一昨日のマイナビニュースに「衝撃!ブラック企業は,社員の子供の性格にまで悪影響を及ぼすことが判明」という記事が出ています。
http://news.mynavi.jp/news/2013/09/02/157/index.html
ヨーロッパの調査結果ですが,「父親が毎週55時間以上働いている家庭では,5~10歳の子供が高レベルの攻撃的行動を取りやすい傾向」があり,それは「息子で顕著に見られ,娘では見られない」のだそうです。この結果について,調査にあたった研究者は次のような説明をしています。記事の文章を転載させていただきます。
●「子供は同性の親との交流や過ごす時間が不十分だと,行動にまつわる問題を抱えやすくなるかもしれない。父親が長時間会社で労働していると,男子のエネルギー発散の場となりうる,スポーツやゲームで一緒に遊ぶ時間が少なくなることも原因の一つとして考えられる。」
●「長時間労働で疲弊した父親は,家庭内で子育てのサポートをしなくなりがちで,その状況が母親に過度のストレスや重荷を感じさせ,結果として子育ての質が低下している可能性。」
なるほど。そういうこともあるだろうな,と思います。長時間労働を強いるブラック企業は,労働者のみならず,その子どもの人格にまで悪影響を及ぼす可能性があるのですね。こういう話は初めて聞きました。
これは外国の研究成果ですが,わが国でも当てはまるでしょうか。私は,都道府県単位のマクロ統計を使って,上記のような統計的傾向がみられるか検討してみました。ここにて,その結果をご報告します。
父親世代の男性正社員の長時間就業率を県別に出し,それが各県の子どもの逸脱指標とどう相関するか。こういう問題を立ててみようと思います。
私は,2012年の総務省『就業構造基本調査』にあたって,30~40代の有配偶男性正社員の長時間就業率を県別に計算しました。長時間就業とは,年間250日以上かつ週60時間以上の勤務をいいます。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
月あたり20日ほどですから,週5日就業です。5日で60時間以上ということは,1日12時間超。簡単にいうと,週5日,1日12時間以上働いているお父さんということになります。前々回や前回の記事よりも基準を低くしましたが,上記の外国の研究では「週55時間以上」という基準がとられているので,それに揃えることとしました。
まあこれでも,週5日&1日12時間超ですから,ブラックに準じる就業といってよいでしょう。以下では,ブラック就業ということにします。ちなみに有配偶者の数値は,総数から未婚者を差し引いて出したものです。ゆえに,配偶者と別れた離別者や死別者も含まれますが,それは数的にごくわずかですので,問題ないものとお許しください。
上記の官庁統計によると,2012年10月時点における,30~40代の有配偶男性の正規職員・従業員は937万人。うち,年間250日以上&週60時間以上働いているブラック就業者は148万人。よって,お父さん世代のブラック就業率は15.8%となります。およそ6人に1人。結構いますね。
下表は,この値の県別一覧表です。最高値には黄色,最低値には青色のマークをしました。上位5位の順位は赤字にしています。
県別にみると,京都の20.3%から鹿児島の11.0%までのレインヂがあります。前者は5人に1人ですが,後者は10人に1人です。
では,お父さんのブラック就業率の違いによって,各県の子どもの逸脱行動指標がどう変異するかを吟味してみましょう。いじめが社会問題化していることにかんがみ,いじめ容認率という指標をまず考えてみます。
2012年度の文科省『全国学力・学習状況調査』において,「いじめはどんな理由があってもいけないことだと思う」という問いに対し,「どちらかといえば当てはまらない」ないしは「当てはららない」と答えた児童・生徒の比率です。調査対象の公立小学校6年生および中学校3年生の回答比率を県別に出し,上表のブラック就業率と関連づけると下図のようになります。
http://www.nier.go.jp/kaihatsu/zenkokugakuryoku.html
ほう。父親世代のブラック率が高い県ほど,いじめを容認する児童・生徒が多い傾向です。相関係数は+0.589であり,1%水準で有意と判定されます。
ブラック企業がやっていることはまさに「いじめ」ですが,こういう悪が蔓延っている県では,子どもの人格に歪みが生じる,ということでしょう。冒頭の研究では,父親不在という家庭での子育て面が問題視されていましたが,地域に悪のクライメイトが蔓延するという,より大きな側面もあるのではないでしょうか。子どもは大人社会の鏡なり。
次に,父親のブラック就業と子どもの「攻撃的行動」の関連が指摘されていることに注目し,非行少年の出現率との相関もとってみましょう。2011年中に検挙・補導された非行少年(犯罪少年+触法少年)の数を,同年10月時点の10代人口で除して計算しました。分子は警察庁『犯罪統計書』,分母は総務省『人口推計年報』のものです。
http://www.npa.go.jp/
父親世代のブラック率と10代少年の非行率との相関は,下図のごとし。
回帰直線は右上がりであり,お父さんのブラック率が高い県ほど,少年の非行が多い傾向です。相関係数は+0.423であり,1%水準で有意なり。
こちらは冒頭の研究がいうように,父親不在による,家庭での子育て不全の面から解釈できる部分が大きいと思われます。「男子のエネルギー発散の場となりうる,スポーツやゲームで一緒に遊ぶ時間が少なくなる」ことがいわれていましたが,男子だけの非行率に限定すると,相関はもっと強くなるかもしれません。まあ,非行少年のほとんどは男子ですけど。
他の要因を考慮していない,一要因だけの単純な相関分析をしただけですが,父親のブラック就業は子どもの育ちによからぬ影響を及ぼし得ることが,マクロ統計から示唆されます。
親世代の労働者を長時間酷使し,未来を担う子どもたちの人格をも荒ませるブラック企業。「日本を食い潰す妖怪」という,今野晴貴さんの形容が妥当であることが,ここにおいても確認されます(『ブラック企業』文春新書,2012年)。
