寄せた,「21世紀型価値観」に依拠した結婚が台頭してくることでしょう。昔みたいに,がつがつと「モノ」を追い求める時代ではなくなっています。若者に「欲しいものは何か」と尋ねても,「別に・・・」という素っ気ない反応が返ってくる時代です。
家計を支える女性の割合は,こういう社会変化がどれほど進行しているかを教えてくれるメルクマールでもあります。まさに,21世紀型社会の指標です。これから先,注意して観察していきたい指標の一つといえるでしょう。
今,第一章を読み終えたところですが,これがまた面白い。「ニートの魅力に気づいた女性たち」,「ヒモで生きる覚悟を決めた38歳の彼の『男らしさ』」等,興味深いケース報告が盛りだくさんです。
定職もないニート男と結婚する女性なんているわけない。こういう思い込みが蔓延していますが,それは100%妥当というのではありません。男女共同参画社会の進展により,定職を持つ女性が増えていますが,彼女らの中には,自分よりガシガシ稼ぐ男性よりも,癒しを提供してくれる男性を求める向きもあるのだそうな。
分かる気がします。仕事のことで常日頃イライラを募らせている男性よりも,稼ぎはなくともよいから,家事や育児をやってくれて,かつ,疲れて帰宅した自分を癒してくれる男性のほうがいい。こう考える女性が一定量いるとしても,何ら不可解なことではありません。
上記の「ヒモで生きる覚悟を決めた38歳の彼」とは,小学校の正規教員の女性と結婚した,バイト暮らしの男性です。教員にとって,今の職場はまさに戦場。せめて家庭くらいは,あらゆる緊張や葛藤から解放されることのできる,安らぎの場であってほしい。ニート男性は,それを実現してくれる条件を持った存在といえるのかもしれません。
さて私は,こういうケース報告に接すると,マクロな統計でみてそれはどれくらい存在するのか,という関心を持ちます。今回は,家計を主に支える女性の量でもって,この点を測ってみようと思います。
毎度利用する『世界価値観調査』(5wave,2005-2008)では,15歳以上の対象者に対し,「お宅の家計を支えているのはあなたですか」と尋ねています。この問いに対し,「はい」or「いいえ」の有効回答を寄せた,日本の有配偶女性は371人。このうち「はい」という者は18人。比率にすると4.9%です。
パートナーがいる女性のうち,家計を主に支えている者(chief wage earner)は4.9%,20人に1人というところです。まあ,数でみるとこんなものでしょうか。
この調査は国際調査ですので,他国についても同じ値を出すことが可能です。日本を含む51か国について,有配偶女性中の「主たる家計支持者」比率を出し,高い順に並べてみました。このデータは,WVSサイトのオンライン集計ツールを使って,私が独自に作成したものであることを申し添えます。
http://www.wvsevsdb.com/wvs/WVSAnalize.jsp
世界を見渡すと,女性が頑張っている社会が結構ありますね。最高は南米のペルーの42.8%,その次は北欧のフィンランドで36.1%です。二神さんの本でいわれている「ニートを愛する女性」がマイノリティーではない社会なのだと思われます。
日本はというと,4.9%という絶対値の低さもさることながら,51か国中の相対順位も低くなっています。下から3番目です。もうちと高い位置にあるかと思っていましたが,現実はこうなのですね。
これは各国の社会文化的な要因の所産であり,どうにも動かし難いものだという悲観を持たれるかもしれませんが,それは違うと思います。このことは,過去との比較から知られます。
私は,第3回『世界価値観調査』のデータを用いて,上図の51か国のうちの21か国について,同じ指標を出してみました。1990年頃の値です。上図の2005年近辺の数値と比べることで,1990年代以降の変化を明らかにしてみましょう。下図をみてください。
斜線の均等線よりも上にあるのは,この期間中に,有配偶女性中の「主たる家計支持者」比率がアップした社会です。フィンランドは17.8%から36.1%と倍増しています。ブラジルに至っては,伸び幅がもっと大きくなっています。値はすこぶる可変的です。
わが国は微変動にとどまっていますが,今後どうなるかは分かりません。男女共同参画に向けた取組は強まることはあれその逆はないでしょう。また,「男性不況」という言葉があるように,今の日本では製造業の比重が縮まり,代わって福祉・介護のような分野の市場が開けてきています。
こういう状況変化のなか,「ニートを愛する女性」,「ヒモで生きることを決意する男性」も増えてくることでしょう。それは,否定的に捉えられるべきことではありません。
また,もっと基底の部分では,結婚観の変化もじわじわと進行しているのではないかと思われます。双方の家柄が釣り合うか,相手の生涯獲得見込み所得はナンボかを気にした,算盤片手の結婚は,二神さんの言葉を借りると,物々交換にも似た「20世紀型価値観」に基づく結びつきです。
しかし21世紀の社会では,そういう条件だけにとらわれない,相手の内面や人間性にも思いを寄せた,「21世紀型価値観」に依拠した結婚が台頭してくることでしょう。昔みたいに,がつがつと「モノ」を追い求める時代ではなくなっています。若者に「欲しいものは何か」と尋ねても,「別に・・・」という素っ気ない反応が返ってくる時代です。
家計を支える女性の割合は,こういう社会変化がどれほど進行しているかを教えてくれるメルクマールでもあります。まさに,21世紀型社会の指標です。これから先,注意して観察していきたい指標の一つといえるでしょう。
2013年6月25日火曜日
マスメディアへの信頼度の国際比較
日本は面積は狭小ですが,人口的には1億2千万人もの成員を抱えた超巨大国家です。こういう社会では,無数の匿名大衆に情報を伝達するマスコミュニケーションが重要な位置を占めており,そのための手段として,マスメディアが用いられています。
マス(大衆)に情報を伝達するメディアの総称ですが,新聞やテレビ等に加えて,最近ではインターネットも重要な役割を果たすようになっています。私はあまり外に出ませんが,これらのメディアの恩恵により,社会の出来事やニュースをほぼリアルタイムでキャッチできています。ありがたや。
しかし,メディアを操作する側も人間です。誤報に象徴されるように,重大な過ちがなされることもあります。マスメディアは,個々の成員にとっても,彼らを統率する社会にとっても有効なツールですが,あまりに盲目的な信頼を寄せるのは考えものです。
さて,「盲目的」かどうかは別として,日本の国民は,この手のメディアにどれほど信頼を寄せているのでしょう。国際比較によって,わが国の性格づけをしてみようと思います。
用いるのは,『世界価値観調査』(5wave,2005-2008)のデータです。本調査には,制度・組織への信頼を尋ねる設問が盛られており,そこにて,新聞・雑誌やテレビジョンにどれほど信頼を寄せているかが問われています。
手始めに,新聞・雑誌への信頼度を日米で比べてみましょう。15歳以上の国民の回答内訳を面積図にしてみました。無効回答(DN,NA)を除いた構成比率です。下記サイトのオンライン集計機能を使って,私が独自に計算したものであることを申し添えます。
http://www.wvsevsdb.com/wvs/WVSAnalize.jsp
新聞・雑誌への信頼度は,日本のほうがだいぶ高くなっています。「非常に」と「やや」を足し合わせた広義の信頼率は,日本では74.6%にもなりますが,アメリカでは23.9%にとどまっています。逆にいえば,この大国では国民の4人に3人が,新聞・雑誌に不信感を持っていることになります。
まあ,日本のほうが信頼率は高いだろうなと踏んでいましたが,ここまで異なるとは,私にとっては驚きです。
では,より広い国際的な布置構造の中に,わが国を位置づけてみましょう。私は,「非常に信頼」と「やや信頼」の回答比率を信頼率とし,横軸に新聞・雑誌,縦軸にテレビへの信頼率をとった座標上に,56の社会を散りばめてみました。点線は,56か国の合算値です。
日本の信頼率は,56の社会の中でみても「上」の分類に属しているようです。先ほどサシで比較したアメリカは「下」の部類です。大まかにいって,マスメディアへの信頼率が高い社会はアジアや発展途上国に多く,西洋ではその逆であることが知られます。*台湾のように例外もありますが。
このデータをどうみたものでしょう。報道関係の方は「名誉なことだ」と喜ばれるかもしれませんが,私としては少しばかり怖い思いを禁じ得ません。
マスメディアは無数の人々に情報を瞬時に伝えてくれますが,発信者がチョイスした(画一)情報が一方通行で流されるわけですから,思想統制の手段として使われる危険性も併せ持っています。
情報を受け取る側はというと,今の日本社会では,あらゆる絆や縁から隔絶された,いうなれば個々バラバラに分断された「大衆」がマジョリティーです。彼らは何らかの「よすが」を求めてやまないのですが,わが国のマスメディアへの信頼率の高さは,そのことの数値的な表現といえるかもしれません。
こうした人々は,マスメディアが一方的に大量伝達する情報によって,思想や心理を簡単に操作される弱さを持っていることに注意を払う必要があるでしょう。世論調査のデータをみると,若者の愛国心や公共心の強さは過去最高になっているとのことですが,そのことは,インターネットという新種のメディアが台頭している現代的な状況と関連していないかどうか・・・。
このような状況下で重要となるのは,一方的に伝達される情報を鵜呑みにしないで「自分で考え力」をつけることであると思います。
学生さんと議論する時,「テレビではこう言ってましたよ」「Wikiにはこう書いてましたよ」という言をよく聞くのですが,マスメディアへの信頼度が低い欧米では,そういうことはあまりないのかもしれません。この伝でいうと,上図の左下のゾーンにある社会のほうが健全度が高いのかも。
文科省の情報教育の方針をみると,情報教育においては,①情報活用の実践力,②情報の科学的な理解,および③情報社会に参画する態度,という資質・能力を身につけさせることを目指すのだそうです(『教育の情報化に関する手引き』2010年)。先ほど述べた「自分で考える力」は,この中の③に含まれると思いますが,当局はそれを認識しているのかしらん。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/1259413.htm
悲しいかな,わが国は機械的な「決めつけ」志向が幅を利かせている社会でもあります。「上司が言うことは間違いない」「上からの命令には従って当然」「苦しいのは自分が悪いから」というように。この上に,法を守ることをしない,やりたい放題の「ブラック企業」のような病理集団が蔓延っているともいえるでしょう。
自分で考えるのは億劫だ,何かすがることができる情報がほしい・・・。今の日本社会に,このような心性が蔓延していることを,今回のデータは示唆しているのかもしれません。話がずんずん逸れてきました。この辺りで止めにします。
マス(大衆)に情報を伝達するメディアの総称ですが,新聞やテレビ等に加えて,最近ではインターネットも重要な役割を果たすようになっています。私はあまり外に出ませんが,これらのメディアの恩恵により,社会の出来事やニュースをほぼリアルタイムでキャッチできています。ありがたや。
しかし,メディアを操作する側も人間です。誤報に象徴されるように,重大な過ちがなされることもあります。マスメディアは,個々の成員にとっても,彼らを統率する社会にとっても有効なツールですが,あまりに盲目的な信頼を寄せるのは考えものです。
さて,「盲目的」かどうかは別として,日本の国民は,この手のメディアにどれほど信頼を寄せているのでしょう。国際比較によって,わが国の性格づけをしてみようと思います。
用いるのは,『世界価値観調査』(5wave,2005-2008)のデータです。本調査には,制度・組織への信頼を尋ねる設問が盛られており,そこにて,新聞・雑誌やテレビジョンにどれほど信頼を寄せているかが問われています。
手始めに,新聞・雑誌への信頼度を日米で比べてみましょう。15歳以上の国民の回答内訳を面積図にしてみました。無効回答(DN,NA)を除いた構成比率です。下記サイトのオンライン集計機能を使って,私が独自に計算したものであることを申し添えます。
http://www.wvsevsdb.com/wvs/WVSAnalize.jsp
新聞・雑誌への信頼度は,日本のほうがだいぶ高くなっています。「非常に」と「やや」を足し合わせた広義の信頼率は,日本では74.6%にもなりますが,アメリカでは23.9%にとどまっています。逆にいえば,この大国では国民の4人に3人が,新聞・雑誌に不信感を持っていることになります。
まあ,日本のほうが信頼率は高いだろうなと踏んでいましたが,ここまで異なるとは,私にとっては驚きです。
では,より広い国際的な布置構造の中に,わが国を位置づけてみましょう。私は,「非常に信頼」と「やや信頼」の回答比率を信頼率とし,横軸に新聞・雑誌,縦軸にテレビへの信頼率をとった座標上に,56の社会を散りばめてみました。点線は,56か国の合算値です。
日本の信頼率は,56の社会の中でみても「上」の分類に属しているようです。先ほどサシで比較したアメリカは「下」の部類です。大まかにいって,マスメディアへの信頼率が高い社会はアジアや発展途上国に多く,西洋ではその逆であることが知られます。*台湾のように例外もありますが。
このデータをどうみたものでしょう。報道関係の方は「名誉なことだ」と喜ばれるかもしれませんが,私としては少しばかり怖い思いを禁じ得ません。
マスメディアは無数の人々に情報を瞬時に伝えてくれますが,発信者がチョイスした(画一)情報が一方通行で流されるわけですから,思想統制の手段として使われる危険性も併せ持っています。
情報を受け取る側はというと,今の日本社会では,あらゆる絆や縁から隔絶された,いうなれば個々バラバラに分断された「大衆」がマジョリティーです。彼らは何らかの「よすが」を求めてやまないのですが,わが国のマスメディアへの信頼率の高さは,そのことの数値的な表現といえるかもしれません。
こうした人々は,マスメディアが一方的に大量伝達する情報によって,思想や心理を簡単に操作される弱さを持っていることに注意を払う必要があるでしょう。世論調査のデータをみると,若者の愛国心や公共心の強さは過去最高になっているとのことですが,そのことは,インターネットという新種のメディアが台頭している現代的な状況と関連していないかどうか・・・。
このような状況下で重要となるのは,一方的に伝達される情報を鵜呑みにしないで「自分で考え力」をつけることであると思います。
学生さんと議論する時,「テレビではこう言ってましたよ」「Wikiにはこう書いてましたよ」という言をよく聞くのですが,マスメディアへの信頼度が低い欧米では,そういうことはあまりないのかもしれません。この伝でいうと,上図の左下のゾーンにある社会のほうが健全度が高いのかも。
文科省の情報教育の方針をみると,情報教育においては,①情報活用の実践力,②情報の科学的な理解,および③情報社会に参画する態度,という資質・能力を身につけさせることを目指すのだそうです(『教育の情報化に関する手引き』2010年)。先ほど述べた「自分で考える力」は,この中の③に含まれると思いますが,当局はそれを認識しているのかしらん。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/1259413.htm
悲しいかな,わが国は機械的な「決めつけ」志向が幅を利かせている社会でもあります。「上司が言うことは間違いない」「上からの命令には従って当然」「苦しいのは自分が悪いから」というように。この上に,法を守ることをしない,やりたい放題の「ブラック企業」のような病理集団が蔓延っているともいえるでしょう。
自分で考えるのは億劫だ,何かすがることができる情報がほしい・・・。今の日本社会に,このような心性が蔓延していることを,今回のデータは示唆しているのかもしれません。話がずんずん逸れてきました。この辺りで止めにします。
2013年6月23日日曜日
無職中年パラサイトシングル
昨日の『NEWSポストセブン』に「子供が働かなくても一生食べていけるプラン作成をFPが提唱」と題する記事が載っています。
