2020年12月31日木曜日

2020年の総括

  今日は大晦日です。昨年は気温が20度まで上がったと記憶してますが,今年は寒い日になりました。先ほど,生協で取り寄せた蕎麦をすすり,体を温めたところです。

 さて,2020年の総括です。今年も,実務教育出版から教員採用試験関連の本を刊行しました。毎年,最新の出題傾向に合わせて改訂しています。メインの『教職教養らくらくマスター』に加え,今年は小学校全科,中高社会,中高保健体育もかなり手を入れました。7~8月,ツイッターやブログの更新頻度が大幅に減ったのはそのためです。私は原則,食い扶持仕事は午前中しかしない主義ですが,それを崩した日が続きました。

 中高社会の大幅リライトは,勉強になりましたねえ。地理,日本史,世界史,地理,倫理の総復習ができました。古市さんの新潮新書『絶対に挫折しない日本史』では,専門家ではない素人目線で書いたことをウリにしています。私の『中高社会らくらくマスター』も,読者と対等目線で書かれています。教員採用試験受験の学生さんだけでなく,高校の社会科を1冊で総ざらいしたいという社会人の方にも,手に取っていただきたいです。

 連載のほうは,日本教育新聞とニューズウィーク日本版を今年も続けました。両方とも毎週のペースです。「よくネタが続きますね」と言われますが,ブログやツイログをちょっと漁れば,ネタなんていくらでも出てきます。日本教育新聞はもうすぐ300回,ニューズウィークは200回に達します。来年も淡々と続けていきます。まだ確定ではないですが,来年から,紙雑誌での新連載が始まるかもしれません。

 今年になってはじめて,弁護士に相談したのも特記事項です。私はパクリの被害に遭うのはしょっちゅうですが,これまでは一人で対応してきました。しかし今年の夏,初めて法律相談所を訪れ,専門家の助力(助言)を得た次第です。それをふまえ,地方の業者を著作権侵害で刑事告訴するに至りました。これも初めてのことで,いい経験になりました。今後は,正当な引用とはいえない無断転載や盗用に対しては,毅然とした対応をとります。この手の不正を見かけた方は,tmaita77@gmail.com まで情報をお寄せくださいませ。

 私はこれまで一人で突っ張って生きてきましたが,40代半ばにさしかかり,それも限界になってきました。何かあったら,人に相談するようにいたします。その伝でいうと,最近,独り身がこたえるようになってきました。とくに夜です。学生の頃は完全に夜型で,静かな夜を,テレビも音楽もつけず,分厚い専門書を読んで過ごしていたものですが,今ではそんなことはできないですね。夜は早く床につき,面白い本を1時間ほど読んで消灯の日々です。おかげで睡眠時間も増え,健康的になりました。(笑)

 しかし独りは辛い。これから加齢にともない,その度合いが増していくかもしれません。ツイッターで言いましたが,来年は横須賀市のウォーキングクラブにでも入ろうかと,ちょっとばかり本気で思っています。私は人づきあいは苦手ですが,それを全くしない孤独の怖さが身に染みるようになってきています。

 最後にあと一つ,本ブログは2010年12月16日開設ですので,今年で10周年を迎えたことになります。今まで書いた記事は本記事を合わせて1701本。体力の低下から,以前に比して更新頻度が落ちてきてますが,マイペースで続けていきたいです。ツイッターで統計表やグラフの試作品を出し,反響があったらブログで考察を添える。こういう分担ができています。

 ではでは。来年もブログとツイッター,教員採用試験の本,そして各種連載をよろしくお願い申し上げます。みなさま,よいお年をお迎えください。

2020年大晦日 舞田敏彦

2020年12月30日水曜日

2020年12月の教員不祥事報道

  今日は12月30日。明日の大みそかは,今年の総括をしますので,月末の教員不祥事報道は今日やります。

 今月,私が把握した教員不祥事報道は52件です。年末であるためか多めになっています。兵庫県の小学校校長が覚せい剤所持で捕まり,地元に大変な衝撃を与えています。同じく兵庫県では,15年前の生徒へのわいせつ行為が原因で,高校教諭が免職になっています。神戸新聞の記事に書いてありますが,「免職に時効はない」のです。

 大分の高校では,高校の教員採用試験に合格した女性の教員免許偽造が発覚しました。それまで常勤講師をしていたみたいですが,この段階では発覚しなかったみたいです。講師としての採用の時点では,きちんと調べなかったのでしょう。晴れて試験に受かり,正教諭として採用する段階で,ちゃんと調べたことで明るみになったと。

 偽造免許で教えていた間の単位は校長裁量で認められるみたいですが,有期の講師として教壇に立たせる場合であっても,きちんと調査してほしいと思います。今はパソコン等で,免許偽造のような不正も起きやすくなっているのですから。

 コロナ下での全校集会に反対し,ガラスをたたき割った中学校教諭(鳥取)。私と同い年ですが,気骨ありますね。

 今日は気温が上がりましたが,明日には強烈な寒波が到来するとのことです。横須賀も,夜になって急に気温が下がってきました。今夜は暖かくしてお休みください。


<2020年12月の教員不祥事報道>

評判は“指導熱心な教師”…勤務する小学校の女子トイレに盗撮目的で侵入 6年生担任31歳男逮捕(12/1,石川テレビ,石川,小,男,31)

警察官に起こされ、踏んでいたブレーキ緩み数十メートル走行…教諭が酒気帯び運転(12/2,読売,栃木,中,男,27)

同僚女性にケガ 指宿市の男性教諭 停職1か月の懲戒処分

 (12/3,鹿児島読売テレビ,鹿児島,小,男,36)

男性教諭を書類送検 児童骨折させた疑いで熊本東署

 (12/4,熊本日日新聞,熊本,小,男,40代)

女性はねられる 中学教員を逮捕(12/4,NHK,岩手,中,男,57)

男性教師が「盗撮目的」で高校に侵入 建造物侵入容疑で緊急逮捕

 (12/5,長野放送,長野,高,男,23)

中学教諭を万引きの疑いで逮捕(12/6,NHK,広島,中,男,59)

いじめ「ある」を「ない」に アンケート22人分改ざんの小学校講師を懲戒免職

 (12/7,毎日,宮城,小,男,48)

県立特別支援学校教員2人を懲戒処分 児童ポルノ所持に無許可で同人誌の執筆販売(12/7,FNN,高知,特男55:わいせつ動画公開,特女40代:無許可執筆)

1年以上生徒に”嫌がらせ” 懲戒処分 盛岡管内の男性教諭

 (12/8,FNN,岩手,中,男,57)

野球部コーチの男性教諭、部員にけがをさせ謹慎処分

 (12/8,FNN,鹿児島,高,男,34)

現金盗んだ教諭を停職3か月(12/9,NHK,青森,特,男,36)

酒気帯び運転で中学校教諭逮捕(12/12,NHK,福岡,中,男,42)

小学校校長を覚醒剤所持容疑で逮捕 「自分で使うため」

 (12/12,朝日,兵庫,小,男,54)

下着撮影で不法侵入か 教頭逮捕(12/14,NHK,奈良,小,男,49)

男性教諭が飲酒運転 交差点で停車中に寝ているのを警察官が発見

 (12/15,読売,大分,小,男,32)

大津市の小学校で不適切な指導(12/15,NHK,滋賀,小,男,32)

スーパーで万引、書類送検も報告せず 男性教諭を停職

 (12/16,神奈川新聞,神奈川,小,男,50)