いじめやSNSでの悪ふざけなど,子どもや青年の世界でさまざまな問題が起きていますが,それが教育の機能不全(病理)の問題だけに還元されることがあってはならないことを,われわれは改めて認識しなければなりますまい。
2013年9月4日水曜日
2013年9月3日火曜日
ブラック産業
前回は,20代の正社員のブラック企業勤務者率を試算したのですが,この記事をみてくださる方が多いようです。厚労省がブラック企業相談を行っていますが,時宜に適っているためでしょうか。
ツイッター上のコメントを拝見すると,「産業別の率も知りたい」「飲食とかすごそう」「ブラックを糾弾しているマスコミは労基法守ってんのか」というものがみられます。
なるほど。確かに,社員がどれほどブラック化しているかは業種によって異なるでしょう。今回は,正社員のブラック率を産業別に出してみようと思います。自分が勤めている,ないしは志望している業種の位置はどこ辺りか。とくとご覧ください。
本記事でいうブラック企業勤務者とは,年間300日以上かつ週75時間以上勤務している正社員のことです。翻訳すると,週6日,1日12時間以上働いている者です。法定労働時間は1日8時間ですから,1日4時間超の残業。月あたりの残業時間数は100時間を超えます。推測ですが,サービス残業も多く含まれていることでしょう。まさにブラックです。
2012年の総務省『就業構造基本調査』によると,15歳以上の正規職員・従業員数は3,311万人。このうち,上記の基準以上働いているブラック正社員は39万人。ゆえに,この年の正社員のブラック企業勤務者率は11.7‰となります。千人あたり11.7人,およそ85人に1人です。
前回出した20代正社員のブラック率(10.8‰)よりもちょっと高いくらいですが,正社員全体でみれば,まあこんなところでしょう。
では,同じ値を産業別に計算してみましょう。私は,103の産業の正社員総数とブラック社員数を収集し,割り算をしました。ソースは,下記サイトの表32です。雇用形態別・産業別の「年間就業日数×週間就業時間」のクロス表です。追試をしてみたいという方は,当たってみてください。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001048178&cycleCode=0&requestSender=search
まずは,1~50位までのブラック率ランキング表をみていただきましょう。
正社員のブラック率トップは宗教で,116.0‰なり。百分比にすると11.6%,およそ9人に1人がブラック社員ということになります。昼夜問わずの布教活動などでしょうか。
その次は飲食業で73.2‰(13人に1人)。ブラックは飲食に多いといわれますが,そうした感覚が裏づけられています。漁業や農業といった,自然を相手にする1次産業も率が高いですね。
目ぼしい産業はマークをしましたが,ほう,学校教育が10位にランクインしています。ほとんどが教員ですが,およそ39人に1人がブラックと判定されます。確かに,休日の部活指導や持ち帰り仕事等も含めれば,「年間300日以上&週75時間超」のブラック・ティ―チャーがちらほら出てきても不思議ではありません。教員の過労はよくいわれるところです。
国家公務員は18位。深夜のタクシー行列は,霞が関ではお馴染みの光景ですが,さもありなん。学術研究機関は32位なり。*大学教員はこの中ではなく,「学校教育」のほうに含まれると思われます。
続いて,51位以降のランキング表を掲げます。
こちらは現業系が多くなっています。「ここからここまで」というように業務の境が明確であるためかしらん。やろうと思えば業務が際限なく拡張する教員とかとは対をなしています。
以上が,官庁統計から試作した,103産業のブラック・ランキング表(2012年)です。ブラック企業摘発の重点の置きどころを定めるにあたって,前回の地域別統計も合わせて,資料として使っていただけたらと思います。さしあたり,前回分かったブラック県の上位10位の産業に要注意,というところでしょうか。
『就業構造基本調査』を詰めれば,ブラック企業という「妖怪」の情報をもっと取り出せるはず。ヒマをみて,こうした実態解明の作業を続けていこうと思います。
ツイッター上のコメントを拝見すると,「産業別の率も知りたい」「飲食とかすごそう」「ブラックを糾弾しているマスコミは労基法守ってんのか」というものがみられます。
なるほど。確かに,社員がどれほどブラック化しているかは業種によって異なるでしょう。今回は,正社員のブラック率を産業別に出してみようと思います。自分が勤めている,ないしは志望している業種の位置はどこ辺りか。とくとご覧ください。
本記事でいうブラック企業勤務者とは,年間300日以上かつ週75時間以上勤務している正社員のことです。翻訳すると,週6日,1日12時間以上働いている者です。法定労働時間は1日8時間ですから,1日4時間超の残業。月あたりの残業時間数は100時間を超えます。推測ですが,サービス残業も多く含まれていることでしょう。まさにブラックです。
2012年の総務省『就業構造基本調査』によると,15歳以上の正規職員・従業員数は3,311万人。このうち,上記の基準以上働いているブラック正社員は39万人。ゆえに,この年の正社員のブラック企業勤務者率は11.7‰となります。千人あたり11.7人,およそ85人に1人です。
前回出した20代正社員のブラック率(10.8‰)よりもちょっと高いくらいですが,正社員全体でみれば,まあこんなところでしょう。
では,同じ値を産業別に計算してみましょう。私は,103の産業の正社員総数とブラック社員数を収集し,割り算をしました。ソースは,下記サイトの表32です。雇用形態別・産業別の「年間就業日数×週間就業時間」のクロス表です。追試をしてみたいという方は,当たってみてください。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001048178&cycleCode=0&requestSender=search
