これまでは,小学校教員の離職率をみてきましたが,今回は,他の学校の離職率も出してみようと思います。離職率とは,定年でもない,転職でもない,病気でもない,統計上「その他」というカテゴリーに括られた理由による離職者数が,教員全体のどれほどを占めるか,というものです。教員の脱学校兆候の量を測るために設定した指標です。
私は,小学校,中学校,高等学校,および特別支援学校について,上記の意味での離職率を計算しました。文科省『学校教員統計調査』に掲載されている数字から,独自に出したものです。
2006年度間の小学校の離職率は,既にみたように7.8‰です。しかし,中学校では9.2‰,高等学校では12.5‰,というように,学校段階を上がるほど率が高くなります。障害のある子どもの教育を行う特別支援学校の離職率は,小学校とほぼ同じです。
高等学校の率が高いことが注目されます。はて,この水準は,長期的な推移に照らしても高いものなのでしょうか。前々回みたように,小学校の離職率については,そうではなかったのですが…
上図は,学校段階別に離職率の推移をみたものです。3年おきになっているのは,上記の文科省調査が,3年おきの調査であることに由来します。
図をみると,小学校と中学校のピークは1982年度ですが,高校の場合,この年に山がありません。当時は校内暴力の嵐が吹き荒れた頃であり,小・中学校と同様,高校も危機的な状況にあったと思うのですが,少し意外です。問題生徒はガンガン退学させる,というような措置をとっていたのでしょうか。ちなみに,公立の義務教育学校では,児童・生徒を退学させることはできません。
1990年代半ば以降,どの学校でも離職率が伸びるのですが,それが最も顕著なのは高校です。1994年度の6.7‰から2006年度の12.5‰まで上昇しています。その結果,離職率の水準は,小<中<高,という形になっています。高校の場合,2006年度の離職率は,過去との対比でみても最高と判定されます。
高校では,私立学校も少なくありませんが,近年の少子化傾向のなか,生徒が集まらず経営難に陥っている学校も存在することでしょう。リストラによる離職は,統計上は「その他」という理由に括られる,ということでしょうか。でも,高校教員の離職率を地域別に計算すると,私立学校がほとんどないような県の離職率が高い,というケースも見受けられます。
次回は,各学校の離職率を属性別に明らかにしてみようと思います。
2011年5月12日木曜日
2011年5月10日火曜日
教員の離職率③
近年,小学校教員の離職率が伸びているのですが,とくに,若年教員において,その傾向が強いようです。今回は,20~30代の若年教員の離職率が高いのは,どういう地域かを明らかにしようと思います。
私は,2006年度間における,20~30代の小学校教員の離職率を,都道府県別に明らかにしました。ここでいう離職率とは,2006年度間における理由不詳(「その他」)の離職者数を,2007年10月1日時点の教員数で除したものです。統計の出所は,文科省『学校教員統計調査』です。
なお,分母の教員数は公立学校のものであることを申し添えます。各県の年齢別の教員数は,公立学校のものしか掲載されていませんでした。小学校の場合,国私立学校はとても少ないので,このような便法をとっても大勢に影響はないと思われます。
東京都の場合,分子の離職者数は136人,分母の教員数は11,286人ですから,離職率は12.1‰と算出されます。全国値(12.4‰)よりもやや低くなっています。他の県では,どうなのでしょうか。47都道府県の離職率の値を地図化しました。
5‰ごとに塗り分けています。20‰(=2%)を超える高率地域は,千葉,神奈川,山梨,愛知,奈良,和歌山,徳島,そして福岡の8県です。最も高いのは,福岡で37.1‰にもなります。逆に最も低いのは,秋田と高知の0‰です。この2県では,2006年度間に,理由不詳の離職者は1人もいませんでした。
はて,若年教員の離職率が高い県とは,どういう地域なのでしょう。昨年12月25日の朝日新聞に,精神疾患による教員の休職率の記事が出ていましたが,都市的な地域の率が率が高いことについて,久冨善之教授は,「教員より学歴が高い保護者が多く,学校への要望が厳しいことも,率を引き上げているのではないか」と指摘しています。
この伝でいうと,高学歴人口が多く,学校への要求が厳しいような県において,ここでみている離職率も高いものと推察されます。この仮説を検証してみましょう。