わいせつ把握も隠ぺい 校長停職(12/16,NHK,千葉,小,男,59)

松戸市立小学校の男性講師 男子中学生にわいせつな自撮り画像送らせ懲戒免職処分

 (12/17,チバテレ,千葉,小,男,29)

窃盗疑いの教諭、懲戒免職 東京都教委(12/17,産経,東京,小,男,27)

覚醒剤使用疑いで中学教諭逮捕 両親他界し「寂しかった」

 (12/18,共同通信,埼玉,中,男,52)

「お前が来たでマスクするわ」教師が生徒に発言、文書訓告

 (12/18,名古屋テレビ,三重,高,男,40代)

帰り道4缶買う…勤務先の小学校から酒飲みながら車で帰宅 校長が懲戒免職

 (12/18,石川テレビ,石川,小,男)

・児童の保護者にキス、区立小学校副校長を懲戒免職

 (12/18,NHK,東京,小,男,48)

出勤時に速度違反 さいたま市教委、小学校勤務の男性助教諭を戒告

 (12/20,埼玉新聞,埼玉,小,男,29)

下着窃盗の中学教諭免職 群馬県教委(12/21,産経,群馬,中,男,39)

同僚の机や書類をスプレー糊で汚す 55歳の高校教諭を逮捕

 (12/21,群馬テレビ,群馬,高,男,55)

日本酒1升飲み運転の教諭懲戒(12/21,NHK,島根,小,男,58)

クラクション鳴らしながらあおり運転 書類送検の中学教諭を停職

 (12/22,神戸新聞,兵庫,中,男,46)

中学の非常勤講師の男を暴行の疑いで逮捕(12/22,MBS,京都,中,男,23)

15年前に女子生徒と交際、わいせつ行為 50代の高校教諭を懲戒免職

 (12/22,神戸新聞,兵庫,高,男,50代)

窃盗の教諭に停職4カ月 県教委が懲戒処分

 (12/22,岩手日報,岩手,高,男,50代)

山口・教師2人懲戒免職 わいせつ行為と万引き

 (12/23,山口朝日放送,山口,わいせつ:中男40代 万引き:小女50代)

軽トラックにはねられ男性が重体 運転していた小学校の校長を逮捕

 (12/23,高知さんさんテレビ,高知,小,男,57)

男子生徒にキス 中学教諭を処分 貸したタブレットに写真

 (12/24,毎日,大分,中,女,20代)

高校教諭、無免許で8年間授業 熊本の私立校

 (12/24,熊本日日新聞,熊本,高,男,40代)

精力剤を万引きした59歳の教諭「レジに持っていくのが恥ずかしかった」

 (12/24,読売,広島,中,男,59)

小学校教諭が女性10人に痴漢行為 神戸市教委が懲戒免職

 (12/24,神戸新聞,兵庫,小,男,24)

「孤独感あった」男性教諭、知人女性2人に性的な電話やメール

 (12/24,読売,鹿児島,中,男,48)

女性講師、教員免許を偽造 教員採用試験合格で発覚

 (12/24,毎日,大分,高,女,25)

ストーカー行為など教諭2人停職

 (12/24,NHK,滋賀,ストーカー:中男42,セクハラ:高男37)

室蘭 小学校の教師が児童の名前や点数など記載のノート紛失

 (12/25,北海道テレビ,北海道,小)

コロナ下での全校集会に激高、教諭がガラスたたき割る

 (12/25,読売,鳥取,中,男,44)

スマホの使用で長女と揉めけがをさせた中学校教頭を戒告処分

 (12/25,CBCテレビ,岐阜,中,男)

盗撮目的侵入で小学校講師に罰金(12/25,NHK,長野,小,男,23)

実習講師“みだらな行為”で免職(12/25,NHK,福島,高,男,27)

学校の備品の天体望遠鏡 私物と取り換えて盗んだとして高校教諭を懲戒免職

 (12/25,名古屋テレビ,愛知,高,男,60)

盗撮容疑の非常勤講師を懲戒処分(12/25,NHK,茨城,中,男,26)

熊本市の西原小 児童骨折させた教諭に停職6月の懲戒処分

 (12/25,テレビ熊本,熊本,小,男,47)

大阪府教委 旅費不正受給の教諭を停職処分 部活動指導を虚偽申請

 (12/25,産経,大阪,高,男,34)

盗撮の中学講師、県教委懲戒処分 停職6月

 (12/30,毎日,茨城,中,男,26)

2020年12月26日土曜日

都道府県別の大学進学率(2020年春)

  毎年書いているテーマですが,今年の分をようやく書けそうです。いつもは,8月に公表される『学校基本調査』の速報値からデータを出せるのですが,今年はコロナの影響からか,速報集計が簡素なもので,県別の大学進学率は出せず,12月下旬の確報値公表まで待ったという次第です。

 さて,2020年度の『学校基本調査』の結果概要によると,今年春の大学進学率は54.4%と報告されています。昨年は53.7%でしたので,0.7ポイント伸びたことになります。コロナ禍により大学進学率が下がったのではないかという予想もありましたが,それは当たりませんでした。

 ここでいう大学進学率とは,18歳人口ベースの浪人込みの進学率で,同世代の何%が4年制大学(以下,大学)に入ったか,というものです。計算方法には一定の仮定も含まれますので,分子と分母について詳しく説明しておきましょう。

 分子には,今年春の大学入学者数を使います。過年度の高卒者(浪人)も含まれますが,今年の現役生からも浪人経由で大学に入る人が同数いるとみなし,相殺するとみなします。今年春の大学入学者数は63万5003人(A)です。

 分母には,今年3月時点の推定18歳人口を充てます。その近似値として,3年前の中学校および中等教育学校前期課程の卒業者数を使います。3年前の2017年春の中卒者は116万351人,中等教育学校前期課程卒業者は5523人,合わせて116万5874人(B)です。

 よって,2020年春の18歳人口ベースの浪人込みの大学進学率は,BをAで割って54.5%となる次第です。文科省の公表値(54.4%)とちょっとだけズレてますが,誤差としておきましょう。今では同世代の半分が4年制大学にいくことの,数値的な表現です。

 この大学進学率を都道府県別に出す場合,分子には,当該県の高校出身の大学入学者数を使います。私の郷里の鹿児島県だと,今年の春,本県の高校出身者で全国のどこかの大学に入った人は6161人で,推定18歳人口(3年前の中学,中等教育学校前期課程卒業者)は1万5958人。よって,鹿児島県の大学進学率は38.6%となります。先ほど出した全国値(54.5%)と比して低いですねえ。

 私は『学校基本調査』の結果原表から分子と分母を採取し,47都道府県の大学進学率を計算しました。ジェンダーの差もみるため,各県の男女別の数値も出してみました。以下の表は,その一覧です。黄色マークは最高値,青色マークは最低値で,赤字は上位5位を意味します。


 左端の合計をみると,今年春の大学進学率の全国値は54.5%ですが,最高の74.5%から最低の38.6%までの開きがあることが分かります。前者は東京,後者は九州の宮崎ですが,その差は2倍近くで,同じ国内とは思えぬほどの違いです。

 表をざっと見ると,おおよそ,都市的なエリアで高く,地方で低い傾向にあります。東北や九州といった周辺部は低いですね。大学が地域的に偏在しているためでしょう。山梨の大学進学率が高いのは,東京に近いためではないでしょうか。私は八王子の私大で7年ほど教えたことがありますが,大月から通っているという子がいましたね。