まずは,1~50位までのブラック率ランキング表をみていただきましょう。
正社員のブラック率トップは宗教で,116.0‰なり。百分比にすると11.6%,およそ9人に1人がブラック社員ということになります。昼夜問わずの布教活動などでしょうか。
その次は飲食業で73.2‰(13人に1人)。ブラックは飲食に多いといわれますが,そうした感覚が裏づけられています。漁業や農業といった,自然を相手にする1次産業も率が高いですね。
目ぼしい産業はマークをしましたが,ほう,学校教育が10位にランクインしています。ほとんどが教員ですが,およそ39人に1人がブラックと判定されます。確かに,休日の部活指導や持ち帰り仕事等も含めれば,「年間300日以上&週75時間超」のブラック・ティ―チャーがちらほら出てきても不思議ではありません。教員の過労はよくいわれるところです。
国家公務員は18位。深夜のタクシー行列は,霞が関ではお馴染みの光景ですが,さもありなん。学術研究機関は32位なり。*大学教員はこの中ではなく,「学校教育」のほうに含まれると思われます。
続いて,51位以降のランキング表を掲げます。
こちらは現業系が多くなっています。「ここからここまで」というように業務の境が明確であるためかしらん。やろうと思えば業務が際限なく拡張する教員とかとは対をなしています。
以上が,官庁統計から試作した,103産業のブラック・ランキング表(2012年)です。ブラック企業摘発の重点の置きどころを定めるにあたって,前回の地域別統計も合わせて,資料として使っていただけたらと思います。さしあたり,前回分かったブラック県の上位10位の産業に要注意,というところでしょうか。
『就業構造基本調査』を詰めれば,ブラック企業という「妖怪」の情報をもっと取り出せるはず。ヒマをみて,こうした実態解明の作業を続けていこうと思います。
2013年9月2日月曜日
若年正社員のブラック企業勤務者率
今や,現代日本の流行語にもなっている「ブラック企業」。「労働者を酷使・選別し,使い捨てにする企業」のことですが(コトバンク),「酷使・選別・使い捨て」の対象にされるのは,新たに入社してくる若年社員であるといわれます。
未来の日本を背負って立つ若年労働力を使い潰すブラック企業は,社会全体にとって大きな問題を孕んでいるといえるでしょう。今野晴貴さんによる「日本を食い潰す妖怪」という形容は,実に的を射たものなり(『ブラック企業』文春新書,2012年)。
今月から厚労省がこの「妖怪」退治に乗り出すそうですが,徹底した摘発を行っていただきたいと思います。
さて,このように問題視されているブラック企業ですが,数でみてどれほど存在するのでしょうか。あいにく,この点に関する統計はないようです。まあ,企業に社員の労働時間を尋ねても,正直に答えるわけありませんものね。
記録の提出を求めても,記録そのものが改ざんされている可能性もあります。昨日のNHKニュースでは,「店の営業時間は午後8時までなのに,従業員全員が午後6時半に帰宅したようにタイムカードを打刻させられ,サービス残業をしている」という証言が紹介されていました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130901/k10014201311000.html
しからば手はないかというと,そうではありません。労働者の側の申告に基づいて作成された統計を使えばいいのであり,総務省『就業構造基本調査』の年間就業日数・週間就業時間の統計は,これに該当します。会社の就業規則上の数値などではなく,各人が実際にどれほど働いたかを赤裸々に知ることができます。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
私は,20代正社員の「年間就業日数×週間就業時間」のクロス表から,年間300日以上かつ週75時間以上働いている者の数を取り出しました。年間300日ということは月あたり25日,週6日就業です。その6日間で75時間働くとなると,1日12~13時間就業となります。
要するに,「週6日,1日12時間以上」働いている者です。完全な労基法違反。昨日の読売新聞Web版に,「社長から『プライベートはないものと思え』と言われ,毎日,深夜までの勤務を強いられた。週末の出勤も多く・・・」という経験者の談話が載っていましたが,このレベルの過重勤務を強いられている者の統計量とみなせるでしょう。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130901-OYT1T00034.htm?from=tw
ここでは,上記の基準以上働いている正社員をして,ブラック企業勤務者とみなすことにします。就業日数(時間)という観点だけからした,ラフな抽出です。
2012年の『就業構造基本調査』の結果によると,20代の正規雇用就業者は617.1万人。このうち,年間300日以上かつ週75時間以上働いているブラック企業勤務者は6.7万人ほど。よって,20代正社員のブラック企業勤務者率は10.8‰となります。千人あたり10.8人,だいたい100人に1人です。
20代の若年正社員100人に1人がブラック企業勤務者。予想よりもちょっと少ないかなという印象ですが,高めのラインを設定しましたので,まあこんなところでしょうか。
これは全国値ですが,地域別の実態も観察してみましょう。上記の意味でのブラック企業勤務者が20代正社員のうちどれほどいるかを,都道府県別に計算しました。下表は結果の一覧です。黄色は最高値,青色は最低値です。上位5位の順位は赤字にしました。
若年正社員中のブラック企業勤務者率は,県によって相当違っています。最高は埼玉の21.5‰であり,47人に1人です。最低は岩手で1.9‰,こちらは526人に1人です。
これは両端ですが,埼玉の他にも2ケタの数字はちらほらあり,地域的に固まっているようにも思えます。こうした地域構造を可視化するには地図化が一番。2‰の区分に依拠して,47都道府県を塗り分けてみました。10‰超はブラックにしています。色のごとく,ブラック県です。