私は,2000年の『国勢調査報告』の統計から,大学・大学院卒の学歴を持つ者が,学校卒業者全体に占める比率を,都道府県別に出しました。この値の地域差をみると,最も高い東京の24.2%から,最も低い青森の7.2%まで,大きな開きがあります。東京では,住民の4人に1人が高学歴者ですが,青森では14人に1人という具合です。この高学歴人口率と,先ほど明らかにした若年教員の離職率の相関関係を調べました。
上図は,両指標の相関図です。傾向としては正の相関です。相関係数は0.304であり,47というサンプル数を考慮すると,5%水準で有意であると判定されます。ちなみに,離職率が際立って高い福岡と徳島の2県を「外れ値」として除外すると,相関係数は0.491に跳ね上がります。1%水準で有意です。
傾向としては,高学歴の住民が多い県ほど,若年教員の離職率が高いようです。2006年5月,採用されて間もない23歳の女性教員が自殺するという事件がありましたが,その原因として,保護者にいろいろと言われた,というようなことがあったそうです。
こうみると,久冨教授の指摘も,さもありなん,という感じです。現在,教員養成の期間を6年に延長し,教員志望者には修士の学位を取らせようという案が出ています。社会全体の高学歴化に対応すべく,教員の学歴水準を一段高くし,威厳の基盤を確保しよう,という意図があってのことと思われます。
もっとも,若年教員の離職率を規定するのは,住民の高学歴化というようなものだけではないでしょう。教員組織に占める若年教員の比重,教員養成系大学出身者の比重,教員の給与水準,さらには教育委員会の管理の度合いなど,他にもいろいろな要因が想起されます。これらをすべて取り込んだ重回帰分析を,機会を見つけて手掛けてみようと思います。
私は,2006年度間における,20~30代の小学校教員の離職率を,都道府県別に明らかにしました。ここでいう離職率とは,2006年度間における理由不詳(「その他」)の離職者数を,2007年10月1日時点の教員数で除したものです。統計の出所は,文科省『学校教員統計調査』です。
なお,分母の教員数は公立学校のものであることを申し添えます。各県の年齢別の教員数は,公立学校のものしか掲載されていませんでした。小学校の場合,国私立学校はとても少ないので,このような便法をとっても大勢に影響はないと思われます。
東京都の場合,分子の離職者数は136人,分母の教員数は11,286人ですから,離職率は12.1‰と算出されます。全国値(12.4‰)よりもやや低くなっています。他の県では,どうなのでしょうか。47都道府県の離職率の値を地図化しました。
5‰ごとに塗り分けています。20‰(=2%)を超える高率地域は,千葉,神奈川,山梨,愛知,奈良,和歌山,徳島,そして福岡の8県です。最も高いのは,福岡で37.1‰にもなります。逆に最も低いのは,秋田と高知の0‰です。この2県では,2006年度間に,理由不詳の離職者は1人もいませんでした。
はて,若年教員の離職率が高い県とは,どういう地域なのでしょう。昨年12月25日の朝日新聞に,精神疾患による教員の休職率の記事が出ていましたが,都市的な地域の率が率が高いことについて,久冨善之教授は,「教員より学歴が高い保護者が多く,学校への要望が厳しいことも,率を引き上げているのではないか」と指摘しています。
この伝でいうと,高学歴人口が多く,学校への要求が厳しいような県において,ここでみている離職率も高いものと推察されます。この仮説を検証してみましょう。
私は,2000年の『国勢調査報告』の統計から,大学・大学院卒の学歴を持つ者が,学校卒業者全体に占める比率を,都道府県別に出しました。この値の地域差をみると,最も高い東京の24.2%から,最も低い青森の7.2%まで,大きな開きがあります。東京では,住民の4人に1人が高学歴者ですが,青森では14人に1人という具合です。この高学歴人口率と,先ほど明らかにした若年教員の離職率の相関関係を調べました。
上図は,両指標の相関図です。傾向としては正の相関です。相関係数は0.304であり,47というサンプル数を考慮すると,5%水準で有意であると判定されます。ちなみに,離職率が際立って高い福岡と徳島の2県を「外れ値」として除外すると,相関係数は0.491に跳ね上がります。1%水準で有意です。
傾向としては,高学歴の住民が多い県ほど,若年教員の離職率が高いようです。2006年5月,採用されて間もない23歳の女性教員が自殺するという事件がありましたが,その原因として,保護者にいろいろと言われた,というようなことがあったそうです。