 首都圏でみて,東京が他の3県(埼玉,千葉,神奈川)を圧倒しているのは,分子が「当該県の高校出身の大学入学者」であるためと思われます。3県在住であっても,大学進学を志す生徒は都内の私立に行くことが多いため,3県の大学進学率は低く出ると。この点に留意してください。

 男子と女子でばらしてみると,大学進学率は男子の方が高くなっています。全国値でみると,男子が57.8%,女子が51.0%です。「女子学生亡国論」がささやかれていた頃と比べると,だいぶマシになってはいるのですが,大学進学チャンスにはジェンダー差があることに要注意です。男子と女子の学力差によるとは考えにくく,女子を自宅外に出すをためらう親が多い,1人しか大学に行かせられないなら男子優先,というような事情が未だにあるのかもしれません。

 なお男子と女子の差は県によって違っていて,男子の進学率が女子より10ポイント以上高い県もあります。右端の性差の欄をみると,北海道,埼玉,福井,山梨がそうです。私の郷里の鹿児島でも,男女差が8.6ポイントあります。女子の大学進学率は,鹿児島が最下位ですね。2015年頃,本県の知事が「三角関数を女子に教えて何になる」と発言したのも,記憶に新しい。

 一方,東京は自宅から通える大学が多いからか,大学進学率の性差はほとんどありません。徳島,高知,沖縄のように「男子<女子」の県もあります。県内に,女子の定員が多い大学でもあるのでしょうか。

 表の数値一覧だけでは味気ないので,47都道府県の大学進学率(男女計)をマップにしておきましょう。3つの階級で色分けすると,以下のようです。


 濃い色は50%以上ですが,数えるほどしかないですね。同世代の2人に1人が大学に行く時代といいますが,それは限られた地域の話であることが知られます。

 大学進学率の地域差が,子どもの能力差の反映とは考えにくいです。毎年,子どもの学力が首位の秋田の大学進学率は39.4%と低くなっています。下から4番目です。『年収は住むところで決まる』(プレジデント社)という本が話題になったことがありますが,大学進学チャンスも「住むところで決まる」という現実が,我が国にはあります。

 まずもって大きいのは,大学が都市部に偏在していることですが,大学進学の費用負担能力の違いも見ないといけません。よく知られているように,日本の大学の学費はバカ高ですので。データで見ると,大学生のお父さん年代の稼ぎって,地域差がスゴイのですよね。有配偶の45~54歳男性の所得中央値を計算すると,東京は704万円であるのに対し,私の郷里の鹿児島は463万円,秋田は445万円,最低の沖縄に至っては370万円です。
https://twitter.com/tmaita77/status/1342606388455862272

 地方は住居費等の生活費が安いので,稼ぎが少なくとも何とかなると言われますが,子の大学進学に要する費用は,東京と変わりません。いや,大学がある都会での下宿代を負担しないといけないので,それ以上です。少ない所得の中から,「学費+下宿費」のダブルの負担が課せられるわけです。都市と地方の経済格差が大学進学機会の地域格差に転化している事態を推認するのは,あまりにも容易い。

 地方の家庭のダブル負担を緩和すべく,地方から都会に出てきている下宿学生の家賃の半額を補助することはできないでしょうか。東大は,地方出身の女子学生の家賃補助をしていて,地方の才能を引き寄せるのに寄与しているとのことです。

 ちなみに大学進学率の地域格差の要因は,親世代の経済格差だけではありません。そもそも地方には,大卒学歴を要する仕事が少なく,大学進学の価値を認めない人も多し。「家業の農業を継がせるのに,大学なんて要らん。むしろ害になる」。私は修士課程のとき,鹿児島の奄美群島のフィールドワークをしましたが,こういう声をよく聞かされました。地域に大学がないのはもちろん,大学を出たという人もいないので,大学のイメージもわかない,という人もいましたね。

 大学進学年齢の親といえば,大よそ45~54歳くらいですが,この年齢層(学校卒業者)で大学・大学院を出ている人の割合を出すと,東京では40.5%ですが,鹿児島では16.9%,秋田では14.3%しかいません(『就業構造基本調査』,2017年)。

 この指標(親世代の大卒率)は,各県の大学進学率と非常に強く相関しています。横軸に親世代の大卒率,縦軸に大学進学率をとった座標上に,47都道府県を配置すると以下のようになります。大学進学率は,最初の表の男女計の数値です。


 どうでしょう。大卒の親の率が高い県ほど大学進学率が高い,右上がりの傾向です。統計的に有意なプラスの相関で,相関係数は+0.8152にもなります。親年代の所得よりも,大学進学率と強く相関しています。

 家庭の経済力もですが,親が大学とは何たるかを心得ているか,大学進学の価値を認めるか,さらには地域に大学進学を当然視するクライメイト(カルチャー)があるか,ということが大きいと思われます。なお親世代の大卒率(上図の横軸)は,男子よりも女子の大学進学率と強い相関関係にあります。女子のほうが,親の意向の影響を被る度合いが高いようです。まあ,肌感覚に照らしても分かりますよね。

 ここまでくると親の考え方や地域文化の次元であって,外部からとやかく言う(働きかける)のは余計なお世話のようにも思えますが,東京工業大学は,地方の非大卒家庭の学生に返済義務なしの奨学金を給付する,という政策を発表して話題になりました。いろいろ批判もあったようですが,親の頑なな意向を和らげるうえで,こういう政策もありなのかな,という気もします。

 以上,大学進学率の地域格差の実態と,その背景要因について,思いつくままのことを綴ってきました。子どもの学力トップの秋田の大学進学率がなぜ低いか,能力とは無関係の居住地域の社会経済要因によって進学が阻まれることが多々あることについて,幾分なりともイメージしていただけたのではないでしょうか。

 私の大学院時代のテーマは「高等教育機会の地域格差」でしたが,亡き恩師が煙草をふかしながら「大学進学率が地域によって違うなんて当たり前だろう,何が問題なんだ?」とよく聞いてきたものでした。当時は返答に窮したものですが,今となっては,大学進学率の地域による違いは,是正すべき格差であると言えると思います。

 県レベルでみてもものすごい違い(74.5%~38.6%)があること(最初の表),各県の進学率は社会経済指標とリンクしていること,地方に埋もれた膨大な才能の存在があること(秋田…),などが根拠です。

 まずもってなすべきは,上述のように,地方学生の進学費用を緩和すべく,都市部での下宿費用の補助かと思います。高等教育修学支援制度により,低所得層の学費負担はかなり緩和されましたが,下宿学生の場合,この制度の恩恵を受けられる所得制限をもっと緩めてもいいでしょう。

 地域の文化への働きかけというのはなかなか難しいのですが,大学がないへき地に学生を派遣し,大学生活について語らせる,というのはどうでしょう。実をいうと,奄美群島のフィールドワークの結果をまとめた私の修論を,鹿児島大の某教授が面白がってくれ,「離島に学生を行かせるか」と言ってくれたことがありました。へき地在住の勉強好きな子どもたちの進路展望に,大学進学というオプションをちらつかせるのです。

 教育基本法第4条が定める教育の機会均等原則は,高等教育段階においても適用されるべき理念なのです。

2020年12月25日金曜日

飢餓の広がり

  今年は大変な年でしたが,天候はよく,農作物の育ちがよい豊作だったそうです。しかし外食産業の落ち込みで需要が減っているので,供給過剰で値崩れが起き,農家としては頭を抱えています。いわゆる豊作貧乏です。