ブラック県は点在していますが,北関東,近畿,そして九州というように,その塊のゾーンも見出すことができます。うーむ。わが郷里の九州にて,若年正社員のブラック化が進んでいるのが気にかかる。
上述のように,厚労省が今月からブラック企業摘発に乗り出すのですが,大阪が重点的なターゲットとされているそうです。失業率が高い当府では労働者の立場が弱く,やりたい放題のブラック企業が蔓延っている度合いが高いであろう,という想定とのこと。
しかるに上図によると,重点をおくべき地域は他にもあります。年間300日以上&週75時間以上就業という,スーパー過重勤務者の出現率地図です。摘発の資源配分の傾斜づけに,今回のデータが参考になればと思います。
ここでは,就業日数・時間に依拠してブラック企業勤務者をラフに取り出しましたが,収入という観点も加えるとより精緻度が高まるでしょう。スーパー長時間就業&超薄給。これこそ,真正のブラック企業勤務者です。
収入もかけあわせた3重クロス表はないでしょうが,何とかひねり出せないものか。トライしてみます。ブラック企業の可視化作業です。
未来の日本を背負って立つ若年労働力を使い潰すブラック企業は,社会全体にとって大きな問題を孕んでいるといえるでしょう。今野晴貴さんによる「日本を食い潰す妖怪」という形容は,実に的を射たものなり(『ブラック企業』文春新書,2012年)。
今月から厚労省がこの「妖怪」退治に乗り出すそうですが,徹底した摘発を行っていただきたいと思います。
さて,このように問題視されているブラック企業ですが,数でみてどれほど存在するのでしょうか。あいにく,この点に関する統計はないようです。まあ,企業に社員の労働時間を尋ねても,正直に答えるわけありませんものね。
記録の提出を求めても,記録そのものが改ざんされている可能性もあります。昨日のNHKニュースでは,「店の営業時間は午後8時までなのに,従業員全員が午後6時半に帰宅したようにタイムカードを打刻させられ,サービス残業をしている」という証言が紹介されていました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130901/k10014201311000.html
しからば手はないかというと,そうではありません。労働者の側の申告に基づいて作成された統計を使えばいいのであり,総務省『就業構造基本調査』の年間就業日数・週間就業時間の統計は,これに該当します。会社の就業規則上の数値などではなく,各人が実際にどれほど働いたかを赤裸々に知ることができます。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
私は,20代正社員の「年間就業日数×週間就業時間」のクロス表から,年間300日以上かつ週75時間以上働いている者の数を取り出しました。年間300日ということは月あたり25日,週6日就業です。その6日間で75時間働くとなると,1日12~13時間就業となります。
要するに,「週6日,1日12時間以上」働いている者です。完全な労基法違反。昨日の読売新聞Web版に,「社長から『プライベートはないものと思え』と言われ,毎日,深夜までの勤務を強いられた。週末の出勤も多く・・・」という経験者の談話が載っていましたが,このレベルの過重勤務を強いられている者の統計量とみなせるでしょう。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130901-OYT1T00034.htm?from=tw
ここでは,上記の基準以上働いている正社員をして,ブラック企業勤務者とみなすことにします。就業日数(時間)という観点だけからした,ラフな抽出です。
2012年の『就業構造基本調査』の結果によると,20代の正規雇用就業者は617.1万人。このうち,年間300日以上かつ週75時間以上働いているブラック企業勤務者は6.7万人ほど。よって,20代正社員のブラック企業勤務者率は10.8‰となります。千人あたり10.8人,だいたい100人に1人です。
20代の若年正社員100人に1人がブラック企業勤務者。予想よりもちょっと少ないかなという印象ですが,高めのラインを設定しましたので,まあこんなところでしょうか。
これは全国値ですが,地域別の実態も観察してみましょう。上記の意味でのブラック企業勤務者が20代正社員のうちどれほどいるかを,都道府県別に計算しました。下表は結果の一覧です。黄色は最高値,青色は最低値です。上位5位の順位は赤字にしました。
若年正社員中のブラック企業勤務者率は,県によって相当違っています。最高は埼玉の21.5‰であり,47人に1人です。最低は岩手で1.9‰,こちらは526人に1人です。
これは両端ですが,埼玉の他にも2ケタの数字はちらほらあり,地域的に固まっているようにも思えます。こうした地域構造を可視化するには地図化が一番。2‰の区分に依拠して,47都道府県を塗り分けてみました。10‰超はブラックにしています。色のごとく,ブラック県です。
ブラック県は点在していますが,北関東,近畿,そして九州というように,その塊のゾーンも見出すことができます。うーむ。わが郷里の九州にて,若年正社員のブラック化が進んでいるのが気にかかる。
上述のように,厚労省が今月からブラック企業摘発に乗り出すのですが,大阪が重点的なターゲットとされているそうです。失業率が高い当府では労働者の立場が弱く,やりたい放題のブラック企業が蔓延っている度合いが高いであろう,という想定とのこと。
しかるに上図によると,重点をおくべき地域は他にもあります。年間300日以上&週75時間以上就業という,スーパー過重勤務者の出現率地図です。摘発の資源配分の傾斜づけに,今回のデータが参考になればと思います。
ここでは,就業日数・時間に依拠してブラック企業勤務者をラフに取り出しましたが,収入という観点も加えるとより精緻度が高まるでしょう。スーパー長時間就業&超薄給。これこそ,真正のブラック企業勤務者です。
収入もかけあわせた3重クロス表はないでしょうが,何とかひねり出せないものか。トライしてみます。ブラック企業の可視化作業です。
2013年9月1日日曜日
博士課程修了生の学位取得者率