こうみると,久冨教授の指摘も,さもありなん,という感じです。現在,教員養成の期間を6年に延長し,教員志望者には修士の学位を取らせようという案が出ています。社会全体の高学歴化に対応すべく,教員の学歴水準を一段高くし,威厳の基盤を確保しよう,という意図があってのことと思われます。
もっとも,若年教員の離職率を規定するのは,住民の高学歴化というようなものだけではないでしょう。教員組織に占める若年教員の比重,教員養成系大学出身者の比重,教員の給与水準,さらには教育委員会の管理の度合いなど,他にもいろいろな要因が想起されます。これらをすべて取り込んだ重回帰分析を,機会を見つけて手掛けてみようと思います。
2011年5月8日日曜日
教員の離職率②
前回の続きです。今回は,小学校教員の離職率の時代推移をみてみようと思います。ここでいう離職率とは,定年でも転職でも病気でもない,「その他」というカテゴリーに括られた理由による離職者が,全体のどれほどを占めるか,というものです。詳しい計算方法については,前回の記事をご覧ください。
この指標は,教員の脱学校兆候や職場不適応の量的規模を測るために設定したものです。文部科学省『学校教員統計調査報告』に掲載されている統計から,独自に算出しました。
上図は,1979年度から2006年度までの離職率の推移をとったものです。2006年度の7.8‰という値は,史上最高というわけではなさそうです。1980年代前半あたりの離職率が高かったことが分かります。1982年の離職率は13.2‰です。この時期は,全国的に校内暴力の嵐が吹き荒れた頃かと思いますが,そうした危機状況を受けてのことでしょうか。
その後,離職率は減少しますが,90年代後半から上昇に転じ,今日の水準に至っています。なお,男女差が大きいことも注目に値します。2006年度では,男性は4.8‰,女性は9.6‰で,ちょうど倍の開きが出ています。女性は,結婚退職が多いのではないかといわれるかもしれませんが,両性の曲線が近似していることからして,離職の原因は類似のものであると思われます。
次に,年齢層別の離職率の推移をみましょう。上図によると,どの年でも,20代の離職率が際立って高くなっています。その推移は,全体のそれと似ていますが,最近,減少の傾向です。一方,30代の離職率は,97年以降,一貫して上昇の傾向にあります。
ここで明らかなのは,90年代後半以降の離職率の上昇は,主に若年教員による,ということです。最近,よくいわれる「教職の困難」というのは,若年教員に集中していることがうかがわれます。はて,それはどういったものなのでしょうか。次回は,それを考える一助として,若年教員の離職率が高い県はどういう県かを明らかにしようと思います。
この指標は,教員の脱学校兆候や職場不適応の量的規模を測るために設定したものです。文部科学省『学校教員統計調査報告』に掲載されている統計から,独自に算出しました。
上図は,1979年度から2006年度までの離職率の推移をとったものです。2006年度の7.8‰という値は,史上最高というわけではなさそうです。1980年代前半あたりの離職率が高かったことが分かります。1982年の離職率は13.2‰です。この時期は,全国的に校内暴力の嵐が吹き荒れた頃かと思いますが,そうした危機状況を受けてのことでしょうか。
その後,離職率は減少しますが,90年代後半から上昇に転じ,今日の水準に至っています。なお,男女差が大きいことも注目に値します。2006年度では,男性は4.8‰,女性は9.6‰で,ちょうど倍の開きが出ています。女性は,結婚退職が多いのではないかといわれるかもしれませんが,両性の曲線が近似していることからして,離職の原因は類似のものであると思われます。
次に,年齢層別の離職率の推移をみましょう。上図によると,どの年でも,20代の離職率が際立って高くなっています。その推移は,全体のそれと似ていますが,最近,減少の傾向です。一方,30代の離職率は,97年以降,一貫して上昇の傾向にあります。
ここで明らかなのは,90年代後半以降の離職率の上昇は,主に若年教員による,ということです。最近,よくいわれる「教職の困難」というのは,若年教員に集中していることがうかがわれます。はて,それはどういったものなのでしょうか。次回は,それを考える一助として,若年教員の離職率が高い県はどういう県かを明らかにしようと思います。
2011年5月7日土曜日
教員の離職率①