 私が住んでいる三浦半島の南西は畑が広がっていますが,廃棄の大根が山積みになっているのを見ると,心が痛みます。コロナ禍で1日1食という人もいますが,困っている人,お腹を空かせている人に届けることはできないものか,コメなどは保存がきくのだから,国が買い上げて備蓄すればいいのではないか。こんなふうに思います。

 食べられる食べ物を捨てる,いわゆる食品ロスが問題化して久しいですが,今の日本では対極の問題も起きています。そう,飢餓です。飽食のニッポンで飢餓なんてあるわけないと思われるでしょうが,あるのです。厚労省の統計でみても「食糧の不足」という原因で死ぬ人は毎年いますし,死までいかずとも,十分な食べ物がなく空腹で過ごしている人となると,裾野はうんと広がります。

 データもあるんですよね。2017~20年にかけて,世界の研究者が共同で実施した『第7回・世界価値観調査』では,「この1年間で,十分な食料がない状態で過ごしたことがあるか?」と問うています(Q51)。回答の選択肢は,「しばしばあった」「時々あった」「まれにあった」「なかった」の4つです。

 調査対象の国民のうち,「しばしば」ないしは「時々」と答えた人のパーセンテージを国別に出し,高い順に並べると以下のようになります。WVSサイトのオンライン集計で出したものです。


 データが分かる,49か国の飢餓経験率です。当然と言いますか,発展途上国では率が高くなっています。アフリカのナイジェリアやジンバブエでは,程度の差はあれ,半数近くの国民が飢餓を経験しています。最近,日本人がよく出向くようになっているタイやフィリピンは3割弱で,大国のアメリカは12.5%です。

 日本はというと9.2%で,国民の1割弱が飢餓を経験しています。世界全体では低い部類ですが,お隣の韓国や中国,ヨーロッパのドイツと比したら格段に高くなっています。英仏や北欧のデータはないですが,先進国の中では飢餓率が高いとみてよいでしょう。

 飢餓経験については,2010~14年に実施された『第6回・世界価値観調査』でも尋ねられています(Q188)。この時点の数値と比較すると,日本の「!」という状況が露わになります。以下の図は,日本,韓国,中国,アメリカ,ドイツという主要国の時系列変化です。


 韓国,中国,ドイツでは飢餓率が下がっており,アメリカは微増というところですが,日本は増加幅が大きくなっています。5.1%から9.2%への伸びです。日本では最近になって飢餓がじわじわと広がり,アメリカに迫る勢いになっています。

 これはどういう事情によるのか。最近の日本の雇用情勢悪化や生活不安の広がりを指摘するのは簡単ですが,国民のどの層で飢餓が増えているのかを見ることで,より確かな見当をつけられます。

 私は第6回と第7回の『世界価値観調査』の個票データを使って,日本人サンプルを10歳刻みの年齢層に分け,各層の飢餓経験率を算出しました。日本は第6回調査は2010年,第7回調査は2019年に実施されています。この10年ほどで,飢餓率はどの層で伸びているのでしょうか。


 どの年齢層でも飢餓率は高まっていますが,両端の若年層と高齢層で伸びが大きいのが知られます。20代は7.1%から11.5%,70歳以上は5.2%から14.2%への増です。

 20代で増えているのは,大学進学率の高まりにより,お金のない学生が増えていること,若者の非正規化・賃金低下,またソロ化(未婚化)といった事情が考えられます。高齢層で飢餓が増えているのは,年金削減に加え,身寄りのない単身老人が多くなっていることなどが挙げられるでしょう。

 50代でも4.3%から8.3%に増えていますね。1月12日の記事で示しましたが,年齢層別の餓死者数をみると,ピークは50代です。人件費が高いという理由でリストラされても,年齢の理由で再就職が困難で,生活保護を受けようにも「まだ働けるはず」と,なかなか申請書が受理されるのは難しい。いろいろ苦難がふりかかるステージです。

 いやはや,飽食の国といわれる日本ですが,目を凝らしてみると,ご飯にありつけない飢餓が確実に広がっていることが分かります。もはやアメリカと同等,いやそれ以上のレベルです(下図)。


 日本では,国民1人が茶碗1杯分の食べ物を毎日捨てるといいます。また冒頭で書いたように,供給過剰の農作物はバンバン廃棄されます。狭い一つの島国の中で,こうした食品ロスと飢餓が同時並行で起きるというのは,何とも不可思議です。それだけ富の偏り(格差)が大きくなっている,ということでしょう。

 なずべきは,需要と供給をしっかり結びつけること,すなわち飢える人に対し,有り余る食物を届けることです。最近ではフードバンクの取組が盛んですが,区市町村に一つは,官製のフードバンクを設けるのを義務付けたらどうでしょう。余剰の食べ物を備蓄し,困った人が利用できるようにするのです。

 あと一つは,困ったら助けをためらうことなく求められるようにする「SOSの出し方教育」の充実です。近年,子どもの自殺対策として,こうした「SOSの出し方教育が重視されています(2018年,文科省通知)。「恥の文化」がある日本の国民は,困った時であっても,他人に助けを求めるのが苦手です。福祉にしても,「使う」ではなく「頼る」という言い回しがよくとられますが,正確なのは前者です。福祉は「頼る」ものではなく,必要な時には,いつでも気軽に「使う」もの。厚労省もようやく本気になってきて,生活保護を積極的に利用してほしい,とHPで告知していますが,SOSを発するメンタルを子ども期より育むことが求められます。

 食品ロスと餓死,空き家と住居難民……。こうした奇妙な組み合わせが同居するというのは,社会の資源が国民に適正に分配されてないが故です。資源を供すること,それを使うのを遠慮なく申し出ること。地に足がついた形でそれを後押しするのは,国の役割です。

 最初の表によると,日本国民の飢餓経験率は9.2%,人口1億2千万人とすると,実数にして1100万人ほどですね。東京都の人口と同じくらいの人が,飢えを経験していることになります。決して,ネグリジブルスモールではありません。

2020年12月21日月曜日

ストレスの年齢曲線

  今年も残り僅かになってきました。本当に大変な年でしたが,その様を可視化する経験的事実(データ)も溜まってきています。先日,厚労省による今年11月の自殺統計が公表されたところです。

 自殺統計というと,警察庁のものが使われることが多いですが,月別の速報値となると,国民全体,トータルの男女別という,ラフな数値しか知れません。これでも,前年に比して悲惨な状況になっているのを実証するには十分ですが,願わくは年齢層別の数も知りたい。厚労省の細かい集計データは,それを可能にしてくれます。

 厚労省の月別自殺統計によると,1月から11月までの自殺者数は,昨年(2019年)は1万7074人でしたが,今年(2020年)は1万7794人となっています。720人の増加で,増加率にすると4%です。

 「ん?思ったより増えてないな」と思われるかもしれませんが,これは全体で見た場合で,性別・年齢層別にみると違った数値が出てきます。以下の表をご覧ください。


 まず男性と女性の総数をみると,男性は前年より減っているではないですか。増えているのは女性です(1万1833人→1万1779人)。年齢層別にみると,男性で増えているのは若者と高齢層だけですが,女性は全ての年齢層で自殺者が増加しています。とくに若年女性において,増加倍率が高くなっています。