http://www.news-postseven.com/archives/20130622_194810.html
いつまでも働こうとせず,親のスネをかじり続ける・・・。こういう子を持つ親御さんの関心事は,以前は「どうしたら仕事をさせられるか」でしたが,最近では「自分が死んだ後,ひとりになった子供はどうやって生きていくのか」ということに変わっているのだそうです。
なるほど。子が若いうちは「働け,働け」と尻を蹴っていたのでしょうが,30や40を過ぎた段階になると,「この子は一人になったら一体どうするのだろう」という悩みが頭をもたげてくるのは当然のことです。
これから先,保有資産や年金等のデータをもとに「子供が働かなくても一生食べていけるプラン」の作成を請け負う,FP(ファイナンシャルプランナー)への需要が高まることもあり得ますね。
それはさておき,このように先行きが懸念される人間は,統計でみてどれくらいいるのでしょう。ここにて私は,「未婚」「無業」「親同居」という3拍子がそろった中年層の数を明らかにしてみようと思います。簡単に表現すると,無職中年パラサイトシングルです。
2010年の総務省『国勢調査』によると,30~40代の中年層はおよそ3,490万人です。このうち,親同居の未婚者は575万人。これがいわゆるパラサイトシングルですが,このうち「非就業」というカテゴリーに収められているのは117万人となっています。
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/index.htm
2010年10月時点の無職中年パラサイトシングルは117万人。私が住んでいる多摩市の人口の約8倍です。結構な数になりますね。30~40代人口に対する相対量は3.3%であり,30人に1人というところです。
この117万人の性別内訳は,男性が71万人,女性が46万人です。私は女性が多くを占めるのではと思っていましたが,実態はその逆です。ベースあたりの出現率にすると男性は4.0%,女性は2.7%であり,差が出ています。
これは全国値ですが,「自分の県は?」という関心もあろうかと思います。30~40代の人口と無職パラサイトシングル数を都道府県別に収集し,割り算をして出現率を計算してみました。下表は,その一覧です。出現率の順位も添えています。
ほう。最高の青森と最低の滋賀では,出現率に倍近くの差が観察されます。青森では20人に1人ですが,滋賀では38人に1人です。2位は沖縄,3位は岩手,4位は奈良,5位は秋田・・・。地方県で率が高い傾向にありそうです。
表は資料としてみていただくこととして,表中の出現率を可視化してみましょう。0.5%の区分で各県を塗り分けた地図をつくってみました。
北東北,南近畿,および四国が濃い色で染まっています。一方,東京や神奈川のような大都市,そして愛知のような地方中枢県は白色です。地域における就業機会の多寡といった要因も関与していると思われます。
無職中年パラサイトシングル現象は,個々人の怠けだけに帰される単純な問題ではなく,社会的な側面も併せもっていることに注意したほうがよいでしょう。
ともあれ,今のわが国には,何から何まで親に依存している(せざるを得ない)中年層が100万人以上存在することを知りました。同世代の30人に1人,多い地域では20人に1人。むろん,この中には逆に親の面倒をみている者もいるでしょうが,未婚・親同居・無業の中年層がこれほどいるとは,私にとっては驚きでした。
ちなみに,2005年の『国勢調査』から分かる,無職中年パラサイトシングル数は100万人ほどです。2010年の数は117万人ですから,この5年間で1.17倍に増えたことになります。予想ですが,今後も増えていくのではないでしょうか。10年後,20年後はどういう事態になっていることか。ちょっと怖い思いがします。
問題への対処にあたっては,この現象が社会現象としての側面を持っていることにかんがみ,それをもたらす社会的条件を明らかにして,それを取っ払うことが肝要であると思います。地域別・属性別の計量分析は,そうしたアプローチをとるための礎石に位置づくものです。それを可能ならしめる,統計資料の整備がより進展することを願います。
http://www.news-postseven.com/archives/20130622_194810.html
いつまでも働こうとせず,親のスネをかじり続ける・・・。こういう子を持つ親御さんの関心事は,以前は「どうしたら仕事をさせられるか」でしたが,最近では「自分が死んだ後,ひとりになった子供はどうやって生きていくのか」ということに変わっているのだそうです。
なるほど。子が若いうちは「働け,働け」と尻を蹴っていたのでしょうが,30や40を過ぎた段階になると,「この子は一人になったら一体どうするのだろう」という悩みが頭をもたげてくるのは当然のことです。
これから先,保有資産や年金等のデータをもとに「子供が働かなくても一生食べていけるプラン」の作成を請け負う,FP(ファイナンシャルプランナー)への需要が高まることもあり得ますね。
それはさておき,このように先行きが懸念される人間は,統計でみてどれくらいいるのでしょう。ここにて私は,「未婚」「無業」「親同居」という3拍子がそろった中年層の数を明らかにしてみようと思います。簡単に表現すると,無職中年パラサイトシングルです。
2010年の総務省『国勢調査』によると,30~40代の中年層はおよそ3,490万人です。このうち,親同居の未婚者は575万人。これがいわゆるパラサイトシングルですが,このうち「非就業」というカテゴリーに収められているのは117万人となっています。
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/index.htm
2010年10月時点の無職中年パラサイトシングルは117万人。私が住んでいる多摩市の人口の約8倍です。結構な数になりますね。30~40代人口に対する相対量は3.3%であり,30人に1人というところです。
この117万人の性別内訳は,男性が71万人,女性が46万人です。私は女性が多くを占めるのではと思っていましたが,実態はその逆です。ベースあたりの出現率にすると男性は4.0%,女性は2.7%であり,差が出ています。
これは全国値ですが,「自分の県は?」という関心もあろうかと思います。30~40代の人口と無職パラサイトシングル数を都道府県別に収集し,割り算をして出現率を計算してみました。下表は,その一覧です。出現率の順位も添えています。
ほう。最高の青森と最低の滋賀では,出現率に倍近くの差が観察されます。青森では20人に1人ですが,滋賀では38人に1人です。2位は沖縄,3位は岩手,4位は奈良,5位は秋田・・・。地方県で率が高い傾向にありそうです。
表は資料としてみていただくこととして,表中の出現率を可視化してみましょう。0.5%の区分で各県を塗り分けた地図をつくってみました。
北東北,南近畿,および四国が濃い色で染まっています。一方,東京や神奈川のような大都市,そして愛知のような地方中枢県は白色です。地域における就業機会の多寡といった要因も関与していると思われます。
無職中年パラサイトシングル現象は,個々人の怠けだけに帰される単純な問題ではなく,社会的な側面も併せもっていることに注意したほうがよいでしょう。
ともあれ,今のわが国には,何から何まで親に依存している(せざるを得ない)中年層が100万人以上存在することを知りました。同世代の30人に1人,多い地域では20人に1人。むろん,この中には逆に親の面倒をみている者もいるでしょうが,未婚・親同居・無業の中年層がこれほどいるとは,私にとっては驚きでした。
ちなみに,2005年の『国勢調査』から分かる,無職中年パラサイトシングル数は100万人ほどです。2010年の数は117万人ですから,この5年間で1.17倍に増えたことになります。予想ですが,今後も増えていくのではないでしょうか。10年後,20年後はどういう事態になっていることか。ちょっと怖い思いがします。
問題への対処にあたっては,この現象が社会現象としての側面を持っていることにかんがみ,それをもたらす社会的条件を明らかにして,それを取っ払うことが肝要であると思います。地域別・属性別の計量分析は,そうしたアプローチをとるための礎石に位置づくものです。それを可能ならしめる,統計資料の整備がより進展することを願います。
2013年6月22日土曜日
自殺念慮者数の推計
ここ数年,統計に表れるわが国の年間自殺者数は3万人ほどですが,その下には,相当な数の「死にたい願望」を持った人間がいることと思います。
自殺率は代表的な社会病理指標ですが,「死にたい」と思っている(思ったことがある)人間の量にも注意する必要があるでしょう。今回は,それを推し量ってみようと思います。ネーミングですが,自殺志願(志望)者などというのは何ともヘンですので,念慮者という言葉を使うこととします。
内閣府の『2011年度・自殺対策に関する意識調査』によると,最近1年間に自殺を考えたことがある者の比率は,20歳以上の成人の5.3%だそうです。2012年の1月に実施された調査ですから,2011年中の自殺念慮経験者率とみてよいでしょう。
http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/survey/
総務省の『人口推計年報』から分かる,2011年10月時点の成人人口は約1億502万人。上の比率を乗じると,自殺念慮経験者数は557万人ほどと見積もられます。ほう。年間3万人の自殺者の下には,膨大な予備軍が潜んでいることが知られます。
上記資料に載っている自殺念慮率ですが,属性によって値は大きく変異します。性別・年齢層別の様相を視覚化してみましょう。横軸に自殺念慮率,縦軸に自殺率をとった座標上に各年齢層を位置づけ,線でつないだ図をつくってみました。
縦軸の自殺率は,2011年中の自殺者数を同年10月の人口で除したものです(自殺者数の出所は,厚労省『人口動態統計』)。自殺念慮率を,自殺の既遂率との関係において吟味できる仕掛けになっています。
よく知られているように,自殺率は女性よりも男性で高く,また概して高齢層ほど高いのですが,自殺念慮率のほうは違っています。高齢層よりも若年層で高く,それは女性で顕著です。20代の女性の場合,15.0%,すなわち7人に1人が自殺念慮を経験していることになります。
世間では自殺率ばかりに注目されますが,潜在量指標としての自殺念慮率に目をやると,違った側面がみえてきますね。
では,先ほどと同じやり方で,各グループの自殺念慮者数を割り出してみましょう。私が属する30代男性でいうと,2011年中の自殺念慮率は3.1%,同年10月時点の人口は903万人。ゆえに,自殺念慮者の実数は28万人ほどとなります。
上表は,他の属性グループも含めた一覧です。どうでしょう。20代の女性では,2011年中の自殺念慮経験者は100万人近くであり,『人口動態統計』に載っている自殺既遂者の993倍にもなります。
表面化した自殺に対し潜在予備軍がどれほど存在するかを示す「潜在倍率」でみると,若年層のヤバい状況が際立っています。もっとも,若者は軽々しく「死にたい」と口にするなど,回答上のバイアスがある可能性も考慮しないといけませんが。
さて,若い女性では,自殺既遂者(b)と念慮者(a)の数のギャップが著しく大きいことを知ったのですが,このことは,自殺に傾斜した人間を押しとどめるブレーキが有効に作用していることをも示唆しています。そのブレーキとは如何。最後に,この点をみてみましょう。
内閣府の上記調査では,自殺を考えたことがある者に対し,「自殺を考えたとき,どのように乗り越えたか」を尋ねています。回答を20代の男女で比べてみます。下図は,横軸に男性,縦軸に女性の選択率(複数選択可)をとった座標上に,6つの解決策をプロットしたものです。
青色のゾーンにあるのは,男性の選択率のほうが高い,いうなれば「男性的」な解決策ですが,「何もせず」,「趣味や仕事で気を紛らわせる」というものが位置しています。対して女性の戦略としては,専門家や周囲の人に相談する,休養をとる,というものが多いのです。
上表から分かるように,自殺に傾斜した者が既遂に至ってしまう確率は,男性よりも女性で低く抑えられています。このことは,一人で抱え込むことをせず,相談する,休むというような,無理を伴わない「外向的」な戦略が効をなすことを暗に示しているように思います。
自殺既遂者と念慮者の統計の対比から,こういうことを探り当てることができます。内閣府の『自殺対策に関する意識調査』は,サンプルをもっと増やしていただき,地域別や職業別等の分析も可能になればと思います。
自殺率は代表的な社会病理指標ですが,「死にたい」と思っている(思ったことがある)人間の量にも注意する必要があるでしょう。今回は,それを推し量ってみようと思います。ネーミングですが,自殺志願(志望)者などというのは何ともヘンですので,念慮者という言葉を使うこととします。
内閣府の『2011年度・自殺対策に関する意識調査』によると,最近1年間に自殺を考えたことがある者の比率は,20歳以上の成人の5.3%だそうです。2012年の1月に実施された調査ですから,2011年中の自殺念慮経験者率とみてよいでしょう。
http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/survey/
総務省の『人口推計年報』から分かる,2011年10月時点の成人人口は約1億502万人。上の比率を乗じると,自殺念慮経験者数は557万人ほどと見積もられます。ほう。年間3万人の自殺者の下には,膨大な予備軍が潜んでいることが知られます。
上記資料に載っている自殺念慮率ですが,属性によって値は大きく変異します。性別・年齢層別の様相を視覚化してみましょう。横軸に自殺念慮率,縦軸に自殺率をとった座標上に各年齢層を位置づけ,線でつないだ図をつくってみました。
縦軸の自殺率は,2011年中の自殺者数を同年10月の人口で除したものです(自殺者数の出所は,厚労省『人口動態統計』)。自殺念慮率を,自殺の既遂率との関係において吟味できる仕掛けになっています。
よく知られているように,自殺率は女性よりも男性で高く,また概して高齢層ほど高いのですが,自殺念慮率のほうは違っています。高齢層よりも若年層で高く,それは女性で顕著です。20代の女性の場合,15.0%,すなわち7人に1人が自殺念慮を経験していることになります。
世間では自殺率ばかりに注目されますが,潜在量指標としての自殺念慮率に目をやると,違った側面がみえてきますね。
では,先ほどと同じやり方で,各グループの自殺念慮者数を割り出してみましょう。私が属する30代男性でいうと,2011年中の自殺念慮率は3.1%,同年10月時点の人口は903万人。ゆえに,自殺念慮者の実数は28万人ほどとなります。
上表は,他の属性グループも含めた一覧です。どうでしょう。20代の女性では,2011年中の自殺念慮経験者は100万人近くであり,『人口動態統計』に載っている自殺既遂者の993倍にもなります。
表面化した自殺に対し潜在予備軍がどれほど存在するかを示す「潜在倍率」でみると,若年層のヤバい状況が際立っています。もっとも,若者は軽々しく「死にたい」と口にするなど,回答上のバイアスがある可能性も考慮しないといけませんが。
さて,若い女性では,自殺既遂者(b)と念慮者(a)の数のギャップが著しく大きいことを知ったのですが,このことは,自殺に傾斜した人間を押しとどめるブレーキが有効に作用していることをも示唆しています。そのブレーキとは如何。最後に,この点をみてみましょう。
内閣府の上記調査では,自殺を考えたことがある者に対し,「自殺を考えたとき,どのように乗り越えたか」を尋ねています。回答を20代の男女で比べてみます。下図は,横軸に男性,縦軸に女性の選択率(複数選択可)をとった座標上に,6つの解決策をプロットしたものです。
青色のゾーンにあるのは,男性の選択率のほうが高い,いうなれば「男性的」な解決策ですが,「何もせず」,「趣味や仕事で気を紛らわせる」というものが位置しています。対して女性の戦略としては,専門家や周囲の人に相談する,休養をとる,というものが多いのです。