最近,不登校の増加に示されるように,子どもの脱学校兆候が広がっているといいますが,それは,教員の側にも当てはまるようです。今回は,教員の脱学校傾向,職場不適応の兆候の多寡を測定することを試みようと思います。
さて,いかなる指標(measure)を使うべきでしょうか。まず思いつくのは,病気(精神疾患)で休職する教員の割合です。新聞などでは,この指標についてよく取り上げられています。
http://www.asahi.com/national/update/1224/TKY201012240567.html
しかし,この指標だと,性別や年齢層別,さらには地域別というように,細かい属性別に率を出せない,という難点があります。また,文科省が公表している資料からは,学校段階別(小,中,高…)の率を計算することもできません。全学校が一括りにされてしまっています。また,あと一点,難癖をつけるなら,当局がこの統計を取り始めたのは,1990年代後半からであり,長期的な時代推移をみることも不可能です。
私は,これらの欠点をクリアする指標として,離職率というものがあることを知りました。離職率とは,ある年度内に離職した教員が,全体のどれほどを占めるか,というものです。文科省の『学校教員統計調査』には,調査の前年度の間に離職した教員の数が計上されています。
最新の2007年版の『学校教員統計』によると,前年の2006年度間の小学校教員の離職者数は14,812人と報告されています。理由の内訳は,定年が67.0%,病気が2.6%,死亡が1.5%,転職が8.2%,大学等入学が0.3%,その他が20.5%,です。
私が注目したのは,一番最後の「その他」の理由による離職者数です。定年でもない,転職でもない,要するに,理由が定かでない離職ということになります。教員の脱学校傾向や職場不適応の量を測るには,この意味での離職者がどれほどいるかをみるのがよいのではないでしょうか。もっとも,結婚退職というような理由がこの中には含まれるでしょうが,教員の場合,それはかなり少ないであろうという仮定を置きます。
私は,「その他」という理由による離職者数が,全教員数に占める比率を計算しました。分子,分母とも,文科省『学校教員統計調査』から得ています。ただ,分子と分母の年次が1年ズレていることを申し添えます。分子の離職者数は,調査年の前年度間のものだからです。1年のラグなら,まあ,問題はないものとお許しください。
前置きが長くなりましたが,最新の2007年の『学校教員統計』から,2006年度間の離職率を計算してみましょう。上表は,小学校教員のものです。まず,最下段の全体の離職率をみると,7.8‰となっています。‰とは,千人あたりという意味です。%にすると0.78%,およそ128人に1人の教員が,理由不詳の離職者ということになります。
次に,性別でみると,女性は男性のちょうど2倍です。これは,結婚退職というような理由からかも知れませんが,後でみるように,両性の離職率の時系列曲線は近似していますので,そうではないと思います。
続いて,年齢層別の離職率ですが,若年教員の離職率が飛びぬけて高くなっています。25歳未満の教員では19.8‰(≒2%),およそ50人に1人です。近年の新規採用抑制により,若年教員の比重が小さくなっているといいますけれども,その分,彼らが被る圧力のようなものが大きくなっているのでしょうか。2006年5月,採用されたばかりの23歳の女性教員が過労で自殺するという事件があったことは,記憶に残っているところです。
だいぶ長くなりましたので,今回は,この辺りで止めにします。次回は,小学校教員の離職率が時系列的にどう変化してきたのかをご覧に入れようと思います,
さて,いかなる指標(measure)を使うべきでしょうか。まず思いつくのは,病気(精神疾患)で休職する教員の割合です。新聞などでは,この指標についてよく取り上げられています。
http://www.asahi.com/national/update/1224/TKY201012240567.html
しかし,この指標だと,性別や年齢層別,さらには地域別というように,細かい属性別に率を出せない,という難点があります。また,文科省が公表している資料からは,学校段階別(小,中,高…)の率を計算することもできません。全学校が一括りにされてしまっています。また,あと一点,難癖をつけるなら,当局がこの統計を取り始めたのは,1990年代後半からであり,長期的な時代推移をみることも不可能です。