2012年の文科省『学校基本調査』によると,同年3月の大学院博士課程修了生は16,260人です。このうち,単位取得満期退学者は4,488人。したがって,学位取得者は差し引き11,772人ということになります。修了生中の学位取得者比率は72.4%なり。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
現在では,修了生の4人に3人が博士号学位取得者です。昔に比べて課程博士の取得が容易になったといわれますが,とりわけ文系の専攻ではそうでしょう。下の表は,10の専攻系列ごとに,上記の学位取得者率を計算したものです。1990(平成2)年と2012年の数値を比べてみます。
この20年間で,学位取得者率は65.2%から72.4%へと7.2ポイント伸びましたが,伸び幅は専攻によって違っています。倍率にすると,人文科学系,社会科学系,そして私が出た教育系では,学位取得者率が倍以上になっています。人文系では,1990年ではわずか15.8%でしたが,現在では34.4%,3人に1人にまで増えています。
最近では,満期退学後1年くらいまでは課程博士の枠内で審査してくれる大学も多いので,そうした退学組も含めれば,たとえ文系といえども,院生が学位をゲットできる確率はもっと高くなることでしょう。
文系の博士号は,以前は研究者の集大成とみられていましたが,今では研究者の基礎ライセンスのような位置づけに変わってきていいますしね。私が知るある先生(教育系)は,「今の博論なんて僕らの頃の修論,いやそれ以下だよ」とおっしゃっていました・・・。
それはさておき,上記の専攻系列の下には,細かい下位の専攻分野があります。人文系は文学,史学,哲学などを内包し,社会系には法学,経済学,社会学などの分野が含まれています。
私は,修了生数が50人を越える34の専攻分野について,2012年春の修了生の学位取得者比率を出してみました。下図は,高い順に並べたものです。
理高文低になっているのは予想通りですが,やっぱり人文系の3分野(文学,史学,哲学)はまだ低いですねえ。最低は哲学で,現在でも24.1%です。哲学の博論なんて難しそうだな。
まあこれでも,以前に比したら値は高まっています。たとえば文学は,1990年の学位取得者率は9.2%でしたが,今では上図の通り26.9%にまで増えているわけです。
今回は,当局の原資料をもとに,博士課程修了生の学位取得者比率を専攻別に明らかにしてみました。最近,「専攻&博士取得率」というような検索ワードでブログにきてくださる方が多いので,こういうデータを出しておこう,と思った次第です。
なお,国公私別や性別の学位取得率も計算することができます。気が向いたときに,ツイッターにでも載せようかと思います。国公立と私立では,どっちが学位とりやすいのかなあ。ジェンダー差とかもあるんかなあ。
追記:国立国会図書館さま。国内一の規模を誇る貴図書館において,文科省『学校基本調査』のバックナンバーが所蔵されていないことに驚き(憤り)を禁じ得ません。教育分野の基幹統計です。『学校教員統計調査』も然り。全巻揃えていただきたいと思います。*8/30に行った時に配られた利用者アンケートに書いたことママ。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
現在では,修了生の4人に3人が博士号学位取得者です。昔に比べて課程博士の取得が容易になったといわれますが,とりわけ文系の専攻ではそうでしょう。下の表は,10の専攻系列ごとに,上記の学位取得者率を計算したものです。1990(平成2)年と2012年の数値を比べてみます。
この20年間で,学位取得者率は65.2%から72.4%へと7.2ポイント伸びましたが,伸び幅は専攻によって違っています。倍率にすると,人文科学系,社会科学系,そして私が出た教育系では,学位取得者率が倍以上になっています。人文系では,1990年ではわずか15.8%でしたが,現在では34.4%,3人に1人にまで増えています。
最近では,満期退学後1年くらいまでは課程博士の枠内で審査してくれる大学も多いので,そうした退学組も含めれば,たとえ文系といえども,院生が学位をゲットできる確率はもっと高くなることでしょう。
文系の博士号は,以前は研究者の集大成とみられていましたが,今では研究者の基礎ライセンスのような位置づけに変わってきていいますしね。私が知るある先生(教育系)は,「今の博論なんて僕らの頃の修論,いやそれ以下だよ」とおっしゃっていました・・・。
それはさておき,上記の専攻系列の下には,細かい下位の専攻分野があります。人文系は文学,史学,哲学などを内包し,社会系には法学,経済学,社会学などの分野が含まれています。
私は,修了生数が50人を越える34の専攻分野について,2012年春の修了生の学位取得者比率を出してみました。下図は,高い順に並べたものです。
理高文低になっているのは予想通りですが,やっぱり人文系の3分野(文学,史学,哲学)はまだ低いですねえ。最低は哲学で,現在でも24.1%です。哲学の博論なんて難しそうだな。
まあこれでも,以前に比したら値は高まっています。たとえば文学は,1990年の学位取得者率は9.2%でしたが,今では上図の通り26.9%にまで増えているわけです。
今回は,当局の原資料をもとに,博士課程修了生の学位取得者比率を専攻別に明らかにしてみました。最近,「専攻&博士取得率」というような検索ワードでブログにきてくださる方が多いので,こういうデータを出しておこう,と思った次第です。
なお,国公私別や性別の学位取得率も計算することができます。気が向いたときに,ツイッターにでも載せようかと思います。国公立と私立では,どっちが学位とりやすいのかなあ。ジェンダー差とかもあるんかなあ。
追記:国立国会図書館さま。国内一の規模を誇る貴図書館において,文科省『学校基本調査』のバックナンバーが所蔵されていないことに驚き(憤り)を禁じ得ません。教育分野の基幹統計です。『学校教員統計調査』も然り。全巻揃えていただきたいと思います。*8/30に行った時に配られた利用者アンケートに書いたことママ。
2013年8月31日土曜日