上表から分かるように,自殺に傾斜した者が既遂に至ってしまう確率は,男性よりも女性で低く抑えられています。このことは,一人で抱え込むことをせず,相談する,休むというような,無理を伴わない「外向的」な戦略が効をなすことを暗に示しているように思います。
自殺既遂者と念慮者の統計の対比から,こういうことを探り当てることができます。内閣府の『自殺対策に関する意識調査』は,サンプルをもっと増やしていただき,地域別や職業別等の分析も可能になればと思います。
2013年6月20日木曜日
共働きか否かによる家事・育児時間の変化
博報堂こそだて家族研究所が「こそだて家族とパパ」という調査レポートを公表しています。キー・ファインディングは,「ママがフルタイムで働いていると,パパのイクメン度もアップ」ということです。
http://www.hakuhodo.co.jp/archives/newsrelease/10914
妻がフルタイム就業の家庭では,夫の家事・育児時間が全体でみた場合よりも長くなるとのこと。その差は1.5倍だそうです。まあ,常識的に考えて首肯できるところですが,1.5倍も違うとは・・・。わが国の男性の家事・育児時間が短いことはよく知られていますが,条件によって値は大きく変異するものですね。
本調査は,10歳未満の子がいる20~40代の既婚女性1,200名余りを対象としたネット調査だそうですが,官庁統計からも同種のデータをつくることができます。今回は,その結果をご報告します。
用いるのは,2011年の総務省『社会生活基本調査』の結果です。この資料から,対象者のライフステージ別に,1日あたりの家事・育児時間の平均値を知ることができます。前々回の記事の県別分析ではこの統計を使ったわけですが,地域別にバラす前の全国統計の場合,共働きか否かの別もみることができます。
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2011/index.htm
私は,就学前の幼子がいる夫婦の家事・育児時間が,共働きか否かによってどう変異するかを観察することとしました。具体的な関心事は,妻が正規就業者であるか無業者(専業主婦)であるかによって,正規就業の夫の家事・育児時間がどう変わるかです。
原資料によると,幼子がいる正規就業の夫は535万人ほどと見積もられます。このうち,妻も正規就業という者は78万人(14.6%),妻は無業(専業主婦)という者は243万人(45.4%)なり。量的には,やはり専業主婦世帯がマジョリティーのようですね。
では,共働き家庭か専業主家庭であるかによって,夫婦の家事・育児時間がどれほど異なるかをみてみましょう。ここで提示するのは,「週全体」でみた1日あたりの平均時間です。平日と土日をひっくるめた値ということになります。
なお,対象者全体でみた総平均時間に加えて,行動実施者のみの実施者平均時間も拾ってみました。参考情報として,実施者が全体のどれほどかを示す実施者率も添えてあります。
表がやや見づらいですが,正規就業の夫の家事・育児時間は,共働き世帯のほうが長くなっています。最下段の合算値でみると,総平均では1.7倍(76/45≒1.7),実施者平均では1.2倍ほどの差が観察されます。前者の総平均の差は,冒頭で引いた博報堂調査でいわれている差(1.5倍)とほぼ同じですね。
妻のほうはというと,こちらは共働き家庭で短く,専業主婦家庭で長くなっています。総平均でみると,1日あたりの家事・育児平均時間は,共働き家庭の妻は315分ですが,専業主婦家庭の妻では479分にもなります。その差は164分,2時間44分にも及びます。
様相を可視化してみましょう。下図は,上表の最下段の数値をグラフ化したものです。総平均と実施者平均とで分けています。
夫婦とも正規就業の共働き家庭になると,ジェンダー差が縮まる様がみてとれます。また,博報堂調査にある「ママがフルタイムで働いていると,パパのイクメン度もアップ」という傾向も可視化されていますね。
「イクメン」という語が創出され,男性の家事・育児参加が推奨されているのは,女性だけに押しつけられるのは不公平だ,そのことが女性の社会進出の足かせになっている,という問題意識からでしょう。
しかるに,男性の側にしても,仕事一辺倒の偏った生活構造を是正する上において,重要なことであると思います。「生活者」としての自己を取り戻すことです。
この点は女性についても言い得ることです。一方の親(多くは母親)が一人こもって育児をしている県ほど,虐待の発生頻度が高い,という統計的事実を思い出しておきましょう。
http://tmaita77.blogspot.jp/2012/08/blog-post_28.html
以前は,「子が小さいのに母親が働きに出るなんて・・・」と蔑まれたものですが,統計分析をしてみると,共働きのマイナスの効果はあまりみられず,むしろその反対の面が明らかになることがしばしばです。
上でみたように,量的にみると共働き家庭はまだ少なく,専業主婦家庭のほうがマジョリティーです。しかし,このタイプの家庭の中に,夫婦の協働の様をみてとることができます。今後,意図的な働きかけによって,この部分の拡張を図っていくべきでしょう。保育所増設などは,その一端に位置します。そうした取組の総体が,男女共同参画社会の実現へとつながることでしょう。
http://www.hakuhodo.co.jp/archives/newsrelease/10914
妻がフルタイム就業の家庭では,夫の家事・育児時間が全体でみた場合よりも長くなるとのこと。その差は1.5倍だそうです。まあ,常識的に考えて首肯できるところですが,1.5倍も違うとは・・・。わが国の男性の家事・育児時間が短いことはよく知られていますが,条件によって値は大きく変異するものですね。
本調査は,10歳未満の子がいる20~40代の既婚女性1,200名余りを対象としたネット調査だそうですが,官庁統計からも同種のデータをつくることができます。今回は,その結果をご報告します。
用いるのは,2011年の総務省『社会生活基本調査』の結果です。この資料から,対象者のライフステージ別に,1日あたりの家事・育児時間の平均値を知ることができます。前々回の記事の県別分析ではこの統計を使ったわけですが,地域別にバラす前の全国統計の場合,共働きか否かの別もみることができます。
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2011/index.htm
私は,就学前の幼子がいる夫婦の家事・育児時間が,共働きか否かによってどう変異するかを観察することとしました。具体的な関心事は,妻が正規就業者であるか無業者(専業主婦)であるかによって,正規就業の夫の家事・育児時間がどう変わるかです。
原資料によると,幼子がいる正規就業の夫は535万人ほどと見積もられます。このうち,妻も正規就業という者は78万人(14.6%),妻は無業(専業主婦)という者は243万人(45.4%)なり。量的には,やはり専業主婦世帯がマジョリティーのようですね。
では,共働き家庭か専業主家庭であるかによって,夫婦の家事・育児時間がどれほど異なるかをみてみましょう。ここで提示するのは,「週全体」でみた1日あたりの平均時間です。平日と土日をひっくるめた値ということになります。
なお,対象者全体でみた総平均時間に加えて,行動実施者のみの実施者平均時間も拾ってみました。参考情報として,実施者が全体のどれほどかを示す実施者率も添えてあります。
表がやや見づらいですが,正規就業の夫の家事・育児時間は,共働き世帯のほうが長くなっています。最下段の合算値でみると,総平均では1.7倍(76/45≒1.7),実施者平均では1.2倍ほどの差が観察されます。前者の総平均の差は,冒頭で引いた博報堂調査でいわれている差(1.5倍)とほぼ同じですね。
妻のほうはというと,こちらは共働き家庭で短く,専業主婦家庭で長くなっています。総平均でみると,1日あたりの家事・育児平均時間は,共働き家庭の妻は315分ですが,専業主婦家庭の妻では479分にもなります。その差は164分,2時間44分にも及びます。
様相を可視化してみましょう。下図は,上表の最下段の数値をグラフ化したものです。総平均と実施者平均とで分けています。
夫婦とも正規就業の共働き家庭になると,ジェンダー差が縮まる様がみてとれます。また,博報堂調査にある「ママがフルタイムで働いていると,パパのイクメン度もアップ」という傾向も可視化されていますね。
「イクメン」という語が創出され,男性の家事・育児参加が推奨されているのは,女性だけに押しつけられるのは不公平だ,そのことが女性の社会進出の足かせになっている,という問題意識からでしょう。
しかるに,男性の側にしても,仕事一辺倒の偏った生活構造を是正する上において,重要なことであると思います。「生活者」としての自己を取り戻すことです。
この点は女性についても言い得ることです。一方の親(多くは母親)が一人こもって育児をしている県ほど,虐待の発生頻度が高い,という統計的事実を思い出しておきましょう。
http://tmaita77.blogspot.jp/2012/08/blog-post_28.html
以前は,「子が小さいのに母親が働きに出るなんて・・・」と蔑まれたものですが,統計分析をしてみると,共働きのマイナスの効果はあまりみられず,むしろその反対の面が明らかになることがしばしばです。
上でみたように,量的にみると共働き家庭はまだ少なく,専業主婦家庭のほうがマジョリティーです。しかし,このタイプの家庭の中に,夫婦の協働の様をみてとることができます。今後,意図的な働きかけによって,この部分の拡張を図っていくべきでしょう。保育所増設などは,その一端に位置します。そうした取組の総体が,男女共同参画社会の実現へとつながることでしょう。
2013年6月18日火曜日
産業別の正規就業者の就業時間
某報道機関の記者さんとコラボして,現代の雇用の歪みを可視化する作業をしています。これまでは,ワーキングプアや非正規というような,給与や雇用形態の面に焦点を当ててきましたが,今回は,労働時間に注目してみようと思います。
ここでみるのは,短時間雇用が多い非正規を除いた,正規就業者の週間就業時間分布です。
総務省『就業構造基本調査』から,規則的就業をしている正規就業者の週間就業時間分布を知ることができます。ここでいう「週間就業時間」とは,「就業規則などで定められている時間ではなく,ふだんの1週間の実労働時間」とされています。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2007/index.htm
最新の2007年調査のデータをもとに,15歳以上の正規就業者の週間就業時間分布を明らかにしてみましょう。参考までに,一般飲食業の分布もお見せします。外食チェーン等ですが,こちらはおそらく,長時間労働が多いのではないかと思われます。
全産業の3,354万人の分布をみると,35~42時間という者が最も多くなっています。ちょうど真ん中です。週5日勤務とすると,1日あたり7~8時間であり,おおむね法定労働時間とマッチしていますね。
しかし一般飲食業では,分布の山がマックスの65時間以上の階級にあります。65時間といったら,1日13時間ほど働いていることになります。完全な過労状態です。この業界の正社員では,こういう人間がマジョリティーであることに驚かされます。25%,4人に1人です。
上表の就業時間分布を,簡易な代表値で要約してみます。まずは平均値(average)です。カッコ内の階級値を使うと,全産業の正規就業者の週間平均就業時間は,次のようにして算出されます。
[(12.5時間×0.8人)+(17.5時間×0.4人)+・・・(70.0時間×7.2人)]/100.0人 ≒ 47.5時間
法定の週間労働時間(40時間)を上回っていますが,これは置くとして,一般飲食業の平均値を出すと54.0時間にもなります。1日10時間超・・・。平均でみてコレです。巷でいわれる長時間労働常態化の様が可視化されています。
これは全体を均した値ですが,あと一つの測度を計算してみましょう。週60時間以上就業者の比率です。1日12時間以上働いている長時間就業者率ですが,上表から分かるように,全産業では15.2%,一般飲食業では41.2%となります。
週間平均就業時間と長時間就業者率。この2指標をもとに2次元のマトリクスを構成し,98の産業の正規就業者を位置づけてみました。下図がそれです。点線は,全産業の値を意味します。
右上にあるのは長時間労働が常態化している業種ですが,先ほどみた一般飲食のほか,漁業,運送業,商品先物取引業などが位置しています。分かるような気がする・・・。ネットで頼んだ商品がその日のうちに届く「Todayサービス」なんかは,こういう長時間労働に支えられてのものなのだろうなあ。それなら,2~3日かかってもいいのに(外国では当たり前)。
対極の左下にあるのは労働時間が短い業種ですが,公務員は分かるとして,介護や児童福祉(保育士等)がこのゾーンに位置するのはちと意外です。当直等,勤務時間管理がきちんとなされているためでしょうか。教員等の学校教育は,平均水準よりも少しばかり上というところです。
以上は週間就業時間に着目した分析ですが,『就業構造基本調査』では年間就業日数も調査されており,週間就業時間と絡めたクロス表が掲載されています。私は,98の産業の正規就業者について,「年間300日以上就業&週60日以上就業」という者の比率を出してみました。
単純にみて,12時間労働を月に25日こなしている者の比率です。まさにスーパー過重労働率とでもいい得るものです。
98産業の平均値は3.6%でした。28人に1人。かなりの少数派です(そうでなくちゃ困る!)。しかし産業別にみると,この恐ろしい指標の値が1割,2割を超える業種もあります。
1割を超えるのは6業種です。高い順に示すと,①宗教(20.6%),②一般飲食(19.0%),③遊興飲食(18.4%),④漁業(17.7%),⑤農業(12.8%),⑥飲食料品小売業(11.3%),であります。ひたすらな帰依を求められる宗教,自然を相手にする農業や漁業では,こういう超長時間労働が少なくないのですね。飲食業がランクインしているのは,イメージ通りです。
以上,『就業構造基本調査』の統計を加工して,現代の正社員の労働時間を明らかにしてみました。まあ,週休2日制の普及等により,わが国の労働時間は,総体として昔よりも短くなっていることでしょう。
ですが,年齢層ごとにみるとどうでしょうか,とくに若年層は,今の大変な不況のなか,正社員の地位を剥奪されたくないという強迫観念から,違法な長時間労働を粛々と受け入れている向きもあります。2月22日の記事でみたように,そういうように仕向けられる側面もあり。
年齢層別の分析を今後の課題としたいと思います。
ここでみるのは,短時間雇用が多い非正規を除いた,正規就業者の週間就業時間分布です。
総務省『就業構造基本調査』から,規則的就業をしている正規就業者の週間就業時間分布を知ることができます。ここでいう「週間就業時間」とは,「就業規則などで定められている時間ではなく,ふだんの1週間の実労働時間」とされています。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2007/index.htm
最新の2007年調査のデータをもとに,15歳以上の正規就業者の週間就業時間分布を明らかにしてみましょう。参考までに,一般飲食業の分布もお見せします。外食チェーン等ですが,こちらはおそらく,長時間労働が多いのではないかと思われます。
全産業の3,354万人の分布をみると,35~42時間という者が最も多くなっています。ちょうど真ん中です。週5日勤務とすると,1日あたり7~8時間であり,おおむね法定労働時間とマッチしていますね。
しかし一般飲食業では,分布の山がマックスの65時間以上の階級にあります。65時間といったら,1日13時間ほど働いていることになります。完全な過労状態です。この業界の正社員では,こういう人間がマジョリティーであることに驚かされます。25%,4人に1人です。
上表の就業時間分布を,簡易な代表値で要約してみます。まずは平均値(average)です。カッコ内の階級値を使うと,全産業の正規就業者の週間平均就業時間は,次のようにして算出されます。