私は,これらの欠点をクリアする指標として,離職率というものがあることを知りました。離職率とは,ある年度内に離職した教員が,全体のどれほどを占めるか,というものです。文科省の『学校教員統計調査』には,調査の前年度の間に離職した教員の数が計上されています。
最新の2007年版の『学校教員統計』によると,前年の2006年度間の小学校教員の離職者数は14,812人と報告されています。理由の内訳は,定年が67.0%,病気が2.6%,死亡が1.5%,転職が8.2%,大学等入学が0.3%,その他が20.5%,です。
私が注目したのは,一番最後の「その他」の理由による離職者数です。定年でもない,転職でもない,要するに,理由が定かでない離職ということになります。教員の脱学校傾向や職場不適応の量を測るには,この意味での離職者がどれほどいるかをみるのがよいのではないでしょうか。もっとも,結婚退職というような理由がこの中には含まれるでしょうが,教員の場合,それはかなり少ないであろうという仮定を置きます。
私は,「その他」という理由による離職者数が,全教員数に占める比率を計算しました。分子,分母とも,文科省『学校教員統計調査』から得ています。ただ,分子と分母の年次が1年ズレていることを申し添えます。分子の離職者数は,調査年の前年度間のものだからです。1年のラグなら,まあ,問題はないものとお許しください。
前置きが長くなりましたが,最新の2007年の『学校教員統計』から,2006年度間の離職率を計算してみましょう。上表は,小学校教員のものです。まず,最下段の全体の離職率をみると,7.8‰となっています。‰とは,千人あたりという意味です。%にすると0.78%,およそ128人に1人の教員が,理由不詳の離職者ということになります。
次に,性別でみると,女性は男性のちょうど2倍です。これは,結婚退職というような理由からかも知れませんが,後でみるように,両性の離職率の時系列曲線は近似していますので,そうではないと思います。
続いて,年齢層別の離職率ですが,若年教員の離職率が飛びぬけて高くなっています。25歳未満の教員では19.8‰(≒2%),およそ50人に1人です。近年の新規採用抑制により,若年教員の比重が小さくなっているといいますけれども,その分,彼らが被る圧力のようなものが大きくなっているのでしょうか。2006年5月,採用されたばかりの23歳の女性教員が過労で自殺するという事件があったことは,記憶に残っているところです。
だいぶ長くなりましたので,今回は,この辺りで止めにします。次回は,小学校教員の離職率が時系列的にどう変化してきたのかをご覧に入れようと思います,
2011年5月6日金曜日
教員の年齢構成の地域差
2010年度の公立小学校教員採用試験の競争率は,東京の場合,3.5倍でした。一方,東北の青森では25.2倍と大変高くなっています。受験者25人につき,1人しか採用されなかったことになります。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/senkou/1300242.htm
青森の競争率が高いことの要因は何でしょうか。民間に比して,教員の給与の相対水準が高いため,受験者が殺到するからでしょうか。それとも,採用者数が少ないためでしょうか。答えは,後者です。上記の試験における当県の採用者数はたったの23人です。東京の1,628人とは大違いです。
青森と東京の児童数の差を勘案しても,この差は大きいものと判断されます。新規採用教員数に,なぜこれほどまでの差が生まれるのでしょうか。それは,青森では辞める教員が少なく,東京ではそれが非常に多いからです。下図は,2007年10月1日現在における,公立小学校教員の年齢構成をみたものです。文科省『平成19年度・学校教員統計調査』より作成しました。
東京では,50代以上の高年層が多く,青森では,40代あたりの中年層が多いことが明白です。最頻値(Mode)の年齢は,赤色で塗っています。東京は57歳,青森は40歳です。東京では,団塊世代の教員が多く,青森ではそれが少ないことがうかがわれます。
この統計は2007年のものですが,それから3年後の2010年には,図の57歳あたりの教員が辞めたことになります。東京では,最も膨らんだ部分です。地方の学生を対象としたバスツアーのような企画を組まなければならない,東京の事情も分かるような気がします。
新規採用教員の量に,このような開きが出ている結果,両都県では,若年教員の比重が著しく異なっています。20代教員の比率は,青森では3.0%,東京では20.2%です。東京では5人に1人が20代ですが,青森では33人に1人という具合です。
