2014年1月31日金曜日

2014年1月の教員不祥事報道

 月末恒例の教員不祥事報道の整理です。年初めの1月に新聞沙汰になった教員不祥事は,私が把握した限りで24件です。

 愛知県では,採用されて間もない新人教諭が放火未遂で逮捕されたようですが,調べに対し「学校に行きたくない。ストレスがあった」と供述しているとのこと。

 若年教員の病気離職率がことに上昇しているのは,昨年の11月17日の記事でもみたところです。逆ピラミッド型の教員集団のもと,末端にかかる圧力が増大しているであろうことは,想像に難くありません。*2010年の教員ピラミッド図は↓
https://twitter.com/tmaita77/status/427997952049565696

 中年・高年教員が,彼らにのしかかる重荷ではなく,彼らをサポートする存在になることが望まれるところです。

<2014年1月の教員不祥事報道>
・<窃盗>容疑で小学校教諭逮捕 ネットに学校の蔵書など出品
 (1/7,毎日,神奈川,小,男,32)
・生徒12回平手打ちの教諭、再審議の末減給処分(1/8,読売,山梨,高,男,27)
・現金着服の校長懲戒免職 3小学校で12回、修学旅行積立金など
 (1/8,西日本新聞,熊本,小,男,51)
・同上:給食費着服(熊本,小,男,35)
・女性教諭、速度超過55キロの翌月また60キロ (1/11,読売,大分,中,女,57)
・同上:速度違反(大分,小男52,中男49,高男39)
・児童買春容疑で教諭逮捕=小学女児、出会い系で(1/12,時事通信,富山,中,男,29)
・女性教諭、英検合格証書を偽造…答案提出忘れて (1/15,読売,香川,中,女,37)
・教諭、児童転ばせ骨折…「自分で転んだ」とうそ(1/16,朝日,鹿児島,小,男,38)
・女児わいせつの男性教諭を懲戒免職(1/16,デーリー東北新聞,青森,小,男,40)
・児童の解答改ざん 西条の小6担任12人分かさ上げ(1/16,愛媛新聞,愛媛,小,男,50代)
・女子部員の頭たたく、バスケ部男性元顧問を処分(1/18,神奈川新聞,神奈川,中,男,59)
・福島県の中学講師を懲戒免職 「県外で解雇」応募時隠す
 (1/18,福島民友新聞,福島,中,男,40)
・中学教諭の答案改ざん 教師の評価、生徒の成績次第?(1/20,毎日,岐阜,中,男,29)
・都立高教諭、部活生徒2人にキス21回(1/21,読売,東京,高,男,30)
・水を使わず、懐中電灯で生活ってホント? 通勤手当不正受給の女性教諭を処分
 (1/24,産経,大阪,高,女,57)
・中学教諭、女子生徒触り懲戒免職(1/24,読売,静岡,中,男,50代)
・同上:交通費不正受給(静岡,高,男,50代)
・小学校の火事、放火未遂などの疑いで新人教諭逮捕(1/27,TBS,愛知,小,男,22)
・市教委が教諭2人を懲戒処分 女子中学生の体触り不快感抱かせる
 (1/28,神奈川新聞,神奈川,中,男,40代)
・同上:体罰(神奈川,小,男,54)
・免許外指導指示の校長ら処分 静岡市教委(1/29,静岡新聞,静岡,中,男,50代)
・「お前をいじめることしか…」校長が教頭に(1/30,読売,北海道,高,男,60)
・高校女子駅伝の強豪校監督、女子部員に体罰(1/31,読売,鹿児島,高,男,47)

2014年1月28日火曜日

都内23区の子どもの体力地図

 1月9日に,2013年度の『東京都児童・生徒体力・運動能力,生活・運動習慣等調査』が公表されました。そこでは,都内の公立小・中学生の体力テストの結果が市区別に公表されています。これはスゴイ。
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/pickup/seisaku_sport-6.htm

 本調査では,握力,上体起こし,50m走,立ち幅跳びなどの種目の記録を合成して総合スコアを出し,それに依拠して,A~Eの5段階の評定がなされます。私は,公立小学校4年生男子のうち,AもしくはBの評価を得た児童の比率を,都内の23区別に出してみました。

 以前に,子どもの学力を都内の地域別に計算したことがありますが,はて,体力のほうはどれほどの地域差があるか。下の図は,結果をマッピングしたものです。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006793455