[(12.5時間×0.8人)+(17.5時間×0.4人)+・・・(70.0時間×7.2人)]/100.0人 ≒ 47.5時間
法定の週間労働時間(40時間)を上回っていますが,これは置くとして,一般飲食業の平均値を出すと54.0時間にもなります。1日10時間超・・・。平均でみてコレです。巷でいわれる長時間労働常態化の様が可視化されています。
これは全体を均した値ですが,あと一つの測度を計算してみましょう。週60時間以上就業者の比率です。1日12時間以上働いている長時間就業者率ですが,上表から分かるように,全産業では15.2%,一般飲食業では41.2%となります。
週間平均就業時間と長時間就業者率。この2指標をもとに2次元のマトリクスを構成し,98の産業の正規就業者を位置づけてみました。下図がそれです。点線は,全産業の値を意味します。
右上にあるのは長時間労働が常態化している業種ですが,先ほどみた一般飲食のほか,漁業,運送業,商品先物取引業などが位置しています。分かるような気がする・・・。ネットで頼んだ商品がその日のうちに届く「Todayサービス」なんかは,こういう長時間労働に支えられてのものなのだろうなあ。それなら,2~3日かかってもいいのに(外国では当たり前)。
対極の左下にあるのは労働時間が短い業種ですが,公務員は分かるとして,介護や児童福祉(保育士等)がこのゾーンに位置するのはちと意外です。当直等,勤務時間管理がきちんとなされているためでしょうか。教員等の学校教育は,平均水準よりも少しばかり上というところです。
以上は週間就業時間に着目した分析ですが,『就業構造基本調査』では年間就業日数も調査されており,週間就業時間と絡めたクロス表が掲載されています。私は,98の産業の正規就業者について,「年間300日以上就業&週60日以上就業」という者の比率を出してみました。
単純にみて,12時間労働を月に25日こなしている者の比率です。まさにスーパー過重労働率とでもいい得るものです。
98産業の平均値は3.6%でした。28人に1人。かなりの少数派です(そうでなくちゃ困る!)。しかし産業別にみると,この恐ろしい指標の値が1割,2割を超える業種もあります。
1割を超えるのは6業種です。高い順に示すと,①宗教(20.6%),②一般飲食(19.0%),③遊興飲食(18.4%),④漁業(17.7%),⑤農業(12.8%),⑥飲食料品小売業(11.3%),であります。ひたすらな帰依を求められる宗教,自然を相手にする農業や漁業では,こういう超長時間労働が少なくないのですね。飲食業がランクインしているのは,イメージ通りです。
以上,『就業構造基本調査』の統計を加工して,現代の正社員の労働時間を明らかにしてみました。まあ,週休2日制の普及等により,わが国の労働時間は,総体として昔よりも短くなっていることでしょう。
ですが,年齢層ごとにみるとどうでしょうか,とくに若年層は,今の大変な不況のなか,正社員の地位を剥奪されたくないという強迫観念から,違法な長時間労働を粛々と受け入れている向きもあります。2月22日の記事でみたように,そういうように仕向けられる側面もあり。
年齢層別の分析を今後の課題としたいと思います。
2013年6月17日月曜日
幼子がいる男性の家事・育児時間の都道府県比較
6月12日の日経新聞Web版に,「家庭科で保育や介護 男性も家事当たり前に」と題する記事が載っています。私の頃は,男子は技術,女子は家庭というようにパッカリ別れていましたが,現在では,中高の家庭科は男女共修になっています。
http://www.nikkei.com/article/DGXBZO56074270R10C13A6WZ8000/
最近では,「調理や裁縫など家事だけでなく,保育や介護など」も内容に盛り込まれているとのこと。「より実践的な授業内容にすることで,家事分担などができる男子を育て,少子化対策などに役立てる狙い」があるそうです。
何とも結構なことだと思います,男女共同参画社会の実現にも大きく寄与することでしょう。男性の側にしても,仕事一色の生活が是正され,生活構造の均衡がとれることにもつながります。
しかし現実問題として,わが国の男性の家事・育児時間が極端に短いことはよく知られています。この点についてはメディア等で頻繁に報道されていますが,都道府県別にみるとどうでしょう。今回は,細かい県別のデータを提示することにより,関係者の方々の参考に供しようと思います。
総務省『社会生活基本調査』から,1日の主要な生活行動の平均時間を,対象者のライフステージ別に知ることができます。私は,子育て期にある男性のうち,末子が「就学前」という者に注目することとしました。小学校に上がる前の幼子がいる男性です。*一人親は除きます。
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2011/index.htm
最新の2011年調査の結果によると,幼子がいる男性の1日の平均家事時間は11分,平均育児時間は37分となっています。足して48分。・・・平日や休日をひっくるめた「週全体」の数値ですが,短いですねえ。対して,同じく幼子がいる女性のほうは407分,男性の8.5倍です。
男性の家事・育児時間は短く,多くが女性に担われている(押し付けられている)ようです。これは全国のデータですが,今回の主眼は,様相を地域別に観察することです。
下表は,幼子がいる男女の家事・育児時間の平均一覧表です(1日あたり)。男性については,47都道府県中の順位も記しました。また,男性の平均時間が女性のどれほどに相当するかという,相対倍率も計算してみました。
黄色は最高値,青色は最低値です。男性の1日あたりの家事・育児時間は,埼玉の71分から福島の30分まで,倍以上の開きがあります。2011年の統計ですので,福島については,震災の影響があるのかもしれません。
数値を赤色にしているのは上位5位ですが,東北の県が多いですね。一方,近畿圏の箇所をみると,30分台の数値が目につきます。
幼子がいる男性の家事・育児時間を地図化してみましょう。10分刻みで各県を塗り分けた地図をつくってみました。色が濃いほど,平均時間が長いことを示唆します。流行りの言葉でいうと,イクメン県です。
男性の1日あたり平均時間が1時間を超える「イクメン県」は,岩手,宮城,秋田,山形,埼玉,島根,広島,徳島,そして大分です。地方で長く都市で短い,というような単純な構造ではありませんが,イクメン県は東北や中国・四国に多いようです。
ただ,近畿圏が薄い色に染まっているのが気がかりです。上の表からも分かるように,近畿の府県では,「男性/女性」の相対倍率も低くなっています。和歌山でいうと,男性31分,女性386分であり,前者は後者の8%ほどでしかありません。
この相対倍率も加味して,各県の性格づけをしてみましょう。横軸に「男性/女性」の倍率,縦軸に男性の平均家事・育児時間をとったマトリクス上に,47都道府県をプロットしてみました。絶対水準と相対水準(対女性)の2軸において,各県の状況を評価しようという仕掛けです。点線は,全国値を意味します。
右上に位置するのはイクメン県であり,左下の暗雲立ち込めるゾーンにあるのは,それとは隔たった県です。平均時間が最も長いのは埼玉ですが,対女性の相対水準も勘案すると,イクメン県No1は島根でしょうか。
図の右上にある県でどういうことがなされているかをみると,埼玉県では,育児初心者の父親向けの育児ヒント集「イクメンの素」を配布している模様です。図版が多く,なかなか分かりやすい。
http://www.pref.saitama.lg.jp/site/ikumen/
島根県では「子育てしやすい職場づくり推進計画」が策定されており,「男性の育児休業等の取得促進」,「男女共同参画の推進」というような事項が盛られています。2014年度の数値目標として「男性の育児休業等取得率50%」というものもあり。スゴイですね。
http://www.pref.shimane.lg.jp/kyoikuiinkai/iinkai/syokuba/keikaku.html
こういう実践の所産であるといえましょう。ただ島根の場合,三世代家族が多く,親(子からすれば祖父母)から,家事や育児の手ほどきを受けやすい,という条件があるのかもしれません。こういう社会経済特性にも目を向ける必要かあるかと思います。
実践を行うにあたっては,自らの立ち位置を絶えず点検することが大切であると考えます。目下重視されている,男性の家事・育児参画の推進施策を実施するに際して,今回のデータが,各県の関係者諸氏の参考に与するところがあれば幸いです。
http://www.nikkei.com/article/DGXBZO56074270R10C13A6WZ8000/
最近では,「調理や裁縫など家事だけでなく,保育や介護など」も内容に盛り込まれているとのこと。「より実践的な授業内容にすることで,家事分担などができる男子を育て,少子化対策などに役立てる狙い」があるそうです。
何とも結構なことだと思います,男女共同参画社会の実現にも大きく寄与することでしょう。男性の側にしても,仕事一色の生活が是正され,生活構造の均衡がとれることにもつながります。
しかし現実問題として,わが国の男性の家事・育児時間が極端に短いことはよく知られています。この点についてはメディア等で頻繁に報道されていますが,都道府県別にみるとどうでしょう。今回は,細かい県別のデータを提示することにより,関係者の方々の参考に供しようと思います。
総務省『社会生活基本調査』から,1日の主要な生活行動の平均時間を,対象者のライフステージ別に知ることができます。私は,子育て期にある男性のうち,末子が「就学前」という者に注目することとしました。小学校に上がる前の幼子がいる男性です。*一人親は除きます。
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2011/index.htm
最新の2011年調査の結果によると,幼子がいる男性の1日の平均家事時間は11分,平均育児時間は37分となっています。足して48分。・・・平日や休日をひっくるめた「週全体」の数値ですが,短いですねえ。対して,同じく幼子がいる女性のほうは407分,男性の8.5倍です。
男性の家事・育児時間は短く,多くが女性に担われている(押し付けられている)ようです。これは全国のデータですが,今回の主眼は,様相を地域別に観察することです。
下表は,幼子がいる男女の家事・育児時間の平均一覧表です(1日あたり)。男性については,47都道府県中の順位も記しました。また,男性の平均時間が女性のどれほどに相当するかという,相対倍率も計算してみました。
黄色は最高値,青色は最低値です。男性の1日あたりの家事・育児時間は,埼玉の71分から福島の30分まで,倍以上の開きがあります。2011年の統計ですので,福島については,震災の影響があるのかもしれません。
数値を赤色にしているのは上位5位ですが,東北の県が多いですね。一方,近畿圏の箇所をみると,30分台の数値が目につきます。
幼子がいる男性の家事・育児時間を地図化してみましょう。10分刻みで各県を塗り分けた地図をつくってみました。色が濃いほど,平均時間が長いことを示唆します。流行りの言葉でいうと,イクメン県です。
男性の1日あたり平均時間が1時間を超える「イクメン県」は,岩手,宮城,秋田,山形,埼玉,島根,広島,徳島,そして大分です。地方で長く都市で短い,というような単純な構造ではありませんが,イクメン県は東北や中国・四国に多いようです。
ただ,近畿圏が薄い色に染まっているのが気がかりです。上の表からも分かるように,近畿の府県では,「男性/女性」の相対倍率も低くなっています。和歌山でいうと,男性31分,女性386分であり,前者は後者の8%ほどでしかありません。
この相対倍率も加味して,各県の性格づけをしてみましょう。横軸に「男性/女性」の倍率,縦軸に男性の平均家事・育児時間をとったマトリクス上に,47都道府県をプロットしてみました。絶対水準と相対水準(対女性)の2軸において,各県の状況を評価しようという仕掛けです。点線は,全国値を意味します。
右上に位置するのはイクメン県であり,左下の暗雲立ち込めるゾーンにあるのは,それとは隔たった県です。平均時間が最も長いのは埼玉ですが,対女性の相対水準も勘案すると,イクメン県No1は島根でしょうか。
図の右上にある県でどういうことがなされているかをみると,埼玉県では,育児初心者の父親向けの育児ヒント集「イクメンの素」を配布している模様です。図版が多く,なかなか分かりやすい。
http://www.pref.saitama.lg.jp/site/ikumen/
島根県では「子育てしやすい職場づくり推進計画」が策定されており,「男性の育児休業等の取得促進」,「男女共同参画の推進」というような事項が盛られています。2014年度の数値目標として「男性の育児休業等取得率50%」というものもあり。スゴイですね。
http://www.pref.shimane.lg.jp/kyoikuiinkai/iinkai/syokuba/keikaku.html
こういう実践の所産であるといえましょう。ただ島根の場合,三世代家族が多く,親(子からすれば祖父母)から,家事や育児の手ほどきを受けやすい,という条件があるのかもしれません。こういう社会経済特性にも目を向ける必要かあるかと思います。
実践を行うにあたっては,自らの立ち位置を絶えず点検することが大切であると考えます。目下重視されている,男性の家事・育児参画の推進施策を実施するに際して,今回のデータが,各県の関係者諸氏の参考に与するところがあれば幸いです。
2013年6月16日日曜日
従属人口係数の国際比較
『就業構造基本調査』の分析記事ばかり続きましたので,話題を変えましょう。今回は,人口統計のお話です。
人口は,年齢に注目すると①年少人口(15歳未満),②生産人口(15~64歳),および③老年人口(65歳以上)に区分されます。①と③は,「支えられる」存在としての従属人口と括られることが一般的です。
今の日本社会では,この3者の構成はどうなっているのでしょう。わが国の特徴を見出すため,アフリカのエチオピアと比べてみます。ソースは,総務省統計局『世界の統計2013』です。日本は2011年,エチオピアは2008年のデータです。
http://www.stat.go.jp/data/sekai/index.htm
両国とも,「支える」存在である生産人口が最多であるのは同じです。生産人口1人が支える従属人口の量をみると,日本は0.571人,エチオピアは0.837人なり。これがいわゆる従属人口係数ですが,エチオピアのほうが高いのですね。
しかし,従属人口の中身が違っていて,エチオピアは大半が子どもですが,わが国では,子どもよりも高齢者のほうが多くなっています。従属人口を高齢者に限定した老年従属係数を出すと,日本は0.366,エチオピアは0.051であり,わが国のほうがはるかに高いのです。
エチオピアは,老年人口1人を生産人口19人で支える社会ですが,日本では,老人1人を約3人で支えています。座布団に座っている1人のお婆ちゃんを,働き盛りの3人の男が下支えしているポスターをよく見かけますよね。
日本では老年従属係数が高いことが分かりましたが,世界全体を見渡した場合,どの辺りに位置づくのでしょうか。比較の対象を広げてみましょう。私は,上記資料から54か国の年齢別人口統計を採集し,各国の年少従属係数と老年従属係数を計算しました。
下の図は,横軸に年少従属係数,縦軸に老年従属係数をとった座標上に,54の社会をプロットしたものです。前後しますが,各国の人口統計はおおむね2010年近辺のものであることを申し添えます。
ほう。日本の老年従属係数(0.366)は,54か国で最も高いようですね。一方,少子化により年少従属係数はきわめて低いので,図の左上に位置する形になっています。対極の右下には,子どもが多く老人が少ない,アフリカの諸国がプロットされています。
斜線の上にあるのは,従属人口の中身でみて,子どもよりも老人のほうが多い社会です。日本のほか,ドイツ,イタリア,ギリシャといった国々がこのゾーンに位置しています。英仏は,あとちょっとというところです。