青森の若年教員は,高倍率の試験を勝ち抜いた精鋭部隊といえるでしょう。でも,組織の末端に回される各種の雑務を,少ない人間でこなさなければならないことのストレスは小さくないものと思います。
一方の東京では,そうしたストレスはあまりないでしょうが,大量採用世代ということでの,質の低下というような問題があるのかもしれません。都教委も,この問題を認識しているのでしょうか。東京の採用試験では,教員研修に関する事項が毎年出題されています。
世代という外的属性によって,教員の職務遂行のパフォーマンスや,不適応の多寡がどのように異なるかは,大変興味ある問題です。私は,教員の離職率という指標を使って,この問題に計量的にアプローチすることができないかと思案しています。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/senkou/1300242.htm
青森の競争率が高いことの要因は何でしょうか。民間に比して,教員の給与の相対水準が高いため,受験者が殺到するからでしょうか。それとも,採用者数が少ないためでしょうか。答えは,後者です。上記の試験における当県の採用者数はたったの23人です。東京の1,628人とは大違いです。
青森と東京の児童数の差を勘案しても,この差は大きいものと判断されます。新規採用教員数に,なぜこれほどまでの差が生まれるのでしょうか。それは,青森では辞める教員が少なく,東京ではそれが非常に多いからです。下図は,2007年10月1日現在における,公立小学校教員の年齢構成をみたものです。文科省『平成19年度・学校教員統計調査』より作成しました。
東京では,50代以上の高年層が多く,青森では,40代あたりの中年層が多いことが明白です。最頻値(Mode)の年齢は,赤色で塗っています。東京は57歳,青森は40歳です。東京では,団塊世代の教員が多く,青森ではそれが少ないことがうかがわれます。
この統計は2007年のものですが,それから3年後の2010年には,図の57歳あたりの教員が辞めたことになります。東京では,最も膨らんだ部分です。地方の学生を対象としたバスツアーのような企画を組まなければならない,東京の事情も分かるような気がします。
新規採用教員の量に,このような開きが出ている結果,両都県では,若年教員の比重が著しく異なっています。20代教員の比率は,青森では3.0%,東京では20.2%です。東京では5人に1人が20代ですが,青森では33人に1人という具合です。
青森の若年教員は,高倍率の試験を勝ち抜いた精鋭部隊といえるでしょう。でも,組織の末端に回される各種の雑務を,少ない人間でこなさなければならないことのストレスは小さくないものと思います。
一方の東京では,そうしたストレスはあまりないでしょうが,大量採用世代ということでの,質の低下というような問題があるのかもしれません。都教委も,この問題を認識しているのでしょうか。東京の採用試験では,教員研修に関する事項が毎年出題されています。
世代という外的属性によって,教員の職務遂行のパフォーマンスや,不適応の多寡がどのように異なるかは,大変興味ある問題です。私は,教員の離職率という指標を使って,この問題に計量的にアプローチすることができないかと思案しています。
2011年5月4日水曜日
大学の新規採用教員
前回,大学院博士課程への入学者が減っているというお話をしました。大学教員になることはとても難しい,いや不可能である,という認識が広まったためと思われます。
ですが,大学の新規採用教員の数そのものは,増えています。文科省の『学校教員統計調査』によると,1988年度間では7,994人でしたが,2006年度間では11,528人となっています。1.4倍の伸びです。
はて,これはどういうことでしょうか。このことを考えるには,新規採用教員の組成を調べてみる必要がありそうです。私は,1988年度間と2006年度間について,新規採用教員の性別と年齢の構成を明らかにしました。下図をご覧ください。
両年の新規採用教員の組成を,人口ピラミッドのような形で示しています。年齢別にみると,最も多いのは30代前半であることに変わりはないですが,この層の比重は36%から30%へと減っています。比重の減少がさらに著しいのは20代後半で,30%から19%になっています。若年層の比重が減少していることが明白です。