2013年8月の教員不祥事報道
月末の教員不祥事報道の整理です。今月,私がキャッチした教員不祥事報道の数は37でした。夏休みのためか数は少なくなっていますが,懲戒免職を隠して別の自治体に再採用された女性教諭など,「こういうことがあるんだ」という事案も見受けられます。
いつも通り,記事名のヨコに当該教員の属性を記録しておきます。件の詳細を知りたい方は,記事名でググられたし。
暦の上では,明日から秋です。気温の変化も激しくなるかと思います。みなさま,体調を崩されませぬよう。
<2013年8月の教員不祥事報道>
・ナイフで脅した小6の頭叩いた校長処分(8/1,読売,大阪,小,男,62)
・児童に頭突き、けがさせた教諭に罰金20万円(8/2,読売,栃木,小,男,56)
・若松の教諭が体罰 男子高校生が被害届(8/6,福島民友,福島,高,男)
・女子生徒裸にし、テーピング=撮影の男性教諭免職(8/6,時事通信,岡山,中,男,50代)
・小学校教頭、公務員を十数回殴り女子大生を壁に(8/6,読売,兵庫,小,男,53)
・女子バレー部員の腰を蹴る、顧問の男性教諭謝罪(8/7,読売,山口,中,男,50代)
・児童にあほ、ランドセル投げ付け 神戸市立小の教諭(8/8,神戸新聞,兵庫,小,男,50代)
・コンパス針で児童突く、体罰で小学校教諭処分(8/9,アットエス,静岡,小,男,41)
・教委が異例の教諭告発 強制わいせつ容疑で県と市
(8/9,神奈川新聞,神奈川,小,男,50代)
・女性教諭の車見かけ、後つけた校長(8/10,読売,広島,小,男,56)
・体操服欲しい…高校女子トイレに忍び込んだ教諭(8/13,読売,愛知,小,男,41)
・遊技機に他店メダル=窃盗容疑で小学校教諭逮捕(8/15,時事通信,大阪,小,男,46)
・小学教諭、宿題忘れた男児を平手打ち・突き倒し(8/16,読売,大阪,小,男,31)
・小学校講師、女子高生のスカート内盗撮…逮捕(8/17,読売,京都,小,男,23)
・お化け屋敷で女子高生触る 私立高校長、痴漢容疑で逮捕(8/19,朝日,徳島,高,男,59)
・「麻薬含む植物片はオマケ」輸入の小学教諭逮捕(8/19,読売,長野,小,男,42)
・合否や成績745人分、教諭紛失…大阪・生野高(8/20,読売,大阪,高,男)
・中学校長と小学校女性教諭、体罰で減給(8/20,読売,高知,小・女50代,中・男50代)
・わいせつ行為の教諭処分 福井県教委(8/21,産経,福井,特,男,37)
・女性のリップクリーム使用不能に…指導主事免職(8/21,読売,鳥取,教育セ,男,38)
・同上:酒気帯び運転(鳥取,高,男,53)
・7年以上前のわいせつ行為で教諭停職、「悩んでいた」女性が訴え
(8/22,産経,千葉,中,男,50代)
・同上:体罰(千葉,中,男,42)
・飲酒運転の教頭を懲戒免職 生徒に不適切行為の教諭も
(8/22,福島民友,福島,飲酒運転:中男52,信用失墜行為:高男20代)
・児童ポルノ法違反の教諭を停職、依願退職に(8/23,産経,埼玉,小,男,26)
・夏休み中の小学校教諭、書店で女性の下着盗撮(8/23,読売,大阪,小,男,30)
・校長室に忍び込み、3万円盗んだ小学校臨時教諭(8/23,読売,広島,小,男,25)
・教員免許失効を隠した容疑で元教師逮捕(8/26,朝日,神奈川,小,女,44)
・教室で女児にわいせつ 小学校教諭を懲戒免職(8/28,愛媛新聞,愛媛,小,男,50代)
・<民間人校長>児童の母親にセクハラか(8/28,毎日,大阪,小,男,59)
・「非常事態だ」、同じ市内の教諭3人が犯した罪
(8/28,読売,愛媛,窃盗:中男50代,酒気帯び運転:小男52)
・市立小教諭逮捕、女子高校生に淫らな行為の疑い(8/29,読売,静岡,小,男,56)
・合宿で寝ていた男子児童の体触った男性教諭(8/30,読売,和歌山,小,男,34)
・女性盗撮のベテラン教諭「なぜ、あんなことを」(8/30,読売,静岡,中,男,42)
・私立若松一高の“モンスター校長”が女性教員にパワハラ
(8/30,mynewsjapan,福島,高,男,60代前半)
・生徒同士に平手打ち命令した中学バレー部顧問(8/31,読売,山形,中,男,50代)
いつも通り,記事名のヨコに当該教員の属性を記録しておきます。件の詳細を知りたい方は,記事名でググられたし。
暦の上では,明日から秋です。気温の変化も激しくなるかと思います。みなさま,体調を崩されませぬよう。
<2013年8月の教員不祥事報道>
・ナイフで脅した小6の頭叩いた校長処分(8/1,読売,大阪,小,男,62)
・児童に頭突き、けがさせた教諭に罰金20万円(8/2,読売,栃木,小,男,56)
・若松の教諭が体罰 男子高校生が被害届(8/6,福島民友,福島,高,男)
・女子生徒裸にし、テーピング=撮影の男性教諭免職(8/6,時事通信,岡山,中,男,50代)
・小学校教頭、公務員を十数回殴り女子大生を壁に(8/6,読売,兵庫,小,男,53)
・女子バレー部員の腰を蹴る、顧問の男性教諭謝罪(8/7,読売,山口,中,男,50代)
・児童にあほ、ランドセル投げ付け 神戸市立小の教諭(8/8,神戸新聞,兵庫,小,男,50代)
・コンパス針で児童突く、体罰で小学校教諭処分(8/9,アットエス,静岡,小,男,41)
・教委が異例の教諭告発 強制わいせつ容疑で県と市
(8/9,神奈川新聞,神奈川,小,男,50代)
・女性教諭の車見かけ、後つけた校長(8/10,読売,広島,小,男,56)
・体操服欲しい…高校女子トイレに忍び込んだ教諭(8/13,読売,愛知,小,男,41)
・遊技機に他店メダル=窃盗容疑で小学校教諭逮捕(8/15,時事通信,大阪,小,男,46)
・小学教諭、宿題忘れた男児を平手打ち・突き倒し(8/16,読売,大阪,小,男,31)
・小学校講師、女子高生のスカート内盗撮…逮捕(8/17,読売,京都,小,男,23)
・お化け屋敷で女子高生触る 私立高校長、痴漢容疑で逮捕(8/19,朝日,徳島,高,男,59)
・「麻薬含む植物片はオマケ」輸入の小学教諭逮捕(8/19,読売,長野,小,男,42)