日本は,生産人口が支える高齢者の量が最も多い社会であることが分かりましたが,あと一つ指摘しておくべき点があります。それは変化の速さです。下図は,1950年からの主要国の位置変化を図示したものです。矢印のしっぽは1950年,先端は2010年近辺の位置を表します。
1950年の国別の従属人口係数は,国連の人口推計サイトのデータをもとに計算しました。
http://esa.un.org/unpd/wpp/unpp/panel_indicators.htm
少子高齢化により,どの社会も左上に動いていますが,日本は,この半世紀にかけて欧米諸国をゴボウ抜きしています。こうした変化の速さ(激変)はわが国の特徴ですが,そのことが,老後における社会保障の不備をもたらしている面があるといえるでしょう。
これから先どうなるかというと,2050年には生産人口5,001万人,老年人口3,768万人という社会になることが見込まれます(国立社会保障・人口問題研究所『日本の将来推計人口』)。この時点の老年従属係数は0.753であり,1人の老人を1.3人で支えることになります。
それから半世紀後の2100年の予測事態は,生産人口2,473万人,老年人口2,039万人。老年従属係数は0.825!こうなると,「支える」「支えられる」というような役割関係も何もなくなるかもしれません。
加齢により体力が衰える,動作の機敏性がなくなっていく・・・。こうしたことは生理的な変化ですが,「支えられる存在」という役割付与は,あくまで社会的なものです。これを変えていく余地は多分にあるでしょう。どこかの役場のポスターに,こんなことが書いていました。「支えられる高齢者から,支える高齢者へ!」。
かといって私は,高齢者を無理に働かせろとか,シルバーパスを軒並み取り上げろなどと主張するのではありません。高齢者の社会参画の取組を推進する必要がある,ということを申したいのです。男女共同参画社会ならぬ,老若男女共同参画社会の実現が求められるといえましょう。
このことは,生産至上主義,スピード至上主義の社会が,ゆるい社会へと変貌を遂げるための条件といえるかもしれません。週5日労働が週4日,週3日・・・。ちょっといいかも。生活の利便性は落ちるかもしれませんが,悪いことばかりではありますまい。
この点については,2月14日の記事でも述べました。よろしかったら,こちらもご覧ください。
人口は,年齢に注目すると①年少人口(15歳未満),②生産人口(15~64歳),および③老年人口(65歳以上)に区分されます。①と③は,「支えられる」存在としての従属人口と括られることが一般的です。
今の日本社会では,この3者の構成はどうなっているのでしょう。わが国の特徴を見出すため,アフリカのエチオピアと比べてみます。ソースは,総務省統計局『世界の統計2013』です。日本は2011年,エチオピアは2008年のデータです。
http://www.stat.go.jp/data/sekai/index.htm
両国とも,「支える」存在である生産人口が最多であるのは同じです。生産人口1人が支える従属人口の量をみると,日本は0.571人,エチオピアは0.837人なり。これがいわゆる従属人口係数ですが,エチオピアのほうが高いのですね。
しかし,従属人口の中身が違っていて,エチオピアは大半が子どもですが,わが国では,子どもよりも高齢者のほうが多くなっています。従属人口を高齢者に限定した老年従属係数を出すと,日本は0.366,エチオピアは0.051であり,わが国のほうがはるかに高いのです。
エチオピアは,老年人口1人を生産人口19人で支える社会ですが,日本では,老人1人を約3人で支えています。座布団に座っている1人のお婆ちゃんを,働き盛りの3人の男が下支えしているポスターをよく見かけますよね。
日本では老年従属係数が高いことが分かりましたが,世界全体を見渡した場合,どの辺りに位置づくのでしょうか。比較の対象を広げてみましょう。私は,上記資料から54か国の年齢別人口統計を採集し,各国の年少従属係数と老年従属係数を計算しました。
下の図は,横軸に年少従属係数,縦軸に老年従属係数をとった座標上に,54の社会をプロットしたものです。前後しますが,各国の人口統計はおおむね2010年近辺のものであることを申し添えます。
ほう。日本の老年従属係数(0.366)は,54か国で最も高いようですね。一方,少子化により年少従属係数はきわめて低いので,図の左上に位置する形になっています。対極の右下には,子どもが多く老人が少ない,アフリカの諸国がプロットされています。
斜線の上にあるのは,従属人口の中身でみて,子どもよりも老人のほうが多い社会です。日本のほか,ドイツ,イタリア,ギリシャといった国々がこのゾーンに位置しています。英仏は,あとちょっとというところです。
日本は,生産人口が支える高齢者の量が最も多い社会であることが分かりましたが,あと一つ指摘しておくべき点があります。それは変化の速さです。下図は,1950年からの主要国の位置変化を図示したものです。矢印のしっぽは1950年,先端は2010年近辺の位置を表します。
1950年の国別の従属人口係数は,国連の人口推計サイトのデータをもとに計算しました。
http://esa.un.org/unpd/wpp/unpp/panel_indicators.htm
少子高齢化により,どの社会も左上に動いていますが,日本は,この半世紀にかけて欧米諸国をゴボウ抜きしています。こうした変化の速さ(激変)はわが国の特徴ですが,そのことが,老後における社会保障の不備をもたらしている面があるといえるでしょう。
これから先どうなるかというと,2050年には生産人口5,001万人,老年人口3,768万人という社会になることが見込まれます(国立社会保障・人口問題研究所『日本の将来推計人口』)。この時点の老年従属係数は0.753であり,1人の老人を1.3人で支えることになります。
それから半世紀後の2100年の予測事態は,生産人口2,473万人,老年人口2,039万人。老年従属係数は0.825!こうなると,「支える」「支えられる」というような役割関係も何もなくなるかもしれません。
加齢により体力が衰える,動作の機敏性がなくなっていく・・・。こうしたことは生理的な変化ですが,「支えられる存在」という役割付与は,あくまで社会的なものです。これを変えていく余地は多分にあるでしょう。どこかの役場のポスターに,こんなことが書いていました。「支えられる高齢者から,支える高齢者へ!」。
かといって私は,高齢者を無理に働かせろとか,シルバーパスを軒並み取り上げろなどと主張するのではありません。高齢者の社会参画の取組を推進する必要がある,ということを申したいのです。男女共同参画社会ならぬ,老若男女共同参画社会の実現が求められるといえましょう。
このことは,生産至上主義,スピード至上主義の社会が,ゆるい社会へと変貌を遂げるための条件といえるかもしれません。週5日労働が週4日,週3日・・・。ちょっといいかも。生活の利便性は落ちるかもしれませんが,悪いことばかりではありますまい。
この点については,2月14日の記事でも述べました。よろしかったら,こちらもご覧ください。
2013年6月15日土曜日
若者にとってキツイ産業
前回は,『就業構造基本調査』のデータを使って産業別の離職率を試算したのですが,同じ資料から,転職希望率や就業休止希望率のような指標も計算することができます。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
こちらの場合,細かい産業中分類ごとに数値を出せる利点があります。たとえば,一口に製造業といっても,いろいろな業種を含んでいます。キツイ産業はどういうものか。大分類よりも下った,より具体的な顔ぶれをみてみることにしましょう。
ここでご覧に入れるのは,20代の正規就業者の転職・就業休止希望率です。若者にとって「キツイ」産業は何か。この点を明らかにするためのメジャーとして使うことにいたしましょう。
2007年の同調査のデータによると,同年10月時点の20代の正規就業者は707万人です。うち転職を希望している者は121万人,就業休止を希望している者は10万人ほど。よって,転職・就業休止希望率は,(121+10)/707 ≒ 18.5%となります。およそ5人に1人。
これは全産業をひっくるめた値ですが,当然,業種によって値は大きく変異することでしょう。私は,97の産業について,同じ値を計算してみました。資料的意味合いを込めて,高い順に並べたランキング表を提示いたします。目ぼしい業種にはマークをしています。
トップは,各種商品卸売業の33.3%です。この業界では,若年の正規就業者の3人に1人が転職ないしは就業休止を希望していることになります。総合商社とか貿易商社でしょうか。
その次は運輸附帯サービス業,そして3位は何と郵便局です。20代の正規局員25,200人のうち,7,500人(29.8%)が転職を希望しています。民営化されて以降,いろいろ大変という話は聞いていましたが,全産業の中で3位とは。
ほか,目ぼしい産業の位置をみると,人手不足が深刻な介護は30位,外食チェーン等の一般飲食は41位,保育士等の児童福祉は68位,教員等の学校教育は90位,そして地方公務員は95位なり。まあ,公務員が下位というのは頷けるところですが。
若き正社員のみなさん,あなたの産業はどこ辺りに位置しますか。自分の立ち位置を知るための参考にしていただければと存じます。
ただ,これは2007年のデータです。間もなく公表される2012年の統計では,位置構造が大きく変動している可能性もあります。この5年間で,リーマンショック,原発事故等,いろいろなことがありました。上表で88位の電気業は,2012年のランク表では,おそらく不名誉なランクアップを遂げていることと思われます。
結果が公表され次第,最新のランク表もつくってみるつもりです。では皆様,よい週末を。って,こんなデータを見せられたら凹んでしまいますか。すみません。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
こちらの場合,細かい産業中分類ごとに数値を出せる利点があります。たとえば,一口に製造業といっても,いろいろな業種を含んでいます。キツイ産業はどういうものか。大分類よりも下った,より具体的な顔ぶれをみてみることにしましょう。
ここでご覧に入れるのは,20代の正規就業者の転職・就業休止希望率です。若者にとって「キツイ」産業は何か。この点を明らかにするためのメジャーとして使うことにいたしましょう。
2007年の同調査のデータによると,同年10月時点の20代の正規就業者は707万人です。うち転職を希望している者は121万人,就業休止を希望している者は10万人ほど。よって,転職・就業休止希望率は,(121+10)/707 ≒ 18.5%となります。およそ5人に1人。
これは全産業をひっくるめた値ですが,当然,業種によって値は大きく変異することでしょう。私は,97の産業について,同じ値を計算してみました。資料的意味合いを込めて,高い順に並べたランキング表を提示いたします。目ぼしい業種にはマークをしています。
トップは,各種商品卸売業の33.3%です。この業界では,若年の正規就業者の3人に1人が転職ないしは就業休止を希望していることになります。総合商社とか貿易商社でしょうか。
その次は運輸附帯サービス業,そして3位は何と郵便局です。20代の正規局員25,200人のうち,7,500人(29.8%)が転職を希望しています。民営化されて以降,いろいろ大変という話は聞いていましたが,全産業の中で3位とは。
ほか,目ぼしい産業の位置をみると,人手不足が深刻な介護は30位,外食チェーン等の一般飲食は41位,保育士等の児童福祉は68位,教員等の学校教育は90位,そして地方公務員は95位なり。まあ,公務員が下位というのは頷けるところですが。
若き正社員のみなさん,あなたの産業はどこ辺りに位置しますか。自分の立ち位置を知るための参考にしていただければと存じます。
ただ,これは2007年のデータです。間もなく公表される2012年の統計では,位置構造が大きく変動している可能性もあります。この5年間で,リーマンショック,原発事故等,いろいろなことがありました。上表で88位の電気業は,2012年のランク表では,おそらく不名誉なランクアップを遂げていることと思われます。
結果が公表され次第,最新のランク表もつくってみるつもりです。では皆様,よい週末を。って,こんなデータを見せられたら凹んでしまいますか。すみません。
2013年6月13日木曜日
産業別の就業者の離職率
最近,『就業構造基本調査』の分析にのめり込んでいるのですが,この資料を使って,就業者の離職率を産業別に出せることを知りました。今回は,その試算値をご覧に入れようと存じます。
2007年調査の報告書に,2006年10月~2007年9月までの間に前職を離職した者の数が掲載されています。要するに,調査時点(2007年10月)の前の1年間における離職経験者数です。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
キツイことで知られる飲食・宿泊業ですが,調査時点の15~24歳人口のうち,上記期間中にこの産業の職を離職したという者は26万8,300人となっています。離職時点の年齢は若干異なると思われますが,直近1年間の離職者数ですので,調査時点年齢=離職時点年齢と仮定してもよいでしょう。
この数を分子にして離職率を出したいのですが,2006年の『労働力調査』によると,同年10月時点の飲食・宿泊業の15~24歳就業者は約68万人です。これを母数にすると,この期間中における離職率は39.5%と算出されます。およそ4割,5人に2人。
パートや派遣社員等の非正規も含む率ですが,すさまじい値ですね。巷でいわれていること,さもありなんという感じです。同じやり方で,他の産業,他の年齢層の離職率もはじいてみました。下表は,その一覧です。
左端の若年層に注目すると,運輸,不動産,そして飲食・宿泊業で離職率が3割を超えています。・・・分かるような気がします。
複合サービス(郵便局,協同組合)の離職率も高くなっていますが,これは,パートやバイトの比重が高いためでしょう。郵便局は,「ゆうメイト」等のバイトさんをたくさん雇っていますしね。後でみるように,正規職に限定すると,この産業の離職率はうんと下がります。
では,正規職に限定した離職率も出してみましょう。冒頭の資料から,2006年10月~2007年9月までの間に前職を離職した者の数を,産業別・雇用形態別に知ることができます。それによると,調査時点(2007年10月)の15~24歳人口のうち,この期間中に飲食・宿泊業の正規雇用職を辞したという者は2万4,700人なり。先ほど示した,非正規も含む全体の数よりもかなり少ないですね。
離職率の算出に使う母数ですが,『労働力調査』からは,産業別・年齢層別の正規就業者数は分かりません。そこで代替策として,2007年の『就業構造基本調査』に載っている,同年10月時点の数値を充てることとします。
本当は,2006年10月時点の正規就業者数をベースにすべきですが,1年間のラグなら大きな問題はないとみて,翌年10月時点の数値を使うことをお許しください。
2007年10月時点における,飲食・宿泊業の15~24歳正規雇用就業者は約10万100人。よって,この産業の若年正規就業者の離職率は,24,700/10,0100 ≒ 24.7%となります。非正規も含む離職率(39.5%)よりも低いのですが,正規職でも4人に1人が辞めるとは・・・。
下表は,正規就業者に限定した離職率の産業別・年齢層別一覧です。
不動産と飲食・宿泊が高いのは,非正規込みの離職率と同じです。先ほど述べたように,バイトの比重が高い複合サービス業の離職率はぐんと下がっています。運輸もそうですね。荷物の仕分けバイト等,こちらも非正規の比重が高いためでしょうか。
あと目を引くのは,若年の正規公務員の離職率が結構高いことです。他の年齢層を圧倒しています。このブログでは,教員の離職率をさまざまな角度から分析しましたが,近年,若年の教員の病気離職率が上がっているというデータもあります。
http://tmaita77.blogspot.jp/2012/07/blog-post_23.html