 大都市という基底的特性を同じくしながらも,結構な差がありますね。荒川区の29.2%から中央区の53.5%まで,20ポイント以上ものレインヂが観察されます。

 色が濃いゾーンをみると,特別区の中でも真ん中の都心部ではないですか。これらの区では,体育の授業を校舎の屋上でやっている学校もあると聞きますが,そういう運動環境の面とは関連がないようです。

 ここにて,子どもの体力との関連が疑われるのは,社会階層の要因です。濃い色の区には,港区のように,富裕層が多く住んでいる区も含まれています。子どもの学力の社会的規定性はよく知られていますが,体力についても同じことがいえるのではないか。

 私は,こういう仮説をもって,各区の都民税・区民税課税額との相関をとってみました。この指標は,各区の住民の富裕度を表すものとして使えます。出所は,2011年度の『東京都税務統計年報』です。


 住民の富裕度と小4男子の体力の相関係数は+0.6701であり,1%水準で有意です。千代田区と港区を「外れ値」として除外すると+0.4617まで下がりますが,これでも5%の有意水準は保っています。

 学力のみならず体力についても,社会的規定性の一端が見受けられます。まあ,スポーツクラブに子どもを通わせるのだって,結構お金がかかりますしね。

 それと,生活習慣の影響も考えられます。本ブログでは,同じ都内の地域データを使って,子どもの肥満率・虫歯率と貧困の関連を明らかにしたことがありますが,食生活をはじめとした生活習慣の乱れが,子どもの体力に影響するという経路も想起されます。

 ちなみに,運動に対する意識をとっても,同じ構造の地域差がみられます。下の地図は,運動が「ややきらい」もしくは「きらい」と答えた児童の比率マップです。上図と同様,公立小学校4年男子のものです。


  どうでしょう。最初にみた,体力テストの好成績マップとは模様が逆になっています。この「運動ぎらい」率は,各区の都民税・区民税課税額と-0.7345という相関関係にあり,体力テストの成績にもまして,社会階層の要因と強く関連していることが示唆されます。

 子どもの体力向上の施策として,体育の授業時数を増やすとか外遊びを促すとかいうことがいわれますが,その社会的規定性の側面にも関心が向けられるべきだと思います。体力と社会階層の関連経路の詳細については,私の知るところではありませんが,スポーツ社会学等の分野である程度のことが解明されているのではないかしらん。

 2013年度の文科省『全国学力・学習状況調査』では,児童・生徒の家庭環境をも把握する「きめ細かい」調査が実施されています。学力については,その社会的規定性が繰り返し指摘されるなか,当局も黙ってはいられなくなった,ということでしょう。

 今後は,体力の面にも同じ見方を適用すべきかもしれません。あと数年したら,文科省の『全国体力・運動能力,運動習慣等調査』でも,家庭環境を把握する「きめ細かい」調査が実施されていたりして。

 東京都は,独自に実施している体力テストの結果を初めて市区別に公表したわけですが,うやむやとしている体力の社会的規定性に関する議論に,実証的な礎(いしずえ)を提供する英断といえます。敬意を表したいと思います。

2014年1月25日土曜日

一人親世帯の子どもの貧困率

 ある社会の中で,貧困状態にある者の量を測る指標として,貧困率というものがあります。所得が,全体の中央値の半分に満たない者がどれほどいるかです。通常,世帯を単位として計算されます。

 この貧困率を,一人親世帯の子どもについて出すと,わが国の特異性が見出されます。18歳未満の子どもがいる一人親世帯のうち,所得が上記の基準に満たない世帯がどれほど存在するかですが,以下では子どもの貧困率ということにします。

 私は,OECDの“Family Database”にあたって,2008年の国別数値を収集しました。下記サイトのCO2.2の表です。原資料では,親が働いていない世帯と働いている世帯に分けて貧困率が掲載されています。下表は,それを整理したものです。
http://www.oecd.org/social/soc/oecdfamilydatabase.htm


  最下段のOECD平均をみると,親が働いていない世帯では6割,働いている世帯では2割です。当然ですが,前者の貧困率のほうがうんと高くなっています。他国も然りです。

 アメリカでは,親が働いていない世帯の貧困率は9割を越えています。自己責任を強調するお国柄と聞きますが,この国では,公的扶助が受けづらいという事情もあるのではないでしょうか。