代わって,中高年層のシェアが広がっています。30代後半以上の比率は,1988年度間では29%でしたが,2006年度間では49%です。今日,大学の新規採用教員のおよそ半分が30代後半以上,約3割が40歳以上です。
また,女性の比重の増加も特記されるべきでしょう。1988年度間の女性比は13%でしたが,2006年度間では27%と倍増しています。絶対水準ではまだまだ低いというべきでしょうが,最近の男女共同参画政策の効果として,評価されるべきことでしょう。
一言でいって,大学に教員として雇われる人間の構成は多様化しています。近年,実社会での経験が豊富な社会人を大学教員に迎え入れようという傾向が強まっていると聞きます。たとえば,2007年に創設された教職大学院では,教員の4割は実務家教員とすることと定められています。上記の統計は,こうした動きの表れとみることもできるでしょう。
こうみると,大学教員を志すならば,博士課程などにストレートに行かず,実社会で功績を挙げるほうがよい,という見方もできます。博士号をとるのは,後からでもよいわけですし…
30近くまで生業に就いたことのない,温室育ちの博士というのは,今後,あまり歓迎されなくなるかもしれません。
ですが,大学の新規採用教員の数そのものは,増えています。文科省の『学校教員統計調査』によると,1988年度間では7,994人でしたが,2006年度間では11,528人となっています。1.4倍の伸びです。
はて,これはどういうことでしょうか。このことを考えるには,新規採用教員の組成を調べてみる必要がありそうです。私は,1988年度間と2006年度間について,新規採用教員の性別と年齢の構成を明らかにしました。下図をご覧ください。
両年の新規採用教員の組成を,人口ピラミッドのような形で示しています。年齢別にみると,最も多いのは30代前半であることに変わりはないですが,この層の比重は36%から30%へと減っています。比重の減少がさらに著しいのは20代後半で,30%から19%になっています。若年層の比重が減少していることが明白です。
代わって,中高年層のシェアが広がっています。30代後半以上の比率は,1988年度間では29%でしたが,2006年度間では49%です。今日,大学の新規採用教員のおよそ半分が30代後半以上,約3割が40歳以上です。
また,女性の比重の増加も特記されるべきでしょう。1988年度間の女性比は13%でしたが,2006年度間では27%と倍増しています。絶対水準ではまだまだ低いというべきでしょうが,最近の男女共同参画政策の効果として,評価されるべきことでしょう。
一言でいって,大学に教員として雇われる人間の構成は多様化しています。近年,実社会での経験が豊富な社会人を大学教員に迎え入れようという傾向が強まっていると聞きます。たとえば,2007年に創設された教職大学院では,教員の4割は実務家教員とすることと定められています。上記の統計は,こうした動きの表れとみることもできるでしょう。
こうみると,大学教員を志すならば,博士課程などにストレートに行かず,実社会で功績を挙げるほうがよい,という見方もできます。博士号をとるのは,後からでもよいわけですし…
30近くまで生業に就いたことのない,温室育ちの博士というのは,今後,あまり歓迎されなくなるかもしれません。
2011年5月2日月曜日
博士課程入学者
就職難を察知してか,最近,大学院博士課程の入学者の数が減少しているといわれます。実情はどうなのでしょう。私は,『平成22年版・文部科学統計要覧』に掲載されている,博士課程入学者の数の長期的な変化をグラフにしてみました。下図をみてください。
この統計の始点の1955年では,博士課程入学者はわずか902人しかいませんでした。それが1975年には4,158人になり,1990年には7,813人に増えます。1991年以降は,大学院重点化政策の実施により,伸びの速度がさらに高まり,2003年には18,232人にまで増えます。わずか12年間で,倍以上の増加です。
しかし,2003年をピークに,入学者数は減少に転じます。2010年の入学者は16,471人です。この間に,水月昭道さんの『高学歴ワーキング・プア-フリーター生産工場としての大学院-』(光文社新書)が出るなど,博士課程に進学することのヤバさを警告する向きもあったためでしょうか。博士課程への進学を忌避する傾向が強まっていることがうかがわれます。
ところで,一口に博士課程入学者といっても,いろいろな人がいます。文系の院に進む者もいれば,理系の院に行く者もいます。また,年齢も多様です。修士課程を出てストレートに進学する若者が大半でしょうが,職をリタイヤし,余生の目標を博士号の取得に定めたというような高齢者もいることでしょう。