いろいろバッシングにさらされて公務員も大変といいますが,そのしわ寄せが若年層にいっているという見方もできるでしょう。
最後に,上の2表の統計をちょっと可視化しておきましょう。私は「視覚人間」ですので,こういうオマケをつけないと気分が悪いのです。横軸に非正規も含む全就業者の離職率,縦軸に正規雇用就業者の離職率をとった座標上に,15の産業のデータをプロットしてみました。15~24歳の若年層の図です。
不動産と飲食・宿泊業が,右上に暗雲立ち込めるゾーンに位置しています。対極の安泰ゾーンにあるのは,電気・ガス・熱供給・水道業。公共事業だからかなあ。でも,2011年の原発事故を経た2012年の統計(来月公表)では,離職率はぐんと上がっていることでしょう。
私の卒論ゼミの教え子で,外食産業に入ったものの,入職後わずかの期間で体調を崩して職を辞した子がいます。彼女が今回のデータをみたら,どう思うことか・・・。
身近に起きていること,常日頃肌身で感じていることを,マクロな統計で裏づける。この手の作業を,これからも続けていこうと思うのです。こういうエビデンスの蓄積が,社会の変革につながることを念じながら。
2007年調査の報告書に,2006年10月~2007年9月までの間に前職を離職した者の数が掲載されています。要するに,調査時点(2007年10月)の前の1年間における離職経験者数です。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
キツイことで知られる飲食・宿泊業ですが,調査時点の15~24歳人口のうち,上記期間中にこの産業の職を離職したという者は26万8,300人となっています。離職時点の年齢は若干異なると思われますが,直近1年間の離職者数ですので,調査時点年齢=離職時点年齢と仮定してもよいでしょう。
この数を分子にして離職率を出したいのですが,2006年の『労働力調査』によると,同年10月時点の飲食・宿泊業の15~24歳就業者は約68万人です。これを母数にすると,この期間中における離職率は39.5%と算出されます。およそ4割,5人に2人。
パートや派遣社員等の非正規も含む率ですが,すさまじい値ですね。巷でいわれていること,さもありなんという感じです。同じやり方で,他の産業,他の年齢層の離職率もはじいてみました。下表は,その一覧です。
左端の若年層に注目すると,運輸,不動産,そして飲食・宿泊業で離職率が3割を超えています。・・・分かるような気がします。
複合サービス(郵便局,協同組合)の離職率も高くなっていますが,これは,パートやバイトの比重が高いためでしょう。郵便局は,「ゆうメイト」等のバイトさんをたくさん雇っていますしね。後でみるように,正規職に限定すると,この産業の離職率はうんと下がります。
では,正規職に限定した離職率も出してみましょう。冒頭の資料から,2006年10月~2007年9月までの間に前職を離職した者の数を,産業別・雇用形態別に知ることができます。それによると,調査時点(2007年10月)の15~24歳人口のうち,この期間中に飲食・宿泊業の正規雇用職を辞したという者は2万4,700人なり。先ほど示した,非正規も含む全体の数よりもかなり少ないですね。
離職率の算出に使う母数ですが,『労働力調査』からは,産業別・年齢層別の正規就業者数は分かりません。そこで代替策として,2007年の『就業構造基本調査』に載っている,同年10月時点の数値を充てることとします。
本当は,2006年10月時点の正規就業者数をベースにすべきですが,1年間のラグなら大きな問題はないとみて,翌年10月時点の数値を使うことをお許しください。
2007年10月時点における,飲食・宿泊業の15~24歳正規雇用就業者は約10万100人。よって,この産業の若年正規就業者の離職率は,24,700/10,0100 ≒ 24.7%となります。非正規も含む離職率(39.5%)よりも低いのですが,正規職でも4人に1人が辞めるとは・・・。
下表は,正規就業者に限定した離職率の産業別・年齢層別一覧です。
不動産と飲食・宿泊が高いのは,非正規込みの離職率と同じです。先ほど述べたように,バイトの比重が高い複合サービス業の離職率はぐんと下がっています。運輸もそうですね。荷物の仕分けバイト等,こちらも非正規の比重が高いためでしょうか。
あと目を引くのは,若年の正規公務員の離職率が結構高いことです。他の年齢層を圧倒しています。このブログでは,教員の離職率をさまざまな角度から分析しましたが,近年,若年の教員の病気離職率が上がっているというデータもあります。
http://tmaita77.blogspot.jp/2012/07/blog-post_23.html
いろいろバッシングにさらされて公務員も大変といいますが,そのしわ寄せが若年層にいっているという見方もできるでしょう。
最後に,上の2表の統計をちょっと可視化しておきましょう。私は「視覚人間」ですので,こういうオマケをつけないと気分が悪いのです。横軸に非正規も含む全就業者の離職率,縦軸に正規雇用就業者の離職率をとった座標上に,15の産業のデータをプロットしてみました。15~24歳の若年層の図です。
不動産と飲食・宿泊業が,右上に暗雲立ち込めるゾーンに位置しています。対極の安泰ゾーンにあるのは,電気・ガス・熱供給・水道業。公共事業だからかなあ。でも,2011年の原発事故を経た2012年の統計(来月公表)では,離職率はぐんと上がっていることでしょう。
私の卒論ゼミの教え子で,外食産業に入ったものの,入職後わずかの期間で体調を崩して職を辞した子がいます。彼女が今回のデータをみたら,どう思うことか・・・。
身近に起きていること,常日頃肌身で感じていることを,マクロな統計で裏づける。この手の作業を,これからも続けていこうと思うのです。こういうエビデンスの蓄積が,社会の変革につながることを念じながら。
2013年6月11日火曜日
官製ワーキングプア
新潟の中学校の臨時司書が,学校図書館の蔵書3000冊を転売していたそうです。動機は生活苦。「生活が苦しくほとんど食費に充てた」と供述しているそうです。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130530-OYT1T01130.htm?from=tw
この司書の月収は8万円だったとのことですが,これでは確かに食べるのもしんどいでしょう。年収にすると96万円。完全なワーキングプアです。
「官製ワーキングプア」という言葉がありますが,非正規の公務員の給与って,こういうものなのでしょうか。興味を持ったので,官庁統計にあたって調べてみました。
総務省『就業構造基本調査』から,15歳以上の就業者の年収分布を,産業別・雇用形態別に知ることができます。2007年調査の結果によると,「公務」というカテゴリーの就業者は218万人。そのうち,パート,アルバイト,派遣社員,契約社員という非正規雇用就業者は約12万人。公務員の非正規率は5.4%ということになります。民間に比して,かなり低いですね。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
量的に少ない非正規公務員ですが,年収分布はどういうものなのでしょう。正規公務員と非正規公務員の年収分布曲線を描いてみました。公務員の特徴を見出すため,全産業の就業者の曲線もお見せします。
赤色が非正規の年収曲線ですが,低いほうに偏っています。公務員の場合,非正規の9割近くが年収200万未満のワープアです。全産業の非正規のワープア率(8割)よりも高くなっています。平均年収を出すと,非正規公務員は118万円。全産業の非正規は135万円。こちらの面でも見劣りしています。
一方,正規公務員は結構もらっているようですね。分布のピークは700万円台であり,平均年収は628万円。民間の正規就業者の458万円よりもかなり高くなっています。
参考までに,他の産業のデータも提示しておきます。ワープア率と平均年収を,正規と非正規に分けて掲げます。非正規率とは,全就業者に占める非正規雇用者の割合です。先ほど計算したように,公務員の非正規率は5.4%です。
細かいコメントはしませんが,公務員の特徴は,正規と非正規の格差が大きい,ということです。平均年収は5倍以上も違い,ワープア率に至ってはもう比較にもなりません。
最後に,この点を可視化しておきましょう。横軸にワープア率,縦軸に平均年収をとった座標上に,正規と非正規のデータをプロットし,線でつないだ図をつくりました。矢印のしっぽは正規,先端は非正規の位置を表します。矢印の長さによって,雇用形態の差が表現されています。
何も言いますまい。公務員の場合,正規から非正規になると,ワープア率がうんと上がり,平均年収が激減することに注目してください。正規と非正規の格差が,全産業を上回っていることにも。
巷でいわれる「官製ワーキングプア」,さもありなんです。働き方の幅を広げようということから,雇用形態による待遇格差の是正がいわれていますが,官公庁がこれでは示しがつきますまい。非正規公務員は量的にはごくわずかだからこれでいいのだ,ということで片付けられる問題ではないでしょう。
間もなく公表される2012年データでは,どういう事態になっているか。上図の矢印が短くなっていることを願うものであり,その逆であってほしくないと思います。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130530-OYT1T01130.htm?from=tw
この司書の月収は8万円だったとのことですが,これでは確かに食べるのもしんどいでしょう。年収にすると96万円。完全なワーキングプアです。
「官製ワーキングプア」という言葉がありますが,非正規の公務員の給与って,こういうものなのでしょうか。興味を持ったので,官庁統計にあたって調べてみました。
総務省『就業構造基本調査』から,15歳以上の就業者の年収分布を,産業別・雇用形態別に知ることができます。2007年調査の結果によると,「公務」というカテゴリーの就業者は218万人。そのうち,パート,アルバイト,派遣社員,契約社員という非正規雇用就業者は約12万人。公務員の非正規率は5.4%ということになります。民間に比して,かなり低いですね。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
量的に少ない非正規公務員ですが,年収分布はどういうものなのでしょう。正規公務員と非正規公務員の年収分布曲線を描いてみました。公務員の特徴を見出すため,全産業の就業者の曲線もお見せします。
赤色が非正規の年収曲線ですが,低いほうに偏っています。公務員の場合,非正規の9割近くが年収200万未満のワープアです。全産業の非正規のワープア率(8割)よりも高くなっています。平均年収を出すと,非正規公務員は118万円。全産業の非正規は135万円。こちらの面でも見劣りしています。
一方,正規公務員は結構もらっているようですね。分布のピークは700万円台であり,平均年収は628万円。民間の正規就業者の458万円よりもかなり高くなっています。
参考までに,他の産業のデータも提示しておきます。ワープア率と平均年収を,正規と非正規に分けて掲げます。非正規率とは,全就業者に占める非正規雇用者の割合です。先ほど計算したように,公務員の非正規率は5.4%です。
細かいコメントはしませんが,公務員の特徴は,正規と非正規の格差が大きい,ということです。平均年収は5倍以上も違い,ワープア率に至ってはもう比較にもなりません。
最後に,この点を可視化しておきましょう。横軸にワープア率,縦軸に平均年収をとった座標上に,正規と非正規のデータをプロットし,線でつないだ図をつくりました。矢印のしっぽは正規,先端は非正規の位置を表します。矢印の長さによって,雇用形態の差が表現されています。
何も言いますまい。公務員の場合,正規から非正規になると,ワープア率がうんと上がり,平均年収が激減することに注目してください。正規と非正規の格差が,全産業を上回っていることにも。
巷でいわれる「官製ワーキングプア」,さもありなんです。働き方の幅を広げようということから,雇用形態による待遇格差の是正がいわれていますが,官公庁がこれでは示しがつきますまい。非正規公務員は量的にはごくわずかだからこれでいいのだ,ということで片付けられる問題ではないでしょう。
間もなく公表される2012年データでは,どういう事態になっているか。上図の矢印が短くなっていることを願うものであり,その逆であってほしくないと思います。
2013年6月9日日曜日
年層別・事業所の規模別にみたワープア率
ワーキングプア。すっかり知れ渡った言葉ですが,今のわが国にあっては,就業者の中にこうした「働く貧困層」が確実に増えてきています。
2007年の総務省『就業構造基本調査』によると,15歳以上の有業者6,598万人のうち,年収200万円未満の者は2,227万人となっています。働く人間の3人に1人がワープアです。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
これは,家計の補助的なパートやバイト等も含めた数値ですが,正規就業者に限定すると,ワープア率は10.4%となります。10人に1人。しかるに,正規就業者(正社員)といっても,いろいろな人がいます。言わずもがな,属性条件によって,ワープア率は大きく変異します。その様相を可視化してみましょう。
第1の分類軸は年齢です。給与が安い若年層ほど,ワープアは多いことでしょう。あと一つ,勤めている事業所の規模という軸を据えてみます。大企業,中小企業というような企業規模も,労働者の収入を規定する重要なファクターです。
私は,この2変数を組み合わせた属性ごとに,正規就業者のワープア出現率を計算しました。結果を,等高線図の形で表現します。色の違いに依拠して,ワープア率の大よその水準を読み取ってください。
図の左上に高率ゾーンがありますね。紫色は30%台,水色は40%台,黒色は50%(半分)超です。零細企業の若年労働者では,正規雇用であってもワープアが多いようです。しかし全体的にみると,青色(10%未満)や赤色(10%台)というような安泰色が幅を利かせています。
ですが,派遣社員になると,図の模様が激変します。正社員とほぼ同じ仕事をする「ハケン」の方々ですが,ワープアはどれほどいるのでしょう。上図と同様,年齢階層×企業規模のマトリクスでみてみましょう。
言葉がよくないですが,膿だらけです。多くの属性グループにおいて,ワープア率が50%を超えています。全職種への派遣労働の解禁により,この種の雇用形態が増えてきています。やる仕事は正社員とほぼ同じ。にもかかわらず。上の2図の模様の違うこと。「雇用の崩壊」とは,こういうことなのかもしれません。
間もなく公表される2012年の『就業構造基本調査』のデータを使って,同じ図を描いたらどうなることか。もしかすると,真黒になっているかもしれません。最初の正規就業者の図でも,黒色の領分が広がっている可能性が高いと思われます。
転職希望率などを同じ図式で表現してみるのもまた一興。『就業基本調査』は宝の山です。e-Sataにアップされている基礎集計表をみると,こういうことまで分かるのか,と気づかされることが多々あります。ああ,2012年データの公表が待ち遠しい。
2007年の総務省『就業構造基本調査』によると,15歳以上の有業者6,598万人のうち,年収200万円未満の者は2,227万人となっています。働く人間の3人に1人がワープアです。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
これは,家計の補助的なパートやバイト等も含めた数値ですが,正規就業者に限定すると,ワープア率は10.4%となります。10人に1人。しかるに,正規就業者(正社員)といっても,いろいろな人がいます。言わずもがな,属性条件によって,ワープア率は大きく変異します。その様相を可視化してみましょう。
第1の分類軸は年齢です。給与が安い若年層ほど,ワープアは多いことでしょう。あと一つ,勤めている事業所の規模という軸を据えてみます。大企業,中小企業というような企業規模も,労働者の収入を規定する重要なファクターです。