 コロナ禍が社会のどの層にダメージを与えているかが浮き彫りになりますね。ちょうど一昨日,「女性の自殺が急増 非正規,DV被害,産後うつ…弱い人にシワ寄せの現実」(アエラ)という記事を見かけましたが,自殺統計にそれがハッキリ出ているように思えます。

 コロナ禍による雇止めの標的は,言わずもがな非正規雇用です。非正規の多くは女性。コロナで切られているのは非正規女性で,とくに若年女性において生活苦が広がっています。独り身の人は大変でしょう。家族がいればいいかというとそうでもなく,巣ごもり生活により,家庭においてDV被害を受けるケースも増えていると聞きます。上記の記事タイトルにある「非正規,DV被害」とは,こういうことでしょう。

 これらはさんざん言われていますが,あと一つの「産後うつ」というのは,私にとっては新鮮でした。この点について,アエラ記事では「感染を恐れて里帰り出産や産後の親のサポートを控え,人に会う機会も減らしている状況がある」とし,コロナでサポートが減ったことで,産後うつのリスクが高まっているとしても不思議ではない,という見解が書かれています(筑波大学,松島みどり准教授)。出産も大変になっているわけです。

 若年女性の自殺増加の背景に,こうした問題があるとは,不勉強な私にとっては初耳でした。

 出産期の女性のストレスが高いことは,統計で「見える化」できます。心理的なストレス尺度として有名なのは,K6スコアです。アメリカのKesslerが考案したもので,6つの設問への回答をもとに,対象者のストレスレベルを0~24点のスコアで測ります。

 ありがたいことに,昨年の厚労省『国民生活基礎調査』において,12歳以上の国民の点数分布が公表されています。3年に1度の大規模調査では,国民のメンタル面も調べるみたいです。健康に関わる統計表一覧の表24です。同調査から推計される,12歳以上の国民(1億220万人)の点数分布は,以下のようになります。


 国民の4割が,最低の0点ですね。6つのストレス設問の全部に「まったくない」と回答した人たちです。5点以上は28.2%,10点以上は10.0%という具合です。上記の分布から平均点を計算すると,3.24点となります。

 原資料の結果表には,性別・年齢層別の点数分布も出ています。これをもとに,各年齢層のK6スコアの平均点を算出し,折れ線グラフにすると以下のようになります。


 どの年齢層も「男性<女性」で,20代後半女性が最も高くなっています。結婚・出産期で,結婚退職,姓変更,出産,産後うつなどが怒涛のように押し寄せるためでしょう。40代後半でペコっと上がるのは,更年期のゆえでしょうか。

 上述のように,コロナ禍によって,女性の産後うつのリスクが殊に高くなっています。親からのサポートも減っていますからね。それを補うのは「公」の役割で,助産師や保健師による訪問サポートなどの拡充も求められるところです。

 なおストレス曲線は,70代以降上昇に転じることにも要注意です。おそらく孤独のゆえかと思いますが,コロナで対面での接触が制限されている今,高齢層の孤独,それに伴う心の病みは一層深くなりつつあります。若者のようにSNSなんてしてないでしょうから,リアルな接触が制限されるとなると,まさに孤独です。最初の表をみると,高齢層にあっては,男女問わず自殺が前年より増えています。

 これを機に,デジタルコミュニケーションを始めてみるのもいいかもしれません。「フォロワー*万人のツイッターおばあちゃん」なんていう記事を見かけますが,活き活きしているではないですか。高齢者の皆さんも,ICT機器を手に取っていただきたいと思います。それをサポートする事業へのニーズも,今後は増すのではないでしょうか。

2020年12月11日金曜日

フルタイム就業者の収入性差の国際比較

  だんだんと寒くなってきました。ステイホームの年末ですが,いかがお過ごしでしょうか。

 2018年のISSP(国際社会調査プログラム)の調査結果が公表されました。毎年,特定の主題を立てて,日本を含む各国の意識調査をしています。ホームページから個票データもダウンロードでき,大変ありがたいです。

 2018年の主題は「宗教」で,私が関心を持つ設問はあまりありませんでした。しかし貴重なのは,毎年共通の属性を問う設問です。性別,年齢,就業状態,配偶関係,世帯人数などいろいろですが,就業者の年収(月収)も尋ねています。個票データを使えば,各国の男女別の分布を出し,平均値を計算して比較することもできます。

 稼ぎのジェンダー差が大きいのはどの国か,という問いへの答えを出してみようと思います。この手のデータはILOサイトのデータベースにもあった気がしますが,ここでは,フルタイム就業者に絞った比較をします。全労働者だと,フルタイム・パートの構成が影響しますからね。

 私は,上記のISSP調査(2018年)の個票データを使い,各国の25~54歳のフルタイム就業者のサンプルを取り出しました。フルタイム就業者とは,週35時間以上働いている人です。この条件に当てはまり,収入の設問に有効回答をしている就業者は,日本だと男性が236人,女性が146人です。この人たちの年収の分布を整理すると,以下のようです。


 年収の区分は,階級値で示されています。150万円は100万円台,250万円は200万円台という具合です。マックスの2000万円は,年収1500万円以上を指します。

 分布をみると,同年齢のフルタイム就業者でも違いますね。最頻階級は,男性は400万円台ですが,女性は何と100万円台です。フルタイム就業者でこれです。男女とも低いですが,女性の低さには驚きます。200万未満(フルタイムワーキングプア)の率は,男性は3.8%ですが,女性は31.5%にもなります。

 上記の表から平均値を出してみます。やり方はご存知ですよね。男性の場合は,以下のようにして求めます。

 {(50万×1人)+(150万×8人)+…(2000万×1人)}/236人=526.4万円

 男性は526万円,女性は303万円と出ます。男性は女性の1.74倍,同じフルタイム就業者でこれです。不合理ともいえる格差です。賃金の性差に加え,女性は家事・育児等による制約も課されるためでしょう。

 それは多かれ少なかれ,どの社会も同じ。収入が「男性>女性」なのは万国共通。日本よりそれが顕著な国もあるかもしれない。こう言われるでしょうか。ISSPは国際調査ですので,他国のデータも出せます。上記と同じように,各国の25~54歳のフルタイム就業者の収入分布を出し,男女の平均値を計算しました。

 以下は,日本を含む7か国の一覧です。算出された平均値は各国通貨で,日本とアメリカは年収,他は月収によります。


 7か国のデータですが,「男性/女性」倍率は日本が一番大きいですね。日本は1.74倍ですが,お隣の韓国は1.40倍,アメリカは1.24倍,北欧のスウェーデンは1.07倍で,男女差はほとんどありません。女性の社会進出先進国の色が出ています。この国では,保育所の枠を用意するのは自治体の義務です。

 他の調査対象国のジェンダー倍率も出してみます。2018年のISSPの個票データから,27か国の男女別の平均年収(月収)の計算できます。以下は,倍率が高い順に並べたものです。日本,ノルウェー,ニュージーランド,アメリカは年収,他は月収によることを申し添えます。


 フルタイム就業者で比して,男性は女性の何倍か? むむむ,日本の1.74倍は,データが出せる27か国の中で最も高くなっています。

 われわれの感覚からすれば,もはや違和感もないレベルですが,国際データの中で位置づけてみると,異常であることが分かります。日本は,収入のジェンダー差が最も大きい社会なり。

 フルタイム就業者の平均年収の「男性/女性」倍率が1.74倍,これを当たり前のことと見なしてはいけません。日本はまだまだ,ジェンダー平等を進める余地が多分にあることを教えられます。