・合否や成績745人分、教諭紛失…大阪・生野高(8/20,読売,大阪,高,男)
・中学校長と小学校女性教諭、体罰で減給(8/20,読売,高知,小・女50代,中・男50代)
・わいせつ行為の教諭処分 福井県教委(8/21,産経,福井,特,男,37)
・女性のリップクリーム使用不能に…指導主事免職(8/21,読売,鳥取,教育セ,男,38)
・同上:酒気帯び運転(鳥取,高,男,53)
・7年以上前のわいせつ行為で教諭停職、「悩んでいた」女性が訴え
(8/22,産経,千葉,中,男,50代)
・同上:体罰(千葉,中,男,42)
・飲酒運転の教頭を懲戒免職 生徒に不適切行為の教諭も
(8/22,福島民友,福島,飲酒運転:中男52,信用失墜行為:高男20代)
・児童ポルノ法違反の教諭を停職、依願退職に(8/23,産経,埼玉,小,男,26)
・夏休み中の小学校教諭、書店で女性の下着盗撮(8/23,読売,大阪,小,男,30)
・校長室に忍び込み、3万円盗んだ小学校臨時教諭(8/23,読売,広島,小,男,25)
・教員免許失効を隠した容疑で元教師逮捕(8/26,朝日,神奈川,小,女,44)
・教室で女児にわいせつ 小学校教諭を懲戒免職(8/28,愛媛新聞,愛媛,小,男,50代)
・<民間人校長>児童の母親にセクハラか(8/28,毎日,大阪,小,男,59)
・「非常事態だ」、同じ市内の教諭3人が犯した罪
(8/28,読売,愛媛,窃盗:中男50代,酒気帯び運転:小男52)
・市立小教諭逮捕、女子高校生に淫らな行為の疑い(8/29,読売,静岡,小,男,56)
・合宿で寝ていた男子児童の体触った男性教諭(8/30,読売,和歌山,小,男,34)
・女性盗撮のベテラン教諭「なぜ、あんなことを」(8/30,読売,静岡,中,男,42)
・私立若松一高の“モンスター校長”が女性教員にパワハラ
(8/30,mynewsjapan,福島,高,男,60代前半)
・生徒同士に平手打ち命令した中学バレー部顧問(8/31,読売,山形,中,男,50代)
2013年8月29日木曜日
生徒の将来展望の都道府県比較
一昨日,2013年度の『全国学力・学習状況調査』の結果が公表されました。前々回は,児童・生徒の国際的視野に注目しましたが,今年度より,将来展望に関する設問も盛られています。以下のようなものです。
http://www.nier.go.jp/kaihatsu/zenkokugakuryoku.html
①:将来の夢や目標を持っていますか
②:将来の夢や目標を実現するために努力していますか
③:将来何かの職業や仕事に就いて働きたいと思いますか
④:将来なりたい職業はありますか
⑤:あなたには「あのような人になりたい」と思う人はいますか
若者の就労不全兆候が問題化しているなか,こういう事項も数値化しておきたい,という思いからでしょう。結構なことです。
今回は,この5つの設問への回答を合成して,中3生徒の将来展望がどれほど明瞭かを測る尺度をつくり,都道府県ごとの比較をしてみようと思います。義務教育の最終学年の中3ともなれば,将来展望の輪郭は描いていることが期待されますが,その達成度が(相対的に)高い県はどこでしょう。自県の位置は如何。私なりのやり方で,実態を浮かび上がらせてみました。
私は,上記の設問に対する,公立中学校3年生の回答を県別に整理しました。①~④は「当てはまる」という強い肯定の回答比率,⑤については「ある」と答えた者の比率を拾いました。
首都の東京でいうと,①は47.0%,②は28.3%,③は79.7%,④は68.1%,⑤は69.4%,となっています。これらを合成して将来展望の明瞭度を測る尺度をつくるのですが,値の水準が異なるので,そのまま平均するわけにはいきません。均すのは,各々を同列の基準で評価できる値に換算した後です。
全県の分布幅(レインヂ)の中で,各県の値がどこに位置するかという,相対スコアを計算してみましょう。具体的にいうと,最高値を1.0,最小値を0.0とした場合,当該県の値はどうなるかです。
下表は,それぞれの設問について,全国値および全県中の最高値・最低値を掲げたものです。煩雑さを避けるため,①は目標,②は努力,③は仕事志向,④は志望職業,⑤はモデル,というように簡略表記しています。
将来の目標を持っている生徒の比率(①)は,54.0%~42.6%というレインヂですが,前者を1.0,後者を0.0とするとき,東京の値(47.0%)はどういう値になるでしょう。ここでは,OECDの幸福度指数(BLI)で採用されている,以下の計算式を用いることとします。
(当該データの値-最小値)/(最高値-最小値)
これに依拠すると,東京の47.0%という肯定率は,(47.0-42.6)/(54.0-42.6) ≒ 0.386,となります。全県の分布(0.0~1.0)の中における,東京の相対的な位置を表すスコアです。「中の下」というところでしょうか。
私はこのやり方で,各県の5つの設問への肯定率を,0.0~1.0のスコアに換算しました。下表は,その一覧です。最高値には黄色,最低値には青色のマークをしています。
右端は,5つのスコアを均した値です。この数値でもって,各県の生徒の将来展望がどれほど明瞭かを測ることにします。将来展望スコアとでも呼んでおきましょう。
これをみると,ほう,トップは秋田ですね。学力1位に加えて,生徒の将来展望の明瞭度も1位。見上げたものです。ほか,値が高い県をみると,青森(0.751),山梨(0.776),広島(0.749),そして宮崎(0.743),というように地理的に分散しています。
地域構造を押さえるため,このスコア値の地図をつくってみました。
学力のように,濃い色の県が東北や北陸に集中するという構造にはなっていないようです。気になるのは,近畿圏が兵庫を除いて白一色であることくらいでしょうか。
あくまで相対比較ですが,中3生徒の将来展望の都道府県差を浮き立たせてみました。次なる関心は,こうした地域差の要因ですが,どういうことが考えられるでしょうか。各県のキャリア教育の有様などいろいろ想起されますが,家族と将来のことについて話す頻度と相関しているようです。