私は,この2変数を組み合わせた属性ごとに,正規就業者のワープア出現率を計算しました。結果を,等高線図の形で表現します。色の違いに依拠して,ワープア率の大よその水準を読み取ってください。
図の左上に高率ゾーンがありますね。紫色は30%台,水色は40%台,黒色は50%(半分)超です。零細企業の若年労働者では,正規雇用であってもワープアが多いようです。しかし全体的にみると,青色(10%未満)や赤色(10%台)というような安泰色が幅を利かせています。
ですが,派遣社員になると,図の模様が激変します。正社員とほぼ同じ仕事をする「ハケン」の方々ですが,ワープアはどれほどいるのでしょう。上図と同様,年齢階層×企業規模のマトリクスでみてみましょう。
言葉がよくないですが,膿だらけです。多くの属性グループにおいて,ワープア率が50%を超えています。全職種への派遣労働の解禁により,この種の雇用形態が増えてきています。やる仕事は正社員とほぼ同じ。にもかかわらず。上の2図の模様の違うこと。「雇用の崩壊」とは,こういうことなのかもしれません。
間もなく公表される2012年の『就業構造基本調査』のデータを使って,同じ図を描いたらどうなることか。もしかすると,真黒になっているかもしれません。最初の正規就業者の図でも,黒色の領分が広がっている可能性が高いと思われます。
転職希望率などを同じ図式で表現してみるのもまた一興。『就業基本調査』は宝の山です。e-Sataにアップされている基礎集計表をみると,こういうことまで分かるのか,と気づかされることが多々あります。ああ,2012年データの公表が待ち遠しい。
2013年6月6日木曜日
20代の正規就業者の収入状況
昨日,某報道機関の記者さんと地方青年の困難について語り合ったのですが,すさまじいお話を聞きました。
ある地方県の話ですが,正規の職を探しにヤング・ハローワークに出向いても,提示される求人というのは,月給12~13万円というのがザラ。中には「昇給なし」と明記されているものもあるのだそうです。
賞与(ボーナス)はといえば,年間1万円というものも。この場合の想定年収は,(12万×12か月)+1万=145万円ということになります。完全なワーキングプアですが,これは,れっきとした正規職の求人です。
まあ,雇ってもらった最初の年くらいは,これで辛抱しよう,という気構えを持てないこともありません。しかるに,上記のように「昇給なし」という条件が付いている場合,それがいつまでも続くことになります。まったく展望が持てないわけです。
ごく一部のブラック求人ではないかと思いましたが,決してマイノリティーではないとのこと。「雇用の崩壊」がいわれますが,安泰と信じられている正規職もその波を免れていないようです。そういえば,「名ばかり正社員」なんていう言葉を最近よく聞くようになりました。
私は,総務省『就業構造基本調査』の統計にあたって,20代の正規就業者の給与(年収)を調べてみました。前回までと同様,バブル崩壊直後の1992年と最新の2007年のデータを比べてみます。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
この期間にかけて,20代の正規雇用就業者は1,080万人から707万人へと減少しました。有業者全体に占める比率も,80.0%から63.1%へと減じています。前々回みたような,雇用の非正規化と表裏です。
量的に少なくなった正規就業者ですが,年収分布はどう変わったのでしょうか。両年の年収分布曲線を描いてみました。比較対象として,非正規も含む有業者全体の曲線も添えています。
有業者全体では,低収入層のウェイトが増しています。これはワープアの増加を示唆するものであり,前々回の記事でもみた通りです。一方,正規就業者の年収曲線はこの15年間でほとんど変わっていません。
上記の年収分布から平均年収を計算すると,有業者全体では,1992年では267万円だったのが,2007年では250万円にまで下がりました。しかるに正規就業者に限ると,291万円から303万円へと増加をみています。
正規雇用の崩壊(崩れ)という現象は,2007年までのデータでみる限り,観察されませんでした。*収入という一つの視点を据えただけですが。
とはいえ,より近況ではどうなっているか分かりません。2008年には,「100年に1度の不況」とまで形容されたリーマンショックを経験しています。来月,2012年の『就業構造基本調査』の結果が公表されますが,それから描かれる曲線は,歪な型になっている可能性が十分あります。先の記者さんのお話も,最近3年間の取材結果だそうです。
最後に,都道府県別のデータも提示しておきましょう。若年の正規就業者といっても,状況は県によって異なるでしょう。1992年と2007年の正規就業者のワープア率(年収200万未満),および平均年収の一覧を掲げます。左端の正規率とは,有業者全体での正規就業者の比率です。
黄色マークは47都道府県中の最高値,青色マークは最低値です。上位5位の数値は,赤色にしています。
この15年間の変化は,ほとんどの県が全国的傾向と同じです。若年正規就業者ワープア率は減じ,平均年収はアップしています。
ですが,岩手,宮城,そして奈良のように,正規就業者でみても,ワープア率が微増している県もあります。表の数値からは読み取れませんが,宮城では,平均年収も微減しています(271.5万円→271.0万円)。
繰り返しますが,今回お見せしたのは,2007年までのトレンドです。直近の2012年データではどうなっているか。全国のヤングハローワークが冒頭のような状況になっているとしたら,正規雇用の崩壊現象がはっきりと可視化されることになるでしょう。
『就業構造基本調査』の分析ばかりが続いて恐縮ですが,既公表のデータを詰めておき,2012年調査のデータと直ちに接合させよう,という意図を持っています。
ある地方県の話ですが,正規の職を探しにヤング・ハローワークに出向いても,提示される求人というのは,月給12~13万円というのがザラ。中には「昇給なし」と明記されているものもあるのだそうです。
賞与(ボーナス)はといえば,年間1万円というものも。この場合の想定年収は,(12万×12か月)+1万=145万円ということになります。完全なワーキングプアですが,これは,れっきとした正規職の求人です。
まあ,雇ってもらった最初の年くらいは,これで辛抱しよう,という気構えを持てないこともありません。しかるに,上記のように「昇給なし」という条件が付いている場合,それがいつまでも続くことになります。まったく展望が持てないわけです。
ごく一部のブラック求人ではないかと思いましたが,決してマイノリティーではないとのこと。「雇用の崩壊」がいわれますが,安泰と信じられている正規職もその波を免れていないようです。そういえば,「名ばかり正社員」なんていう言葉を最近よく聞くようになりました。
私は,総務省『就業構造基本調査』の統計にあたって,20代の正規就業者の給与(年収)を調べてみました。前回までと同様,バブル崩壊直後の1992年と最新の2007年のデータを比べてみます。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
この期間にかけて,20代の正規雇用就業者は1,080万人から707万人へと減少しました。有業者全体に占める比率も,80.0%から63.1%へと減じています。前々回みたような,雇用の非正規化と表裏です。
量的に少なくなった正規就業者ですが,年収分布はどう変わったのでしょうか。両年の年収分布曲線を描いてみました。比較対象として,非正規も含む有業者全体の曲線も添えています。
有業者全体では,低収入層のウェイトが増しています。これはワープアの増加を示唆するものであり,前々回の記事でもみた通りです。一方,正規就業者の年収曲線はこの15年間でほとんど変わっていません。
上記の年収分布から平均年収を計算すると,有業者全体では,1992年では267万円だったのが,2007年では250万円にまで下がりました。しかるに正規就業者に限ると,291万円から303万円へと増加をみています。
正規雇用の崩壊(崩れ)という現象は,2007年までのデータでみる限り,観察されませんでした。*収入という一つの視点を据えただけですが。
とはいえ,より近況ではどうなっているか分かりません。2008年には,「100年に1度の不況」とまで形容されたリーマンショックを経験しています。来月,2012年の『就業構造基本調査』の結果が公表されますが,それから描かれる曲線は,歪な型になっている可能性が十分あります。先の記者さんのお話も,最近3年間の取材結果だそうです。
最後に,都道府県別のデータも提示しておきましょう。若年の正規就業者といっても,状況は県によって異なるでしょう。1992年と2007年の正規就業者のワープア率(年収200万未満),および平均年収の一覧を掲げます。左端の正規率とは,有業者全体での正規就業者の比率です。
黄色マークは47都道府県中の最高値,青色マークは最低値です。上位5位の数値は,赤色にしています。
この15年間の変化は,ほとんどの県が全国的傾向と同じです。若年正規就業者ワープア率は減じ,平均年収はアップしています。
ですが,岩手,宮城,そして奈良のように,正規就業者でみても,ワープア率が微増している県もあります。表の数値からは読み取れませんが,宮城では,平均年収も微減しています(271.5万円→271.0万円)。
繰り返しますが,今回お見せしたのは,2007年までのトレンドです。直近の2012年データではどうなっているか。全国のヤングハローワークが冒頭のような状況になっているとしたら,正規雇用の崩壊現象がはっきりと可視化されることになるでしょう。
『就業構造基本調査』の分析ばかりが続いて恐縮ですが,既公表のデータを詰めておき,2012年調査のデータと直ちに接合させよう,という意図を持っています。
2013年6月4日火曜日
都道府県別のワープア率・非正規率
前回の続きです。今回は,有業者のワープア率と非正規率を都道府県別に出してみようと思います。資料は,総務省の『就業構造基本調査』です。本資料から,15歳以上の有業者の年収分布と雇用形態を知ることができます。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
ワープアとは,ワーキングプアの略称です。私は,各県の有業者のうち,年収が200万円に満たない者の比率を明らかにしました。まさに「働く貧困層」です。
もう一つの非正規率とは,非正規雇用の者が有業者全体に占める比率です。非正規雇用とは,原資料でいうパート,アルバイト,派遣社員,契約社員,および嘱託等の合算です。近年,こうした非正規雇用の比重が高まっていることは前回みた通りですが,その程度は県によって多様でしょう。
前回と同様,1992年と2007年の比較をします。分析対象は,15歳以上の有業者全体と20代です。後者のデータをみるのは,近年困窮の度合いを殊に強めている若年層の県別数値に関心を持つからです。
なお,1992年の県別非正規率は,パートとアルバイトの比率であることを申し添えます。派遣,契約,および嘱託等の県別数値は載っていませんでした。当時は,この種の雇用形態がまだ少なく,県別にバラすと数がきわめて少ないからでしょう。ゆえに,前回お見せした全国値と値がやや異なることに留意ください。
下に一覧表を掲げます。黄色は47都道府県中の最高値,青色は最低値です。上位5位は,数値を赤色にしています。言わずもがな,WPとはワープアの略です。
資料として出す表ですので細かいコメントはしませんが,黄色のマークのほとんどが南端の沖縄についていますね。2007年の当県の20代でいうと,ワープア率は64.1%,非正規率は45.2%なり。全国値をはるかに凌駕する,すさまじい値です。
さて,上表のデータを,いくつかの観点から視覚化してみましょう。まずは,20代の非正規率地図の模様が,この15年間でどう変わったかです。私は,両年について,10%区分で塗り分けた統計地図をつくってみました。
ほう。1992年では薄い色でしたが,2007年になると全体的に怪しい色で染まっています。2007年では,若者の非正規率は全ての県で20%を超え,ほぼ半数の県で30%を超えています。
2007年の地図をみると,地方の周辺県のみならず,首都圏や近畿圏のような都市部も濃い青色になっています。ワープア率は賃金水準が低い地方で高い傾向が明瞭ですが,非正規率の場合,そういう構造にはなっていないません。
ちなみに,若者の非正規率の地域差が拡大していることも付記します。標準偏差を出すと,1992年では2.75でしたが,2007年では4.05となっています。近年の若者の非正規化は,地域格差の拡大を伴っていることにも注意しましょう。
あと一点,ワープア率と非正規率という2指標を使って,各県の若者の状況を性格づけてみようと思います。下図は,横軸に20代のワープア率,縦軸に非正規率をとった座標上に,47都道府県をプロットしたものです(2007年)。点線は,全国値を示唆します。
図の右上にあるのは,若者のワープア化,非正規化の進行の度合いが相対的に高い県です。沖縄は,暗雲が立ち込める「かっとんだ」位置にあります。ほか,黄色のループで囲った7道府県あたりが要注意県として検出できるでしょうか。
以上は,ほんの小手先の分析です。上表の基礎データをもっと深く分析することで,また別の側面も明らかになることでしょう。みなさんの参考に与するところがあれば幸いです。
来月には,2012年の『就業構造基本調査』の結果が公表されます。はて,先ほどの地図の模様はどう変わっているか。また,上のマトリクスにおいて,各県はどう動いているか・・・。
この5年間,08年のリーマンショックをはじめとして,さまざまなことがありました,と同時に,子ども・若者支援の充実等,政策的なアクションがなされた経緯もあります。その成果如何が教えられることにもなるでしょう。前回と同じ結びになりますが,結果公表を期して待ちたいと思います。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
ワープアとは,ワーキングプアの略称です。私は,各県の有業者のうち,年収が200万円に満たない者の比率を明らかにしました。まさに「働く貧困層」です。
もう一つの非正規率とは,非正規雇用の者が有業者全体に占める比率です。非正規雇用とは,原資料でいうパート,アルバイト,派遣社員,契約社員,および嘱託等の合算です。近年,こうした非正規雇用の比重が高まっていることは前回みた通りですが,その程度は県によって多様でしょう。
前回と同様,1992年と2007年の比較をします。分析対象は,15歳以上の有業者全体と20代です。後者のデータをみるのは,近年困窮の度合いを殊に強めている若年層の県別数値に関心を持つからです。
なお,1992年の県別非正規率は,パートとアルバイトの比率であることを申し添えます。派遣,契約,および嘱託等の県別数値は載っていませんでした。当時は,この種の雇用形態がまだ少なく,県別にバラすと数がきわめて少ないからでしょう。ゆえに,前回お見せした全国値と値がやや異なることに留意ください。
下に一覧表を掲げます。黄色は47都道府県中の最高値,青色は最低値です。上位5位は,数値を赤色にしています。言わずもがな,WPとはワープアの略です。
資料として出す表ですので細かいコメントはしませんが,黄色のマークのほとんどが南端の沖縄についていますね。2007年の当県の20代でいうと,ワープア率は64.1%,非正規率は45.2%なり。全国値をはるかに凌駕する,すさまじい値です。
さて,上表のデータを,いくつかの観点から視覚化してみましょう。まずは,20代の非正規率地図の模様が,この15年間でどう変わったかです。私は,両年について,10%区分で塗り分けた統計地図をつくってみました。
ほう。1992年では薄い色でしたが,2007年になると全体的に怪しい色で染まっています。2007年では,若者の非正規率は全ての県で20%を超え,ほぼ半数の県で30%を超えています。
2007年の地図をみると,地方の周辺県のみならず,首都圏や近畿圏のような都市部も濃い青色になっています。ワープア率は賃金水準が低い地方で高い傾向が明瞭ですが,非正規率の場合,そういう構造にはなっていないません。