2020年12月10日木曜日

コロナ禍におけるテレワーク実施率

  コロナ禍が社会を大きく変えつつありますが,就労の世界でいうと,その最たる変化は,テレワークの普及です。オフィス以外の多様な場で業務をこなすことで,「密」を避けようという意図から,こういう働き方が導入されています。

 しかし,「テレワークができるのは一部のホワイトカラーだけ,現業職はまず不可能。TWができているのは,全労働者の1割もいないのではないか」という声も聞かれます。いやいや,さすがに1割はいるかと思いますが,どうなんでしょう。

 前々回で使った,内閣府の『新型コロナウィルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査』では,感染症の影響下で経験した働き方を尋ねています(Q13)。対象は,仕事をしている15歳以上の就業者(6649人)です。9つの選択肢を提示し,当てはまるものを全て選んでもらっています。以下は,各項目の選択率(%)です。

 
 テレワーク,勤務日制限,フレックス,時短といった項目が挙げられてますが,就業者の41.1%が最後の「いずれも実施していない」を選んでいます。コロナ禍にあっても,働き方が変わってない人たちです。多くが現場作業の人たちでしょう。

 テレワークについては,3つのレベルに分けられています(1~3)。100%TWが10.5%,50%以上が11.0%,50%未満が6.9%,です。これら3項目の選択に重複はないので,独立した割合と読めます。TW中心の就業形態に移行したのは,1と2を足して21.5%と見なせそうです。

 結構いますね。国内の全労働者は6000万人ほどで,このうちの2割(1200万人)がTW中心の働き方に変わっていると推測できます。1200万人といえば,東京の人口よりちょっと多い程度ですが,地方移住を考えている人も少なからずいるでしょう。この人たちを取り込めたら強い。そのカギは,子育て支援を充実させることです。コロナ禍の影響で,大都市を出て行っているのは子育て年代ですので。

 テレワークに移行した労働者のパーセンテージの見当はつきました。次に見たいのは,コロナ禍でTWに移行したことで,意識にどういう変化が起きたかです。「通勤地獄から解放された,自宅で自分のペースで仕事ができる」といったプラスの声もあれば,「孤独を感じる,労働時間に際限が無くなった」というマイナスの声も聞かれます。私はずっと,在宅の自営業ですが,後者については肌感覚でよく分かります。

 上記の表によると,コロナの影響で100%テレワークに移行したのは,調査対象の全就業者(6649人)の10.5%,実数にすると696人です。この696人を取り出し,感染症拡大前と拡大後で,仕事の満足度がどう変わったかを比べてみましょう。

 Q43において,拡大前と拡大後に分けて,仕事の満足度を10段階(0~10点)で問うています。分布は以下です。


 ピークが5点であるのは変わりないですが,コロナ拡大後では,0~2点の低得点層が増えています(6.6%→10.9%)。その代わり,高得点層(8~10点)の比重は24.4%から17.5%に減っています。

 10段階(0~10点)の平均値は拡大前が5.95点,拡大後が5.32点で,ほぼ全面的にTWに移行したことで,仕事の満足度が落ちていることが知られます。先ほど書いたメリットとデメリットを天秤にかけたら,後者の方が大きい,ということでしょうか。

 ちなみに,仕事満足度の低下幅は年齢によって違っています。コロナによって100%TWに移行したのは696人ですが,この人たちを10歳刻みの年齢層に分け(20代は156人,30代は144人,40代は159人,50代は119人,60代は94人),拡大前と拡大後の仕事満足度の平均点を出してみました。*20歳未満と70歳以上は人数が少ないので分析対象から除きます。

 以下は,各年齢層の変化を視覚的に見れるグラフです。


 どうでしょう。どの年齢層でもコロナ拡大後,テレワークに100%移行したことで,仕事満足度の平均値は落ちています。しかし低下幅は,高齢層ほど大きくなっています。20代は0.12ですが,50代は0.99,60代は1.53も落ちています。

 折れ線の型も変わっていて,拡大前では中高年層で高かったのが,拡大後はおおむね若年層ほど高い傾向になっています。

 興味深い変化ですね。高齢層は情報機器の扱いに不慣れなので,TWに馴染めないのでしょうか。また決済なども省略されているでしょうから,自分がいなくても部下だけで業務が進められていく様をみて,自分の存在意義のなさを見せつけられているのかもしれません。

 ある人がツイッターで,「テレワークは,仕事しないおじさんを可視化する」と言っていました。コロナ前では,機械的な年功賃金でいい思いをしていたオジサンたちも,コロナによって,自身の無力を思い知らされていると。これまでが異常で,コロナ拡大によって,実力主義の萌芽が出始めているという点で,歓迎すべきことと言えるかもしれないです。

 奥のデスクにでんと座って,部下が持って来る書類に決裁印を押しているだけで高給がもらえていた,甘い環境は消えつつあると。働き方の変化に適応できていないオジサンは,辛い思いをしていることでしょう。私もこのステージに達しつつありますが,こういうオジサンにはなりたくないなと思います。

2020年12月9日水曜日

理科平均点の性差の学年変化

  日本ではリケジョが少ない。これは前から問題視されていて,国策としてリケジョを増やす方針が示されています。

 しかし,こうも言われます。男子と女子では理系教科の出来が違うし,そもそも女子は理系職を自分の意志で志望しない。これは自然なことなので,仕方ないのではないか。「理系教科は男子の方ができて当たり前,脳のつくりが違うから」。こういう生物学的な説を出されると,身も蓋もありません。

 ですがね,このブログで何度も示しているように,理科学力が「男子>女子」というのは普遍的ではないのです。最新の国際理科学力調査「TIMSS 2019」の結果が公表されましたので,このデータを使ってみることにしましょう。

 国立教育政策研究所の結果概要レポートでは,日本の算数・理科の平均点が上位であることが言われていますが,性別の数値を知れません。男女別の結果を知るには,調査実施主体のIEAのサイトに当たって,詳細資料を見ないといけません。私は国別・性別の結果一覧のエクセルをダウンロードし,小4の理科,中2の理科の平均点を,国別・性別に整理しました。

 調査対象は,小4は58か国,中2は39か国ですが,日本を含む主要7か国のデータは以下のようになります。*ドイツは中2が調査対象ではないので,対象から外しています。


 男子と女子の平均点で,右端は,女子が男子より何点高いかの差分です。小4をみると,韓国とアメリカを除いて,男子より女子が高いではないですか。日本もそうで,男子が559点,女子が565点と,女子のほうが高くなっています。

 中学生になるとこれがひっくり返り,日本の中2では男子が女子より10点高くなります。以後,発達段階を上がるにつれて,理科学力が「男子>女子」の傾向が固定すると。OECDの「PISA」の対象は高校1年生(15歳)ですが,科学的リテラシーの平均点はどの年も「男子>女子」ですよね。

 ここで押さえたいのは,理科平均点が「男子>女子」というのは思春期以降ということです。児童期はそうではないと。教科の内容が高度化し,かつ進路を意識し始める時期ですが,「女子なのに理科ができるなんて変なの」「女子が理系に進んでもいいことない」などと,周囲からジェンダーメッセージを受け,女子は理科から遠ざけられるのではないでしょうか。そういえば私が中学の頃,数学がバリバリできる女子がいましたが,教師から「お前,嫁のもらい手がなくなるぞ」と冷やかされていました(許されざることですが)。

