衆院選が実施されました。投票率は55%で,戦後で3番目に低い低い水準だったそうです。年齢層別のデータはまだ公表されてませんが,前回(2017年)の結果から推測するに,20代は3割ほどでしょう。
豊かな国・日本では,若者は社会への不満を持ってないのかというと,そんなことはありません。内閣府の『我が国と諸外国の若者の意識調査』(2018年)によると,日本の20代で「自国の社会に不満がある」と答えたのは49.3%と,半分弱います。アメリカの33.5%やイギリスの39.5%よりも,だいぶ高し。
年功序列の日本では,若者は能力に関係なく低い給与で働かされます。最近ではあまりに安くなっていて,実家を出ることもできぬほど。高齢化の進行で税金もガッポリ取られ,自分たちが高齢期に達した頃には,年金すらもらえない可能性もある。日本のユースが,社会に不満を持つのは道理です。
こうした状況を変える合法的な手段は政治参画ですが,日本の若者はその意欲も低い。上記の調査によると,日本の20代の53.7%が「主権者として,国の政策決定に参加したくはない」と答えています。アメリカ(23.6%)やイギリス(27.3%)よりも高し。
社会の不満が高い一方で,政治参画への参加は忌避する。厄介なのは,この2つが重なってしまうことです。こういう若者が,全体の何%いるか。上記調査の個票データを使って,明らかにしてみましょう。個票データは,コチラのページから申請すれば送ってくれます。
社会への満足度を問うた設問は問25,政策決定への参加希望を問うた設問は問24-2です。日本の20代サンプルを取り出し,この2つの設問への回答をクロスすると,以下のようになります。
合計680人の未加工データです。この表から,以下の3つの数値が得られます。
社会への不満がある者の率
=(208+127)/680=49.3%
政策決定に参加したくない者の率
=(210+155)/680=53.7%
両方に当てはまる者の率
=(87+44+24+39)/680=28.5%
社会への不満があるが,政策決定には参加したくない。こういう人が,日本の20代では28.5%(4人に1人)ですか。思う所を書く前に,上記の3グループの量的規模が視覚的に分かるグラフを載せましょう。
ツイッターでも発信した,正方形の面積図です。日本の特徴を知るため,アメリカの図との対比にします。
青色が社会に不満,赤色が政治参加忌避の量的規模で,
緑色のゾーンが両者の重なりです。社会への不満があるが,政策決定には参加したくない。アメリカの20代では9.6%ですが,日本ではその3倍の28.5%であると。
内閣府調査の対象は7か国ですが,他国のパーセンテージも示しておきましょう。
日本=28.5%
韓国=19.7%
アメリカ=9.6%
イギリス=14.6%
ドイツ=12.2%
フランス=18.5%
スウェーデン=17.2%
日本が最も高くなっています。社会への不満は持ちつつも,それを変える政策決定への参加は欲しない。日本の若者は厳しい状況に置かれていますが,ひたすら現状を耐え忍び,それが限度に達し,自らを殺めてしまう者もいる。日本の20代の死因首位は自殺で,こういう社会は他に類を見ません。
さらに怖いのは,腹の底の不満(マグマ)が,非合法の方向を向いてしまうことです。暴動やテロなどですが,昨今続発している,若者による無差別刺傷事件をみると,その兆候が感じられます(小田急,京王線事件)。
図の緑色のゾーンが広まるのは,恐ろしいことだと思います。日本の若者は,なぜ政治参画を欲しないか。よく言われることですが,日本人は幼少期から「出しゃばるな」と,頭を押さえつけられながら育ちます。学校でも校則でがんじがらめで,変に異議を申し立てると碌なことがない。こういう状況が継続することで,「従っていたほうがまし,政は偉い人に任せよう」というメンタルが植え付けられます。
学校というのは実社会のミニチュアで,日本の学校では児童会・生徒会活動など,民主主義の主権者としての振る舞い方を学ぶカリキュラムも組まれています。こういう場において,校則について協議してもよいでしょう。よくない所は,話し合いで変える。大事なのは,こういう経験をさせることです。校則を,主権者教育の題材として使うことができればしめたもの。
教科である公民教育の役割も大きい。政治参画によって社会は変えられることを,具体的な事例でもって示す必要があります。政治参画の手段は投票だけでなく,陳情や署名なども含まれ,生徒が馴染んでいるSNSはそのツールとして機能します。SNSに書き込んだ思いが政治家の目にとまり,政策の実現につながった例もあり。案外,生徒はこういうことも知らぬものです。
社会への不満(思い)を,政治的関心に昇華させる。これができていないのが,日本の若者の特徴といえます。