ちなみに,若者の非正規率の地域差が拡大していることも付記します。標準偏差を出すと,1992年では2.75でしたが,2007年では4.05となっています。近年の若者の非正規化は,地域格差の拡大を伴っていることにも注意しましょう。
あと一点,ワープア率と非正規率という2指標を使って,各県の若者の状況を性格づけてみようと思います。下図は,横軸に20代のワープア率,縦軸に非正規率をとった座標上に,47都道府県をプロットしたものです(2007年)。点線は,全国値を示唆します。
図の右上にあるのは,若者のワープア化,非正規化の進行の度合いが相対的に高い県です。沖縄は,暗雲が立ち込める「かっとんだ」位置にあります。ほか,黄色のループで囲った7道府県あたりが要注意県として検出できるでしょうか。
以上は,ほんの小手先の分析です。上表の基礎データをもっと深く分析することで,また別の側面も明らかになることでしょう。みなさんの参考に与するところがあれば幸いです。
来月には,2012年の『就業構造基本調査』の結果が公表されます。はて,先ほどの地図の模様はどう変わっているか。また,上のマトリクスにおいて,各県はどう動いているか・・・。
この5年間,08年のリーマンショックをはじめとして,さまざまなことがありました,と同時に,子ども・若者支援の充実等,政策的なアクションがなされた経緯もあります。その成果如何が教えられることにもなるでしょう。前回と同じ結びになりますが,結果公表を期して待ちたいと思います。
2013年6月3日月曜日
有業者のワープア化・非正規化
現代の雇用の歪みとして,ワーキングプア化とか非正規化とかいうことがいわれますが,それが確実に進行していることは,日常感覚からも首肯できるところです。今回は,その程度が分かる,具体的なデータを提示しようと思います。
就業者の年収や雇用形態が分かる基礎資料は,総務省の『就業構造基本調査』です。5年間隔で実施されているものであり,現時点では,2007年までの調査結果が公表されています。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
私は,有業者のうち,年収が200万円に満たないワーキングプアの比率,ならびに非正規雇用者の比率を明らかにしました。非正規雇用者とは,パート,アルバイト,派遣社員,契約社員,および嘱託等を合算したものです。
バブル崩壊直後の1992年と最新の2007年の率を比べてみましょう。計算過程についてイメージを持っていただくため,分子・分母の数値も示します。
15歳以上の有業者の数は,6,600万人ほどで変化ありません。しかし,ワープアや非正規の量は増えています。その結果,全体に占める比率も伸びており,ワープア率は28.8%から33.7%,非正規率は14.5%から27.1%へと増えました,後者はほぼ倍増です。
今では,働く人間の3人に1人がワープア,非正規ということになります。巷でいわれる,雇用の「ワープア化・非正規化」,さもありなんです。間もなく公表される2012年調査の結果では,どういう事態になっていることか。08年のリーマンショックとかもあったし・・・。
それはさておき,一口に有業者といっても,その存在は一枚岩ではありません。細かい属性別の傾向も観察してみましょう。ワープア化・非正規化の程度が著しいのはどの層か。下表は,性別・年齢層ごとに比率を計算したものです。10代の子どもと60歳以上の高齢者は,分析対象から外しています。
資料的な意味合いで出す表ですので細かいコメントは控えますが,どの層でもワープア化・非正規化が進行しています。率の水準に注目すると,男性よりも女性で格段に高くなっています。
女性の場合,家計の補助的なパートやバイトが多いからだろう,といわれるかもしれませんが,女性の社会進出の必要がいわれ,男女共同参画の気運が高まっている今日,こうしたジェンダー差は看過できることはでありますまい。
次に年齢層別でみると,ワープア率,非正規率が最も高いのは20代です。1992年からの変化も,この若年層で顕著です。
1990年代以降の変化の様相を可視化してみましょう。私は,横軸にワープア率,縦軸に非正規率をとった座標上に,両年の各年齢層(男女)の数値をプロットし,線でつないだ図をつくりました。矢印のしっぽは1992年,先端は2007年の位置を表します。
どの年齢層も,右上の暗雲が立ち込めるゾーンの方向に動いていますが,変化の幅は20代で最も大きくなっています。ワープア率,非正規率とも,他の年齢層に比して大幅に伸びた,ということです。
就職難の状況をいいことに,低賃金や非正規形態で若者を雇い入れる企業が増えていることの表れでしょう。そうした戦略を極限にまで行使しているのが,いわゆるブラック企業です。このような状況の中,心身を病む若者が増えていることもよく知られています。
しかるに怖いのは,当の若者の側も,そのような悪条件を当然のこととして受け入れている面があることです。2月22日の記事では,20代の前半にかけて,薄給や長時間労働を厭わないように仕向けられていく過程があることを明らかにしました。私の造語でいうと「シューカツ洗脳」です。
さて,2012年実施の『就業構造基本調査』の結果が来月公表されますが,どの年齢層も,上図のマトリクスにおいて右上にシフトしていることでしょう。20代の場合,これまでのトレンドを伸ばしてみると,ワープア率,非正規率とも4割近くになることが見込まれます。5人に2人です。
08年のリーマンショックをはじめとして,この5年間でいろいろなことがありました。もしかすると,上図に描いたような機械的な予測よりも事態はもっと悪化しているかもしれません。結果を期して待ちたいと思います。
次回は都道府県別に,有業者のワープア率,非正規率を出してみようと思います。今回お見せしたのは全国値ですが,地域によってはもっとスゴイ値が観察されることでしょう。ではでは。
就業者の年収や雇用形態が分かる基礎資料は,総務省の『就業構造基本調査』です。5年間隔で実施されているものであり,現時点では,2007年までの調査結果が公表されています。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
私は,有業者のうち,年収が200万円に満たないワーキングプアの比率,ならびに非正規雇用者の比率を明らかにしました。非正規雇用者とは,パート,アルバイト,派遣社員,契約社員,および嘱託等を合算したものです。
バブル崩壊直後の1992年と最新の2007年の率を比べてみましょう。計算過程についてイメージを持っていただくため,分子・分母の数値も示します。
15歳以上の有業者の数は,6,600万人ほどで変化ありません。しかし,ワープアや非正規の量は増えています。その結果,全体に占める比率も伸びており,ワープア率は28.8%から33.7%,非正規率は14.5%から27.1%へと増えました,後者はほぼ倍増です。
今では,働く人間の3人に1人がワープア,非正規ということになります。巷でいわれる,雇用の「ワープア化・非正規化」,さもありなんです。間もなく公表される2012年調査の結果では,どういう事態になっていることか。08年のリーマンショックとかもあったし・・・。
それはさておき,一口に有業者といっても,その存在は一枚岩ではありません。細かい属性別の傾向も観察してみましょう。ワープア化・非正規化の程度が著しいのはどの層か。下表は,性別・年齢層ごとに比率を計算したものです。10代の子どもと60歳以上の高齢者は,分析対象から外しています。
資料的な意味合いで出す表ですので細かいコメントは控えますが,どの層でもワープア化・非正規化が進行しています。率の水準に注目すると,男性よりも女性で格段に高くなっています。
女性の場合,家計の補助的なパートやバイトが多いからだろう,といわれるかもしれませんが,女性の社会進出の必要がいわれ,男女共同参画の気運が高まっている今日,こうしたジェンダー差は看過できることはでありますまい。
次に年齢層別でみると,ワープア率,非正規率が最も高いのは20代です。1992年からの変化も,この若年層で顕著です。
1990年代以降の変化の様相を可視化してみましょう。私は,横軸にワープア率,縦軸に非正規率をとった座標上に,両年の各年齢層(男女)の数値をプロットし,線でつないだ図をつくりました。矢印のしっぽは1992年,先端は2007年の位置を表します。
どの年齢層も,右上の暗雲が立ち込めるゾーンの方向に動いていますが,変化の幅は20代で最も大きくなっています。ワープア率,非正規率とも,他の年齢層に比して大幅に伸びた,ということです。
就職難の状況をいいことに,低賃金や非正規形態で若者を雇い入れる企業が増えていることの表れでしょう。そうした戦略を極限にまで行使しているのが,いわゆるブラック企業です。このような状況の中,心身を病む若者が増えていることもよく知られています。
しかるに怖いのは,当の若者の側も,そのような悪条件を当然のこととして受け入れている面があることです。2月22日の記事では,20代の前半にかけて,薄給や長時間労働を厭わないように仕向けられていく過程があることを明らかにしました。私の造語でいうと「シューカツ洗脳」です。
さて,2012年実施の『就業構造基本調査』の結果が来月公表されますが,どの年齢層も,上図のマトリクスにおいて右上にシフトしていることでしょう。20代の場合,これまでのトレンドを伸ばしてみると,ワープア率,非正規率とも4割近くになることが見込まれます。5人に2人です。
08年のリーマンショックをはじめとして,この5年間でいろいろなことがありました。もしかすると,上図に描いたような機械的な予測よりも事態はもっと悪化しているかもしれません。結果を期して待ちたいと思います。
次回は都道府県別に,有業者のワープア率,非正規率を出してみようと思います。今回お見せしたのは全国値ですが,地域によってはもっとスゴイ値が観察されることでしょう。ではでは。
2013年6月2日日曜日
2013年5月の教員不祥事報道
ツイッター上にて私がストックした,2013年5月中の教員不祥事報道記事を整理します。今月は55件であり,先月よりもちょっと増えました。5月病?でしょうか。
高校の女性教員の風俗店バイトなど,世間の耳目をひいた報道もありました。教員の不祥事はさまざま。件の詳細に関心をお持ちの方は,記事名でググってみてください。
私がこの作業を継続するのは,ゴシップ的興味もありますが,地域や教員の属性を記録することで,教員の逸脱の社会的条件を明らかにするデータベースをつくろう,という意図からです。
<2013年5月の教員不祥事報道>
・野球用ネット倒壊で死亡、高校教諭2人を書類送検(5/1,TBS,東京,高男32,高男25)
・鹿島の飲酒物損事故:不申告疑い、教諭を書類送検(5/1,毎日,佐賀,小,男,41)
・「仕事しないことなじられ」母親殴った小学教諭(5/2,読売,山形,小,男,48)
・佐賀学園サッカー部監督、体罰繰り返し謹慎処分(5/2,読売,佐賀,高,男,51)
・文書訓告:児童を床に座らせ授業 鳴沢村教委、教諭に処分
(5/2,毎日,山梨,小,男,30代)
・府立高校の29歳女性教諭、風俗店でアルバイト (5/2,読売,大阪,高,女,29)
・銃刀法違反容疑で浜松の中学教諭逮捕(5/2,静岡新聞,静岡,中,男,57)
・酒気帯び運転など 教諭3人懲戒処分 府教委
(5/3,産経,大阪,酒気帯び:中男59),定期代不正受給:高男53,29))
・授業中机たたき続けた女子生徒たたいた教諭懲戒(5/8,読売,栃木,中,男,50)
・保護者装い同僚教諭の体罰告発…文科相にも手紙(5/8,読売,岡山,高,男,52)
・生徒たたき、鼓膜に傷 2010年、山形の私立高校部活顧問の男性教諭
(5/10,山形新聞,山形,高,男,49)
・男性教諭が男児の背中押し転倒、けがさせる 愛荘町立小で体罰
(5/11,産経,滋賀,小,男,35)
・酒気帯び運転の教諭を懲戒免職 岡山県教委(5/11,産経,岡山,中,男,38)
・元教え子女性に睡眠導入剤飲ませ、体触った教諭(5/11,読売,兵庫,高,男,58)
・懲戒免職:酒気帯び運転の教諭を--県教委(5/11,毎日,岡山,中,男,38)
・同上:同僚教諭の体罰について虚偽報告(5/11,毎日,岡山,高,男,52)
・指導中に興奮され…男性教諭が小3男児に頭突き(5/12,読売,栃木,小,男,55)
・学校PC遠隔操作も/システム妨害の中学教諭(5/12,四国新聞,香川,中,男)
・女子高生に「一目ぼれ」の教諭、逮捕 ひわいな行為容疑(5/14,朝日,長野,中,男,24)
・サッカー名門中で体罰、態度悪いと髪わしづかみ(5/14,読売,北海道,高,男,33)
・女子生徒に不快メール、59歳教諭に停職1か月(5/16,読売,広島,高,男,59)
・女子中生にわいせつ容疑=仙台の教諭逮捕(5/16,時事通信,愛知,小,男,48)
・自殺生徒の担任を減給処分 大津いじめ、調査や指導怠る(5/17,朝日,滋賀,中,男,41)
・児童ポルノを販売した小学校教諭を懲戒免職(5/17,産経,大阪,小,男,31)
・東山高バレー部で体罰 顧問教諭を処分(5/18,京都新聞,京都,高,男,40代)
・体罰:部活中、生徒に 男性教諭を停職に 県教委が処分(5/18,毎日,長野,中,男,27)
・生徒殴り骨折させた疑い 中学校教諭を書類送検(5/20,朝日,大阪,中,男,27)
・女子中高生に裸画像送らせた疑い 中学校教諭を再逮捕(5/21,朝日,兵庫,中,男,41)
・懲戒処分:県教委、2教諭を 酒気帯び運転と速度違反
(5/22,毎日,鹿児島,酒気帯び:小男25,速度違反:中男31)
・戒告処分:体罰の教頭を 道交法違反容疑の教諭も
(5/22,毎日,宮崎,体罰:小男57,道交法違反:中男38)
・県教委:交通事故の教諭2人を懲戒処分(5/22,毎日,香川,小女30,中男52)
・小学校教諭、高校の体育館女子トイレに侵入容疑(5/22,読売,愛知,小,男,41)
・熊本・中学講師盗撮:逮捕講師を懲戒免職(5/22,毎日,熊本,中,男,47)
・中学校でみだらな行為=男性教諭を免職(5/22,時事通信,大分,中,男,20代)
・男性教諭を懲戒免職 県教委 60万円私的流用で(5/23,産経,群馬,小,男,30)
・県教委:痴漢教諭を停職処分 飲酒運転の教頭も
(5/23,毎日,愛知,痴漢:高男34,飲酒運転:小男55)
・大学女子寮のぞいた疑い 中学体育教師を逮捕(5/24,朝日,岐阜,中,男,46)
・昨年の体罰、報告せず 相模原市教委、中学校長らを処分
(5/24,朝日,体罰:中男28,報告せず:中男57)
・児童に暴言の教諭退職 「子どもに申し訳ない」 (5/24,産経,東京,小,女,50代)
・酒気帯びで摘発の高校教諭免職(5/24,産経,青森,高,男,60)
・相模原市教委、体罰教諭を戒告処分(5/24,神奈川新聞,神奈川,中,男,28)
・富山県立支援学校教諭 メールでストーカー容疑(5/25,読売,富山,特,男,33)
・小学校教諭を住居侵入容疑で逮捕 「女性下着見ようと」
(5/27,山陽新聞,岡山,小,男,30)
・酒気帯び運転:容疑で小学校教諭逮捕(5/27,毎日,香川,小,男,54)
・バレー部顧問 現金賭けて指導(5/28,栃木,NHK,中,男,52)
・せがまれて…生徒とアダルト番組見た中学教諭(5/29,読売,北海道,中,40)
・麻薬輸入で小学教諭逮捕=「違法認識せず」容疑否認(5/29,時事通信,広島,小,男,41)
・無免許運転の中学教諭減給、市教委が処分(5/29,神奈川新聞,神奈川,中,男,36)
・下半身露出、いやがる女子高生を撮影 容疑の非常勤講師逮捕
(5/29,産経,神奈川,高,男,33)
・女子高生の尻触った疑い、都立高教諭逮捕(5/30,TBS,東京,高,男,47)
・中2少女買春、中学教諭逮捕 長野・茅野市(5/31,日本テレビ,長野,中,男,41)
・窃盗で女性教諭免職 県教委、3人を懲戒処分
(5/31,紀伊民報,和歌山,窃盗:特女52,中女57,飲酒運転:中男48)
・金曜夜は生徒と校内マージャン 大阪の中学教諭を処分へ(5/31,朝日,大阪,中,男,57)
・名作と誤って教室でアダルトビデオ再生した教諭(5/31,読売,香川,中,男,50代)
・中学教諭、深夜に少女連れ外出…減給処分(5/31,読売,静岡,中,男,30代)