 それはどこの国も同じ,というのではありません。上表をみると,アメリカは小4では「男子>女子」でしたが,中学になると女子のほうができるようになります。北欧の2国は小4の時から「男子<女子」で,中2になるとそれがもっと顕著になります。思春期におけるジェンダー的社会化(gender socialization)は,社会によって違うのです。日本のそれを大いに問題視し,是正する余地は大有りです。

 他の対象国のデータも見てみましょうか。女子の理科平均点が男子より何点高いか。以下は,小4と中2の両方のデータがとれる33か国です。「男子<女子」の差分が大きい順に並べています。


 どうでしょう。小4でみても中2でみても,理科平均点が「男子<女子」の国が多いではないですか。中東ではそれが顕著です。宗教要因で女子への統制が強い社会ですが,科学立国に寄与する理系分野なら男女平等の教育機会が開かれているので,女子は奮起するのだそうです。

 小4と中2の違いをみると,位置変化が最も大きいのは日本です。思春期になって,理科平均点が急激に「男子>女子」になります。繰り返しますが,この時期における(よからぬ)ジェンダー的社会化を疑ってみる必要がありそうです。そうですねえ,小6~中2あたりの児童生徒に,周囲からどういうジェンダー的言葉がけをされるかを,アンケートで訊いてみたらどうでしょう。

 在籍学校の理科教員の女性比率によって,理科得点の性差がどう異なるかも興味深い。仮に,女性の理科教員が多い学校で,理科得点が「男子<女子」という傾向が出るなら,下駄をはかせてでも女性の理科教員を増やすべし,というエビデンスになります。

 毎年行われる『全国学力・学習状況調査』の質問紙に,こういうジェンダー的観点の設問も入れたらどうでしょうか。この調査の対象は小6と中3で,ちょうどいいではないですか。信頼度100%の悉皆調査によって,思春期の人間形成の闇が暴かれたなら,それはもう説得力抜群というものです。

2020年12月8日火曜日

コロナ禍による生活満足度の変化

  コロナ禍によって,人々の生活や意識はどう変わったか。いろいろな調査がされていますが,このほど,内閣府から信頼のおける調査データが公表されています。『新型コロナウィルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査』というものです。

 今年の5月下旬から6月初頭に,15歳以上の国民1万92人に対してなされた調査で,感染症拡大前と拡大後で,生活や意識がどう変わったかを訊いています。ありがたいことに,個票データも申請可能で,私は早速申請し,エクセルファイルをメールで送ってもらいました。

 調査票みると,興味深い設問が満載で,どこから分析していいか迷いますが,まずはオーソドックスな部分から攻めましょう。Q41ではズバリ,全体としての生活満足度を尋ねています。感染症が拡大する前と,感染症の影響下に分けて,0~10点で評定してもらう形式です。

 まずはシンプルな単純集計からです。15歳以上の対象者全体(1万92人)の評定分布は以下のようです。


 どうでしょう。コロナ拡大前と拡大後では,生活満足度の分布が変わっています。ピークが5点なのは同じですが,拡大後では低得点層(0~2点)が7.9%から19.4%に増えています。その代わり,高得点層(8~10点)が29.5%から10.1%に減っています。

 経済停止による失職,経済苦,対人関係減少などの影響からか,コロナ拡大後,国民の生活満足度が下がっているのが分かります。0~10点の評定分布の平均値を出すと,拡大前が5.97点,拡大後が4.48点です。

 全体の傾向を見た所で,次は層別の分析です。コロナにより生活満足度を下げているのは,どの層か。生物学的な属性である性別・年齢層別の傾向をみてみます。私は,15歳以上のサンプル(1万92人)を,男女・10歳刻みの年齢層別の14グループに分け,コロナ拡大前と拡大後の生活満足度の分布を出し,各々の平均点を算出しました。以下は,結果の一覧です。


 男女の合計をみると,満足度の低下幅は男性より女性で大きくなっています。男性は1.27ポイント減ですが,女性は1.70ポイントダウンです。コロナ拡大前は「男性>女性」でしたが,拡大後では逆になっています。

 年齢層別にみると,どの年代でも満足度は落ちていますが,その幅は例外なく「男性<女性」となっています。1.5ポイント以上減は赤字にしましたが,女性は真っ赤です。60代以上の女性は,2.0ポイント以上落ちています。外出自粛により,対面で語らう機会が減っているからでしょうね。高齢女性の場合,単身者も多いと思いますが,おそらくSNSなんかはやってないでしょうから,デジタルコミュニケーションで補う術もなく,まさに孤独です。高齢男性にも,これは当てはまるでしょう。

 生活満足度の低下が女性で大きいのは,対面でのコミュニケーション(おしゃべり等)で精神の安定を得ている度合いが男性より高く,コロナでそれが一気に失われたからではないでしょうか。

 若い女性の満足度低下は,巣ごもり生活に伴うDV被害や,失職による経済苦の影響かと思います。女性は,簡単に解雇される非正規が多いですからね。低賃金なんで貯金もなし。失職=即生活破綻です。その苦悩は自殺者数の変化に出ていて,今年3~10月の自殺者数の対前年比は,20~40代女性で高くなっています。

 コロナが渦巻いて以降,女性の場合,家族関連の悩みが増えているとも言います。外出自粛,在宅勤務の増加で,自宅での生活の比重が増していますが,そこでのタスク(家事)は女性の方にのしかかっています。テレワークや臨時休校で夫や子が家にいるようになったら,さあ大変。役割分担の変革がうまくいっているならいいですが,そうでなかったら溜まりません。単純計算で,家にいるようになった家族の数だけ,女性(母親)の負荷が増していることになります。

 残念ながら,この危惧はある程度当たっているように思えます。データでも示せます。家族持ちか否かで分け,コロナによる生活満足度変化を比較するのです。

 25~54歳男女を,①配偶者なし,②配偶者あり,③配偶者と18歳未満の子あり,の3グループ(③は②の内数)に分け,生活満足度の平均点が,コロナ感染前と感染後でどう変わったかを出してみました。


 どの群でも満足度は下がってますが,女性にあっては,世話をする家族が多い群ほど,低下幅が大きくなっています。配偶者なしは1.33ポイントですが,配偶者ありは1.70ポイント,うち子もいる群は1.72ポイント減です。

 第一次集団としての家族は,成員の情緒安定機能を果たし,本来は安らぎの場であるはずです。コロナ禍の大変な時期にあっては,とくにそうでないといけないのですが,悲しいかな,現実には,不満が渦巻く葛藤の場になりつつあるようです。特に女性にとっては。

 まあこれは,普段からの家庭生活の矛盾が噴き出た結果ともいえます。コロナ禍によって,全体社会の悪しき慣行(対面での取引,出社義務,東京一極集中…)は変格されつつありますが,家庭という小社会の内部も変わるべき時です。夫婦の家事分担の歪みを可視化し,是正しましょう。

 対面でのコミュニケーションを奪われて寂しい高齢者は,SNSを始めてみるのもいいかもしれません。

2020年12月4日金曜日

和田長浜海岸

  師走になり,寒さも本格化してきました。

 この時期は,忘年会等の会合が続き,人との接触が多くなるのが常ですが,今年は違います。東京は,警戒レベルを引き上げ,飲食店に営業自粛を呼び掛けています。ステイホームの年末になりそうです。