私は,ピークの2003年と最新の2010年について,博士課程入学者の専攻と年齢を調べました。資料は,文科省『学校基本調査(高等教育機関編)』です。
まず上段の専攻をみると,入学者が大きく減っているのは,人文・社会科学系や理学系です。300人以上減少,20%以上の減です。その一方で,教育系や芸術系の入学者数は増えています。
次に下段の年齢別の数字をみると,減少しているのは,もっぱら20代の若者です。修士課程からストレートに進学するというような,伝統的な進学層が減じているようです。反対に,40代後半以上の中高年層では,入学者数がかなり増えているのです。61歳以上の高齢者は,89人から143人へと1.6倍になっています。こうみると,教育系の入学者増というのは,現職教員の入学者が増えたことによるのかもしれません。
現在,博士課程の募集定員を削減する動きがあり,さらに,募集そのものを停止すべきである,というようなラディカルな提案もなされています。生活基盤のない若者に対しては,そうした抑制策が強行されて然るべきであると思います。しかし,生活基盤のある中高年層の入学(院)をも抑制するのはどうかという思いがします。
先月20日の朝日新聞に,定年退職後,博士課程への入学を決意した72歳の男性の紹介記事が載っていました。こういう方々の学びをも人為的に制限することは行き過ぎかと思います。
http://www.asahi.com/edu/news/SEB201104200008.html
博士課程の進学抑制策というのは,対象を選ぶ必要がありそうです。
この統計の始点の1955年では,博士課程入学者はわずか902人しかいませんでした。それが1975年には4,158人になり,1990年には7,813人に増えます。1991年以降は,大学院重点化政策の実施により,伸びの速度がさらに高まり,2003年には18,232人にまで増えます。わずか12年間で,倍以上の増加です。
しかし,2003年をピークに,入学者数は減少に転じます。2010年の入学者は16,471人です。この間に,水月昭道さんの『高学歴ワーキング・プア-フリーター生産工場としての大学院-』(光文社新書)が出るなど,博士課程に進学することのヤバさを警告する向きもあったためでしょうか。博士課程への進学を忌避する傾向が強まっていることがうかがわれます。
ところで,一口に博士課程入学者といっても,いろいろな人がいます。文系の院に進む者もいれば,理系の院に行く者もいます。また,年齢も多様です。修士課程を出てストレートに進学する若者が大半でしょうが,職をリタイヤし,余生の目標を博士号の取得に定めたというような高齢者もいることでしょう。
私は,ピークの2003年と最新の2010年について,博士課程入学者の専攻と年齢を調べました。資料は,文科省『学校基本調査(高等教育機関編)』です。
まず上段の専攻をみると,入学者が大きく減っているのは,人文・社会科学系や理学系です。300人以上減少,20%以上の減です。その一方で,教育系や芸術系の入学者数は増えています。
次に下段の年齢別の数字をみると,減少しているのは,もっぱら20代の若者です。修士課程からストレートに進学するというような,伝統的な進学層が減じているようです。反対に,40代後半以上の中高年層では,入学者数がかなり増えているのです。61歳以上の高齢者は,89人から143人へと1.6倍になっています。こうみると,教育系の入学者増というのは,現職教員の入学者が増えたことによるのかもしれません。
現在,博士課程の募集定員を削減する動きがあり,さらに,募集そのものを停止すべきである,というようなラディカルな提案もなされています。生活基盤のない若者に対しては,そうした抑制策が強行されて然るべきであると思います。しかし,生活基盤のある中高年層の入学(院)をも抑制するのはどうかという思いがします。
先月20日の朝日新聞に,定年退職後,博士課程への入学を決意した72歳の男性の紹介記事が載っていました。こういう方々の学びをも人為的に制限することは行き過ぎかと思います。
http://www.asahi.com/edu/news/SEB201104200008.html
博士課程の進学抑制策というのは,対象を選ぶ必要がありそうです。
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