 ところで,こうした国際的傾向から外れている社会が一つあります。それは日本です。この東洋の島国では,親が働いている世帯の子どもの貧困率のほうが高いのです。18歳未満の子がいる一人親世帯に限ったデータですが,非就業世帯よりも就業世帯のほうが貧しいって一体・・・。

 上表のデータを視覚化してみましょう。横軸に非就業世帯(a),縦軸に就業世帯(b)の子どもの貧困率をとった座標上に,31の社会を位置づけてみました。


 日本でいうと,「a<b」という特異な傾向もさることながら,縦軸の上でかっ飛んだ位置にあることも注目されます。親が働いている世帯の子どもの貧困率はトップです。その割合は54.6%,半分以上です。

 上図のデータをみて,親が働いていない(働けない)世帯への公的援助を減らすべきなどと考えるのはあべこべです。働いても,公的基準が定める最低限の生活を営むに足る収入が得られない事態をこそ,問題視すべきでしょう。一人親世帯の場合,そうした歪みがより色濃い形で表われているものと思われます。

 図の右側にあるアメリカやギリシアのような社会は,子どもの貧困は,親が働けない世帯への公的援助がどうなっているのかという,福祉の問題として提起されますが,わが国の場合,そうした福祉の枠を越えた,雇用構造全体の問題としての性格を持っているようです。

 今回みたのは,一人親世帯の子どもの貧困率ですが,ここで見出されたわが国の特異性をして,一部のマイノリティーの問題と切って捨てることは誤りでしょう。

2014年1月23日木曜日

試験問題の解答

 昨日は調査統計法1の試験でしたが,やりっぱなしで終わりというのも何ですので,3問中1問の解答を掲載します。問2にて,以下のような問題を出しました。


 ちょっと戸惑った学生さんが多かったようですが,ヒントを与えたらできたようです。日本でいうと,有業者126人中61人(48.4%)がフルタイム,54人(42.9%)がパートタイム,残りの8.7%が自営等です。この構成比を,有業のボックス内で表現すればいいわけです。

 解答は以下のごとし。


 働き盛りの女性のすがたの違いが「パッと見」で分かる仕掛けです。これはエクセルでつくったものですが,手書きによる模範解答例も載せておきましょう。某学生さんの解答を拝借します。


 ご丁寧に,④の専業主婦の領分に色をつけてくれています。日瑞の差がスゴイですね。「ここまで違うことに驚きました」という添え書きも多数ありました。

 最新の『世界価値観調査』の結果は4月に公表されますが,2010年近辺のデータで同じ図をつくったらどうなっているか。その図柄がどうであるかによって,近年の男女共同参画施策の評価がなされることになるでしょう。
http://www.wvsevsdb.com/wvs/WVSAnalize.jsp

 調査統計法1の受講生のみなさん,お疲れさまでした。評価ですが,試験一発でつけることはしませんのでご心配なく。毎回の出席や課題提出等の記録もバッチリつけています。これらも勘案して総合評価をいたします。

 来年度は前期にて,調査統計法2という授業を担当します。こちらは発展科目です。統計法1はもっぱら座学でしたが,2ではコンピュータ(エクセル)を使ったデータ処理などを扱う予定です。よろしかったらお越しください。

2014年1月22日水曜日

迷惑行為を報告

https://twitter.com/yunishio/status/398835727611359232

 上記のツイートを迷惑行為として報告しました。

 本ブログの内容に対する反論のついでのようですが,このような誹謗中傷を受ける謂れはありません。「死んだほうがいい」などと記述することは,自身の人間性を疑われる行為であることをよく認識すべきかと思います。

 この人物の非道を,ここにて公表いたします。


*追記。この人物に当該ツイートの削除要請をしたところ,この人物が反論を寄せたブログ記事を削除することが条件などと言ってきました。そういうこと以前に,匿名で「死んだほうがいい」などと人を罵ることに,何の罪悪感も感じていないようです。

 この “ yunishio ” なる人物は,私が反論に応じないことを問題視しているようですが,匿名の反論など「論」とは認めません。

 もう,やれるだけのことはしました。あとは,ツイッター社からこの非道者に鉄槌が下されることを願うだけです。

以上

2014年1月21日火曜日

年収の官民差

 イカのスルメはしゃぶるほど味が出るといいますが,総務省の『就業構造基本調査』も然り。公表されている統計表の一覧をみるたびに,「こんなことまで分かるのか」と驚かされることがしばしばです。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm

 本調査の結果集計では,有業者の年収分布が,従業上の地位別・産業別に明らかにされています。私は,この統計表を使って,有業者全体と公務員の年収分布を比較してみました。

 年収の官民比較です。公務員の優位性はよく知られていますが,その程度を数字で表してみるとどうなのか。個人的な興味を抱いた次第です。ちなみに,本調査でいう年収とは,「賃金,給料,手間賃,諸手当,ボーナスなど過去1年間に得た税込みの給与総額」です(用語解説)。

 性別と正規・非正規の影響を除くため,男性の正規職員の年収分布を比べてみます。最新の2012年調査のデータをもとに,有業者全体と公務員の年収分布曲線を描くと,下図のようになります。年収が不明の者は分母から除外しています。


 予想通り,公務員の優位性が明らかです。全体のピークは300万円台ですが,公務員は500万円台なり。全体的にみても,公務員は高いほうに多く分布しています。ただ,年収1,000万以上の富裕層は全体のほうが多くなっています。民間の飛び抜けた富裕層でしょう。

 上記の分布から,年収の平均値(average)を出してみましょう。階級値の考え方に依拠して,100万円台の階級は中間の150万円,200万円台は250万円というように,一律にみなします。上限のない1,500万以上の階級は,一律2,000万円ということにします。

 この仮定によると,全産業の男性正規職員の平均年収は501万円,公務員のそれは604万円と算出されます。その差は1.2倍。全国値でみると,まあこんなものでしょうか。

 しかるに,この倍率は県によって大きく違うと思われます。私の郷里の鹿児島では,「公務員はいいよね」とよくいわれます。それもそのはず。民間の給与水準が低いので。地元の新聞で,県内の官民差は1.5倍などという記事を見かけたことがありますが,本当かしらん。

 私は,上記と同じデータを47都道府県分そろえて,先ほどと同じやり方で,全体と公務員の平均年収を計算しました。下表は,その一覧です。都道府県別の年収の官民差をご覧ください。


 男性正規職員でみて,年収の官民差が最も大きいのは秋田です。全体が397万円に対し,公務員は565万円。その差は1.42倍にもなります。前に,公立学校教員の給与の対民間比を出したことがありますが,そこでもこの県がトップでしたな。
http://tmaita77.blogspot.jp/2012/03/2010.html

 赤色は倍率が1.4以上ですが,秋田のほか,鳥取,長崎,宮崎,そして沖縄が該当します。年収の官民差が1.4倍を越える県です。郷里の鹿児島は1.37倍。1.5倍というのはオーバーですが,官民差が大きい部類に入ります。

 一方,都市部では倍率は低いですね。首都圏の1都3県は軒並み1.1倍程度です。大都市では,民間の給与水準が高いことによります。

 右端の官民差を表す倍率を地図化してみましょう。1.25未満,1.25以上1.30未満,1.30以上1.35未満,1.35以上という4階級を設けて,各県をグラデーションで塗り分けてみました。


 色が濃い県は,年収の官民差が大きい県ですが,やはり地方で多いですね。首都圏や近畿圏のような都市部は白色です。

 今回のデータは興味本位で作成したものであり,何かの主張をするがためにつくったものではありませんが,自治体オンブズマンなどの活動で,この手のデータに関心をお持ちの方もおられると存じます。そういう方々の参考になれば幸いです。

 今回みたのは男性の正規職員の年収ですが,一口に公務員といっても,属性によって多様です。女性や非正規にも目配りしたらどうでしょう。「官製ワーキングプア」という言葉があるように,非正規公務員の悲惨さはよく報じられるところです。

 次回は,公務員の年収構造を,性別・雇用形態別に俯瞰することのできる図をご覧に入れようと思います。

2014年1月18日土曜日

昭和30年代初頭の青年の自殺

 ここ数年,自殺者数が減少し,自殺防止の取組の効果ありと報じられていますが,青年層の自殺率だけは上昇しています。大卒者のシューカツ失敗自殺などが取り沙汰されていることを思うと,さもありなんです。
http://tmaita77.blogspot.jp/2013/10/blog-post_24.html