 誰とも話さず,一人四角い部屋の中にいると,気分が悶々としてきます。今日は晴れたので,近くの海に出てみることにしました。ソレイユの丘を奥まで行くと,「海に降りる道」があり,これを下ると,和田長浜海岸に出れます。横須賀市では,結構有名なスポットのようです。


 白い壁に囲まれている部屋と違い,視界に無限のパノラマが広がります。心が広々しますね。30分ほど,岩に腰掛けて相模湾を眺めていました。

 その後,同じ道を上がり,ソレイユの丘の中を散歩。キャンプに来ている家族連れが多かったですね。園内には,泊まれるキャンプ場があり,子どもにアウトドアライフを経験させるにはもってこいです。


 園の南端に,しあわせの鐘があります。ちょっと,神秘的な感じがするでしょ。

 鐘を鳴らし,ご利益を祈った後,温浴施設「海と夕日の湯」で,夕日を見ながら湯に浸かりました。コロナでずっと休業していたのですが,10月から開業したのでよかったです。基本,金曜日の夕方はここにきます。


 私は海が好きですが,海が身近な地域に移住してきてよかったと思っています。前居の多摩市の場合,小田急で藤沢まで出ないといけなかったですが,歩いて15~20分ほどで海に出れます。

 コロナの影響で,東京からの人口脱出が起きています。移住先は埼玉・千葉・神奈川の3県がメインで,地方移住の前の近郊移住ですが,前回の記事で,人口が増えている市町村を明らかにしました。神奈川県内では,鎌倉市や藤沢市が人口を増やしています。身近に海があるのが魅力なんでしょうね。東京にも,週に何度か通う分には,全然問題ありません。

 残念なことに,わが横須賀市は人口が増えておらず,近郊移住の先として選ばれてないようです。しかしご覧のように,すばらしい環境があります。都心の品川にも,安くて速い京急でダイレクトにつながっています。言わずもがな開国の地で,日本の近代はここから始まりました。


 東京を出て行っているのは,30~40代の子育て年代ですね。北東の米軍基地では,ネイティブによる英語教室なんかも開催されています。都内を脱出しようと考えている,子育てファミリーのみなさん,海の街,横須賀での子育てを考えてみませんか。

2020年12月2日水曜日

都心から近郊への人口移動

  本日公開のニューズウィーク記事にて,東京から人口転出が起きていることを示しました。コロナ禍の影響であるのは言うまでもありません。テレワークが可能になったことに加え,イベントや催いも自粛継続中。東京にはもはや「密」と高い家賃しかなく,脱出が増えているのは,頷けるところです。

 しからば,どこへ転居しているのか。既存統計で分かることを詰めてみようと思います。

 まずは,最新のデータにて,東京都心から人口が出て行っていることを可視化しておきましょう。東京都の人口統計に,都内の自治体別の人口が月別に出ていて,現在,11月1日時点の人口まで公表されています。前月(10月1日)と比して人口が増えたか減ったかで,都内23区を塗り分けた地図にしてみました。左は2019年,右は2020年のマップです。


 色がついているのは,10月1日より11月1日の人口が多い,すなわち10月中に人口が増えた区です。2019年では,この時期,23区全てで人口が増えてましたが,今年は激変しています。人口が増えたのは3区(千代田,中央,台東)だけで,残りは人口減少(流出)に変わっています。

 たった1年間で,ものすごい変わりようですね。コロナ,恐るべし。冒頭のニューズウィーク記事でも書きましたが,今や東京は,人口の最流出地域です。上記の図は,都心脱出傾向の可視化に他なりません。

 では,どこに居を移しているか。総務省の『住民基本台帳人口移動報告』によると,今年10月の東京からの転入者数を県別にみると,1位は神奈川(7474人),2位は埼玉(6268人),3位は千葉(4693人),4位は大阪(1369人),5位は愛知(903人),となっています。東京に接する3県への移動が大半ですね。

 地方移住というよりも,都心に週何回かなら通える近郊への移住が進んでいる,というのが本当の所のようです。まあこれも,東京一極集中の弊が緩和されるという点で,歓迎すべきことであると思います。

 東京から人口を吸い寄せている,埼玉・千葉・神奈川に絞って,もう少し深めてみましょう。これらの県のどこで人口が増えているか。各県の人口統計から,10月の人口増加が大きい自治体(市町村)を明らかにしてみました。下表は,埼玉県と千葉県内において,10月中に人口が増えた市町村の一覧です(11月1日の人口が,10月1日より多い市町村)。埼玉の人口統計はココ,千葉はコチラです。神奈川の市町村別人口は,9月1日時点までしか公表されてませんので,ここではオミットしています。


 数字は,11月1日と10月1日の人口の差分です。埼玉をみると,首位は越谷市,2位は富士見市,県庁所在地のさいたま市も増えていますね。越谷市は武蔵野線と東武伊勢崎線が通っているエリアで,私の大学院時代の先輩がお住まいだったような。東武東上線沿線も強い(和光,川越,朝霞…)。都心への通勤の利便性でしょうか。

 千葉をみると,3ケタ増えているのは船橋,流山,柏,八千代,印西といった北西エリアです。千葉は広いですが,都内への通勤の利便性はキープしようという意図が感じられます。流山市は「母になるなら流山」というフレーズで知られ,子育て支援に力を入れている自治体ですね。東京を出て行っているのはどういう年齢層化というと,30~40代の子育て年代です。東京脱出民のニーズをうまく汲んだことが,功を成したといえるかもしれません。

 上記の自治体名の表では,どういうエリアで人口が増えているかという地理的位置がイメージしにくいので,人口増加地図にしておきましょうか。首都圏(1都3県)の区市町村の白地図を用意し,今年10月中に人口が増えた自治体に色を付けてみました。11月1日の人口が,10月1日より多い自治体です。神奈川県は,上述のように9月1日までの人口しか出てませんので,8月中に人口が増えた自治体に色をつけていることを申し添えます。


 都内23区がほぼ真っ白で,それを円状に取り囲むように色がついています。小学校の社会科で習ったドーナツ化現象みたいです。千葉の西部,埼玉の南東部,東京市部,神奈川の北東部です。東京湾アクアラインで都心とつながっている,千葉の木更津市も色がついているのも面白い。遠方への移住の前に,ひとまず近郊移住。こんなところでしょうか。

 神奈川の鎌倉や藤沢も人口が増えていますね(100人超)。海が身近にある,住みよいエリアです。私が住む横須賀市は残念ながら,近郊移住の地に選ばれてないようで,人口は増えていません。よく藤沢と対比されますが,安くて速い京急で品川とダイレクトにつながっています。横須賀の南の三浦市もよし。きたれ,三浦半島へ。

 コロナ禍は,東京に集中し過ぎた人口を吸い上げられるという点で,近郊の自治体にとってはチャンスでもあります(不謹慎な言い方ですが)。上述のように,東京を脱出しているのは,30~40代の子育て年代です。この層のニーズに適う,子育て支援を充実させるといいのは,千葉の流山市が実証しているように思います。

 遠い関西では,兵庫県の明石市が子育て支援に非常に積極的で(給食無償,養育費取り立て,おむつ宅配による見守り…),子育てファミリーを呼び寄せ,税収を着実に伸ばしています。

 今はまだ近郊移住の段階ですが,徐々に地方移住のステージに達し,人口の地方分散が進めばよいと願います。自然な成り行きに任せるのではなく,それを人為的に促すのは国の役割です。