今年度の『全国学力・学習状況調査』の生徒質問紙調査では,「家の人と将来のことについて話すことがあるか」と問うていますが,「ある」と答えた公立中学校3年生の比率と,上記スコアの相関図を描くと下図のようになります。
撹乱が結構ありますが,大まかには,家族と将来のことについて話す生徒が多い県ほど,将来展望の明瞭度スコアが高い傾向がみられます。相関係数は+0.409であり,1%水準で有意です。生活の大半を過ごす家庭での対話の頻度というのも,侮れない要因ですね。
ところで,単一尺度に合成する前の5つのスコアを使うことで,生徒の将来展望の多角プロフィール図を描くこともできます。たとえば,以下のようなものです。
これによると,どの面が突出していて,どこが凹んでいるのかが分かります。上記のスコア一覧表から数値を拾って,関心のある県のチャート図をつくってみるのも面白いでしょう。
ちなみに,拙著『47都道府県の子どもたち(青年たち)』(武蔵野大学出版会)は,この図法(カルテ)を用いて,各県の子ども・青年のすがたを多角的に表現したものです。興味ある方は,お手にとってください。割引販売もいたしております。
http://www.nier.go.jp/kaihatsu/zenkokugakuryoku.html
①:将来の夢や目標を持っていますか
②:将来の夢や目標を実現するために努力していますか
③:将来何かの職業や仕事に就いて働きたいと思いますか
④:将来なりたい職業はありますか
⑤:あなたには「あのような人になりたい」と思う人はいますか
若者の就労不全兆候が問題化しているなか,こういう事項も数値化しておきたい,という思いからでしょう。結構なことです。
今回は,この5つの設問への回答を合成して,中3生徒の将来展望がどれほど明瞭かを測る尺度をつくり,都道府県ごとの比較をしてみようと思います。義務教育の最終学年の中3ともなれば,将来展望の輪郭は描いていることが期待されますが,その達成度が(相対的に)高い県はどこでしょう。自県の位置は如何。私なりのやり方で,実態を浮かび上がらせてみました。
私は,上記の設問に対する,公立中学校3年生の回答を県別に整理しました。①~④は「当てはまる」という強い肯定の回答比率,⑤については「ある」と答えた者の比率を拾いました。
首都の東京でいうと,①は47.0%,②は28.3%,③は79.7%,④は68.1%,⑤は69.4%,となっています。これらを合成して将来展望の明瞭度を測る尺度をつくるのですが,値の水準が異なるので,そのまま平均するわけにはいきません。均すのは,各々を同列の基準で評価できる値に換算した後です。
全県の分布幅(レインヂ)の中で,各県の値がどこに位置するかという,相対スコアを計算してみましょう。具体的にいうと,最高値を1.0,最小値を0.0とした場合,当該県の値はどうなるかです。
下表は,それぞれの設問について,全国値および全県中の最高値・最低値を掲げたものです。煩雑さを避けるため,①は目標,②は努力,③は仕事志向,④は志望職業,⑤はモデル,というように簡略表記しています。
将来の目標を持っている生徒の比率(①)は,54.0%~42.6%というレインヂですが,前者を1.0,後者を0.0とするとき,東京の値(47.0%)はどういう値になるでしょう。ここでは,OECDの幸福度指数(BLI)で採用されている,以下の計算式を用いることとします。
(当該データの値-最小値)/(最高値-最小値)
これに依拠すると,東京の47.0%という肯定率は,(47.0-42.6)/(54.0-42.6) ≒ 0.386,となります。全県の分布(0.0~1.0)の中における,東京の相対的な位置を表すスコアです。「中の下」というところでしょうか。
私はこのやり方で,各県の5つの設問への肯定率を,0.0~1.0のスコアに換算しました。下表は,その一覧です。最高値には黄色,最低値には青色のマークをしています。
右端は,5つのスコアを均した値です。この数値でもって,各県の生徒の将来展望がどれほど明瞭かを測ることにします。将来展望スコアとでも呼んでおきましょう。
これをみると,ほう,トップは秋田ですね。学力1位に加えて,生徒の将来展望の明瞭度も1位。見上げたものです。ほか,値が高い県をみると,青森(0.751),山梨(0.776),広島(0.749),そして宮崎(0.743),というように地理的に分散しています。
地域構造を押さえるため,このスコア値の地図をつくってみました。
学力のように,濃い色の県が東北や北陸に集中するという構造にはなっていないようです。気になるのは,近畿圏が兵庫を除いて白一色であることくらいでしょうか。
あくまで相対比較ですが,中3生徒の将来展望の都道府県差を浮き立たせてみました。次なる関心は,こうした地域差の要因ですが,どういうことが考えられるでしょうか。各県のキャリア教育の有様などいろいろ想起されますが,家族と将来のことについて話す頻度と相関しているようです。
今年度の『全国学力・学習状況調査』の生徒質問紙調査では,「家の人と将来のことについて話すことがあるか」と問うていますが,「ある」と答えた公立中学校3年生の比率と,上記スコアの相関図を描くと下図のようになります。
撹乱が結構ありますが,大まかには,家族と将来のことについて話す生徒が多い県ほど,将来展望の明瞭度スコアが高い傾向がみられます。相関係数は+0.409であり,1%水準で有意です。生活の大半を過ごす家庭での対話の頻度というのも,侮れない要因ですね。
ところで,単一尺度に合成する前の5つのスコアを使うことで,生徒の将来展望の多角プロフィール図を描くこともできます。たとえば,以下のようなものです。
これによると,どの面が突出していて,どこが凹んでいるのかが分かります。上記のスコア一覧表から数値を拾って,関心のある県のチャート図をつくってみるのも面白いでしょう。
ちなみに,拙著『47都道府県の子どもたち(青年たち)』(武蔵野大学出版会)は,この図法(カルテ)を用いて,各県の子ども・青年のすがたを多角的に表現したものです。興味ある方は,お手にとってください。割引販売もいたしております。
2013年8月28日水曜日
登録:
投稿 (Atom)