 しかるに,今の青年も大変ですが,昔の青年の「生きづらさ」といったら現在の比ではなかったことが知られます。下の図は,20代前半の自殺率の長期推移を描いたものです。当該年齢人口10万人あたりの自殺者数です。分子は厚労省『人口動態統計』,分母は総務省『人口推計年報』から得ています。なお,比較の対象として人口全体の自殺率カーブも添えています。


 今世紀以降,青年の自殺率が上昇し,全体の水準に近づいたなどと騒がれていますが,1950年代後半の頃は,この層の自殺率がべらぼうに高かったようです。ピークは1958(昭和33)年の65.6であり,2012年現在(20.4)の3倍以上です。

 1958年といったら,あの「三丁目の夕日」の時代です。高度経済成長への離陸期にあり,青年層もさぞ明るい未来展望を持てた時代だと思われますが,上図のカーブをみると「?」をつけざるを得ません。

 20代前半の位置を知るために,自殺率年齢曲線を描いてみましょう。青年の自殺率がピークであった1958年と2012年について,5歳刻みの年齢層別の自殺率を出し,折れ線でつないでみました。


 昔と今では,曲線の型が大きく違っています。現在は,中高年層をピークとしたフラットな型ですが,1958年では,青年層と高齢層の自殺率が際立って高くなっています。

 高齢層の自殺率が高かったのは,戦前の家父長制が崩壊し,高齢者の立ち位置が揺らいでいたことによるでしょう。高齢者は家族で扶養すべしという考えが揺らぐ一方で,年金制度も未発達だった頃です。現在の韓国と似た状況であったと思われます。

 それでは,問題の青年層のほうはどうか。1958年の曲線では,20代前半の箇所に鋭い山がありますが,これは何に由来するのでしょう。当時の自殺報道の記事をちょっと調べてみました。

 「聞蔵」と「ヨミダス歴史館」にて,昭和30年代前半という時期指定をして,「若者(青年)&自殺」という語で記事検索してみたところ,出るわ出るわ。事件の報道のほか,青年の自殺について考察した社説等も数多くヒットしました。

 その全貌を紹介することはとてもできませんが,最も興味をひかれた記事を一つ紹介します。1957(昭和32)年12月11日の朝日新聞の記事です。


 「古い考えとの断層」「モラル過度期の悲劇」ですか。この記事は,伊豆の天城山で起きた大学生男女の心中事件を引き合いに出していますが,個々の事件報道をみても,親から交際や結婚を反対されて心中といったものがやたら目につきます。

 当時は,見合い結婚と恋愛結婚が並存していた頃であり,相思相愛の間柄であっても結婚を認めてもらえず,無理心中に身を焦がす青年男女もいたことでしょう。これなどは「古い考えとの断層」の典型例です。

 2番目の「モラル過度期の悲劇」についても分かります。戦争が終わって10年ほどしか経っていない当時は,戦前と戦後の新旧の価値観が混在していた,まさに「モラル過度期」でした。こうした状況のなか,生きる指針に困惑した青年も多かったことでしょう。

 親とかの古い世代はこう言うけど,社会一般ではこう言われている。両者に引き裂かれる者もさぞいたことかと。ちなみに,当時の青年の自殺動機をみると,「厭世(えんせい)」がトップです。世の中が嫌(厭)になったということです。今では,学業不振とかシューカツ失敗とかでしょうが,昔はスケールがより大きなものでした。

 「激変の時代は危機の時代」。何かの本で読んだことがありますが,「激変の時代」という点では,当時も現在も同じです。情報化,グローバル化,私事化・・・。人々の生き方の変革を促すような地殻変動が目下進行中ではありませんか。

 働くことに対する意識一つとっても,親世代と子世代の間には断絶がみられます。自分たちの生き方(働かざる者食うべからず)を押し付ける親と,それに反発する子どもの葛藤。そうした諍いを苦に自殺する青年もいます。最近では,自殺動機の中で「親子関係の不和」の比重が高まっていることも付記しておきましょう。
https://twitter.com/tmaita77/status/417637380401532929

 今回お話したのは,半世紀以上も前の昔話ですが,現在ないしは近未来の問題に通じるものとして受け止めるべきだと思います。下の世代の新しい生き方を受容すること。それは,社会を揺るがすことではなく,社会を変革することにもつながり得るのです。